6、職業紹介業務規程関係
●厚生省告示 第116号
職業紹介業務規程、左の通定め、
昭和16年12月厚生省告示第588号職業紹介規程及昭和17年2月厚生省告示第4 4号は、之を廃止す
昭和20年10月10日 厚生大臣 芦田 均
職業紹介業務規定
第1章 総則
第1條 職業紹介法に依り、政府の管掌する職業紹介事業の業務に付ては、別に定むるものを除く外本規程に依る
第2條 職業紹介事業は、国民の完全就職を目途とし、求人者並に求職者の個別的事情を考慮の上、労務の適正なる配置を図るものとす
第3條 勤労署の職員にして、職業紹介に関する事務に従事する者は、勤労署の利用者に対して懇切丁寧を旨とし、公正且迅速なる取扱を為し、又、職務上聞知せる身分又は秘密に属する事項を故なく他に漏洩すべからず
第2章 求人
第1節 申込の方法
第4條 求人の申込は、従業者の就業地を管轄する勤労署に之を為すべし、但し、特別の事情ある場合は、求人者の住所又は事務所所在地を管轄する勤労署に申込むことを得
第5條 求人者求人の申込を為さんとするときは、本人又は其の代理人出頭し、勤労署の交付する所定の求人票に所要事項を記載し、之を為すべし、但し、求人者若は其の代理人出頭し難き場合、又は、急を要する場合に於ては書面又は電話を以て申込むことを得
勤労署、必要ある場合、求人者に対し、前項の外求人に関し必要なる書類の提出を求むることを得
第2節 申込の時期
第6條 求人の申込は、成るべく其の紹介期限前、相当期間を置き之を為すべし
第7條 左の各号の一に該当する求人に付ては、必要に依り、其の申込の時期を指定することあるべし
1 新規国民学校修了者を雇入れんとするもの
2 季節的に従業者を雇入れんとするもの
3 其の他必要と認めたるもの
第3節 申込の有効期間
第8條 求人の申込は、紹介期限の特定せるもの其の他特に必要あるものを除くの外之を受理したる日より翌月末日迄の間有効とす
第4節 申込の変更、不受理及取消
第9條 勤労署、必要ありと認むるときは、求人の申込の員数、募集希望地域、紹介期限等に付指導を加ふることあるべし
第10條 求人の申込内容、法令に違反するとき若は著しく不適当なるときは之を愛理せざるものとす
求人の申込を受理したる後と雖も、前項の場合に該当するに至りたるときは之が受理を取消し其の旨求人者に通知するものとす
第11條 求人者、求人の申込を為したる後、其の内容を変更せんとするとき又は申込を取消さんとするときは直に其の旨申出づべし
第3章 求職
第12條 求人の申込は、成るべく求職者の居住地を管轄する勤労署に、本人出頭し、勤労署の交付する所定の求職票に所要事項を記載し之を為すべし、但し、勤労署に出頭し難き場合に於ては、居住地の市区町村長又は連絡委員に、之が取次を依賴することを得
市区町村長又は連絡委員、前項の取次の依賴を受けたるときは、速に所轄勤労署に之を取次ぐべし
第13條 勤労署、必要ありと認むるときは、求職者に対し、其の就職希望先、就職希望地域等に付指導を加ふることあるべし
第14條 第5條第2項、第8條、第10條及第11條の規定は求職の申込に之を準用す
第4章 連絡
第15條 勤労署、受理したる求人の申込にして、自庁府県内の他の勤労署管轄区域より従業者を雇入れんとするもの又は自署管内に於て斡旋困難なりと認むるものに付ては、速に自庁府県内の適当と認むる勤労署に直接連絡すべし、但し、数勤労署の管轅区域に亙り多数の従業者を雇入れんとするものなるときは、所轄庁府県に其の処理状況を報告すべし
他庁府県府内より、従業者を雇入れんとするものに付ては、所轄庁府県に連絡すべし、但し、30人未滿の従業者を雇入れんとするものなるときは、当該勤労署に直接連絡することを得
第16條 前條第2項の連絡を受けたる庁府県は、速に適当と認むる庁府県に之を連絡すべし、但し、求人の内容特に重要なりと認むるもの、其の他、必要ありと認むるものに付ては、予め厚生省の指揮を承くべし
前項但書の場合に於て、急を要し指揮を承くる暇なきときは、直に連絡の上其の処理状況を厚生省に報告すべし
第17條 前項の連絡を受けたる庁府県は、速に適当と認むる勤労署に之を連絡すべし
第18條 第7條の規定に依り、申込の時期を指定せる求人の連絡に付ては、別に之を定むることあるべし
第19條 勤労署、其の管轄区域外に就職せんとする求職の申込を受理したるときは、速に適当と認むる勤労署に之を連絡すべし、但し、求職者、多数に上り又は特に重要と認むるときは、予め所轄庁府県報告すべし
第20條 連絡は、求人票又は求職票の副本に依り之を為すべし
第21條 勤労署、求人又は求職の連絡を受けたるときは、直に其の見込状況を所轄庁府県(直接連絡を受けたるときは連絡を発したる勤労署)え通報し、且、取扱終了と同時に其の処理状況を、右区分に従ひ、所轄庁府県又は勤労署に通報すべし
前項の通報を受けたる庁府県は、速に関係庁府県に之を通報すべし
前項の通報を受けたる庁府県は、速に管内の関係勤労署に之を通報すべし
第22條 勤労署、既に連絡を為したる求人に付、第10條第2項に依り取消を為したるとき、又は、第11條の変更又は取消の申出を受けたるときは、直に電信、電話又は文書に依り之を連絡先に通報すべし
既に連絡を為したる求職に付、第14條の規定に依り求職の申込を取消し、又は、其の内容の変更若は申込の取消の申出ありたるとき亦同じ
第5章 求人又は求職の開拓
第23條 勤労署は、常に其の管内に於ける労務需給の状況を的確に把握すると共に、特に求人の積極的開拓及必要に応し求職の開拓に努むへし
第6章 紹介
第24條 勤労署は、傷痍軍人、復員軍人其の他、特別の事情ありと認むる求職者に付ては、他に優先して紹介することを得
第25條 勤労署、求職者を求人者に紹介せんとするときは、求職者に紹介状を交付すべし、但し、勤労署、求職者を一定の場所に集合せしめ、求人者をして銓衡せしむる等の場合に在りては、之を省略することを得
第26條 求職者、前條の紹介状の交付を受けたるときは、紹介せられたる求人者に之を提示すべし
第27條 求人者、求職者の紹介を受けたるときは、遅滯なく其の採否其の他の事項を、勤労署に報告すべし、但し、日雇労務者の紹介を受けたる場合は此の限に在らす
第28條 勤労署は、求人者の行ふ銓衡に立会ひ、又は、必要なる指示を為することあるべし
第29條 勤労署は、必要に応じ、求人者より求職者の銓衡の委任を受くることを得
第30條 勤労署、其の受理せる求人又は求職の申込に対し、紹介を為すこと能はざりし場合は、其の有効期間終了に際し、求人者及特に必要と認むる求職者に対し、之が処理状況を通報すべし
第7章 職業の相談及補導
第31條 勤労署は、職業(自営業開業を含む)に関する指導を受けんとする者に対しては、職業の相談其の他、必要なる啓蒙を為し、適当なる斡旋を為すものとす
第32條 勤労署は、職業選択に関し、指導を受けんとする者に対しては、其の身体個性家庭事情等を考慮すると共に、職業の特質及将来性就業場所其の他求人事情等を斟酌して、適職選定の相談に応ずるものとす
第33條 勤労署は、第31條及前條に依る職業相談の顛末を、所定の職業相談票に記載すべし
第34條 勤労署は、必要に応じ、其の紹介に依り就職する者に対し、其の赴任に関し必要なる斡旋を為すべし
第35條 勤労署は、其の管内に就職せる者に対し、必要なる補導を行ふものとす
●厚生省勤発第1100号
昭和20年11月14日 厚生省勤労局長
各庁府県長官殿
職業紹介業務規程の施行に関する件
11月10日厚生省告示第116号を以て職業紹介規程を廃し、新に職業紹介業務規程を制定、即日施行相成候処、右は戦争終結に伴ひ、職業紹介事業より戦時的色彩を一掃し、平和国家建設の線に沿つて、国民の完全就職を図らんとするものに有之候、に付ては、左記御了知の上、別紙要領に依り、業務の運営に遺憾なきを期せられ度
記
1、職業紹介業務に携はる職員の執務態度、及、心構等に付ては、充分考慮を払ひ、民衆のよき相談相手たらしむる様指導すること
2、庁府県及勤労署に於ては、職員の実務修得に付特に留意し、業務運営上の相互研究を為さしむるは勿論、必要に応じ、定期又は臨時に講習会研究会等を開催すること
3、勤労署は、管内求人者及求職者に対し、今回制定せられたる業務規程の内容及趣旨を急速に理解せしむる為、必要なる措置を講ずること
4、勤労署は、絶えず管内の産業事情、失業状況等の調査を行ひ、常に其の労務需給の状態を把握し置くこと
5、庁府県及勤労署に於ては、予め月間又は年間行事を定め、諸般の業務を計画的こ遂行すること
6、勤労署は、署内の人的配置及設備の改善に付、特に左の事項に留意すること
(い)署内の人的配置に付ては、窓口に重点を置き、有能練達の職員を配すること
(ろ)所内の設備は、求人者及求職者本位に改善し、外来者に対し明朗な気分を与ふる様工夫を凝すこと
7.勤労配置規則第10條及第11條の届出又は報告を受理したるときは、遅滯なく、解雇に因り失業すべき者の職業紹介に関し、臨機の措置を講すること
8、業務規程に基く諸票並に諸通報様式は、別途指示ある迄従来のものを使用すること
職業紹介業務規程事務取扱要領
第1 総則に関する事項
1、職業紹介業務規程(以下規程と名す)第1條の「別に定むるもの」とは、新規国民学校修了者、石炭季節労務等の職業紹介要領を予想し居るものなること
第2 求人に関する事項
2、求人申込を為し得る者の資格及求人申込の時期に関する従来の制限を撤廃し、規程第7條に依り申込の時期を指定せらるる場合の外、何人と雖も隨時求入申込を為し得ることを原則としたること
3、規程第4條の「特別の事情ある場合」とは、概ね左の如き場合なること
い、数勤労署又は数庁府県の管轄区域に亘り、支店又は出張所を有する求人者が、支店又は出張所に於て人事を取扱ひ居らざる為、本店に於て一括申込を為すを便宜とする場合
ろ、求人者が、勤労署の管轄区域を異にする地に、住所と事務所を有し、事務所に使用する従業者の求人申込を、住所地を管轄する勤労署に為すを便宜とする等の場合
は、船員、漁夫の如く海洋にて就業する場合
4、勤労配置規則第4條に依る届出に際し、勤労署の紹介を希望する場合に於ては、新に求人申込の手続を省略し、右の届出を以て本規程に依る求人申込ありたるものとして処理すること
5、代理人より求人の申込ありたる場合は、求人者との関係を充分確め、取扱上遺漏なきを期すること
6、規程第8條に依り、未充足のまま有効期間の満了せる求人の申込は、求人者の意向を徴し、未充足数に付期間を更新する等便宜の取扱を為すこと
7、規程第9條に依る指導は充分求人者を納得せしむる様之を行ふこと
8、規程第10條に関しては特に左の諸項に留意を要すること
い、工場法、工業労働者最低年令法、鉱夫就業扶助規則、兒童虐待防止法等に違反することなきや
ろ、藝妓酌婦其の他之に類するものの求人にあらざるや
は、作業内容雇雇條件等著しく不適当にあらざるや
第3 求職に関する事項
9、勤労署現に、就職中の者より求職の申込を受けたる場合は、充分其の求職事由を調査し、妄に就職先の移動を為さしむるが如きことなき様留意すること
10、求職票には、適宜の欄に傷痍軍人、復員軍人、戦没軍人遺族、徴用被解除者、戦災者、引揚民、在外邦人家族等の区別を表はす符号等を附し、爾後の諸取扱に便ならしむること
11、求職態度の不真面目なる者、求職意志の不鮮明なる者、漫然と事務方面を希望する者、海外よりの復員者の引揚民等にして内地の事情に疎き求職者等に対しては、愼重に職業相談を為すこと
12、規程第14條に関しては第2の6、7、8に記述せる事項に準じたる取扱を為すこと
第4 連絡に関する事項
13、規程第15條第1項但書の場合とは、概ね50人以上の従業者を2以上の勤労署(自署を含む)の管轄区域より雇入れんとする場合なること
14、規程第15條第2項の30人とは、求人申込総数を指名するものにして、一勤労署当りの連絡数を謂ふものには非ざること
15、規程第16條第1項に依り、厚生省の指揮を受くべき場合は、連絡すべき庁府県相当広汎に亘り、且、特に緊要なるものなること
16、規程第15條第1項に依る庁府県内の連絡は、能ふ限り庁府県の主宰を以て、定例的に管下各勤労署の求人求職交換会を実施する等、之が有効且迅速なる運営を期すること
17、規程第19條伹書の多数とは、概ね30人以上の謂なること
18、求人連絡には、なるべく求人要項相当部数を添附すること
19、求職連絡には、なるべく求職者より履歴書(必要ある場合は寫真戸籍謄抄本)の提出を求めて之を添附すること
20、連絡を為す場合は(連絡)なる文字を朱書すること
第5 求人又は求職の開拓
21、求人開拓は今、後勤労署の最も主要なる事務となるべきを以て、活動の主力を之に注ぐこと
22、求人開拓は、常時之を実施し、之が為專務職員を置き、又は、職員をして地区別に分担せしむる等により、求人者の信賴を得る様努むること
23、求人開拓は、自管内雇用主に対し之を為すを原則とするも、特別の縁故其の他の事由により開拓の見込確実と認めらるる場合に於ては、所轄勤労署の諒解の下に他管内雇雇主に対し之を為すは妨げなきこと
第6 紹介に関する事項
24、紹介に当りては、求人者の意向及求職者の技能程度、経歴、身体状況、性質、家庭事情、希望報酬等を愼重勘案の上、的確なる成果を得る如く之を行ふこと
25、規程第24條に依り、第3の10に列挙せる求職者に関しては、優先紹介を原則とするも、各求職者の家庭事情により緩急を制するの考慮を払ふこと
26、出頭せる求職者に対し、紹介を為すこと能はざる場合と雖も、徒に失望落膽せしむるが如き事なき様指導すること
27、規程第25條に依り、求職者に紹介状を交付する場合は、求人者の住所(所在地)道順等を詳細懇切に指示し、必ず本人出頭の上求人者と面接する様指導すること
28、規程第27條に依る採否其の他の報告は、必ず之を励行せしめ、特に不調の場合は其の理由を能ふ限り具体的に報告せしむること
29、規程第29條に依り、銓衡の委任を受くる場合は、求人者と事前に充分打合を為し、勤労署の銓衡に合格せる求職者が、不採用となるが如きことなきを期すること
30、規程第30條に依る処理状況の通報には、取扱の経過及紹介を為すこと能はざりし理由を具体的に記載すること
第7、職業の相談及補導に関する事項
31、規程第31條の職業相談並に斡旋は左に依り実施すること
い、勤労署は、管内及近接地に於ける社会、産業、経済の諸事情を精密に調査するのみならず、資材又は商品の需給状況、職業の分布、其の他職業相談の参考となるべき資料を豊富に蒐集するの外、広く官公署、各種組合、団体、学校、養成所等と連絡を執りつつ、一般職業並自営業開業の相談に応じ得る如く努力すること
ろ、相談を受くる者の資質、経歴、資産、境遇等を調査し、不適当と認めらるる営業に就かしむるが如きことなき様留意すること
は、専門的事項に関しては、勤労配置規則第2條に依り設置せられたる職業指導事務嘱託者其の他、各方面の権威者等に依る定例職業相談日を設くる等の方途を講ずること
に、必要に応じ、資金の調達、用具の入手、各種組合又は団体との連絡又は加入等の幹旋を為すこと
32、規程第32條に依り、職業の選択に関する相談を受けんとするものあるときは、同條に列挙せらるる事項に付愼重に勘案するは固より、必要に応じ身体検査、智能検査、特殊性能検査を実施し適職不適職の発見に努むること
33、規程第34條の就職者に対する幹旋は、必要に応じ左の事項を実施すること
い、出発地及到着地両勤労署は充分なる連絡を執り、引卒又は出迎を為すこと
ろ、特に必要ある場合は、職業協会等をして旅費支度金の貸付を為すこと
34、規程第35條の補導は、就職地所轄勤労署に於て行ふを原則とするも、必要に応じ従業者出身地勤労署も之を為し得るものなること、但し、此の場合は就職地所轄勤労署と充分なる連絡を執ること
35、補導は、妄に転職するを防止し、職業の安定、延いては生活の安定を得せしむるを目途とし、慰問、激励、指導、調停其の他諸斡旋を行ふこと
36、補導の状況は、関係勤労署に之を通報し、必要ある場合は出身地勤労署を通じ、従業者の家庭とも連絡を執ること
第8 の他の事項
37、日雇労務者の職業紹介に関しては、其の大部分を労務協会の運営に讓ることとしたるも、労務協会支部の分会の設置なき区域又は労務協会の取扱範囲に属せざる日雇労務者の職業紹介は、勤労署に於て本規程に準じたる取扱を為すこと
38、勤労署は、事業主台帳を作成、管内事業主に付所在地(住所)、名称(氏名)、代表者、電話番号、資産本系統、信用状態、清算、常時使用員数、勤労関係担当者、宿舍の有無、厚生施設等を調査記入し置き執務上の参考に資すること
39、勤労署は不良、求職者ありたる場合は、直ちに其の氏名、住所、経歴、服裝、容貌、言語、不良事実其の他参考となるべき事項を近接地勤労署に通報すること