名護町事件

    南区日本橋筋三丁目の不潔家屋は其の取払ひの期限も来年一月廿

   二日までにして最早眼前に迫りたるにぞ同所の地主家主等四十名は

   今より十分に準備を為し置き取払ひ済みとなりたる上は直ちに劇場

   を其の跡に建築し暫らくも其の地所を遊ばせ置かざる事にせんとて

   種々協議を遂げ居たれど是までは種々の苦情など起りし為め一向談

   しの纏まらざりしに昨今に至りて其の相談も漸やく一致したるを以

   て来月中旬には更に一大会議を開きて建築の方法資本金の募集方等

   を協議する筈なりと云ふ又右の如く同所の家屋取払ひも既に其期の

   近づきたれば同所に住居する貧民等は最早是れまでなりと断念せし

   にや昨今他町へ移転する者甚だ多く三丁目は勿論四丁目及び五丁目

   にても空家の増加すること夥多しきよし

   

   著者:大阪日報
   表題:名護町事件
   時期:18871023/明治20年10月23日
   初出:大阪日報
   種別:長町取払/