(9)「依頼有りグループ」の要望と結果 その2

 

(B)依頼有り・再面接有り、結果ありグループの要望と結果

 

「再面接」について再確認する。「再面接」は、「新規面接」を受けたその年、あるいはその年以降に2度目、3度目の面接記録があるものである。自立支援センターに2度目の入所をするための面接、あるいは、退院後再び野宿していて面接となったもの、また、無料低額診療所での受診を継続するための面接などが含まれている。

新規面接から2年目や3年目での再面接もあり、面接から面接までの期間は一定していない。改めて数字を確認すると、表9-B-1となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼有りグループでは、「再面接有り」が多く(表9-B-2)、新規面接のみでは、「結果無し」の割合のほうが低い依頼元(公園・建設・行政機関)と、「結果有りの割合」が高い依頼元(保健福祉センター・市更生相談所・民間団体)とに分かれているが、「再面接有りグループ」は、依頼元に関係なく、差は大きいものの、「結果無し」より「結果有り」のほうが高くなっている(表9-B-3)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相談者一人当たりの平均再面接回数は、「結果無し」の割合が多い公園・建設局が多く、「結果あり」の占める割合が高い保健福祉センターや市更生相談所・民間団体は少ない。結果(措置)の回数は、市更生相談所・民間団体が少ない(表9-B-4)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今後、検討を進めるわけであるが、以上のことから、どうやら、依頼数は少ないが、手がかかっている相談事例は、建設・公園のものに多いと想像される。

 以下「新規面接グループ」同様に、要望別に見ていくこととする。

 

(9)「依頼有りグループ」の要望と結果 その2

(B)依頼有り・再面接有り、結果ありグループの要望と結果

 

(9)−B―1 要望=自立支援入所・仕事による自立

 

「再面接グループ」においても、「自立支援センター・仕事による自立」の要望を持つ野宿生活者が、巡回相談員との連絡窓口となっている保健福祉センター、市更相を訪れるとの予想を裏付けて、保健福祉センター、市更相の占める割合が高い(表9-B-5)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また、「新規面接」の場合は、先に見たように、「自立支援センター・仕事による自立」の要望を持つもの3,074人に対して、「結果有り」は761人(24.8%)に過ぎなかったが、「再面接」では、83.9%に登っている。

 

 依頼元別に野宿場所と野宿形態を集計して比較すると、建設局公営所と公園事務所は、テント・小屋の占める割合が、保健福祉センター・市更相と比べて、格段に大きい。市更相では、あいりん臨時緊急夜間避難所の占める割合が突出している。あいりん対策とホームレス対策のリンク状況が見て取れる(表9-B-69)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食事の確保手段を、一定の生活安定度をはかる尺度とするならば、建設局工営所依頼は、「自炊」と「買う」を足すと57.7%を占めている。公園事務所依頼分は、57.3%。保健福祉センター依頼分は、39.2%。市更相依頼分は25.5%(表9-Bー1013)。居住形態とともに考え合わせても、野宿生活という状況では、今示した順で、生活の安定度は下がっていくといえるであろう。

ただし、市更相依頼分には、あいりん臨時緊急夜間避難所(シェルター)と炊き出しの組み合わせが、131人(24.5%)あり、この生活の継続が、野宿生活という状況の中で、テント・仮小屋より安定した生活か、それともそれより劣るのかの判断は、なかなかつけにくいといえる。

9-Bー10

 

 

 

 

 

 

 

9-Bー11

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9-Bー12

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9-Bー13

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここで確認しておかなければならないのは、巡回相談件数全体としては、依頼無しが多く、その中に、行政施策不信と見られる「要望無し」が多数存在する一方、野宿状況という中で、比較的安定していると見られる層も、自立支援センター入所の窓口に並んでいるということである。もちろん、そのことは、窓口に並んだ野宿生活者の結果に対する満足や 、窓口に並んだ全ての人が野宿生活から他の生活に移行することを担保するものではないが、可能性を担保するには十分であると考えられ、現行事業の成果と不十分点の検討と改善が求められるところである。

 「表-9-B-14 結果集計」は、野宿生活者が受けた「結果」を集計したものである。「結果15」は1人で、自立支援センター入所となっている。意味するところは、「結果15」の一人は、「結果1」では1,644人の内の一人として自立支援センターに入所し、就職した後、再野宿、福祉施設に入所後、再野宿、無料低額診療所での受診を繰り返して入院、転院、後、再野宿、医療機関での受診の後に、「結果15」、2度目の自立支援センター入所となったということである。いうまでもないことであるが、数字の集計は、相談年に関係なく、7年間の内のどの年であろうと、1回目の結果を全て「結果1」で集約している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「結果11,644人」と「結果2466人」との差は、1,178人。「依頼有りグループ」の内就労自立を要望しており、巡回相談で何らかの結果を受けた人は、1回の結果だけで71.7%が、巡回相談と縁が切れているということになる。

「結果2」欄のセンター退所の数1,055人は、自立支援センターから退所理由が知らされてきた人数である。「結果1」で自立支援センターに入所した1,135人の内1,055人の退所理由が知らされているということになる。

結果の総延べ人数は2,785人で、「結果3」までの延べ人数は2,392人、総延べ人数の85.9%にあたる。「結果4」以降、回を重ねる相談者の占める割合はそう多くないということができるであろう。

 センター入所の総延べ人員は、1,636人、「結果1」の入所者で69.4%を占め、「結果3」まででは95%を占めている。その他(受診・福祉施設入所など)は、「結果1」のその他で総延べ人数の44.3%を占めているに過ぎず、「結果3」で72.8%となる。「結果」を重ねる相談は、福祉的援護に傾くことを示している。

 

テキスト ボックス:  
自
立
支
援
セ
ン
タ
ー入所 1
5
0
0人

 

 

 

 

 

テキスト ボックス: 56人

 

 

 

 

 

 

 

 

 具体的に「結果」の流れで確認する。

 1644人の内75.7%1,135人)は、ケアセンターなどを経由せずに自立支援センターへ入所している。144人、は自立支援センターに入所していない。

ケアセンター利用は、入所までのつなぎの意味合いが濃く、1回目利用者の85%267人)は、ケアセンターに引き続き自立支援センターに入所している。

1644人の内93.5%は、野宿からスムーズに自立支援センターへ移行したと見なせるが、残り6.5(98)は、福祉施設→再野宿→入院→再野宿→自立支援センター入所のような紆余曲折を経ての入所となっている。

 結果の回数が多くなるほど、福祉の要素が強くなると述べたが、この少数の事例は例外ということになるのであろうか。

 福祉施設を経て自立支援センターへ入所した10人の、自立支援センター後の「結果」について見ると、2名が就職、1名が期限切れ、1名が自主退所、1名が飲酒退所、最も多かったのが、入院の5名である。

 就職した2名の内1名は、野宿期間0ヶ月、脳梗塞軽度後遺症を持つ59歳男性で、福祉施設入所10ヶ月後に、ケアセンターを利用しており、福祉施設を10ヶ月以内に退所し再野宿していたと思われる。ケアセンターから入院、直接かどうか不明ながら2ヶ月後に自立支援センター入所、1年2ヶ月後に、就職退所している。自立支援センターの在所期間からすると、在所期間中に就職、生活費1ヶ月・家賃等を蓄えて、もっとも望ましい退所をしたものと考えられる。もう1人就職したのは、野宿期間16ヶ月、肺気腫で、「息苦しい・手の痺れ」を訴えていた、56歳男性で、受診後福祉施設に入所、2ヶ月後に自立支援センター入所、7ヶ月後に、就職退所している。

 入院したのは、3252576263歳の男性で、内2名が再野宿を確認できる。これは想像に過ぎないが、福祉施設への適応不能で退所、かといって居宅保護も困難という状況で、究極の選択として、自立支援センター入所となったのではあるまいか。

 結局、10人の内、2名が例外と見なせるに過ぎない。結果を重ねる例は、やはり福祉の要素が強くなる傾向を示している。

 

 自立支援センター入所後を、途中まで図示すると「経路図8」のようになるが、やはり、結果を重ねるものは、格段に少なくなる。そして、福祉対応のみとなっている。

 自立支援センター入所2回目(135人)を見ると、1回目で就職して退所しているものは60人であったが、2回目では、判明しているものは10名である。32名はまだ可能性があるが、全て就職したとしても42名で、1回目の60名を下回ることは確かである(表9-B-15、経路図9、経路図10)。

 1回目から2回目までの期間、野宿で体調を崩していることもあるであろうし、何よりも確実に年齢は高くなっているから、当然の現象であるといえる。

 

テキスト ボックス: 自
立
支
援
セ
ン
タ
ー
1
5
0
0人
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

表9-B-15  自立支援センター退所理由 退所1回目と2回目のクロス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 テキスト ボックス: 自立支援センター入所1回目
テキスト ボックス: 自立支援センター入所2回目

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テキスト ボックス: 自立支援センター入所2回目

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 「一期一会」ではないが、巡回相談1回目の成果が、何よりも大切であることを示すものである。

 巡回相談事業が、ホームレス対策の全てではなく、全ての野宿生活者の要望、個々の野宿生活者の生きるスタイルの指向性に対応できるはずもないことは、明らかである。

 しかし、そのことは忘れられがちである。

 巡回相談事業が対応できるのはどのような人であり、他の施策との連携で対応できるのはどのような人であるのか、また、他の施策との連携は十分に、スムーズにとられる体制・仕組みが確立されているのか等、常に点検される必要があるし、それに基づいて、新たな視点での取り組みも付け加えていくことが必要である。

 そうでない限り、巡回相談事業は、今ある規格にあうものだけを選別し、すくい上げ、規格にあわないものを路上に切り捨てる役割を担うものとなる。

巡回相談事業にかかわる人々の善意と努力を最大限評価しても、意欲を持って窓口に並んだ人々の、結果をたどると、あまりにも「ロス」が多すぎるといわざるを得ず、野宿生活者の側にも問題があるにしても、それに対応できない側の問題はより大きいと考える。