4、勤労配置規則関係
●厚生省令第40号(昭和20年10月11日)
勤労配置規則左の通定む
勤労配置規則
第1章 総則
第1條 昭和20年勅令第566号附則第5項の規定に基く従業者の勤労配置に関する命令は本令の定むる所に依る
第2章 職業指導
第2條 地方長官(東京都に在りては警視総監以下同じ)は、庁府県の高等官中より職業指導官を命じ、求職者に付て就職すべき職業等に関する希望、就職の條件其の他就職に関する必要なる事項の調査其の他必要なる職業指導に関する事務に従事せしむべし、地方長官必要ありと認むるときは、学識経験ある者に嘱託し、職業指導官の行ふ事務の一部を補助せしむべし
第3條 地方長官必要ありと認むるときは、求職者に対し、其の就職前に於て勤労適性検査又は勤労訓練を受けしむることを得
第3章 雇入及就職
第4條 工場、事業場其の他の場所(以下事業場と名す)の事業主、1月以内の期間に於て10人以上の従業者を雇入れんとするときは、其の雇入の員数其の他雇入に関し、必要なる事項を、予め雇入を為さんとする事業場の所在地の所轄勤労署長に届出づべし
前項の規定は別に定ある場合には之を適用せず
第5條 厚生大臣又は地方長官必要ありと認むるときは、業種又は職種を指定して、女子等其の指定する従業者の雇入、使用、就職及従業を、禁止又は制限することを得
前項の規定に依る禁止又は制限ありたるときは、其の禁止又は制限の指定を為したる業種又は職種には、其の指定する年月日以後は、其の指定したる禁止又は制限の範囲を超えて、其の指定したる従業者の雇入、使用、就職又は従業を為すことを得ず、但し、特別の事理に因り、勤労署長の認可ありたる場合は此の限に在らず
第1項の指定は、厚生大臣又は地方長官の告示に依り之を為す
第6條 厚生大臣又は地方長官の指定する範囲の従業者の雇入及就職は、別に定むる所に依り勤労署長の紹介若は承認に依り、又は、地力長官の指定する団体の指示に依るべし
第7條 地方長官必要ありと認むるときは、事業場の事業主に対し、雇入るべき者及其の雇入に関し、必要なる事項を指定して雇入るべきことを、勧奨することを得
第8條 地方長官厚生大臣の指定する範囲の求職者に付、其の者の、就職確保の為必要ありと認むるときは、事業場の事業主に対し、雇入るべき者及其の者の雇入に関し、必要なる事項を指定して、雇入るべきことを命ずることを得
前項の規定に依る雇入るべき者の指定は、前項の求職者の範囲に依り、包括して之を為すことを得
第9條 地方長官前條第1項の雇入命令を為したるときは、直に其の指定したる求職者に対し其の旨通知すべし、但し、同條第2項の規定に依り雇入るべき者の指定を包括して為したる場合は、此の限に在らず
前項の規定に依る通知を受けたる求職者は、遅帯なく前條の規定に依る命令を受けたる者に対し、就職の申出を為すべし
第4章 解雇
第10條 地方長官の指定する事業場に於て、使用せらるる従業者又は事業場に於て使用せらるる従業者にして、地方長官の指定する範囲のものの解雇は、解雇前1月迄に其の旨を当該従業者に通知する共に、当該事業場の所在地の所轄勤労署長に届出づるに非ざれば、之を為すことを得ず
前項の事業場の指定は、事業場に於て使用せらるる従業者の数に依り、包括し之を為すことを得
第1項の規定は、左の各号の一に該当する場合には之を適用せず
1 法令に依り解雇を要するに至りたる場合
2 営業の譲渡其の他の事由に因り、事業の全部又は一部を廃止又は休止する場合に於ける解雇の場合
3 日日又は30日以内の期間を定めて雇入るる従業者の解雇の場合
4 其の他、地方長官の定むる場合
第11條 前條の規定に依る地方長官の指定に係る事業場の事業主は、前條第3項第2号に掲ぐる場合に在りては、国家総動員法第31條の規定に基き解雇せんとする従業者の氏名、居住の場所等を、予め当該事業場の所在地の所轄勤労署長に報告すべし
第5章 雜則
第12條 地方長官又は勤労署長、本令に依る承認又は認可に付、不正若は虚偽の事実ありと認むるとき、又は、特に必要ありと認むるときは、承認又は認可の取消を為すことを得
第13條 厚生大臣又は地方長官は、従業者の雇入、解雇、使用又は賃金、給料其の他の従業條件に付、事業場の事業主に対し、監督上必要なる命令を為すことを得
第14條 厚生大臣、地方長官又は勤労署長、本令の施行に関し必要ありと認むるときは、国家総動員法第31條の規定に基き、従業者、事業場の事業主其の他の関係者より報告を徴することを得
第15條 厚生大臣、地方長官又は勤労署長、本令の施行に関し必要ありと認むるときは、国家総動員法第31條の規定に基き、当該官吏をして関係事業に臨検し業務の状況又は帳簿書類其の他の物件を検査せしむることを得、此の場合に於ては、当該官吏をして別に定むる所に依り其の身分を示す証票を携帯せしむべし
附則
本令は公布の日より之を施行す
●厚生省告示第102号
勤労配置規則第4條第2項の場合左の通定む
昭和20年10月15日 厚生大臣 芦田 均
1、日日従業者を雇入れんとする場合、但し、30日を超えて引続き雇入れたる場合を除く、此の場合に於て、引続く30日間に雇入れざる日あるとき、其の日が、従業者の雇入れらるる事業場の公休日又は事業主の都合に依る一斉休業日なる場合に於ては、之を引続き雇入れたるものと看做す
2、30日以内の期間を定めて従業者を雇入れんとする場合、但し、30日を超えて引続き雇用したる場合を除く、此の場合に於て、雇雇関係終了の日より5日以内に再び其の者を雇入れたる場合は、之を引続き雇用したるものと看做す
3、営業の讓渡其の他の事由に依り、事業の承継ありたる場合に於て、従前雇用せられ居りたる従業者を引続き雇入れんとする場合
●厚生省告示第103号
勤労配置規則第6條の規定に依り左の通定む
昭和20年10月15日 厚生大臣 芦田 均
1、鉱工業に於ける雑役作業、土木建築業及運輸業に於ける日々又は30日以內の期間を定めて為す従業者の雇入及就職は、地方長官の指定する団体の指示を受くべきものとす
厚生省告示第104号
勤労配置規則第8條の求職者の範囲左の通定む
昭和20年10月15日 厚生大臣 芦田 均
軍人又は之に準ずべき者(軍属を含む)として、戦闘其の他公務に依り傷痍を受け又は疾病に罹り、其の固定したる症状、恩給法施行令第24條又は第24條の2に規定する傷痍の程度に達するもの
●厚生省告示第105号
勤労配置規則第15條の証票左の通定む
昭和20年10月15日 厚生大臣 芦田 均
(表面)
勤労配置規則に関する臨検票
(裏面)
第 号 昭和 年 月 日交付
官職 厚生省、庁府県又は勤労署印 氏名
国家総動員法第31條 政府は国家総動員上必要あるときは命令の定むるところに依り報告を徴し又は当該官吏をして必要なる場所に臨検し業務の状況若は帳簿書類其の他の物件を検査せしむることを得
国家総動員法第42條 第31條の規定に依る当該官吏の検査を拒み妨げ又は忌忌したる者は6月以下の懲役又は500円以下の罰金に処す
勤労配置規則第16條 厚生大臣地方長官又は勤労署長本規則の施行に関し必要ありと認むるときは国家総動員法第31條の規定に基き当該官吏をして関係事業場に臨検し業務の状況又は帳簿書類其の他の物件を検査せしむることを得此の場合に於て当該官吏をして別に定むる所に依り其の身分を示す証票を携帯せしむべし
註 本票の用紙の大きさは国定規格A7判(74mm×105mm)とし中央点線の所より2つ折とす
●厚生省発勤第221号 厚生次官
昭和20年10月12日
各庁府県長官殿
勤労配置規則施行に関する件依命通牒
今般10月11日、勅令第566号を以て国民勤労動員令は廃止せられ、之に伴ひ、勅令附則第5項の規定に基き、同日厚生省令第40号を以て勤労配置規則公布、即日施行、相成候処、本則は国民勤労動員令廃止に伴ふ勤労秩序の混乱を防止し、特に復員者等の迅速円滑なる職業転換を図ることを目途とし(1)職業指導の徹底(2)職業斡旋の完遂(3)離職防止の強化を主眼として、之が制定を見たるものに有之、其の運用の適否は、現下国民生活の安定に至大の関係を有するものと被存候、に付ては、別紙勤労配置規則事務取扱要領、特に御留意の上、之が実施に萬遺憾なきを期せられ度、此段依命及通牒候
勤労配置規則事務取扱要領
第1 総則
1、本則は、国家総動員法第6條に其の根拠を有するものなること
2、本則の制定は、国民勤労動員令廃止に伴ふ勤労秩序の混乱を防止すると共に、復員者等の円滑迅速なる職業転換を図らんとするものなるを以て、之が趣旨の周知徹底に努め、之が施行の円滑を期すること
3、本則の施行に携はる者は、常に本則及関係法令通牒を研究照応せしめて、其の末節に拘泥して大本を誤り、又は、煩瑣に堕して実効を逸するが如きことなき様、真に有効適切なる運用を図ること
4、本則運用の成果は、求人開拓に俟つ処大なるものあるを以て、関係各方面と常に緊密なる連携を保持し、之が積極活発なる実施に特段の留意を払ふこと
5、事務の処理は、迅速的確を期し、執務の態度は、厳正公平且つ懇切丁寧を旨とし、苟も強権を以て臨むが如きは一切払拭すること
6、本則は国、都道府県には適用なきも、本則制定の趣旨に鑑み、届出、報告事項に付通報を求むる等、管内官公署に対し協力方を要望し置くこと
第2 第2條及第3條関係
本規定は周到適正なる職業指導を行ひ真に適材を適所に配置せんとするものにして
1、職業指導官は、関係部課長の外勤労署長、地方事務所長等より適任者を選定補職すること
2、職業指導官の行ふ事務の一部を、民間人に嘱託する場合は、広く各方面より人格廉潔にして職業指導に関し造詣深き者の中より選定すること
3、職業指導に当りては、本人の希望、経歴、体位、家庭の事情等を詳細調査し適性検査の結果を斟酌する等愼重に之を行ひ、独断に走り其の適正を欠くが如きことなき様充分注意すること
4、求職者に対し、其の就職前に於て行ふ勤労訓練に関しては、簡易なる技能の習得等就職に直接効果ある事項に重点を置き、併せて勤労意慾の昂揚を図ること
第3 第4條関係
本規定は、勤労需要の状況を的確に把握し、以て求職者の就職斡旋を迅速円滑に実施せんとする趣旨にして、其の要点は左の通なるが、勤労署は単に届出を待つに止らず、進んで管内事業主に対する求人開拓を為すこと
1、届出は別紙様式第1号に依り、其の都度之を為さしむること、但し、電話に依る届出を認むる等簡易を旨とすること
2、届出の受理に際しては、雇入予定数の全部若は一部を、なるべく勤労署の紹介に依り雇入るる様指導勧奨し、其の紹介に依り雇入るるものに付ては、本條の届出を以て職業紹介業務規程に依る求人申込と看做すこと
3、本條の届出に付ては、其の趣旨に鑑み、必ず分類整理等の方法を講じ、之が活用に遺憾なきを期すること
第4 第5條関係
本規定は女子等の就職又は従業を規制し靑壮年男子求職者の就職確保に資せんとする趣旨にして
1、地方長官に於て禁止又は制限すべき業種、又は、職種の指定を為さんとするときは、予め厚生大臣に稟伺すること、尚、制限は一定期日に於ける女子等従業者の数に対し、其の何割と謂ふが如き率を示し、其の範囲を超ゆる従業者の雇入、使用、就職又は従業を禁ずる方法に依ること
2、禁止又は制限の指定ありたるときは、事業主をして指定ありたる際使用中の、該当従業者の職種別員数を、遅滯なく当該事業場所在地の所轄勤労署長に報告せしむること
3、右報告ありたる場合は、雇入勧奨其の他に依り、速に靑壮年男子をして代替せしむる様措置すること
4、禁止又は制限の適用除外認可の申請は、様式第2号に依り、就職又は従業せんとする従業者及其の者を雇入れ又は使用せんとする者の連署を以て、其の者を使用せんとする事業場の所在地の所轄勤労署長に対し之を為さしむること
5、右申請に対する認可の標準及其の方式等に関しては追て指示する予定なること
第5 第6條関係
本規定は、差当り士木建築、運輸業等の日雇労務者等、特に給源争奪の虞あるものの雇入、就職に付、地方長官の指定する団体の指示に依らしめ、其の適正なる配置及就労の規制を為さんとするものにして
1、本條に依る団体の指定は、財団法人労務協会支部の設置を見たる地方は、当該支部の各分会に付之を行ひ、其の他の地方に於ては、一応、都道府県労務報国会支部又は分会に付之を為し、労務協会支部機構の整備に伴ひ、漸次指定替を行ふこと
尚右指定は国民勤労動員令廃止の日を以て為すこと
2、右の外日雇労務に関しては概ね従前の例に依り措置すること
第6 第7條関係
本規定は、復員者等、特に就職確保の要ある求職者に付、其の就職を円滑迅速ならしめんとする趣旨にして
1、雇入勧奨は、左に掲ぐる範囲の求職者に付、其の希望、経歴、家庭の事情等を勘案して之を為すこ
い、傷痍軍人、軍属
ろ、終戦に伴ふ、復員軍人軍属(昭和20年9月6日次官会議決定に係る残留軍人軍属に関しては9月10日附通牒の趣旨に依り特段の考慮を払ふこと)
は、戦没軍人軍属の遺族
に、終戦に伴ふ徴用被解除者
ほ、戦災者
へ、終戦に伴ひ外地外国より引揚げたる者
と、其の他地方長官に於て特に必要ありと認めたる者
2、雇入勧奨を為すに当りては、苟も倨傲独断に走るが如きことなく、事業主の希望等を可及的斟酌すると共に、事業主をして雇入れらるべきものとして指定されたる者の、就職の真に必要なる事情を充分諒解せしむる等之、が円滑なる運用に努むること
3、雇入勧奨に関しては、簿冊を備付け、雇入の日時雇入れらるべき者、事業場名、雇用條件等を記入し当該事業主に捺印せしむること
4、本條に依り地方長官の行ふ雇入勧奨は、便宜勤労署長をして行はしむること
第7 第8條及第9條関係
本規定は、特に就職確保を緊要とする求職者に付、其の雇入に関する事業主の甚だしき無理解を抑制し、其の就職を確実ならしめんとするものにして、要点は左の通なるが、本條は所謂伝家の宝刀として、発動せしむることなく、專ら関係職員の意と努力とを以てする雇入勧奨により、其の目的を達するを本旨とするものなること
1、雇入命令は、第4條の屈出又は職業紹介業務規程に依る、求人の申込を為したる事業主に対し、甲の雇入を乙を以て替へしめんとする場合にして、且つ、特別の事情なくして雇入の勧奨に応ぜず、当該求職者の就職を特に緊要と認めたる場合に限ることとし、之が取扱は特に愼重なるべきこと
2、雇入命令は、様式第3号の雇入命令書を、雇入を命ぜんとする事業主に交付して之を為すこと、右命令書は、当該事業場所在地の所轄勤労署長をして交付せしむること
3、雇入命令を発したる場合は、其の結末を明かにし、之を記録し置くこと
第8 第10條及第11條関係
本規定は、従業者にして解雇せらるべきものに対する、職業斡旋の準備措置等を講じ、急激なる解雇に伴ふ失業の発生より生ずる混乱を、可及的に防止せんとする趣旨にして
1、第10條第1項前段の規定に依る、事業場の指定は、個々の事業場指定の場合を除き、同條第2項に依り常時30人以上の従業者を使用する事業場に付包括して之を為し、同條第1項後段の規定に依る従業者の範囲の指定は、差当り第8條第1項の規定に依る厚生大臣の指定(10月15日厚生省告示第104号3照)と一致せしむること
2、指定は11月15日を以て之を為すこと
3、左に掲ぐるものは、第10條第3項第4号に依り前記事業場又は従業者の範囲の指定の際同條第1項の適用なきものとして除外すること
い、従業者の責に帰すべき理由に因り解雇する場合
ろ、一時(概ね1週間以内)に10名未滿の従業者を解雇する場合、但し、10月15日厚生省告示第104号に依り厚生大臣の指定する者を解雇する場合を除く
4、第10條の届出及第11條の報告は、様式第4号に依り之を為さしむること
5、右届出又は報告を受理したる場合は、解雇に依り失業すべき者に付、職業相談を実施し、解雇と同時に他へ斡旋し得る様、求人開拓其の他の準備を開始すること
6、第10條の解雇前1月とは、解雇の法律的効果の発生する日の1け月前の意味なること
第9 報告関係
庁府県は、第4條の雇入の届出、第10條の解雇届出、及、第11條の解雇報告を別紙様式第5号に依り取纏め毎月10日迄に前月分を報告すること
第10 罰則関係
1、左の各号の1に該当する場合は、国家総動員法第36條の規定に依り処罰せらるべきこと
い、第4條の規定に依る雇入の届出を為さざる場合
ろ、第5條の規定に依る禁止又は制限の範囲を超へて、従業者の雇入、使用、就職又は従業を為したる場合
は、第6條の規定に依る紹介若は、承認又は指示に依らずして従業者の雇入、就職を為したる場合
に、第8條の規定に依る雇入命令に従はざる場合
ほ、第10條の規定に依る解雇の通知及届出を為さざる場合
へ、第13條の規定に依る監督上必要なる命令に違反したる場合
2、左の各号の1に該当する場合は、国家総動員法第38條の規定に依り処罰せらるべきこと
い、第11條の規定に依る解雇の報告を怠り又は虚偽の報告を為したる場合
ろ、第14條の規定に依り徴する報告を怠り又は虚偽の報告を為したる場合
3、左に該当する場合は国家総動員法第42條の規定に依り処罰せらるべきこと
第15條の規定に依る当該官吏の臨検検査を拒み妨ぐ、又は忌避したる場合
様式第1号