住民票職権削除問題

昭和61年度生活保護運営方針並びに年間事業計画 西成区福祉事務所 昭和61年=1986年
(4頁)実際には居住していないにもかかわらず、雇用保険の資格を得るために便宜上住民基本台帳の登録をしている者も多く、居住地の認定にかかわって他市から当所の取り扱いに対する反論もあって、この調整に時間を要している。
2004(平成16)年2月17日 野宿生活者の支援者アパートに、多数が住民登録していたことを犯罪と

 去る217日、大阪府警は−「釜ヶ崎パトロールの会」のメンバーの居室であるアパートに対して、「電磁的公正証書原本不実記録同供用幇助」の容疑で家宅捜索を行ない、メンバー1名を逮捕した。前後して年金受給や就職活動のために、今回逮捕されたメンバーの居室に住民票を置いている野宿の仲間たちに対して「電磁的公正証書原本不実記録」の容疑で出頭を強要し、指紋採取・写真撮影を行うとともに長時間に渡る取り調べを行った。−
 大阪府警は、釜パトのメンバーの居室に、複数の野宿の仲間が住民票を置いていることが逮捕勾留、取り調べに値する犯罪であるとしている。しかし逮捕されたメンバーが行った行為とは、野宿であるがゆえに住民票がなく、年金の受け取りができない仲間や連絡先がないために就職活動を行う事ができない仲間の生活を支えるために、彼の居室を一時的な住民票の置き場として提供したことに過ぎない。
 野宿を余儀なくされている仲間や寄せ場などの日雇い労働者は、「住所がない」、「住民票がない」といった理由で差別され就労活動が困難であったり、日雇雇用保険手帳が作れなかったり、年金の受給資格があるにも関わらず受け取りができないという状況を強いられてきた。
 これらはすべて失業と野宿者の増大を生み出した行政が、その責任において真っ先に取り組まなくてはならない問題にも関わらず放置し続けたため、今回逮捕されたメンバーや様々な支援団体が行政に代わり行ってきた支援活動の一環であり、仲間の生活と生存に関わる切実な問題である。
 
(釜ヶ崎パトロールの会ホームページ「抗議声明」より抜粋
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/9279/protest040217.html

2006(平成18)年12月15日 12月臨時会常任委員会(財政総務)
辻義隆委員「新聞各紙でも報道されましたあいりん地区におけます住民登録の問題について質疑をさせていただきたいと思います。
 住民票というのは非常に大事なものでございまして、携帯電話を契約するにも、いろんな部分でさまざまな認証機能を持っておるわけでございまして、今回、3,300人の住民票が1カ所に集中していたということをかいま見ますと、この公証機能というのは一体どうなってるのかなというふうに、非常な不信感を市民の皆さんに持たせてしまった
渡司考一委員「求職者給付の給付を受けるためにここに移すしかないという、そういう選択しかないという状態であれば、私は、結局は大阪市が、いわばこういう違法状態の黙認のもとでしかこの給付を受けられないというふうになると思うんですよね。」「どうもこの校区は大体2割前後の投票率なんですね。ここが2割としても、660人が投票に行ったと、こういうことになりますからね。ですから、ぜひその点は、いろんな関心を持たざるを得ない」
2006(平成18年)12月15日 12月臨時会常任委員会(民生保健)
澤野雅洋委員 「先週の7日に新聞報道がございました西成区のあいりん地域にございます44平方メートル、延べで173平方メートルの住居に3,300名もの住民登録があったという報道がございました。これは、市民感情からは、やはりあってはならないことでございます。到底、市民、納得できない問題でございます「下が選挙事務所みたいになってるんですね。広報宣伝カー、いわゆる街宣車を置いていまして、また選挙の市会候補と書いてありましていろいろ書いてあるんですけども、これはこういう市会議員、我々も議員活動をさせていただく中で、本当に3,000名、票があるという、いわゆる有権者が名簿に登録されてる方がいらっしゃるわけでございますけども、大変大きいんですね、3,000名以上といいますと。その方々が一つのビルに、選挙事務所の上にこういう登録をされている。こういったことは、やはり社会通念上、通用しない話だと思うんですね。」
2006年度 特別清掃事業登録者 2,53人中 解放会館住所 557人、釜ヶ崎支援機構住所 74人 合計631人が対象者
2007(平成19)年1月23日 「住所は公園」認めず/大阪高裁 朝日新聞・夕刊
 大阪市北区の「扇町公園」でテント生活をしている男性が、公園を住所とする住民票の転居届を同区が受理しなかったのは不当だとして、同区長を相手に不受理処分の取り消しを求めた行政訴訟の控訴審判決が23日、大阪高裁であった。田中壮太裁判長は「テントは容易に撤去や移転ができるうえ、都市公園内に住居を設けることは認められておらず、社会通念に基づく住所とはいえない」と判断。「公園は住所」と認定した一審・大阪地裁判決を取り消し、不受理処分は適法とする判決を言い渡した。
 (日本経済新聞・夕刊−大阪市内の支援者宅に住民登録していたが、04年に実際に住んでいないことを理由に取り消す旨の通知を受けた。このためテント生活を送っていた扇町公園への転居届を提出したが、北区長が不受理としたため提訴した。)
2007(平成19)年1月23日 大量住民登録 7分の1が生活保護受給 産経新聞・夕刊
 大阪市西成区の大量住民登録問題で、約3,500人の住民登録先となっていた釜ヶ崎解放会館など区内3カ所で約500人の生活保護受給者がいることが23日、市の調べで分かった。−生活保護は居住実態に基づいて適用されるため、住民登録が削除されても保護費支給に支障はないが、市はケースワーカーを通じ、居住実態に応じた住民票移動の指導を始めた。
 受給者のうち、5人は実際に同会館に居住しているが、約200人は別のアパートなどに居住。約170人が入院中のほか、別の施設に入居している人もいるという。
2007年1月23日 西成区役所 「住民登録適正化手順」報道機関等に広報
2007年2月9日 西成区相談会結果
2007(平成19)年3月2日 西成・住民登録/削除前日差し止め 朝日新聞
 大阪市西成区のあいりん地区にある三つの建物に3千人以上の日雇い労働者らが住民登録していた問題で、建設労働者の男性(34)が同市による住民票削除の差し止めを求めていた仮処分申請があり、大阪高裁(横田勝年裁判長)は1日、削除後に簡易宿泊所での住民登録が支障なく行われる保証がない現状では「削除は信義則に反して許されない」として、申し立てを却下した大阪地裁の決定を取り消し、市側に削除の停止を命じた。市は約2,500人分の削除を2日に予定していたが、手続きの延長を検討する。
 男性は04年に「釜ヶ崎解放会館」に住民登録。市が今年1月、実態のない登録を削除する方針を示したのを受け、2月7日に「4月投開票の大阪市議選に投票できなくなる」などとして大阪市を相手取り、市議選終了まで住民票を削除しないよう求める行政訴訟と仮処分申請を大阪地裁に起こした。大阪地裁は2月20日、「ふだん利用している簡易宿泊所に住民登録すれば選挙権が確保できるとして申請を却下、男性が抗告していた。
 高裁決定はまず、同会館は郵便物の郵送先に利用されているだけで男性の生活の本拠とは言えず、「住所は主として利用している簡易宿泊所」と認定。しかし、3月1日から簡易宿泊所を住所地にできるよう対策をとったとする市側の主張は「立証が不十分なうえ、そのようなルールを確立するためには相当な周知期間が必要だ」と退け、行政訴訟の判決が確定するまで、削除の停止を命じた。
 決定はまた、同会館に住民登録している労働者らの大部分に生活の実態がない可能性が高く、市議選の投票を認めれば、選挙無効の原因となる余地があると指摘した。
2007年3月2日 西成・住民票削除を延期/大阪市「3週間程度」 朝日新聞
 大阪市は2日、同市西成区の大量住民票登録問題で、この日夜に予定していた日雇い労働者ら約2,500人分の住民票の削除を3週間程度、延期すると発表した。−/−
 市は住民票の削除に伴う代替措置として、あいりん地区内の簡易宿泊所での住民登録を認める具体的な基準を設定。1日から運用を始めている。/具体的には、@長期間、継続宿泊しているA料金前払いで長期間、部屋を確保しているB前払いがなくても、継続して宿泊する意思があるC遠方に長期出張するが、西成に戻った時は特定の簡易宿泊所に泊まる―などのケース。該当者には、大阪府宿所生活衛生同業組合に加盟する簡易宿所が「宿泊証明」を発行し、住民登録を認めるという。
2007年3月29日 職権削除 2,088人
2009(平成21)年9月17日現在 3施設に於ける職権削除後の移動状況(536人)
釜ヶ崎解放会館 522人、釜ヶ崎支援機構 12人、ふるさとの家 2人。
住所設定後の異動先 西成区内 384人(簡宿−132人、施設−38人、その他−214人)。他区 42人。市外準ずる証明 110人。(職権削除後も残る記録-5年−による移動確認で、536人が確認されている。なお、外国人登録は職権削除の制度がないので最初から対象外であった。)