(2)野宿生活者支援法(案)
1.目的
本法は、野宿状態にあるものに対して、職と居住の安定を保障し、憲法25条の理念を現実化しようとするものであり、野宿生活者が野宿状態から脱することにより社会生活全般の安定に寄与することを目的とする。
2.定義
(1)本法でいう「野宿生活者」とは、失業・障碍・高齢・離婚・その他の理由により、安定した収入と居住空間を維持することが困難となり、公園・道路・河川敷などで生活を営まざるを得ない者をいう。
(2)本法でいう「支援」は、「野宿生活」の現状に対して行われるものであり、扶養親族の有無・過去の経歴・国籍等により制限されることなく行われるものである。
また、「支援」は、野宿生活者の人権と自己決定権を尊重した上で行う、食と居住空間の提供と安定した収入につながる職の提供を指すもので、野宿生活者の意志に反した現住地からの追い立て・強制施設収容を含むものと解されてはならない。
3.費用の負担
本法の目的を達成するために行われる事業の費用は、全額国庫負担とする。
4.事業の実施主体
事業の実施主体本法の目的を達成するための事業の実施主体は、左記に該当する地方自治体とする。
(1)野宿生活者が存在し、且つ、野宿生活者が行政窓口において保護申請をなしているにもかかわらず、現状法令を適用しての問題解決をなしえず、野宿生活者が存在し続けている地方自治体。
(2)野宿生活者支援団体が存在し、対策が要請されている地方自治体。
(3)その他野宿生活者支援事業の必要を認める地方自治体。
(4)事業の実施主体となる地方自治体は、事業計画の策定・実施のための機関として「野宿生活者支援センター」を設置しなければならない。
(5)事業計画は各自治体毎に策定するものであるが、次の各項目については必ず含めるものとする。
@野宿生活者からの相談があった当日から対応できる食と居住空間の提供事業
A野宿生活者が相談日から10日以内に就労可能な職業斡旋事業
B野宿生活者への医療相談事業
5.野宿生活者支援センターの構成
野宿生活者支援センターの構成は、当該地区の民生行政機関だけでなく、労働行政機関も参加するものとする。
また、野宿生活者支援団体が存在する地区においては、当該団体の参加を要請しなければならない。
野宿生活者支援センターは、事業計画と予算書を策定し、国へ提出することによって事業費の交付を受けるものとする。決算報告は母胎となる自治体へ行い、当該監査部門の監査を受けるものとする。
6.緊急対策
野宿生活者支援センターの発足と事業実施に至るまでの間、当該地方自治体は確認される野宿生活者に対応できる食と居住空間を確保し、提供することに努めなければならない。
また、本法目的達成を円滑成らしむるために、野宿生活者の人権について一般市民への啓発活動を行わなければならない。
7.市民互助活動の育成、社会的連帯意識向上のため、NPO法による法人格を取得している野宿生活者支援団体に対する法人の寄付は経費算入を認め、個人によるものは税額控除対象に算入するものとする。
8.所管それぞれに関わる部分で厚生・労働・自治・大蔵の各省庁が所管するものであるが、一体的実施を確保するために、総理府内に連絡調整機関を設け、実体的所管機関とする。