黄燐々寸の解禁

   兵庫大阪連合燐寸製造業者に於ては黄燐々寸製造の禁令を解除せら

   れんことを希望の余り遂に同組合より品川衛夫氏を総代とし先般来

   上京中なりし処愈よ今回其筋に於て許容せられ不日発表の運びに至

   るべきにより品川氏は一昨々日を以て帰阪されしが右の禁を解かる

   ゝは燐寸取締条例を以て発令さるべき都合のよし元来同条例は工務

   局長の発意にて商務局長の起草に関り其草案は十二条にて就中主な

   る個条は工場人家を距ること十間の地となし又商標は登録に限り其

   類を五種とし又黄燐製造は本規則発布の日より解禁し又工場の改造

   は満二ヶ年の猶予を与へられ又乾燥及び薬品室は煉瓦及び不《ひ

   ふ》燃品物にて構造すべきこと等なりしも品川氏上京中商務局長よ

   り同氏へ諮問の上右距程の十間を三間(但し外囲ひより三間引込の

   もの)とし又商標の五種を十五種とし改造二ヶ年の猶予を三ヶ年に

   規則の実施を六ヶ月後の夫々改むることゝしたる上内閣へ差出され

   し趣きなれば遅くとも二ヶ月内には発布さるゝならんと云へり又た

   同組合に於て希望なし居りし支那人の燐寸製造に制限を設けられん

   とのことも其筋の許容する所となり昨年中兵庫県知事へ外務省より

   其製造を禁止すべき旨の訓令を下されしと云へり因みに記す品川氏

   は本日神戸に至り大阪兵庫連合組合事務所にて同業者へ上京中の摸

   様を報告せらるゝ都合なるよし

   著者:大阪毎日新聞
   表題:黄燐々寸の解禁
   時期:18890407/明治22年4月7日
   初出:大阪毎日新聞
   種別:マッチ