四区長は一昨日も昨日も皆当府庁に出頭し四区一郡の書記即ち夫の
四区一郡町村連合会の議案を起草せし人々は昨日東区役所に出頭し
孰も何事をか協議せられたりといへり右協議せられし事の何なるか
は今遽に知難けれども或人の評する所に拠れば此程府会議事堂に於
て開きたる四区一郡町村連合会は生憎其議場の広くして意外にも三
四百の傍聴人を容れ傍聴人中若し原案長町不潔家屋移転の事を可決
したらんには直ちに議員に向ひて之が非を論破せんものと心に期す
る者多きが如くに察せらるゝより原案廃棄は傍聴人の輿論にこそあ
らめと且恐れ且信じ心の中にては原案を賛成する議員半数以上を占
めたるにてありながら其賛成議員中傍聴人の顔色を窺ひて一言も可
否を謂はずして廃棄説を賛成せし人さへあり偖こそ原案は遂に廃棄
せらるゝに至りたれど疑はるゝ模様なきにあらざるにぞ猶又議会の
組織を改めて再び同様の議案を下附せんとせらるゝ協議なるべしと
の事なり此評や或人が想像上より下せるものなるべくして固より当
れりとすべからざれども凡そ議員として人民の輿論を代表すべき議
場に立つ者が万々一にも大体の利害を思はずして却つて一局部の輿
論を顧み徒らに其場のがれの賛成をなすが如きことありとせんか誠
に嘆息すべきの至にこそ。
著者:朝日新聞
表題:四区一郡町村連合会
時期:18860911/明治19年9月11日
初出:朝日新聞
種別:長町取払/