7、昭和20年勅令第542号に基く労務充足関係  

厚生省令第41

昭和20年勅令第542号に基く労務充足に関する件、左の通定む

昭和201016日   厚生大臣 芦田 均

1條 連合国最高司令官の為す要求に係る労務の充足に関する命令は、本令の定むる所に依る

第2條 地方長官(東京都に在りては警視総監以下同じ)、必要ありと認むるときは、其の指定する職業に従事する者又は其の職業を罷めたる日より3年を経過せざる者に対し、其の氏名、居住の場所職歴其の他必要なる事項を、日時を指定し其の居住の場所の所轄勤労署長え届出づべきことを命ずることを得

地方長官、必要ありと認むるときは、前項の者に対し、同項の事項中居住の場所等に付変更ありたるときは、14日以内に前項の勤労署長に届出を為すべきことを命ずることを得

第3條 地方長官は、労務充足を迅速且的確に遂行する必要ある場合に於ては、充足せらるべき従業者に付、組織的出動に関し、予め必要なる措置を為すべきものとす

地方長官、前項の措置実施の為必要ありと認むるときは、前項の従業者に対し、其の指定する団体に所属すべきことを命ずることを得

前項の命令は、所属令書の交付に依り之を行ふものとす

1項の命令を受けたる者は、其の従業に関し同項の団体の長の指示に従ふべし

第4條 地方長官、労務充足を迅速且的確に遂行する必要ありと認むるときは、充足せらるべき従業者をして、其の指示する業務に従事すべきことを命ずることを得

第5條 地方長官、前條の従業を命ずべき者を決定したるときは、之に従業令書を交付し、従業に関し必要なる事項を指示すべし

前項の従業令書の交付を受けたる者は、同項の指示に従ふべし

第6條 所属命令又は従業命令の変更及解除は、令書に依り、地方長官之を行ふものとす

第7條 地方長官、必要ありと認むるときは、第3條第2項の団体の長又は第4條の命令を受けたる従業者を使用する事業主に対し、第3條第2項又は第4條の命令を受けたる従業者の使用、賃金、給料其の他の従業條件又は扶助に関し、命令を為すことを得

第8條 地方長官は、勤労署長をし、て本令の施行に関する其の事務の一部を分掌せしめ、又は市町村長(東京都の区の存する区域、京都市、大阪市、名古屋市、横濱市及神戸市に在りては区長)、若は之に準ずべきものをして、本令施行に関する事務の一部を補助せしむることを得

第9條 第2條、第3條第2項、第4條若は第7條の規定に依る命令又は第3條第4項若は第5條第2項の規定に違反したる者は、3年以下の懲役、若は、禁鋼又は5千円以下の罰金に処す

第10條 法人の代表者又は法人若は人の代理人、使用人其の他の従業者の法人又は人の業務に関し第7條の規定に依る命令に違反したるときは行為者を罰するの外其の法人又は人に対し前條の罰金刑を科す

附則

本令は公布の日より之を施行す

厚生省発勤第224号

昭和201024日        厚生次官

各地方長官殿

昭和201016日 厚生省令第41号 事務取扱要領に関する件

昭和20年勅令第542号に基く労務充足に関する厚生省令第41号、1016日公布相成候処、本令は現情勢下、勤労行政上緊要已むを得ざる場合に発動すべきを目途として制定せられたるものに有之、之が運用に付ては、一般国民をして徒らに義務を荷負せしめざる様、別紙要領に依り、特に愼重に取扱相成度、及依命通牒候也

昭和20年勅令第542号に基く労務充足に関する 昭和201016日厚生省令第41号 事務取扱要領

1 第1條関係

本省令は、昭和20年勅令第542号に根拠を有し、連合国軍最高司令官の為す要求に係る労務を迅速的確に充足せんが為、制定せられたるものにして

1、連合国軍最高司令官の為す要求に係る労務とは、連合国最高司令官より直接要求せられ又は要求に係る事項を実施する為、充足するを要する労務の謂ひなること

2、各地域に於ける、連合国占領軍指揮官の指示することあるべき労務供出の要求は、前項に記載する連合国軍最高司令官の為す要求と解すべきに付、為念

3、差当り本令を発動することを得べき対象事項は左の通とすること

1、港湾荷役

2.船舶の建造又は修理

3.道路、鉄道、埠頭其の他の施設の修理 

4、連合国占領軍用の住居及其の他の関連施設の建造

2 第2條関係

本規定は、現実に要求せられ又は要求を予想せられ、且つ、之が労務の所在、確実に把握し難く、充足困難なりと認めらるる職種の、的確なる把握並に之が移動の状態を知悉せんとする趣旨にして

1、本規定に依り、地方長官の指示すべき職種は、第13に該当する事業に必要なる、概ね左の職種中、其の充足困難なりと認めらるゝものに限り、必要の都度之を行ひ、濫りに多数の職種を指定するが如きを避くること

197日発勤第199号通牒別表記載職種

2、鋲打工、製罐工、鉄木工、銅工、艤裝工、木工、造舟工、塗裝工

3、其の他地方長官の必要と認むる職種

2、届出の様式は特に指示せざるも、難解に亘らず極めて簡易なるものを適宜定むること

3 第3條関係

本規定は、労務の充足をして、要求の諸條件に迅速且つ的確に合致せしむる為、供出の事前に於て、予め組織的に充足準備態勢を採らんとする趣旨にして

1、指定する団体に所属せしむるとは、充足せらるべき従業者をして、本件労務の提供に付、当該団体長の支配関係の下に従属せしめ置くことを意味し、其の関係は、特に雇雇関係を存在せしむることを要件とせざるものなること

2、所属命令を受けたる場合に在りても、本規定に依る所属団体長の指示なき限り、当該従業者の雇入、就職は、自由にして何等の束縛を受けざるも(勤労配置規則第6條の適用を受くべき場合に在りては之を受くるを要すること)、本規定に依る所属団体長の指示ありたるときは、遅滯なく指示に従ひ、従業するの義務を有するものなること

3、所属命令は、主として土建其の他日雇労務者等組織的出動を適当とする労務者に対し、之を発するものとし、財団法人労務協会会員たる者及会員たらざる者の中より、必要と認むる員数に限定し、右以外の職種の者に付ては、必要已むを得ざる場合に限り之を為すこと

4、指定すべき団体は、概ね左の区分に依り選定し、別紙様式により指定通知を以て之を指定すること

1、土建荷役其の他日雇労務に付ては、財団法人労務協会都道府県支部又は其の分会(労務協会設立なき場合は都道府区労務報国会又は其の支部)

2、其の他の職種に付て必要ある場合は、庁府県又は市町村とすること

5、所属せしむべき期間は、原則として3月以内とし必要ある場合は之を更新すること

6、指定団体をして適宜なる様式に依り所属員名簿を作成備付けしめ、其の状況を明確ならしめ置くこと

7、所属令書及変更並に解除令書は別紙様式に依ること

4 第4條及第5條関係 

本規定は、第3條の規定に依り、団体に所属せしめ居らざる者に付、之が供出の完遂を図らんとする趣旨にして

1、従業命令は、指導勧奨に依りては其の目的を達すること能はざる場合に限り発動すべきものにして、濫りに之を用ふるが如きを避くること、尚、本命令は、所属命令と異り、個人的出動を適当とする労務者に対し之を為すべきものなること

2、従業命令を受けたる者を使用する者に対しては、事前に充分本趣旨を徹底せしめ、特に之が労務管理に遺憾なきを期せしむること

3、従業命令は、雇用関係契約締結を強制するものに非ざるも、賃金等労務管理上必要なるに付、雇用関係を締結しむること

4、従業命令書及変更並に解除令書は別紙様式に依ること

5 第8條関係

本規定は本件事務処理を迅速ならしめんとする趣旨にして

1、所属令書、従業令書及変更並に解除令書の交付は勤労署長をして分掌せしむること

2、右事務にして必要ある場合は其の一部を市町村長をしを補助せしむること

(様式略)

勤発第950号 昭和20915日     厚生省勤労局

長地方長官殿(東京都に在りては警視総監)

連合軍に対する労務供出に関する給与の支払等に関する件

 連合軍に対する労務供出に関する給与の支払等に関しては、終戦連絡委員会と協議の結果、別紙の通り決定相成候條、之が実施に当りては、関係方面へ指導周知方徹底し、萬遺憾なきを期せられ度

連合軍に対する労務供出に関する給与の支払等に関する件

1、労務者に対する賃金は、請負業者等介在する場合に付ては、当該業者より、其の他の場合に於ては、終戦連絡地方事務局(又は地方庁)に於て、之が支払ひを為すものとす、尚、請負業者等に対する請負料の支払は、終戦連絡地方事務局(又は地方庁)より之を為すこと

2、労務者に対する賃金の支払は、一般的慣習に依る支払時期に之を為し得る如く措置すること

3、賃金の額は、其の地方の公定賃金協定賃金従前の收入等に依り、成るべく統一的に定むること

出来高払を可とするものに対しては、出来高払をも認むることとし、此の場合、単価決定等を為さしむる為、適当なる指導者を労務者と共に派遣すること。

4、労務者に対する食糧加配其の他作業用品の支給に付、現地に於て特段の措置を講すること

5、就業中の死傷者に対しては、工場法、労働者災害扶助法等に準ずる扶助を賃金支払責任者に於て為すこと

但し、請負業者に雇用せらるる労務者に在りては、請負業者に於て扶助の責に任ずること

勤発第1079号 昭和201026日 厚生省勤労局長

各庁府県長官殿(東京都に在りては警視総監)

連合軍に対する供出労務の給与に関する件

標記の件に関しては、昭和20915日勤発第950号を以て通牒致候処、今回常用者の給与額等に関し、終戦連絡事務局及大藏省関係官と協議の結果、左の如く決定相成候條、之が実施に遺憾なきを期せられ度

1 常用者の給与

1、給与は、月給制(試用期間中其の他必要ありと認めたる場合は日給月給制に依ることを得)とし、別紙「連合軍供出常用者給与基準」記載の最低額、最高額の範囲内に於て当人の技能、経験、人物に応じ決定すること

2、右の個人給与決定機関は、供出労務募集担当当局(地方庁等に於て給与決定機関を別に定めある場合は其の機関)とするも、必要に応じ之を供出せる設備の管理者等、直接使用人の管理をなすべき者に委任することを得ること

尚、別紙「連合軍供出常傭者給与基準」の最高額を超え給与額を定むる要ある場合は、其の理由を具し終戦連絡中央事務局又は地方事務局の査定を求むること

3、月給以外の手当(早出残業手当、夜勤手当、家族手当)は之を支給せざること

2 日雇労務者の給与  

1、賃金の額は、公定賃金又は協定賃金に依るを原則とするも、労務需給等の地方乃至時期的特殊事情を勘案し、必要ある場合は、公定賃金又は協定賃金を超ゆる賃金を臨時的に定むるを得ること

右の連合軍供出労務賃金は、弾力的に之を決定遵用し、労務供出に支障なきを期すると共に、労務供給事情の好転に応じ、之を公定賃金又は協定賃金に復帰せしむること  

2、関係地方間に、著しき不均衡を生ぜざる様、関係当局間に緊密なる連絡を保ち、賃金の調整を計ること

右の場合、各地方の特殊事情を充分考慮すると共に、単に貨幣賃金のみを比較することなく、食糧其の他物資給与の有無量を考慮に容るること

3、連合軍供出労務者に対しては、食糧其の他の物資給与を行ひ、賃金のみの引上げは努めて之を避くること

連合軍供出常雇者給与基準

職種       給与額(月額単位円)       備考

書記        200350      英語を解する者

〃         150250      英語を解せざる者

英文たいびすと   200400

邦文たいぴすと   100200

英文速記係     300500

案内人       200350

交換手       200300     英語を解する者

〃          80150     英語を解せざる者

下男       150200

下女       100150

はうすきーぱー  200500     英語を解する者

給仕人       50100    女

家政婦      150200

守衛       150200

雑役(掃除洗濯等) 100200    男女

雑役監督     150250

料理人      300600

料理人補助    100300

通譯       200300

飜譯係      250400

技能工      200400

管理人      500800

副管理人     300500

技術者      500800

註 本表に記載なき職業は之に類似する本表記載職業に対する額に依ること

厚生省発勤第218号 昭和201016日 厚生次官・軍事保護院副総裁

各庁府県長官・各地方鉱山局長 殿

応召又は入営中の助労者に対する給与支給に関する件    

標記の件に関し、別紙の通決定相成候條、各種団体、工場、会社等に対し、右の趣旨に依り御指導相成度、此段、及通牒候也

(別紙) 召又は入営中の勤労者に対する給与に関する件(昭和201015日次官会議決定)

在外地部隊の内地帰還は、今後相当長時日を要するものと予想せらるるを以て、応召中又は入営中の勤労者に対する給与に関しては、左の措置を講ぜしむる如く指導し、留守家族の生活を保証するものとす

1、今後存続すべき団体、工場、会社等に於ては、本人の帰還迄従来の給与(応召手当、入営手当等)の支給を続行すること

経理上其の他已むを得ざる事情に依り、従来の給与額の変更を要する場合に於ては、可及的最少限度の滅額に止むること

1、廃止又は解散する団体、工場、会社等に於ては、一般退職者に準ずる退職時の給与(退職手当、特別慰労金)等を支給すること

存続会社等にして規模を著しく縮少するに依り已むを得ず応召中又は入営中の勤労者を退職せしむる場合、退職者の数を可及的最少限度に止むると共に退職者に対しては前項により給与すること

厚生省発動第199号   昭和2097日 厚生省勤労局長

庁府県長官・地方総監殿              

連合国軍進駐に伴ふ労務確保の準備措置に関する件 

連合国軍進駐に伴ひ、諸般の設営及施設修理建造等の為、連合国軍最高司令官より終戦連絡中央事務局を通じ、之が所要労務者の供給に付、準備方要求有之たるに付、左記事項御了知の上、至急準備を講じ置き、事に臨み適時、適確、所要に応じ得る様、何分の御手配相成度、此段、依命及通牒候也

1、準備を要する労務者の範囲は、左の通にして、其の内 (い)及(ろ)の具体的職種に付ては、判明次第通牒するも、不取敢、宿舍、電気、瓦斯、上下水道、暖房等連合国軍進駐に伴ひ必要なる設営及道路、鉄道、埠頭其の他の施設の修理並各種荷役、運搬作業等に要するものとす

参考

(い)一般労務者

(ろ)技術的労働及半熟練労働

(は)荷扱及仲仕

(に)道路、鉄道、埠頭其の他施設の修理

(ほ)連合国占領軍用の住居及其の関連施設の建造

(右は連合国軍要求労務者の範囲なり)

2、右要求に当りては、連合国軍当該地区指揮官より必要の都度、終戦連絡中央事務局現地機関を通じ関係地方総監府又は庁府県に要求する様申入しあるも、直接貴庁に対し労務供給方要求ありたる場合は、一応之を受理したる後、直ちにその旨及要望事項等あらば之を添へ、終戦連絡中央事務局現地機関に通報すること

作業場所、作業時間、職種(技倆の程度)別所要人員は其の際明示さるるものなること

3、庁府県は別表(1)職種該当者に付適時適確なる供出に備ふる為、予め左記に依り之が給源を確実に把握し置くこと

1)土建、荷役、輸送労務者に付ては、労務報国会等を督励し、当該労務者の登録整備に努めしめ、常に其の現況を明かにし置くこと

特に荷役、輸送労務者に付ては、日通、港運、自動車統制会社其の他関係組合の積極的なる協力を求むること

2)技術者に付ては、土建関係会社、関係組合等の積極的協力を求むるの外、科学技術者申告及労務手帳登録カードをも活用し、該当者の所在を確認し置くこと

4、前号の措置に基く出勤予定者に付ては、出勤の趣旨を充分徹底せしめ、指示あり次第所定の日時、場所に遅滯なく参集する様、予め充分留意せしめ置くこと

尚、就職、就労者の為現住地を離れんとするときは、其の旨予め関係労務報国会支部、組合、会社、請負業者等に届出せしむる等、適当の措置を講じ、その移動状況を明にし置くこと

5、出勤の趣旨の徹底に当りては、之が要求に応ぜざるを得ざる事情を充分了解せしめ、其の愛国心に訴ふることにより、苟も出勤を拒否するが如きことなき様特に指導すること

6、連合国軍は、本労務の最高能率発揮の状態に於て労務者の統制保持を要求し居るに付、出動は相当数集団的に為さるの見込なるを以て、出動は組織に依らしむることゝし、此の為、労務報国会員に在りては、都道府県労務報国会勤労挺身隊整備要綱に基き、他の労務者に在りては、右要綱に準拠し、予め必要なる隊組織を整備し置くこと

前項隊の組織に当りては、作業の特性に鑑み、身体強健にして技倆優秀なる者を以て之を編成する如く留意すること

7、要求数又は労務者の内容に依り、当該庁府県に於て、給源の状況よりして其の要求を充し難きときは、地方総監府に稟伺し、他庁府県より応援を求むること、此の場合、地方総監府に遅滯なく適当なる調整をなすこと

8、連合国軍の要求は、明確なる日時を指示し、之が遅延を許さざるに付、此の旨了知のこと

9、諸給与及支払責任者に付ては、別途指示すべきも、既に要求に基き出動又は出動せしめんとする事態にあるときは、終戦連絡中央事務局現地機関其の他の現地日本側適当機関を通じて、当該地方に於ける同種作業に対する公定賃金、協定賃金又は従前収入額を標準として、遅滞なく支払を受くる様措置すること」

10、庁府県は、別表に依り本月20日現在を以て、供出見込み数を本月25日までに厚生省及び地方総監府に報告すること

連合国軍進駐関係労務者供出準備状況報告       県

(参考)

帝国憲法第8条第1項に依り「ポツダム」宣言受諾に伴ひ発する命令に関する件

(昭和20920日・勅令542号)

政府は、「ボツダム」宣言の受諾に伴ひ、連合国最高司令官の為す要求に係る事項を実施する為、特に必要ある場合に於ては、命令を以て所要の定めを為し、及、必要なる罰則を設くることを得

附則

本令は公布の日より之を施行す

昭和20年勅令第542号(「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ発する命令に関する件)施行に関する件

(昭和20920日・勅令第542号)昭和20年勅令第5425号に於て命令とは勅令、閣令又は省令とす

前項の閣令及省令に規定することを得る罰は、3年以下の懲役又は禁錮、5千円以下の罰金、料及拘留とす

附則

本令は公布の日より之を施行す