1912(明治45)年6月26日 大阪毎日新聞

開館したる自彊館

 帝国漁油会社重役藤本有信氏発起にて中村府保安課長が万事肝煎役になり 昨年10月より府下西成郡今宮村萩の茶屋にて工事に着手し居たる慈善宿大阪自彊館はコノほど竣成し いまいま 25日開館せり
 コレは先年払下げになりたる曾根崎、難波両署の古建物をソノまま譲り受け改築したるものにて 総建坪320坪2階建て8棟あり 上下30間に仕切り 衛生上の設備に注意し 畳夜具など一切新調し6〜7百名を収容し得る予定になり居れり
 尚ほ同館の主事綱尚庸氏は もと奈良県保安課長たり ソノ後府の防疫事務にも従事し 貧民救済に趣味をもてる人なる由にて 同館は生活に困る無職者を取調べたる上収容し 男子は工場へ通はせ 女子には裁縫、ミシン縫など適当の職を与ふる筈

(補注:「今宮村萩之茶屋」は、現南海電車萩之茶屋駅のことで、最寄り駅を付けて場所を示したもの。現在の地名「萩之茶屋」に建てられたのではない。大阪自彊館本館の位置は、今も昔も変わっていない)