1966年9 月、大阪府・市は、愛隣地区総合対策基本計画を決定
『基本計画
1、就労の安定化
(1) 常用化の促進
日雇労働者の常用化を図るため健全な求人先の開拓、技能労働者の就労あっせん、港湾労働者への切替え、就労身元保障の代行制度の実施、就労支度金の貸付等を実施する。
(2) 就労あっせん場所の建設、移転、整備
現在の尼崎平野線に沿う路上あっせんは、常に問題が発生し、好ましくないので、地区内に有蓋の就労あっせん場所を建設、移転する。(娯楽施設、理髪室、及び浴室など厚生施設を併設)
(3) 港湾労働者用宿泊施設の設置
港頭、愛隣地区に単身労働者用計800人分、世帯用500世帯分の宿泊施設新設方を国に要望する。
2、住宅並びに宿泊施設の建設整備
(1) 簡易宿所対策を強力に推進する
イ 設備改善
階層式ベット、サービスエリア、衛生設備、換気設備等の居住環境設備の改善措置
ロ 設備改善資金の融資
階層式ベット、サービスエリア(浴室、洗濯場、娯楽室など)、衛生設備、換気設備等の居住環境設備の改善資金の融資措置を要望する
ハ 建設禁止区域の設定
簡易宿所建設禁止区域を設定し、人口過密化防止対策を国に要望する
(2) 単身者用宿泊施設の建設
愛隣地区及び近辺に単身労働者用宿泊施設1,500人分の建設を国に要望する(福祉住宅)
(3) 世帯用の住宅困窮者に対する住宅建設と入居の特別あっ旋(福祉住宅)
愛隣地区及び近辺に世帯用宿泊施設2,000戸の建設を国に要望し、他地区へ退居希望世帯のうち適当と認めるものについて公営住宅入居の特別あっせんを行い、世帯更生の一助とする。
(4) 厚生施設の建設(一般労働者用)
一般労働者の厚生施設として安価な食事提供(食堂)、テレビ、ラジオ、図書、その他の娯楽設備並びに労働者の私物保管設備(ロッカー)等を行う。
3、民生福祉の充実強化
(1) 法的援護処置の充実強化
生活保護法、児童福祉法その他法的援護処置の迅速、適切な処置を行うための体制の強化
(2) 児童福祉施設の充実強化
地区内に保育所、児童館等を建設し、乳・幼児の保育と児童に健全な遊び場と憩の場を提供する
(3) 低所得者対象の内職作業所の開設
家庭経済生活安定のため、愛隣会館内に内職作業所設置する
(4) 地区福祉業務充実強化ための愛隣会館の改装
生活相談その他各種相談業務充実強化のため愛隣会館の改装整備をおこなう
4、教育施設の改善指導
不就学児童の一掃を図るため設置された愛隣小中学校は、教育施設として不充分な点が多々あるので、心身共に健全な児童育成のため運動場とプールを備えた学校を建設する
5、地区環境整備
(1) 道路、公園等の整備と不法占拠建築物の撤去促進
尼崎・平野線他主要道路の必要個所に防犯灯を整備するとともに交通安全柵を設置する
既設公園3ヶ所の整備と公園予定地区の移転対象物件の早期立退を完了し、公園を造成する
(2)都市改造事業の促進と道路整備
不法道路占拠の立退と、区画整理予定地の事業実施並びに未舗装道路の一掃を速やかに行い、地区環境の整備を図る
6、医療態勢の強化
(1)医療機関の充実
当地区の特殊性により、感染症疾患の多発、精神衛生上の問題患者(精神病者、アルコール中毒者他)、労働災害による患者等が多数を占め、一般的見地からの医療行政が困難であるばかりでなく、患者数の急増等から医療機関の充実を迅速に行う必要がある
(2)保険に加入していない者に対する特別施療
労働者約15,000人のうち社会保険加入者率は、約30%と推定され、他の70%の多くは経済的不安定並びに社会保険非加入などの理由のため診療手遅れとなり、不治、死亡に達する者が多いので、これらが救済事業として特別無料施療を行うよう国に要望する
7、治安及び救急態勢の強化
当地区における各種暴動発生の因をなす不良労働者及び暗手配師その他反社会的行動を行う者の強力な取締り、並びに接客業者に対する適切な各種の指導を強力に行うと共に、非常の場合に於ける緊急態勢の推進を図る
8、明るい町づくり運動の推進
地区の各種団体、社会事業施設、並びに関係諸機関(区役所、警察、保健所など)に地元労働者代表をも加えた「愛隣地区環境浄化対策協議会」(仮称)を設置し、地区の浄化実践活動を推進する』(「あいりん地区に於けるスラム対策と現状の問題点」1973年3月、細見 正、私家版による)』