釜ヶ崎反失業連絡会の基本要求

 1993年9月、釜ヶ崎反失業連絡会は、大阪府・市に対して統一要望書を提出しています。一部省略して紹介します。

 現在の釜ケ崎(あいりん地区)における府・市行政施策の基本枠組みを規定しているのは、1966年に佐藤大阪府知事と中馬大阪市長の連名で国に提出された「スラム対策に関する要望書」並びに「労働総合施設構想」であり、それに基づいて建設・運営されている「あいりん総合センター」であると考える。釜ケ崎が単身日雇労働者中心の街へと移りかわる過程での数回の「暴動」が、行政の対応を引き出したものであるといえる。その施策が、労働者の生活環境改善に一定の役割を果たしてきたことは認められる。しかし、『青空労働市場から屋内での明るい就労あっ旋へ』というのは、単に屋根がついたというだけに留まり、実質は『相対方式ー相互選択管理方式』という公的機関の関与しない青空労働市場でしかないことは、1992年7月に起きた求人車輌焼き打ち事件が示しているところである。『相対方式』は結局、職安法の精神を踏みにじって就労に悪質な手配師・人夫出しを介在させ続けたものであり、就労機会の保障の責任から行政が逃げ出す口実となったものである。労働者が行政の窓口を嫌ったから『相対方式』となったというのは事実ではない。単に、行政の直接おこなう仕事紹介の方が、手配師による仕事紹介よりも賃金が安かったからである。行政が、手配師・人夫出しに配慮して低めの賃金設定をして紹介をしたから労働者が嫌ったというのが事実ではないか。

 住宅についていえば、地区労働者の主要部分を占める単身労働者が生活するに充分なものがないままにきている。

 さらに言えば、1990年、1992年の「暴動」は、「あいりん総合センターー市立更生相談所」の釜ケ崎行政体制に破産が宣告せられたものであると考えるべきである。

 日本全体の高齢化問題は、釜ケ崎に一早く切実な問題として登場している。それは釜ケ崎の労働者の生活実態に規定され、政府が基準としている年齢に関わりなく「高齢者問題」として現れている。労働者の高齢化は、仕事の増減に対する対応の柔軟性を甚だしく低下させ、仕事がなくとも釜ケ崎に踏み留まらざるを得ない層を増加させる。また、これまで釜ケ崎と無縁に建設業界で働いて来た労働者の中でも、高齢により就労日数を減少せざるを得なくなった層が、アブレ手当てを生活費の補助とするために、釜ケ崎への移住を開始している。さらに、政府の高齢者対策の不十分さから、生きる手立てをわずかに釜ケ崎に求めて来る人々も一層増加する。それらの現象は、政府の高齢化対策対象年齢ボーダーライン問題の釜ケ崎集中化現象とも言うべきものである。釜ケ崎は今後より困難な課題を抱えることになると予想される。

 以上の認識に基づき、以下のことを要望し、誠意あり、且つ実のある回答を要請する。

A・長期的課題

@府・市連名で国に対し、「釜ケ崎総合対策に関する要望書」を提出されたい。

 本来、釜ケ崎日雇労働者の存在は、日本全体の経済や政府の政策に起因するものであり、大阪府・大阪市の二自治体だけが責任追求され、財政負担して対処しなければならないものではない。また、現行行政制度では運用上問題に対応しきれない面もある。よって、現状内での精一杯の問題解決へ向けての努力を前提としつつ、より根本的対処にむけて国に責任を取らせる要望書が提出されるべきである。

B・緊急課題

@日雇労働者の就労保障制度を確立されたい。

 日本社会に必要があって存在している日雇労働者の就労保障制度を早期に確立されたい。具体的には、すでに第一次石油危機当時より東京都で実施されている、公共事業への日雇労働者吸収制度ならびに福岡県のものを参考に、「あいりん職安」に紹介窓口を開設し、府・市発注の公共事業への日雇労働者就労保障制度を実施すること。

Aあいりん職安南分室の現在の職務の上に、次の機能を加えられたい。

イ・軽作業紹介窓口を開設されたい。

 軽作業紹介窓口は登録制、且つ輪番制とし、登録数に応じ最低二日に一度就労保障できるよう大阪府が府下自治体へ協力を要請し、求人数の確保に努めること。

ロ・分室敷地に高齢労働者支援センターを建設、以下の業務をおこなうこと。

 ○内職的共同作業場を設け、運営をおこなう。

 ○年金その他社会福祉制度活用についての相談業務。

  ○仕事以外での社会参加の可能性を広げるためのボランティア養成講座など、高齢労働者の能力拡充のための成人学級の運営。

B毎年、繰り返される梅雨時期(四月ー七月)と年末年始の仕事減少については、特出し(特別就労事業)をおこなうこと。

D健康保険(日雇特例被保険者)制度について

 イ・「みなし」適用における休業保障の等級を引き上げること。

E単身労働者用低家賃勤労者住宅を地区内あるいは隣接地に建設すること。

F大阪市更生相談所条例を見直すこと。

 施設収容第一主義を改め市更相相談受付者についても、簡易宿泊所を居所とした居宅保護の基準を加えること。

G「ホームレス・シェルター」を設置すること。

 緊急的に、南海電車天下茶屋線跡地に越年臨泊並のプレハブ二棟を建てること。

 設置にいたるまでは、現地野宿者援助活動団体に補助金をだすこと。

H「越年対策」のありかたを見直すこと。

Jなお一層各種工事への日雇労働者吸収を図るための努力をおこなうこと。

K現在多数の野宿者が存在することの行政責任について明らかにすること。


▲1999年3月1日から30日まで、大阪市庁での野営闘争

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