あいりん日雇労働調査報告書 平成212009)年3 財団法人 西成労働福祉センター

Ⅲ あいりん日雇労働調査集計結果の概要

大阪市立大学大学院経済学研究科

経済格差研究センター研究員

大西祥恵

あいりん日雇労働調査は、1紹介課窓口来訪者調査、2労働福祉課窓口来訪者調査、3技能講習室窓口来訪者調査、4 早朝時の寄場内滞在者調査、5アブレ手当認定者調査、6簡易宿泊所滞在者調査、7高齢者特別就労事業(特別清掃)輪番登録者調査、8平日午後の寄場滞在者調査、9求人事業所調査という9つの調査から構成されている。労働者を対象とした調査はⅠ~Ⅷであり、事業所を対象とした調査はⅨである。なお、労働者を対象とした調査については、調査票がⅠ~ⅦとⅧで若干異なっている。ここでは、あいりん日雇労働調査の集計結果の概要を、これら9つの調査の別に述べていきたい。

1 紹介課窓口来訪者調査

 この調査は、紹介課窓口の来訪者に対して実施されたものである。この調査の回答者は、50歳代の者が相対的に多く、最近1ヶ月で最も多く寝泊りした場所として、6割が簡易宿泊所を挙げている。また、あいりん地域で仕事をするようになったのは、この10年以内だという者が6割を超えている。
 既存の政策とのかかわりでは、日雇雇用保険手帳(白手帳)を有している者が相対的に多かった。一方、高齢者特別就労事業(特別清掃)の対象年齢である55歳以上の者は45分を超えているにもかかわらず、特別清掃カードを持っている者は非常に少なかった。
 多くが建設労働に従事しており、2008910月時点では1ヶ月に現金か契約で仕事をした日数が11日以上だと回答した者が55分~65分ほどみられる。また、収入については、20089月、10月のいずれの月も半数以上が11万円以上の収入を得ている。さらに、21万円以上の収入を得ている者も15分~2割ほどみられる。
 仕事を探す際には、この調査が紹介課窓口来訪者に対するものであることを反映してか、センター紹介課の窓口を利用する者が最も多かった。また、次に多かったのはプラカード求人を利用している者であった。これは、この調査の回答者が、センター、寄場を中心に仕事を探している層だということを意味している。
 一方、会社勤めなど常用の仕事を希望しているかどうかについては、6割近くの者が希望していた。希望している仕事は建設業が最も多く約半数に上っているが、製造業を挙げた者も4割近くいる。そして、常用の仕事に就職するためにどのような支援を必要としているかという点については、多くが「当座の生活資金の援助」や「技能講習」を挙げている。常用の仕事を得るにあたって、給与の支払いが一日ごとではなくなることを見越して当座の生活資金の確保が必要だと考えている者や、さらなるスキル・アップが必要だと考えている者が多数いるものとみられる。また、常用の仕事を希望しなかった者にその理由を聞いたところ、高齢であることを挙げた者が半数に上った。

2 労働福祉課窓口来訪者調査

 この調査は、労働福祉課窓口の来訪者に対して実施されたものである。この調査の回答者には、50歳代後半~60歳代前半の者が多数みられ、最近1ヶ月で最も多く寝泊りした場所として、約半数が簡易宿泊所、約2割が自宅を挙げている。あいりん地域で仕事をするようになったのは、この10年以内だという者が約半数、この20年以内だという者が8割以上を占める。
 多くがこの1年で建設労働に従事しているものの、2008910月時点では現金か契約で仕事をした日数が一日もなかったと回答した者が約4割、収入は1万円未満であったと回答した者が3割~35分ほどみられた。そのように仕事日数が少なかったり、収入額が低かったりする理由は、この調査が労働福祉課の窓口において実施されたことに関連して、回答者のなかに労働災害のために休業中である者が一定数含まれていたからである。
 会社勤めなど常用の仕事を希望しているかどうかについては、半数以上が希望していた。希望している仕事は建設業が最も多く4割強に上っているが、製造業を挙げた者も3割強みられる。そして、常用の仕事に就職するためにどのような支援を必要としているかという点については、多くが「当座の生活資金の援助」、「住宅借り上げの支援(保証人)」、「自分に向いた就職の斡旋」を挙げている。常用の仕事を得るにあたって、給与の支払いが一日ごとではなくなることを見越して当座の生活資金の確保が必要だと考えている者、住宅を借りる際の支援や保証人が必要だと考えている者、継続的に仕事を続けることを想定してか適職を得る必要があると考えている者が多いものとみられる。また、常用の仕事を希望しなかった者にその理由を聞いたところ、高齢であることを挙げた者が多数に上った。

3 技能講習室窓口来訪者調査

 この調査は、技能講習室窓口の来訪者に対して実施されたものである。この調査の回答者のうち最も多いのは50歳代後半の者であった。しかし、若い者も相対的に多く、30歳代、40歳代の者が一定数を占めていることに加えて、今回の労働者を対象とした調査において唯一20歳未満、20歳代前半の者が含まれている。あいりん地域で仕事をするようになったのは、この10年以内だという者が75分を超えている。年齢の相対的に若い者が一定数いることを反映して、あいりん地域で仕事をするようになったのは比較的最近だという者が多いといえよう。
 あいりん地域外に居住している者は45分を超えており、今回実施された労働者を対象とした調査のなかでは圧倒的に高い割合を占めている。また、最近1ヶ月に最も多く寝泊りした場所として自宅を挙げた者が5割近くに上っている。言い換えると、回答者の半数ほどは、あいりん地域の外からアクセスしている者であり、住居は自宅という者が相対的に多いのである。
 既存の政策に関連しては、国民健康保険に加入している者が過半数を占めており、この点でも今回の労働者を対象とした調査のなかでは突出して高かった。また、日雇健康保険への加入者も一定数に上っている。日雇健康保険と国民健康保険が併用の認められていない公的医療保険制度であることを考えると、この調査の回答者の多くが公的医療保険制度に加入していることがわかる。
 他方、日雇雇用保険手帳(白手帳)を作ったことのない者は35分以上、55歳以上の者のうち特別清掃カードを作ったことのない者が85分を占めている。つまり、技能講習室窓口来訪者のなかには、あいりん地域において日雇労働者などを対象として実施されている事業を利用していない者が多数みられるのである。これは、あいりん地域の外から通ってきている者が多いこともあって、既存の制度に関する知識を有していないためだと思われる。というのも、日雇雇用保険手帳(白手帳)について作ったことがないと回答した者に対してその理由を聞いたところ、手帳のことを知らないと答えた者が多かったからである。また、技能講習の窓口での調査であることを反映してか、資格の取得に際しては75分以上が、西成労働福祉センターや職業安定所での技能講習を利用している。
 この1年間の仕事では9割以上の者が建設業に就いていた。2008910月時点では1ヶ月に現金か契約で仕事をした日数が11日以上だと回答した者がそれぞれ65分~7割を占めている。また、収入については、20089月、10月に11万円以上の額を得ている者がそれぞれの月で65分を超えている。さらに、21万円以上の収入を得ている者も15分ほどみられる。
 仕事を探す際には、直接業者に連絡をとっている者が35分を超えている。その関係からか、携帯電話については65分以上の者が所有しており、今回実施された労働者を対象とした調査のなかでは最も高い割合となっていた。
 一方、会社勤めなど常用の仕事を希望しているかどうかについては、85分が希望しており、かなり多かったといえる。希望している仕事としては建設業が7割ほどを占め圧倒的に高い割合を占めているが、運輸業を挙げた者も2割以上いる。そして、常用の仕事に就職するためにどのような支援を必要としているかという点については、技能講習室の窓口で実施した調査であることを反映してか、「技能講習」を挙げた者が55分を超えていた。つまり、この調査の回答者には、スキル・アップを重要だと考えている者が相対的に多いといえる。また、常用の仕事を希望しなかった者にその理由を聞いたところ、高齢であることを挙げた者が一定数みられた。

4 早朝時の寄場内滞在者調査

 この調査は、早朝に寄場にきていた者に対して実施されたものである。多くの回答者は、早朝に寄場に来て仕事を探していたものと思われる。回答者は、50歳代の者が多く、最近1ヶ月では、約半数が簡易宿泊所、25分がアパート、2割がシェルターに最も多く寝泊りしている。あいりん地域で仕事をするようになったのは、この10年以内だという者が半数に上っているが、21年以上前から仕事をしているという者も一定数を占めている。
 多くが建設労働に従事しており、2008910月時点では1ヶ月に現金か契約で仕事をした日数が11日以上だと回答した者がそれぞれ45分~5割ほどみられる。また、収入については、20089月、10月いずれの月も半数以上が11万円以上の額を得ている。さらに、21万円以上の収入を得ている者も15分ほどみられる。
 仕事を探す方法については、手配師を経由している者が最も多かった。また、次に多かったのはプラカード求人を利用している者であった。これは、早朝時の寄場内滞在者調査の回答者が、寄場を中心に仕事を探しており、とりわけ手配師やプラカード求人を利用しているということを意味している。
 一方、会社勤めなど常用の仕事を希望しているかどうかについては、55分以上の者が希望している。希望する仕事は建設業が最も多く約半数に上っているが、運輸業や製造業を挙げた者も25分~3割ほどみられる。そして、常用の仕事に就職するためにどのような支援を必要としているかという点については、多くが「自分に向いた就職の斡旋」、「当座の生活資金の援助」を挙げている。これまで建設業に従事してきた者が相対的に多いことから、継続的に仕事を続けることを想定してか転職の際に適職をみつける必要があると考えている者や、給与の支払いが一日ごとではなくなることを見越して当座の生活資金の確保が必要だと考えている者が多いとみられる。また、常用の仕事を希望しなかった者にその理由を聞いたところ、今のままでよい(仕方がない)と回答した者や、高齢であることを挙げた者が多かった。

5 アブレ手当認定者調査

 この調査は、日雇雇用保険制度に基づいてアブレ手当の認定を受けている者に対して実施されたものである。したがって、回答者には日雇雇用保険手帳(白手帳)に少なくとも2ヶ月で26日分の印紙が貼られている、つまりこの2ヶ月で26日以上日雇労働に従事した者が多数いるとみられる。
 回答者は、50歳代後半~60歳代前半の者が多く、最近1ヶ月では、約6割が簡易宿泊所、2割弱がアパートで最も多く寝泊りしている。あいりん地域で仕事をするようになったのは、この10年以内だという者が半数に上っているが、21年以上前から仕事をしているという者も一定数を占めている。
 既存の政策とのかかわりでは、全員が日雇雇用保険制度を活用しており、そのことに関連してか、今回の労働者を対象とした調査のなかでは日雇健康保険への加入者が最多で4割を超えていた。また、国民健康保険に加入している者も3割に上っている。日雇健康保険と国民健康保険が併用の認められていない公的医療保険制度であることを考えると、約7割は公的医療保険制度に加入していることがわかる。
 多くが建設労働に従事しており、2008910月時点では1ヶ月に現金か契約で仕事をした日数が11日~15日と回答した者だけで7割を超えている。収入のなかには仕事によって得たものと保険給付の両方が含まれていると考えられるが、1ヶ月当たりの収入が16万円~20万円に上っている者が半数ほどに上っている。仕事に就いている日数が多く、収入も相対的に高い層であるといえよう。
 仕事を探す場所はセンターの寄場内が最も多かったが、直接現場に行くと回答した者も35分を超えている。仕事を探す方法についても、55分以上が自分から業者に連絡をとっている。そうした連絡方法を活用しているためか、携帯電話を所持している者も多く、約6割に上っている。これは、アブレ手当認定者調査の回答者のなかに、寄場経由で仕事を得ている者もいれば、寄場を経由せずに仕事を得ている者もいることを意味している。
 一方、会社勤めなど常用の仕事を希望しているかどうかについては、今回の労働者を対象にした調査のなかで唯一、希望しないと回答した者の方が多かった。常用の仕事を希望しない理由としては、高齢であることを挙げた者が最も多かったが、今のままでよい(仕方がない)と回答した者も4割を超えている。この調査の回答者のなかに、現在建設労働である程度の日数仕事をすることができており、アブレ手当も含めてある程度の収入が得られているために、現状で何ら問題はないと考えている者がいるためだと思われる。
 ただし、この調査の回答者が50歳代後半~60歳代前半と比較的高齢の者を中心としていたことを考えると、近い将来、体力の衰えなどにより現在のような形で日雇の建設労働を続けられなくなる恐れもあり、そうした問題に対応するために福祉制度などを整えておく必要があるだろう。

6 簡易宿泊所滞在者調査

 この調査は、簡易宿泊所に滞在していた者に対して実施されたものである。回答者は、50歳代の者が多く、最近1ヶ月では、約9割が簡易宿泊所に最も多く寝泊りしている。
 あいりん地域で仕事をするようになったのは、この10年以内だという者が6割に上っている。
 多くが建設労働に従事しており、2008910月時点では1ヶ月に現金か契約で仕事をした日数が11日以上だと回答した者は65分を超えている。また、収入については、20089月、10月いずれの月も65分以上が11万円以上の額を得ている。さらに、21万円以上の収入を得ている者も1割ほどみられる。
 仕事を探す場所に関連しては、直接現場に行くと回答した者が35分を超えて最も多かった。仕事を探す方法については、業者に連絡をとる、友達の紹介、手配師から声がかかると回答した者がそれぞれ約3割を占めている。これは仕事を得る際に、寄場を経由していない者が一定数いることを示している。
 一方、会社勤めなど常用の仕事を希望しているかどうかについては、6割が希望している。希望している仕事は建設業が最も多く半数以上を占めているが、製造業を挙げた者も25分以上みられる。そして、常用の仕事に就職するためにどのような支援を必要としているかという点については、多くが「自分に向いた就職の斡旋」、「当座の生活資金の援助」、「就職に当たっての身元保証」を挙げている。継続的に仕事を続けることを想定してか就職の際に適職を得る必要があると考えている者、給与の支払いが一日ごとではなくなることを見越して当座の生活資金の確保が必要だと考えている者、就職の際の保証人が必要だと考えている者がかなりいることがわかる。また、常用の仕事査希望しなかった者にその理由を聞いたところ、今のままでよい(仕方がない)と回答した者や、高齢であることを挙げた者が相対的に多かった。

7 高齢者特別就労事業(特別清掃)輪番登録者調査

 この調査は、高齢者特別就労事業(特別清掃)の輪番に登録していた者に対して実施されたものである。回答者には、50歳代後半~60歳代前半の者が多く、60歳代後半の者も1割を超えている。つまり、相対的に高齢の者が多いといえる。最近1ヶ月では、シェルターに寝泊りしていた者が最も多く35分に上っている。その一方で、簡易宿泊所に寝泊りしていた者も相対的に多く25分強を占めている。あいりん地域で仕事をするようになったのは、この10年以内だという者が35分程度いるものの、21年以上経過していると回答した者も一定数に上っている。
 既存の政策とのかかわりでは、この調査が高齢者特別就労事業(特別清掃)の輪番に登録していた者に対して実施されたことが関係していると思われるが、全員が特別清掃カードを有していた。しかし、それ以外の社会保険などについては、加入している者が少ない。
 次に、高齢者特別就労事業(特別清掃)との関連についてみておくと、まず、輪番への参加状況については、いつも来ていると回答した者が9割を超えており、今回の労働者を対象とした調査のなかでも突出して多かった。また、現在の生活が特別清掃を中心に支えられていることもうかがえる。というのも、20089月、10月時点での、現金や契約などいわゆる日雇の建設労働を一日もしていないと回答した者が7割を超える一方で、特別清掃に従事した日数は1ヶ月あたりで3日以上と回答した者が9割近くに達しているからである。それを反映して、同時期の1ヶ月あたりの収入は、1万円~5万円だと回答した者が7割を超えていた。これは、1ヶ月に3回~4回特別清掃に従事した際に得られる収入の額に最も近い項目である。
 では、この層は、高齢者特別就労事業(特別清掃)に従事する前はどのような仕事に従事していたのであろうか。この1年で従事した仕事を聞いたところ、建設労働と回答した者と、仕事には就かなかったと回答した者が多かった。
 なお、この調査の回答者の建設労働に携わる意志についてもみておくと、20089月、10月に現金や契約で仕事をしなかった理由としては、仕事を探したが見つからなかったと回答した者が55分を超えている。つまり、今でも建設労働に就く意志を有しているものの、仕事を得ることが困難な状態に陥っている者が多いのである。
 一方、会社勤めなど常用の仕事を希望しているかどうかについては、半数が希望している。希望している仕事は清掃業が最も多い。これは、この層が普段より高齢者特別就労事業(特別清掃)に携わっていることから、清掃業に関する経験をつんでいたり、自信があったりするためだと考えられる。そして、常用の仕事に就職するためにどのような支援を必要としているかという点については、多くが「当座の生活資金の援助」、「自分に向いた就職の斡旋」を挙げている。給与の支払いが一日ごとではなくなることを見越して当座の生活資金の確保が必要だと考えている者、継続的に仕事を続けることを想定してか就職の際に適職を得る必要があると考えている者が多数に上っているのである。また、常用の仕事を希望しなかった者にその理由を聞いたところ、高齢であることを挙げた者が多かった。

8 平日午後の寄場滞在者調査

 この調査は、20089月の平日午後に寄場に滞在していた者に対して実施されたものである。平日午後に寄場に滞在しているということは、日雇労働その他の仕事にすでに従事していない可能性をうかがわせる。そこで、この調査においては、ふだんの生活とセンターとのかかわりについて把握することを目的とした質問項目についても盛り込んでいた。
 回答者は、50歳代後半~60歳代前半の者が多く、相対的に高齢の者の割合が高いといえる。最近1ヶ月では、55分以上の者がシェルターで最も多く寝泊りしている。あいりん地域で仕事をするようになったのは、この10年以内だという者が45分以上を占めているものの、21年以上経過していると回答した者も一定数に上っている。
 既存の政策とのかかわりでは、特別清掃カードを有している者が6割に上っている。しかし、それ以外の社会保険などについて、加入している者は少ない。
 もともとは建設労働に従事していた者が半数以上に上るものの、現在は調査直前の3ヶ月の平均で、1ヶ月あたりの収入の額が1万円台~5万円台と回答している者が半数を超えている。ここから、すでにあまり建設労働には従事していない層であるとみられる。そこで、ここ3ヶ月で現金や契約以外にどのような仕事をしたかを聞いたところ、高齢者特別就労事業(特別清掃)と回答した者が4割強、特にないと回答した者が35分強、アルミ缶回収等と回答した者が25分強ほどみられた。高齢者特別就労事業(特別清掃)にある程度依拠しながら生活を送っている者が、一定数に上っていることがわかる。なお、特別清掃カードを所持している者に輪番への参加状況を聞いたところ、85分程度がいつも来ていると回答した。
 ふだんの生活とセンターとのかかわりについてみていくと、昼間はセンターのこの調査を受けた場所をよく利用していると回答した者が実に9割に達している。また、センターに週6日~週7日来るという者は65分に上っている。
 ただし、仕事に就く意志を失っているかというとそうではなく、西成センターの窓口の職業紹介事業を利用しているかを聞いたところ、55分以上の者が利用していると答えている。それに加えて、労働者福祉事業や技能講習の利用状況についても聞いてみたところ、労働者福祉事業については4割が、技能講習については1割強が利用していることがわかった。
 センターに滞在する時間帯を知るために、来る時間と帰る時間を聞いたところ、来る時間についてはセンターのシャッターが開いてすぐと回答した者が半数を超え、さらに3割の者は朝のうちに来ていることがわかった。また帰る時間については、シェルターの受付時と回答した者が半数に上り、さらに2割の者がセンターのシャッターが閉まる頃と回答した。この調査の回答者については一定数が、朝から夕方まで一日中センターで過ごしている様子がうかがえる。

9 求人事業所調査

 この調査は、過去5年間にセンターを通じて求人を行ったことのある事業所に対して、実施されたものである。建設業の事業所が9割を占めるとともに、従業員については、10人以下の事業所が半数を超えている。請負については一次下請、二次下請段階で、公共事業と民間事業では民間事業を主とする事業所が多い。つまり、比較的規模が小さく、重層下請構造のなかで下請部分をになう建設業者が多数を占めているのである。また、仕事の量については、今年は例年より仕事が少ないと感じている事業所が多かった。
 飯場については、所有しているところが6割程度に上るが、あいりん地域の労働者の占める割合について聞いてみたところ、2割以下と回答した事業所と、7割以上と回答した事業所が多数に上った。すなわち、飯場におけるあいりん地域の労働者の占める割合は低いところと、高いところの二極に分化してきているのである。
 既存の政策とのかかわりでは、雇用保険に関連して日雇印紙購入通帳を所持している事業所は85分を超えており、建設業退職金共済に加入している事業所は半数弱となっている。また、西成センターとのかかわりでは、センターに事業所登録をしている事業所が10割近くと圧倒的多数に上っている。
 最近3年間にあいりん地域の日雇労働者を雇ったことがあるかどうかを聞いたところ、9割近くが雇ったことがあると回答している。そこで、以下では特に断りのない限り、最近3年間であいりん地域の日雇労働者を雇用したことのある事業所に対して質問した結果について述べたい。
 事業所が雇う全ての日雇労働者のうち、あいりん地域の日雇労働者の割合はどのくらいを占めるのかについて聞いたところ、「75%以上」と回答したところが実に半数近くに上っている。また、5割未満と回答したところも35分を超えている。事業所は、あいりん地域の労働者でほとんどの労働者を占めているところと、あいりん地域の労働者があまり雇用されていないところの二極に分化してきているのである。
 事業所があいりん地域で求人を行う理由を聞いたところ、仕事が増えたときに対応できるよう労働者との顔つなぎや情報を集める必要があるから、急ぎの仕事があるときにあいりん地域以外で探すことができない、あいりん地域外では、日雇労働者が見つからないと回答した事業所が相対的に多かった。
 事業所が最近のあいりん地域の労働者に対してどのように感じているかという点については、1)仕事を良く知っている者の数は普通か少ない、2)技能を有している者の数は普通か少ない、3)資格を持っている者は少ない、4)相対的に必要な者を雇うのは難しい、と述べている。そうしたことも関連してか、西成センターに対する要望のうち、最も高い割合を示していたのは、技能、技術の高い日雇労働者を紹介してほしいというものであった。
 一方、最近3年間であいりん地域の日雇労働者を雇用したことがないと回答した25の事業所に対して、あいりん地域で日雇労働者を募集しなくなった理由を聞いたところ、求人するほどの仕事は無いから、他の方法で必要な人を確保できるからと回答した事業所が半数を超えた。また、今後あいりん地域で日雇労働者を募集する可能性があるかどうかについてこの25の事業所に聞いたところ、わからないと回答した事業所が7割を超えている。