大阪府録事 甲第七拾五号

   長屋建築規則別紙の通相定本年七月一日より施行す右布達候事

   明治十九年五月十四日 大阪府知事建野郷三

   長屋建築規則

   第一条 二戸以上を一棟となし新設するもの及旧建物を区画し数戸

   に改造するもの或は旧建物に接続して一戸以上を増設するものにし

   て一戸の建家坪未満のものは総て此規則を遵守すべし(但一戸建の

   家屋と雖ども其建家坪八坪未満のものは尚此規則「第四条及第九条

   を除く」を遵守すべし)

   第二条 長屋を新設改造又は増設せんとするときは別紙第一号書式

   に準拠し絵図面相添所轄警察署へ願出許可を受くべし

   第三条 長屋落成のときは別紙第二号書式に準拠し所轄警察署の検

   査を乞ひ認可を受くるにあらざれば之れを使用するを得ず

   第四条 一棟の戸数は五戸以内たるべし

   第五条 建家の敷地は溝石の上端より高さ一寸五歩以上たるべし

   第六条 窓は一戸の四方中に於て少なくも二方に開設し其広さは建

   家坪面積の五分の一「建家坪一坪に付一尺方を八個四分五厘の割合

   にして其広さは幅三尺なれば高さに尺八寸強なるを云ふ」以上たる

   べし

   第七条 通路の広さは六尺以上たるべし

   第八条 裏長屋は表家を通過せず別に路次口を設くべし

   第九条 厠{}は少なくも二戸に一ヶ所以上を設くべし

   第十条 厠{}及芥溜を新設するものは其近傍自他の井戸を距るこ

   と一丈二尺以上たるべし(但井戸を新設するものも厠{}及芥溜を

   距ること此例に拠るべし)

   第十一条 厠{}に用ゆる糞壺は陶器「素焼と唱ふるものを除く」に

   して口の径二尺深さ二尺五寸以下のものを用ひ其周囲は厚さ二寸以

   上の叩き漆喰にすべし

   第十二条 床下の仕切壁は一方毎に其面積五分の一以上の空気窓を

   設くべし

   第十三条 建家の敷地より床板込の高さ一尺五寸以上たるべし

   第十四条 長屋に附属する下水小溝を設くべし其幅は六寸以上にし

   て自他の排水に害なく大下水溝渠に放流すべき構造をなし其勾配は

   百分の一「則一間に付六分」以上たるべし(但下水小溝の両側及底面

   は石又は瓦を以て構造し其間隙に煉漆喰を施すべし)

   第十五条 願書は総て正副二通を製し差出すべし

   第十六条 此規則第二条及第三条に違背するものは刑法第四百二十

   六条の刑に処せらるべし

   第十七条 此規則は大坂堺奈良の市街及該市街と人家接続の町村に

   於て施行するものとす

   (第一号書式)

   長屋新設(増設)(改造)願

   今般何区郡何番地に於て長屋新設(増設)(改造)致度に付御許可被成

   下度別紙絵図面相添此段奉仕願候也

    何区郡何番地住或寄留

    何府県(寄留なれば原籍国郡区町村名番地を爰に記す)族籍

    職業

    年 月 日 何 誰 印

    大阪府何警察署御中

    備考

   一絵図面は東西南北の方位を示し敷地及建家共四方の間数を揚げ且

   一棟及一戸の区別をなし尚一戸中室数を区画し其畳数をも記載すべ

   し

   (第二号書式)

   長屋新設(増設)(改造)検査願

   何年何月何日御許可を得候長屋新設(増設)(改造)落成致候に付御検

   査の上御認可被成下度此段奉仕願候也

    何区郡南町村何番地住或寄留

    何府県(寄留なれば原籍国郡区町村名番地を爰に記す)族籍

    職業

    年 月 日 何 誰 印

    大阪府何警察署御中

   

   著者:朝日新聞
   表題:大阪府録事 甲第七拾五号
   時期:18860514/明治19年5月14日
   初出:朝日新聞
   種別:長屋建築規則/法令