関西国際空港工事に従事した建設労働者の雇用構成に関する試行分析
はじめに/[1]全体の概略 /[2]一次協力会社と所属会社の関係 /2.1北工区 /2.1.1YO建設 /2.1.2 SH工業/2.1.3 YS/2.1.4 OJ/2.1.5 YG製鋼所/2.1.6 OT工務店/2.2南工区/2.2.1 SK組/2.2.2 DK工業/2.2.3 DR工業/2.2.4 HW工業所 /2.2.5 SK金属工業/2.2.6 ID工務店/2.2.7 TT/おわりに/
はじめに
日本の建設業における下請構造については,擬制的な親子関係に基づいた重層縦割の下請関係,および,その現場の労働力が下請企業群から基本的には提供されるという独特な構造の下にあるといわれている(注1)。八木正は建設業における企業下請のあり方が,一般の製造業とは異なり,「部品の製造や加工を基軸として系列的に編成されているのではなく,主として技能や労働力の提供という労務関係を基軸として重層的に系列化されている」ことに留意しながら,重層的な企業下請関係,その労務関係の構造の考察が必要であると述べている(注2)。
本稿における課題は,その意味では,関西国際空港という,大規模事業のターミナルビル建設工事における建設業者の下請構造について,具体的なデータを下にした分析作業を行なうということになるであろう。しかしながら,新規入場者アンケートという資料の質的制約や時間的制約により,その詳細について,ここで整理し分析していくことは不可能である。そのため,本稿では,今回得られた資料から判明する限定的なものとならざるを得なかった。
まず,ここで,今回使用した資料について,簡単に述べておきたい。今回主として使用した資料は,建設現場に新しく入場する労働者全てに対して行なわれている新規入場者アンケートである(注3)。
このアンケートの項目中に記入者が所属している企業(会社)とその企業の上位にあたる一次協力会社を記入する欄が設けられている。この2つの項目を使用して,企業間の関係を検討してみようというのである。ところが,当然のことながら,この資料から判明するのは,一次協力会社と所属会社の関係でしかない。つまり,重層的と評される建設労働現場の下請関係を分析するには,情報量が少ない。このような限界が検討対象となったデータには存在していることを念頭においたうえで,データをみていくことにしよう(注4)。
[1]全体の概略
新規入場者アンケートに現れた一次協力会社は、北工区169社、南工区122社であった。両工区に共通に含まれている一次会社が27社あったため、全体で264社が新規入場者アンケートに記載された一次協力会社ということになる。
また、個々の労働者が実際に所属しているとされている所属会社については、北工区584社、南工区766社で、両工区に共通の業者は97社であった。従って、1,253社が所属会社ということになる。(表1)
ただし、これらのデータの算出の下になった資料については、両工区とも完全に網羅的なものではないため、実際には工事に参加した企業の中で落ちているものもあると考えられる。そのため、以下の分析で使われる数値も含めて、その数値は絶対的なものを表わしているとはいえない。しかし、資料の量などから大部分は含まれていると推察でき、建設労働における下請構造の分析には十分だと考えられる。
表1 業者数
一次協力会社
所属会社
北工区のみ
142
487
南工区のみ
95
669
両工区共通
27
97
計
264
1253
[2]一次協力会社と所属会社の関係
全てのケースについて、これらの一次協力会社と所属会社を組み合わせると、その組み合わせは1,525パターンになった。このパターン全てについて検討することは不可能なので、本稿では代表的なものをとりあげて、検討していくことにしよう。
まず、北工区・南工区別で一次協力会社で人数の多かったもの(100人以上)を一覧表にしたものが表2である。北工区では13杜、南工区では12社があげられている。北工区のケース数は全部で5,705ケースであるので、100人以上の一次協力会社13社で全体の50.7%を占めていることになる。同様に、南工区全体のケース数は6,443ケースであるので、南工区では55.5%を占めていることになる。
次に、これらの一次協力会社のうち、特に人数の多い、所属している人が200人以上の業者をとりあげて、一つ一つその所属会社との関係をみていくことにしよう。
表2 一次協力会社(100人以上のもの)
北工区
南工区
1
YO建設
594
1
SK組
716
2
SH工業
316
2
DK工業
599
3
YS
305
3
DR工業
460
4
OJ
239
4
HW工業所
322
5
YG製鋼所
234
5
SK金属工業
322
6
OT工務店
221
6
ID工務店
270
7
OB道路
188
7
TT
209
8
ST金属工業
172
8
SW商工
172
9
YK工事
160
9
YK工事
145
10
NW組
156
10
SY
128
11
KN
112
11
TN道路
121
12
TS屋
101
12
YU工業
115
13
DK建材
100
計
2898
計
3579
2.1北工区
2.1.1YO建設
まず、北工区で最も人数が多かったYO建設であるが、そこにあらわれた所属会社は18社であった。YO建設を除く17社のうち、別の資料から、SK工業、KH工業、YS興業、HM興業、SH組の5社はOH建設の下請の3次下請会社であることが判明している。また、KU組、KG建設についても同じ資料から、2次の下請会社であることがわかるので、残りは9社であるが、いずれも人数規模が少なく、いずれかの下請であるのかどうか、判然としない。
この残り9社の中で、特徴的なのはT組である。人数的にはわずか9名でしかないが、全ての人で関空ターミナル工事に入場した年月日がT組へ入社した日になっているのである。 職種は全て鳶工で、現住所以外の家族などへの連絡先は1名を除いて福井県敦賀市になっている。これらのことから、T組がいわゆる出稼ぎ労働者を中心として、労働者を長期雇用の形態ではなく使用している業者であることが推察される。
また、人数の多い上位2社、KG建設とOH建設についても、入社年月と人場年月がまったく同一であるケースがKG建設(土工が中心の業者)では140人(79.5%:無回答を除いた176人中)、OH建設(鳶工が中心の業者)では114人(81.4%:無回答を除いた140人中)とそれぞれほぼ8割を占めている。これに1〜3ヵ月程度の短期在籍のケースを加えると90%近くが入社後まもなく入場していることになっている。ここにも、建設現場の労働力確保のあり方の一端をみることができよう。(表3)
表3 YO建設
KG建設
180
T組
9
OH建設
143
AM建設工業
7
YS興業
78
KMクレーン施工
7
SK工業
37
OM興業
3
SH組
38
YN組
3
KU組
28
F重機
2
HM興業
22
SW建設
2
KH工業
19
HS機械販売
1
HB基礎
14
YO建設
1
2.1.2 SH工業
次に316人が所属しているSH工業であるが,16社が所属会社としてあがっている。SH工業は一次協力会社と同じなので,実際は下請企業は15社ということになる。これらのうち,HY工業とTT建設でかなりの部分を占めている。最もケース数の多いHY工業は鍛冶工を中心とした業者であるが,この業者でも,入場年月と入社年月が同一のケースが半数近く認められる。(表4)
表4 SH工業
HY工業
95
KY工業
13
TT建設
67
HY建鉄
11
S工業
27
DS興業
5
YI技工
24
ST
1
HK熔工
20
N商会
1
SH工業
18
E工業
1
YS組
16
HY建設
1
SM工業
15
HY鉄工
1
2.1.3 YS
YSに所属しているケースは305ケースであり,所属会社数は12社で,YSそのものを除くと11社が下請業者と推定できる。これらのうち,SE工業とSY興業の上位2社でほぼ半数を占めている。SE工業では,無回答を除く75人中45人(60.0%)で,入場年月と入社年月が同一となっている。(表5)
表5 YS
SE工業
81
OZ鉄筋
11
SY興業
71
YS
4
MM鉄筋
47
H工業
2
KM組
33
MH組
2
TN鉄筋
30
MG工業
2
YM鉄筋
21
SK工業
1
2.1.4 OJ
OJは内装関係を中心とした企業で,そこにあらわれた所属会社は15社で,OJ自身を除くと14社であった。これらの企業は,これまでの業者とは異なり,入場年月と入社年月の差つまり,入場までの在籍期間が長い場合がほとんどである。例えば,内装(ボード)工が中心で,所属会社の中では2番目にケース数が多いSMZでは,在籍期間の平均は33.5カ月であり,5年未満のケースが多くなっているが,その分布は短期間に集中しているわけではなく,比較的ばらついている。これは,YO建設やSH工業の場合とはかなり異なった結果になっている。(表6)
表6 OJ
KN商店
64
NK興業
7
SMZ
42
HG工業
7
NKO
22
SO工業
5
H工業所
22
HY内装
5
DKW
18
ST工業
4
NG
17
OJ
3
TK工業
14
NHH
1
S工業
8
2.1.5 YG製鋼所
YG製鋼所は,板金工や金属工を中心とした企業で,そこにあらわれた所属会社はYG製鋼所を除くと11社であった。これらの企業では,在籍期間が長い場合が多く,在職期間の平均が最も短かったOK金属でも49.9カ月であり,日雇などの短期間の労働者を雇用している企業があまりないことを示している。しかし,入社時の年齢の平均は30才前後が多くなっている。(表7)
表7 YG製鋼所
HT板金
62
YG製鋼所
8
TS工業
43
SWB興業
6
SK金属工業
35
HB工業
5
YK工業
26
ON商会
4
Y工業
22
OM
5
OK金属
17
DK通運
1
2.1.6 OT工務店
OT工務店に所属しているケースは221ケースであるが,そのうち,96ケースはOT工務店が所属会社だとしていて,所属会社の中で最も多く,それ以外の所属会社は4社に過ぎない。これまでの一次協力会社では10社以上の所属会社があったのに比べて,所属会社が集中している。OT工務店は型枠大工を中心とした業者で,SG工務店,SH工業,UD工業もも同様である。UK組のみは解体工を中心とした業者になっている。このなかでは,SG工務店の36ケースで入場年月と入社年月が同一年月になっており,全体的に在籍期間が短くなっている。(表8)
表8 OT工務店
OT工務店
96
SG工務店
78
UK組
38
SH工業
8
UD工業
1
2.2南工区
2.2.1 SK組
南工区の一次協力会社で最もケース数が多かったのは,SK組である。全部でケース数は716ケース,所属会社はSK組そのものを除くと4社で,これも非常に少ない。実際には,NS組が710ケースとSK組の所属ケースほとんどを占め,SK組の工事はNS組が行なっていたと考えて差し支えない。NS組の職種は土工が396人,鳶工が311人で,その他は非常に少ない。
NS組における入社年月と入場年月との差(在籍期間)は,全体の平均が12.7カ月であり,極端に短いとはいえない。しかし,これの分布をみると,無回答を除くケースの52.9%が入社年月と入場年月が同一であり,6カ月までの差でみると,実に78.3%が含まれてしまう。短期雇用の労働者が多数派を占めているということがこのデータからは読み取れよう。(表9)
これを職種別にみると,土工の平均は10.0カ月,鳶工の平均は16.2カ月で,土工の方がより在籍期間が短くなっている。土工では,56.3%のケースで入社年月と入場年月が一致しており,6カ月までで81.9%のケースが含まれる。これに対して,鳶工では一致するケースは48.7%,6カ月までで73.8%になっている。両職種の入社時の年齢の平均は,土工が40.0才,鳶工が38.7才である。鳶工の分布は50才前後と22才前後の2つをピークとする双峰の分布になっており,しかも50才前後の峰の方がより大きくなっている。(図1)
表9 SK組
NS組
710
NS工業
2
AM組
2
NG組
1
SK組
1
2.2.2 DK工業
DK工業は,内装工(222人)を中心として,ボード工(160人),軽天工(113人)などの職種構成からわかるように,内装関係の工事を請け負った企業である。所属会社として現れた業者数は,DK工業自身を除いて79社と非常に多い。そのうち,41社は5人未満のケースしか現れていない業者である。そのため,表では一部の業者をまとめて表記している。(表10)
表10 DK工業
HD建工社
53
KB工業
8
DIS
43
SM建装
8
DK建工
43
ST建材社
8
BRT
30
DS
7
KJ技建
30
TI建商
7
ANスレート
24
YY建装
7
NKスチール
22
KN建装
7
DK工業
19
HS工業
7
ST商店
17
A建装
6
KS工業
15
AD商店
6
NG工業
15
K建装
6
BZ工業
14
YD工務店
5
OSF工事
12
AS工務店
5
DD商店
12
IK装建
5
UD建材
12
I内装
5
HKDJP
10
MK工業
5
TG産業
9
DI技建
5
TK商店
9
TM建装
5
KNK
8
その他(44社)
91
2.2.3 DR工業
DR工業工業に所属しているケースは460ケースであるが、そのうち、106ケースはDR工業が所属会社だとしていて、所属会社の中で最も多くなっている。これを除いた所属会社数は、38社と比較的多い。しかし、そのうち23社はケース数が5未満の業者であり、50人以上の人が所属している会社は、DR工業を除けば、T工務店だけである。 T工務店は、76ケースが所属会社としてあげており、DR工業の下請けでは中核となっている業者である。67人全員が鉄筋工でそれ以外の職種はない。入場年月と入社年月が同一のケースが51ケースに上っており、75%以上が入社月に入場していることになる。そのため、在籍期間の平均も2.4ヶ月とかなり短くなっており、短期雇用の労働者を多く抱えていることが推察される。実際に連絡先や現住所などから判断すると、出稼ぎ労働者も多く、日雇と判断される労働者も25%ほど確認されている。
またHSGも在籍期間の平均が1.1ヶ月と短く、その他にもいくつかの業者で在籍期間が短くなっている。 (表11)
表11 DR工業
DR工業
106
SW
3
T工務店
67
NK班
3
SY工務店
30
DR
2
HSG
20
KH組
2
SE工業
19
MT工務店
2
NK
17
OSTD
2
TD鉄筋
17
TS鉄筋
2
HSG鉄筋
17
H工務店
2
ST鉄筋
16
TM
2
KG工務店
13
TT工業
2
SKT鉄筋
12
IM班
1
ST鉄筋
9
HK
1
T興業
8
HW工業所
1
NK鉄筋
7
NK工務店
1
KO工務店
6
WN
1
OKB建材
5
TY建設工機
1
TS
4
TY建設
1
HSG班
4
T工業
1
IM鉄筋
3
HJ工務店
1
ST工業
3
2.2.4 HW工業所
次に322人が所属しているHW工業所であるが、43社が所属会社としてあがっている。一次協力会社のHW工業所を除くと、実際の下請企業は42社ということになる。HW工業所を一次協力会社とする人では、鍛治工が246人で大部分を占め、鉄工や溶接工の他、10以上の職種が見られる。
所属会社のうち、飛び抜けてケース数が多いのはOT工業である。 OT工業は鍛治工を中心に鉄工や溶接工、ガス工などが職種を構成しているが、特にこれといった特徴があるわけではない。 所属会社の中では、KT工業が特徴的である。入場年月と入社年月から算出した在籍期間の平均が4.0ヶ月で、13ケースのうち3ケースを除いて、在籍期間が0か1ヶ月となっている。職種は鍛治工、配管工、鉄工で、連絡先が1人を除いて全員が福岡県になっている。(表12)
表12 HW工業所
OT工業
101
SW工業
8
MW工業
47
ALS
7
HW工業所
22
IG工業
4
TD工業
15
NM工業
4
NK重設工業
15
OM板金
3
KT工業
13
HN工業所
3
NO工業所
13
TT工業
3
AI合同鉄工
9
IU工業
2
MM鉄工
8
その他(27社)
37
2.2.5 SK金属工業
SK金属工業を一次協力会社とする所属会社は45社である(SK金属工業を除く)。全部で322人がこの企業を一次協力会社としているが,特定の下請会社の比率が高いわけではなく,最も多いOG板金でも37ケースと10%程度を占めるにすぎない。職種は77.6%が板金工であり,その他の職種としては屋根工が4.7%,鳶工が3.4%いるほかは,ほとんど数人である。在籍期間の平均は79.0カ月で比較的長く,入社時の年齢は10代後半から20代前半が最も多くなっている。ただし,これは全体としてみた場合であり,個々の所属会社によって,かなりばらつきが確認されており,在籍期間の標準偏差も100.25と大きくなっている。(表13)
表13 SK金属工業
OG板金
37
BRD
7
SWB興業
28
UM板金工業
7
TK板金
26
SW板金
6
SK工業
24
SK塗装
6
UM板金
20
DN鋼板加工
5
KN金属
18
YD工業
5
ON板金
13
NS金属工業
5
SK金属工業
12
SK
4
KK板金
9
ON商会
4
KN板金
8
AN鋼建
4
NY板金
8
KS製鉄
4
HT組
8
その他(23社)
45
2.2.6 ID工務店
ID工務店は,型枠大工を中心とした所属会社によって構成されている。全体のケース数は270で,うち型枠大工が236ケース,解体工が33ケースである(不明1)。所属会社数は22社であり(ID工務店を除く),10人以上の業者数は10社である。
最も所属人数が多いTF工務店は,在籍期間の平均は20.9カ月であり,分布がやや短いところが中心になってはいるが,6カ月未満の極端に短いケースはそれほど多くない。全体では在籍期間の平均が53.3カ月,と北工区で型枠工事を請け負っていたOT工務店とそれほど変わりはない。しかし,第1四分位数は7カ月,第2四分位数は29カ月であり,在籍期間は短い方に分布が偏っている。(表14)
表14 ID工務店
TF工務店
52
UD工務店
8
SN工務店
24
HN工務店
8
SK建設
22
OM班
7
SM組
19
MY組
7
WY組
19
FO工務店
7
MW班
18
UM班
6
OT工務店
13
FO組
2
T班
12
MT班
2
IU班
10
KS組
1
SW工務店
10
UM組
1
MG組
9
ID工務店
1
AI興業
9
2.2.7 TT
TTは,209のケースからなるシステムトイレ工を中心とした企業で,そこにあらわれた所属会社は,最も多かったTTを除くと48社であった。最も多いTTでも所属ケース数は21ケースであり,所属会社が非常に少人数に分かれているのが特徴である。10人以上の業者はTTを除くと4社しかない。
これらの企業は,入場までの在籍期間が長い場合がほとんどである。例えば,TTの次に多いBS(14人)では,在籍期間の平均は95.5カ月であり,そのため入場時の年齢の平均も42.8才とかなり高い。TTを一次協力会社とする所属会社全体の在籍月数の平均も77.6カ月と南工区で検討を加えた一次協力会社の中ではSK金属工業に次いで長くなっている。これらのことから,TTを一次協力会社とする所属会社では,短期的な雇用労働者ではなく,長期的な技能労働者が多いと推測される。(表15)
表15 TT
TT
21
THタイル
4
BS
14
DK産業
4
ZS産業
13
DM産業
4
NDE
10
NS住設
4
TTエンジニアリング
10
FJ装工
4
KSサービス
9
SH電気工業
4
FJ装研
8
K機械
3
YM商会
7
N工業
3
TO技建
7
MM硝子
3
SRS
6
KT倉庫
3
KMN
5
SK建材
3
OM工業
5
I工業
3
DK運輸
5
DW総合サービス
3
AM軽天工業
5
HO商店
3
AKSS
4
その他(19社)
27
KR
4
おわりに
関西国際空港のターミナルビル工事程度の規模の工事になると,一次協力会社,所属会社ともにかなりの数に上り,その組み合わせで下請構造を単純にみていくことは物理的に非常に困難であるために,上記のような形で,概要をまとめて検討せざるを得なかった。にもかかわらず,一次協力会社や所属会社によって,その労働者雇用のあり方にかなり差がみられることが,ある程度明らかになったことは,評価してよいと思われる。公式には,日雇い労働者を雇用していないとしておりながら,その実態は,急激に変化するわけではなく,データで示されたとおり,所属会社によっては,その構成労働者のほとんどが日雇い労働者と判断せざるを得ないようなケースも存在していた。
このような雇用のあり方の違いは,所属会社の労働力確保のあり方によるものから来ている場合もあると考えられるし,職種によっては,その職種の労働形態のあり方の方が影響が大きいように思われるものもあった。このあたりのことは,データを詳細に検討していくことで,もう少し区別可能なものとして見えてくるかもしれない。いずれにせよ,まだいろいろな角度から,分析することが可能である。また,ある程度の規模の業者を概略的に検討するのではなく,特定の業者について,より深い分析・検討という方法も必要である。これについては,稿を改め,別の機会に論じることにしたい。
注
(1) 八木正,1991,日本建設業の下請け構造における労務機構と労働の状況,金澤大学教養部論集人文科学篇28-2,pp.1-34
(2) 八木正,同上
(3) これの名称については,一定ではなく,特に北工区ではさまざまな名称・規格のものが使用されていたが,ここでは,一括して「新規入場者アンケート」としておく。
(4) 実際には,ここで使用した資料に加えて,「当期末時点における関係請負人の状況」と題された工事別の下請企業について1次下請から6次下請まで一覧表にし,さらにそれぞれの企業の所属労働者数も記入してある,本稿の課題に重要な情報を提供し得る資料が存在する。この資料が手元にあれば,より詳細な分析が可能になるのだが,ごく限られた期間のものしか入手することができなかったため,今回は参考程度にしか,使用することができなかったのは残念である。