|輸出|燐寸業の昨今

   阪神地方より上|海|香|港|盂買其他へ向け|輸出する|燐寸の総量は

   去る三月中に大約三萬二千余函あり四月中には三萬六千余函の多き

   に及び今|春来漸次|輸出数量を増加し来りしが本月に入りて後は印

   度行|黄|燐|燐寸は彼の地商勢の不振なる為め|輸出の|註文大いに

   減じたれば当市諸工場中には|黄|燐|燐寸の製造高を減少したる向

   も少からずと雖も支那向は相応の注文あれば|黄|燐製を減少したる

   と同時に支那向安全製を増加したれば結局は差したる影響はなきも

   のゝ如し尤も以上の如き次第なれば本月中の|輸出数量は前月に比

   し或は多少の減額は免れざるべし又原料|軸木は産地北|海道の|暖

   気に向ひたる為め追々供給増加の摸様もありて品に依りて多少|低

   落したるものあり殊に原料諸薬品に引続き|廉価なる上に石|炭も三

   四円方を引下げたれば昨今の景況にては同業者は先づ概して好況の

   方にて先頃の不引合に比すれば多少|愁|眉を開ける由なり

   

   著者:大阪毎日新聞
   表題:輸出燐寸業の昨今
   時期:18980514/明治31年5月14日
   初出:大阪毎日新聞
   種別:マッチ