大阪における野宿生活者の自立の支援等に関する実施計画について
 

「大阪市野宿生活者(ホームレス)の自立の支援等に関する実施計画」が本年3月付で策定・公表され、「大阪府ホームレスの自立の支援等に関する実施計画」が一月遅れの4月付で策定・公表された。

 国の基本方針に基づいて作成されたものであることから、取り上げられている項目・文言はほぼ「基本方針」の写しとなっている。具体的に現在実施されている対策については、個性らしきものが出ているが、それらは「当面の対応策」の域を出るものではなく、「特別措置法」ができた効果はまだ見えていない。実施計画に書かれた文言の現実的豊富化は支援・運動団体の力と国の予算の裏付けかかっているといえる。

 府の実施計画では、府の役割として、「大阪府・市町村ホームレス自立支援推進協議会」において、大阪府と市町村が連携して推進する自立支援事業については、広域自治体として、その連絡、調整を図ると共に、財政上の措置その他専門的なノウハウ等、事業推進に関して必要な支援をおこなう、としている。

 また、法でいう「ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者が多数存在する地域」とは大阪府内において、大阪市内のあいりん地域が該当すると考えられるのであいりん地域に多数存在する日雇労働者に対して、雇用・就労及び生活上の支援を実施していくとしている。この点は、大阪市の実施計画でも同様に組み入れられている。

 大阪府・市の実施計画では「多数存在する地域」を特定して表記されているが、5月17日の決算行政監視委員会第3分科会でなされた辻 恵議員(民主党・無所属クラブ=大阪比例区)の質問に対する政府側の答弁は、「山谷・寿・釜ヶ崎など特定の地域を限定して考えてはいない」というものであった。

 「多数存在する地域」を「寄せ場」に限定して考える必然性はないということのようだ。

国の「基本方針」には、「ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者としては、一般的には現に失業状態や不安定な就労関係にあり、かつ、定まった住居を喪失し不安定な居住環境にある者等が想定される。」とあるが、失業率や野宿生活者の数、家賃滞納状況などで「多数存在する地域」の基準を運動の側で提起できれば、全国各地で「予防対策」まで踏み込む実施計画を要求できる根拠となる国の見解であると考えられる。

 大阪市の実施計画では、役所の機構的にはホームレス自立支援課と保護課で個別に担われている事業が、野宿生活者対策として一体のものとして、とりあえず表記されている。現実的には、数量的に間に合わない対策の域を出ていない。今後も、対策規模の数量的拡大と多様に書かれている文言の現実化に力を注ぐよう働きかけていかなければならない。実施計画は、今となっては「評価」するものでなく、「活用」するものであると考えている。

 「活用」するためには充分な予算の裏付けが必要である。辻 恵議員は、決算行政監視委員会第3分科会で、雇用創出基金が今年度限りのものであり、その後の対策についても質問している。それに対し、坂口厚生労働大臣は、「基金の性格から、同様のものを継続することはできないが、地域の失業率や若年層、あるいは女性、ホームレスといった点に着目したものとしては必要ではないかと考えている」と答弁している。

 局長答弁では、「ホームレス対策予算を拡大することに努め、その中で対応する」ということであるように聞こえたが、ホームレス対策予算の執行においては地方公共団体の持ち出し(半額負担)が前提となっている現状があり、幾ら予算が付いても、手を挙げる地方公共団体が少なく、未消化に終わる可能性もある。

 単なる一般予算の中での拡大ではなく、基金交付金として100%国予算の確保がなければ、実施計画の「活用」もおぼつかない。

 釜ヶ崎支援機構では、6月2日の総会において、「野宿生活者対策予算確保請願署名運動」について論議し、実際に取り組んで行く予定である。