人権侵害事件事例
本事例は1983年5月13日午後9時45分頃より11時30分頃まで南区内において釜ケ崎日雇労組員、支援メンバーによって集められたものである。
出発にあたり下記の質問事項を確認した。
@事実の確認(どこらへんの場所か)。
A調査の時に渡された紙をもっているか。
B調査の説明があったか。
イ、何のためなのか。
ロ、拒否したらどうする、といっていたか。
C写真、指紋はどういうふうにとられたか。
しかし、なにぶんにも素人ばかりのため調査結果にばらつきがある。
事例1 虹の街入口 39才
@5月17日午後1時半、心斎橋アーケードで寝ている時。
Aわら半紙の半分位の紙に、氏名、生年月日。番号C−14.
B何かあった時のためやっている。役所の方に知らせるためだ。外で寝ている人が多いので協力してくれ。
C本籍、氏名、生年月日。血液型をきかれB5ぐらいの用紙に左指(人さし指)の指紋をとられた。
備考−仕事がない。梅田から難波に来た。
事例2 虹の街 42才 佐●た●
@先おとといやられた。1時すぎ、戎橋筋。
A34番。
Bバタヤが集まって残パンを出さないとさわいだが、誰か知らんかと聞かれ、自分が疑われたと思った。
C住所、どこからきたかを聞かれた。最初、指印しないと言ったら、あんた何か悪いことしたのかと言われ、指紋10本とられた。
事例3
@道頓堀。5月16日午前3時。
A一52.
B仕事のあっせんをするから写真をとらしてくれと言われた。
C本籍、氏名、年齢、生年月日、血液型を聞かれた。
備考−釜8年、アオカン10日、体は良い。
事例4
@−−
AB−21。
B−−
Cしょうがないからとられた。
備考−釜には36年当時に来た。あんまりさわがんでくれ、追い出されるから…。
事例5 心斎橋商店街 銀座ワシントン前
@心斎橋商店街、銀座ワシントン前、月曜日午前1時半ごろ。
AC−18。もう一度きたらこれを見せろといわれた。落としたらあかんと言われた。
B他の人でなんで写真とるんやと言っているのがいた。私はあとの方でみんなとていられるから仕方がないと思った。とらなあかんねんと言っていた。
C制服警官二人と乱闘服の計二人四人が本籍、住所、生年月日、お金をもっているかなどを聞かれた。写真は乱闘服のもとっのがた。近くにいた人も連れて来られて、14〜5人いっぺんにやられた。
備考‐大淀生ま兵工れ、砲廠→炭坑、神戸沖仲仕→37年釜ケ崎へ。
事例6 ナンバ地下街
@3日前、朝3時半か4時頃、ワシントン靴店前。
AC−38。
B誰かがわし前科あるし写真なら警察になんぼでともあるで言ったら犯罪の方とはちがうと言っていた。
Cちょっと聞きたいことがある、どこで寝てかいると聞れ、ここでと言うと引き続き、生年月日、本籍、住所、血液型、ナイフかなんかもってへかんかと聞れた。記入した紙にここに押してんかと指を持たれて指紋をとられた。
そのあと胸の前に氏名、生年月日、番号を書いた紙をもたされて写真をとられた。歩いてるもんもとめてやっていた。
備考−−釜に行ったことはないが土方だ。釜に友達がおり、それにつれられて仕事に行く。京都の林に1年ほど直行でいっていたが仕事がなくなり4月25日から青カンしている。
事例7 52才(昭和5年生まれ)
@心斎橋、ワシントン靴店前、午前1時頃。
AC−21
B説明はなかった。警官4人。
C本精、氏名、年齢を聞かれた。スタンプを持っていて指の先全体をとられた。
事例8 33才
@戎橋商店街。車(リヤカー)を引いている時。
AB−25。
B−−
C警官3人とあと1人、人差指をまわして。さからうとまずいと思った。
事例9
@宗衛門町でリヤカーを引っぱってる途中。
Aほかした。D−?
B否応なしに。警官4〜5名。
Cはっきりおぼえていない。前科があるのでさからうと損だと思った。
事例10
@5月11日、夜12時、心斎橋マクドナルド前
AC−38
B−−
C制服警官1人、機動隊4人。去年も写真とるのがあった。
備考−西成10年、仕事は契約が多い。
事例11 太●熊● 昭和14年4月15日生まれ
@心斎橋筋、おととい。
AC−20。証明のようなものだから持っている。
Bみんなとられてきたので従った。
C+血液型を聞かれた。指印一本。
備考−これまでは飯場回り。
事例12 51才(昭和6年生まれ)
@一週間前、法善寺のところで。
AL‐47
Bこういう所におったらいかんから。
C氏名、生年月日、本籍、指印、警官6名。戦闘帽もいた。
事例13
@5月10日午前3時、千日前。
A−−
B写真をとらしてくれと言ってきた。
C−−
備考−アオカン14日、飯場回り。
事例14 虹の街 和●純● 昭和34年4月11日
@千日前、午前3時
AB−41。
B理由もなく写真、指紋をとられた。
C4人ぐらいの警官。
備考−3月いっぱい飯場にいた。それからこの生活。
事例15 大●堅● 昭和2年6月28日。
@宗衛門町の公園で。
AB−66
B−−
C警官5名、戦闘帽をかぶっていた人もまじっていた。
備考−以前は釜で日雇。救急車で阪和病院にいったこともある。
事例16
@−−
Aもうすんだといって逃げた。
B死んだときに身元がわからないと困るから、と言っていた。拒否したらどうなるかわかる。前科12犯だからたぶん、なぐったりするだろう。
C心斎橋の交番の前を通る者を引っぱっていって交番の前で2〜3人やられていた。
事例17
毎日、午前1時ごろくる。制服や機動隊が大勢くる。私は逃げた。
調査を終わって
深夜、乱闘服を着た警官に囲まれて写真撮影や指紋を求められた時、どれだけの人間が拒否することができるであろうか。
任意である説期はまったくなされておらず「職を紹介するため」という騙しや「あんた何か悪いことしたんか」というスゴミ、オドシによって写真や指紋がとられている。
ことの不法、不当は明らかであり、かかる人権侵害は絶対に許されるべきものではない、と考える。