目次

第1 あいりん地区の概況・・・・・・・・・・・・・1

1 地区構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

(1) 沿革・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

(2) 現在のあいりん地区・・・・・・・・・・・2

ア 区画・町名・・・・・・・・・・・・・・・2

イ 面積・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

ウ 人口等・・・・・・・・・・・・・・・・・2

(3) 地域環境・・・・・・・・・・・・・・・・3

(4) 各種営業・・・・・・・・・・・・・・・・3

ア 簡易宿所営業等・・・・・・・・・・・・・3

イ 飲食店営業・・・・・・・・・・・・・・・6

ウ 防犯営業・・・・・・・・・・・・・・・・7

工 風俗営業・・・・・・・・・・・・・・・・7

2 労働者の実態・・・・・・・・・・・・・・・・8

(1) 労働者人口・・・・・・・・・・・・・・・8

(2) 生活態度等・・・・・・・・・・・・・・・9

ア 日雇労働求職者給付金制度の活用・・・・10

イ 福利厚生資金(一時金)制度の定着化・・・11

ウ 傷病手当金制度の活用・・・・・・・・・11

エ あいりん銀行の利用状況・・・・・・・・12

(3) 不良労働者等の現状・・・・・・・・・・・12

(4) 就労形態と就労状況・・・・・・・・・・・13

ア 就労形態・・・・・・・・・・・・・・・13

イ 就労状況・・・・・・・・・・・・・・・16

(5) 労働賃金・・・・・・・・・・・・・・・・18

第2 治安状況・・・・・・・・・・・・・・・・・21

1 犯罪発生検挙状況・・・・・・・・・・・・・21

(1) 刑法犯・・・・・・・・・・・・・・・・・21

(2) 特別法犯・・・・・・・・・・・・・・・・23

(3) 地区特有の犯罪・・・・・・・・・・・・・23

ア 路上における恐かつ等・・・・・・・・・23

イ 刃物使用事犯・・・・・・・・・・・・・24

ウ と博事犯・公営競技法違反(ノミ行為)・・24

工 暴力団犯罪・・・・・・・・・・・・・・24

2 極左暴力集団の動向と不法事犯の検挙状況・・25

(1) 動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・25

ア 釜ケ崎日雇労働組合(釜日労)・・・・・・・25

イ Iグループ・・・・・・・・・・・・・・・27

ウ 日中西成支部釜ヶ崎班(日中釜班)・・・・・29

エ その他の極左暴力集団・・・・・・・・・・29

(2) 不法事犯の発生検挙状況・・・・・・・・・29

3 い集事案の発生状況・・・・・・・・・・・・・30

4 保護活動の状況・・・・・・・・・・・・・・・32

5 集団不法事案の未然防止状況・・・・・・・・・33

第3 防犯対策の推進状況・・・・・・・・・・・・・35

1 各種不法事案の警戒・取締り・・・・・・・・・35

(1) 暴力団の取締り・・・・・・・・・・・・・35

(2) 路上強盗等(いわゆるシノギ事犯)の取締り・35

(3) 常時警戒活動の実施・・・・・・・・・・・36

2 特別警戒警備・・・・・・・・・・・・・・・・36

3 実態把握活動・・・・・・・・・・・・・・・・37

(1) 簡易宿所等における宿泊状況調査・・・・・37

(2) 直行労働者の就労状況調査・・・・・・・・37

(3) 営業実態調査・・・・・・・・・・・・・・37

4 環境浄化活動・・・・・・・・・・・・・・・・38

(1) あいりんクリーン作戦の展開・・・・・・・38

(2) あいりんクリーン推進協議会との連携活動・38

5 広報活動の推進・・・・・・・・・・・・・・・39

(1) 「コーナーだより」の発行・・・・・・・・39

(2) 「一口広報」の配布・・・・・・・・・・・39

(3) あいりんクリーン作戦等の広報・・・・・・39

6 防犯コーナーにおける相談業務の推進・・・・・40

(1) 労働者相談の適正処理・・・・・・・・・・40

(2) 相談受理状況・・・・・・・・・・・・・・40

ア 相談受理件数・・・・・・・・・・・・・・40

イ 年齢・世帯別構成・・・・・・・・・・・・41

ウ 出身地・居住地別状況・・・・・・・・・・42

工 職業別地区定着状況・・・・・・・・・・・43

オ 相談来訪者等の飲酒状況・・・・・・・・・44

7 労働者へのコミユニテイ・ケア・・・・・・・・45

(1) 積極的なCR活動・・・・・・・・・・・・・45

(2) 労働者慰安用テレビの活用・・・・・・・・・45

(3) 週刊誌の無料配布・・・・・・・・・・・・・45

(4) 労働者文庫の利用・・・・・・・・・・・・・46

(5) 労働者奨励金品(善意)の伝達・・・・・・・・46

(6) 七夕祭りの開催・・・・・・・・・・・・・・46

(7) 郷土民芸品等の展示・・・・・・・・・・・・46

(8) 労働者からの詩、俳句等代表作の掲出・・・・47

8 関係機関、団体等による自主活動の促進・・・・47

(1) 簡易宿所業者・・・・・・・・・・・・・・・47

(2) 飲食業者・・・・・・・・・・・・・・・・・47

(3) 西成愛隣会・・・・・・・・・・・・・・・・48

(4) 地域福祉団体等・・・・・・・・・・・・・・48

(5) 西成労働福祉センター・・・・・・・・・・・48

9 雇用関係業者の啓発・・.・・・・・・・・・・・48

(1) 大手建設業者・・・・・・・・・・・・・・・48

(2) 求人事業者・・・・・・・・・・・・・・・・49

10 行政機関への要請・・・・・・・・・・・・・・49

11 関係行政機関の推進施策・・・・・・・・・・・49

(1) 大阪府関係・・・・・・・・・・・・・・・・50

ア 福利厚生資金の支給・・・・・・・・・・・50

イ 常雇化の促進・・・・・・・・・・・・・・50

ウ 地区労働者の雇用促進・・・・・・・・・・50

工 就労正常化の促進・・・・・・・・・・・・50

(2) 大阪市関係・・・・・・・・・・・・・・・・51

ア 冬季における生活困窮労働者の救護・・・・51

イ 環境浄化活動の推進・・・・・・・・・・・51

ウ 結核患者対策の推進・・・・・・・・・・・52

工 簡易宿所等に対する防災設備等の整備促進・53

別 表

第1 その1 地区内における簡易宿所等調査表

その2 簡易宿所実態

2 主要食品等価格

3 主要衣料雑貨価格

4 地区内における泥酔保護状況

5 一時金支給状況

6 求職者給付金(アブレ手当)受給状況

7 公的機関を利用した就労状況

8 簡易宿所等宿泊状況(年別・月別)


1 あいりん地区の概況 

1 地区構成 

(1) 沿革

西成区史等によると、現在のあいりん地区は、その昔、「難波の名呉の浜」とうたわれた漁村であつた。

現在の紀州街道は、浜街道とも呼ばれ、この街道に沿つて釜ケ崎をはじめとする小村落が点在していた。

明治30年4月、大阪市が隣接町村を併合した際、釜ケ崎は南区に編入され、同34年4月に水崎町と改称し、釜ケ崎という正式地名は姿を消した。しかし、その後において南海電鉄本線、阪堺線、天王寺線、国鉄関西線で囲まれた地域(現在の萩之茶屋)が、再び「釜ケ崎」と俗称されるようになつた。

明治36年4月、第5回内国勧業博覧会が天王寺を中心に開催されたのを契機に、日雇労働者や遊芸人などが集まることとなり、今船付近にこれらの人たちを対象とした木賃宿ができたのが「釜ケ崎ドヤ街」の始まりである。大正8年ごろには40軒もの宿屋が立ち並び、更に昭和に入つて堅苦しい生活様式をきらう人たちが流入し始め、人口が激増した。

昭和36年8月1日地域内において発生した交通事故に端を発したいわゆる釜ケ崎騒動が起り、これを契機に種々の地域対策が講ぜられ区域を阿倍野区境まで広げて、昭和41年6月から「あいりん地区」と呼称されるようになつた。

 

(2) 現在のあいりん地区

ア 区画、町名

昭和48年ll月実施の住居表示により、現在は次の5町、ll丁となつている。

花園北1丁目1番〜5番(ただし、5番は1、4、22、27号のみ。)8番及び9番

花園北2丁目1番、2番、7番

萩之茶屋1丁目、2丁目及び3丁目(ただし、3丁目は11番を除く。)

太子1丁目及び2丁目

天下茶屋北1丁目1番〜6番(ただし、6番は7〜15号を除く。)

山王1丁目、2丁目及び3丁目(ただし、三丁目はll番27〜29号、12番28号、20番17〜24号、29号、30号及び21番のみ。)

イ 面積

面積は、0.62平方キロメートルで、西成区の東北端に位置し、西成区全域(7.42平方キロメートル)の約8.4パーセントに当たる狭い地域である。

ウ 人口等

地区人口は、住民登録をしていない労働者等が多く、また居住が流動的であるため、正確な把握は困難であるが、概ね4万1,OOO人と推定されている。
 

(3) 地域環境

国鉄(環状線、関西本線)、私鉄南海電鉄(本線、高野線、阪堺線、天王寺線)、市営地下鉄(堺筋線、御堂筋線)等の鉄道網のほか、市道尼崎・平野線、堺筋線(新紀州街道)、阪神高速(環状線)阿倍野ランプ等の主要幹線道路が交差する交通至便の地であり、通天閣で有名な「新世界」の盛り場や旧飛田新地に隣接している。

また、地区内は南北に縦断する南海電鉄阪堺線によつで二分され、その東側を山王地区、西側を萩之茶屋地区と呼んでいる。

山王地区は、売春・覚せい剤事犯等が多く暴力団関係者も多く居住している。

一方、萩之茶屋地区は、多数の日雇労働者が、居住し簡易宿所、日払アパート、飲食店、遊技場、質屋・古物商等の各種営業が集中している。

(4) 各種営業

ア 簡易宿所営業等

地区内における宿泊施設は、次表のとおり総数532軒であるが、これらの中には、狭い部屋、通路等、防災上の問題が依然として残つている。しかし・数度の火災が警鐘となつて、関係行政機関による強力な指導取締りが促進され、これに呼応して簡易宿所組合においても安全営業を目指して改善に努めるなど、徐々にではあるが営業の近代化に脱皮しつつある。

  業 態 別 宿 泊 施 設  
種別 総数        
区別 簡易宿泊所 日払アパート 一般アパート 旅館
532軒 189 43 270 30
収容能力 24,463人 17,674 2,310 3,942 537
 

(ア) 労働者の宿泊状況

日雇労働者の殆んどは、簡易宿所、日払アパート及び一部の月払いアパートを生活の拠点としている。

これらにおける宿泊状況は、別表第1及び第8のとおり年々減少傾向を示している。

昭和56年中も1万1,000人台ないし1万2,000人台と宿泊者数の少ない月が多く、年間平均宿泊者数では、前年より980人少ない1万2,824人となつた。

しかし、あいりんの里帰り月といわれている8月と12月の調査は前月対比2,500人前後増加している。
 又、宿泊者の中には妻帯者もいるが、女、子供の宿泊者数は、年間平均454人(宿泊者総数の3.5%)と極めて少ない。 

(イ)簡易宿所の構造設備簡

易宿所の構造及び設備状況は、過去5年間で次表のとおり変遷した。

鉄筋造りが52年に比べ11%増えて全体の54%に達し、冷暖房等の各種設備もわずかずつであるが改善されている。


(ウ) 宿泊料金

宿泊料金は次表のとおりであるが、諸経費の上昇に伴つて20円から500円(平均100円)程度値上げされている。なお、新築鉄筋5階建の場合の料金は1,300円から2,500円となつている

  宿 泊 料 金  (単位:円)
区分 最低(円) 最高(円) 利用度の高い料金
種別
1  畳 200 680 500
2  畳 300 1,000 700
3  畳 380 2,300 1,000
4.5畳 550 3,500 1,200
5畳以上 750 3,500 1,700
箱 形 200 450 350

イ 飲食店営業

(ア) 営業種別

地区労働者の食生活の場となる各種飲食店は、次表のとおり716店で、そのほとんどが萩之茶屋地区及び太子地区に集中している。

(イ) 主要食品、主要雑貨価格

昭和56年12月現在の主要食品価格及び衣料雑貨価格は、別表第2及び第5のとおりで、前年同期に比べいずれも幾分かの値上がりがみられた。

 

ウ 防犯営業

次表のとおり、279店(前年295店)の防犯営業が、狭い地区内に密集し、一般的に斜陽化傾向にある質屋にあつても、労働者の利用が続いている。

また、古物商は大半が店舗営業であるが、地区特有の露店営業も少なくない。これらの露店形態の中には盗品を青空取引きする通称「立ちん坊」が現出することから、ぞう品捜査の拠点ともなつている。

工 風俗営業

次表のとおり総数72店で、前年に比べ小料理店が2店、小カフェー、麻雀店も各1店増えた反面カフェーが1店減少した。

また、ばちんこ遊技は依然として労働者の根強い人気を得ているが、従来、客の接遇をめぐるトラブルや、これに起因するい集事案の発生をみているため、営業者に対して接客マナーの向上についての指導に配意しているところである。