あいりん日雇労働調査報告書 平成212009)年3 財団法人 西成労働福祉センター

はじめに
 あいりん地域は、戦後の高度成長期以来、わが国最大の日雇労働市場と呼ばれ、多くの日雇労働者の就労の拠点となってきたが、近年、あいりん地域の状況が大きく変容したといわれている。
 例えば、あいりん労働公共職業安定所の発行する日雇労働被保険者手帳の所持者は、昭和62(1987)3月末には24,458人であったものが、平成20(2008)3月末には3,045人にまで減少している。
 また、地域日雇労働者の就労状況を見ても、平成2年度(1990年度)9,614人/日が、平成19年度(2007年度)には3,427人/日と大きく減少している。バブル経済期の著しい増加との対比を考慮したとしても、厳しい状況は続くものと考えられる。
 一方、あいりん地域の生活保護受給者は、平成長期不況を経過する中で大幅に増加してきており、「労働者の町」から「福祉の町」の様相も併せ持つようになっている。
 その背景としては、昭和40年代までは製造業が30%台、運輸業も10%と概ね半分が建設業以外に就労していたあいりん地域の就業構造が、昭和50年代以降は建設業に偏った構造となり、加えて、近年の建設投資の減少、建設産業の機械化・合理化の進展などが大きく影響していると思われる。
 このような状況の中で、地域の日雇労働者の就労による自立を支援するため、建設日雇から林業・農業や介護等のサービス産業等幅広い職業へ事業範囲を拡大していくこと、また、福祉による自立を支援するための相談活動等を展開していくことが課題として提起されていると思われる。
 これらの課題に適切に対応していくためには、日雇労働市場としての現在のあいりん地域の現状把握と変容の検証を行い、無料職業紹介事業を始めとして当財団が実施している各種事業の課題を整理していくことが不可欠である。
 今回の調査では、その検討にあたっての基礎となるデータを整備するため、従来の調査対象である当センターの窓口来訪者に加え、簡易宿泊所滞在者や日雇雇用保険の給付金受給者など幅広い労働者を調査対象としたほか、求人事業所に対しても調査を実施した。
 今後は、この調査結果を基に地域の日雇労働者の就労や労働福祉の向上に向けた事業の検討を進めるとともに、関係者・関係機関において活用していただければ幸いである。
 今回の調査に当っては、当財団の役職員、大阪府商工労働部雇用推進室労働福祉課職員、大阪市立大学大学院経済学研究科玉井金五教授、同大学院経済学研究科経済格差研究センター研究員大西祥恵氏をメンバーに実施した。
 特に玉井先生、大西先生には多大なご指導、ご協力を頂いたほか、玉井ゼミの多数の学生のご協力により実施できたものであり、ここに深く謝意を述べたい。
平成21330
財団法人西成労働福祉センター  理事長 市谷 峰男