大坂府に於ては向に宿屋取締規則を発布して木賃宿の営業地を北
は上福島村羅漢前及び北野村綱曳天神以北鉄道一番踏切までの二ヶ
所と制限せしに付今度取払になるべき旧名護町辺の営業者は我一に
右免許地へ引越さんとし此程より続々地所及び家屋の借入に来る者
あれど右両村の地主及び家持連は名護町辺の木賃宿営業者などに地
所家屋を貸渡すは心よからずとていづれも迷惑がり既に上福島村の
如きは地主一同申合せ一切木賃宿等には地所家屋とも貸渡すまじと
の約束を堅めたる由なるが北野村の方は頃日毎夜四十余名の地主等
が集会の上たとへ我々地主一同に於て右等の申合をせるも従来の借
家人に於て彼れ木賃宿営業者と密に特約を結び同居若くは寄留等の
名義を以て同業を営まんとするが如き者なしとも渉られず若し左る
者ありとするも一々地主に於て右等の実際を発くことは到底なし得
べからざれば右免許地を一番踏切以北と改定なるやう其筋へ請願す
るの外なしとのことにて終に相談これに決し右四十余人の地主一同
より昨日其筋へ右の請願に及びたりといふ
大阪日報
明治20年7月31日
著者:大阪日報
表題:木賃宿の事
時期:18870731/明治20年7月31日
初出:大阪日報
種別:木賃宿