【 昭和50年2・3月定例会常任委員会(民生保健・通常予算)-0307日−05号 】

◆栗須斉委員 

 それで、資料いただきましたんですが、あいりん地区の労働者の実態。この人口は、あくまで推定だと思うんですが、現在何人ぐらいが付近に住まっておるのか、その辺のところを。

◎藤野民生局福祉部主幹 従前愛隣地区には、2万人ほどの労働者がおると推定されておったわけでございますが、現在は、1万3,000人程度があの地区に住んでおる。こういうような実態でございます。

◆栗須斉委員 その1万3,000人の現時点の就労状況は、どういう状態ですか。

◎藤野民生局福祉部主幹 現在、四つのグループがあるように聞いております。

 職安グループが、約2,000。それから、西成労働福祉センターをグループといたしておる者が、1,000。それから、直行グループと申し上げまして、これはそれぞれの現場に直行いたしておる労働者でございます。約6,000。その他、いわゆる手配師等で就労いたしておる者が、4,000人程度でございます。

 就労日数は、大体月167日。こういうように聞いおります。

     栗須斉委員 そうしますと、実際に職に付いていない、あぶれているという人口は、日に何人ぐらいおるわけですか。

◎藤野民生局福祉部主幹 大阪府労働部の調べによりますと、日に大体2、3百人程度があぶれておる。こういうように聞いております。

◆栗須斉委員 ここでお伺いしたいのは、この周辺の民間経営の簡易宿泊所と、これらの労働者の実際に宿泊している状態。つまり、お聞きしたいことは、宿なしにうろうろしている人口がいったいどのぐらいあるのかということをお聞きしたいわけです。

◎藤野民生局福祉部主幹 あの地区で収入がなく、うろうろしておると申し上げますか、そういうような者が、あの地区内の公園に約230人おる。こういうように聞いております。

◆栗須斉委員 ちょっとその辺が、情勢の把握が、間違っているんじゃないかと思うんです。

 公園には230人うろうろしているということなんですけれでも、実際の推定人口と、今の簡易宿泊所に宿泊している人口のパーセンテージからいいましたら、大体満てておるようなんですけれども、その辺のところは、もともと全推定人口が、実際に確実につかんでいるのかどうかという点に、疑問があるわけです。その点に、この愛隣地区対策のむずかしさがあろうと思うんですけれども、私がお聞きしたいのは、実は年末年始に掛けて、全国から、愛隣地区にたくさんの労働者が集まったということをお聞きしているんです。

 年明けと同時に、多数の人々がどこかに散って行ったという関係があるように聞いておるんですが、その年末年始人口と、現時点の人口というのは、どのくらいの差異があるんですか。

◎藤野民生局福祉部主幹 年末年始には、いわゆる近郊の箱番と申し上げますか、これが閉鎖されるわけであります。したがいまして、それぞれの箱番から愛隣地区に里帰りをしてくるという実態でございまして、これも確実な数はつかんでおりませんが、推定約2万人程度あの地区に年末年始おった。こういうように聞いております

◆栗須斉委員 この2万人近い人口が、13,000人だと推定しているわけなんです。それが地方に散った、といわれるわけなんです。

 しかし、今日、これは各区の議員がお感じになっておるところだと思うんですけれども、ほうぼうの地区の公園に浮浪者がたむろしている状態が、頻々として区民の苦情としてわれわれの耳にはいってくるし、現実にわれわれが見ておるわけなんです。

 そういう愛隣の不況で仕事にあふれた、宿もない人口が、都心部各公園に流れているというような、そういう感じは、行政のほうでは、しておらないわけなんですか。

◎高野民生局福祉部長 愛隣地区の労働者の方々が、現在仕事がないということで、一日2300人の方々があふれているということでございます。

 しかしながら、現実に公園なり、あるいは地下街なり、あるいは高架下等におる、現在の住所不定の方々は、愛隣から流れた方々であるということは、必ずしも断定できないと思うわけです。

 と申しますのは、地下街なり、あるいは高架下におられる方のいろいろ各機関を通しました話を聞いてまいりますと、やはり全国的な不況という面から、家族を離れ、あるいは仕事を離れて、そういうような形で大都市周辺に集まってきておるというのが、現状ではなかろうか。そういうぐあいに推察をしておる次第でございます。

◆栗須斉委員 そうすると、愛隣地区に労働者が蝟集する、あるいはまた別な角度から、全国の落武者が市内にはいってきて、公園に別な形としてうろうろしている。こういうことなんですか。

◎高野民生局福祉部長 愛隣地区から流れるのも、これはいくぶん私はあると思いますけれども、大体7、8割は、他都市からの流入者というぐあいに推察しております。

◆栗須斉委員 いずれにいたしましても、現実の問題として、最近とみに各公園に浮浪者が多くなってきたという、この実態。それから、愛隣地区で実際に把握できない流動的な人口、これがあちらこちらへ、市内に流れ込んで行っている。

 その関係が、私は市長さんにお尋ねしたいのは、この資料いただいた中で、全人口の約1割に近い人数が、毎日入院を繰り返しているという状態です。これは実際、愛隣地区だからということでは、一言にむずかしいんだということで、放置できないもんだと思うんです。

 お聞きすると、毎日2,000人ぐらいが入院しているけれども、それは一ぺん行ったら、また帰ってきて、繰り返しやいうんですけれども、しかしそれをよく分析してみると、2,000人がはいって、1,000人帰ってくるとしたら、毎日2,000人の入院患者がおるんですから、さらに新しい患者が1,000人加わっとる。逃げ出してきた1,000人がまたうろうろしているというようなことで、実際に入院対象になるのが3,000人ぐらいあるという勘定に、これは単純な計算になりますけれども、そういうことが感じられるんではないかと思うわけです。

 同時に、市内でたくさんの行旅死亡人がおりますね。これはやっぱり愛隣地区から、職にあふれ、あちらこちらに流れて行く。あるいはまた、今いう新しい角度から、浮浪者として市内に流入してきた浮浪者が、行き倒れになって死んでいるというような、こういうたくさんの形が、実際の数として現われてきております。これはまったく善良な市民の負担になっているようでありますけれども、実際にはこれが、いうところの弱者でなかろうかと思うんです。

 ですから、単に、浮浪者対策はむずかしいんだということをすぐにいわれてしまうんですけれども、だからといって、この問題は放置できないと思うんですけれども、市長さんのこれに対するご見解をお聞きしたいと思うんですが。

◎大島市長 いわゆる愛隣対策のむずかしさ、複雑さというのは、まさに今栗須議員がるるご指摘になったようなところにあるのではないか。すなわち、定住、常住、必ずしもそういう形でないということ。事情がきわめて多種多様であるということ。でありますから、把握そのものもむずかしい状況で、まことにむずかしい問題でございますが、私は、ただいまご指摘の愛隣地区の各種の問題にいたしましても、あるいはその他の公園等における浮浪者問題。この基本的な原因と申しますか、そうした発生の基本的な原因は、私はやはり労働問題、失業問題にあると考えております。

 もちろん、労働問題、失業問題以外から出てまいります問題も、数多くはございます。ございますけれども、私は基本的には失業問題。失業問題と申しましても、顕在失業の問題もあり、潜在失業の問題もあり、あるいは相対的な労働時間の短縮の問題もあり、あるいはそうした正規の常用的な労働問題以外の、臨時的な就業の減少とか、いろんな形の失業問題が根本であろうかと思っております。

 でありますから、基本的には私は、労働対策、失業対策というものを、政府等においてしっかりやってもらうということが、いちばん肝要なことだと存じますが、しかしそうした結果生じてきます社会問題というものは、やはり市民という形で、直接市政に、市政の問題として生じてくるわけでございます。

 なかんずく、私は今ご指摘の衛生の問題、これが私どものいちばん重大な関心を持つ問題でございまして、ことに結核の問題、これが大きな問題であろうかと思います。もちろん、ただいまお話のございましたような、入院いたしましてもすぐ帰るとか、いろいろ問題もございます。そういう問題もありながらも、しかし全体として、そうした衛生の問題、結核の問題というのは、やはり大きな問題でございます。

 そうした問題についての対策、これはなかなか広範でむずかしい問題でございますけれども、やはりじみちな努力をいたしてまいらなければならないのじゃないかと思います。

 でありますから、愛隣対策のむずかしさというものは、一方において、非常に全体的対策が必要であると同時に、他方において非常にきめの細かいというか、一人一人について事情を聴取し、その事情に対応するような施策、そうした両面のきめの細かさとを持たなくちゃいかんという点が、むずかしい点であろうかと思いますが、ご指摘の、いろんな出てまいっております現象というものは、なかなか放置を許されない問題でございますから、今後ともさらに努力を続けてまいりたいと考えております。

◆栗須斉委員 おっしゃるように、労働問題が基本になるということなんですが、年末年始に職員の皆さんが、24時間勤務で、何週間もこれに当たられたというご努力、私どもは評価するわけなんです。

 そこで、実際にその衝に当たっておられる民生局は、何か国なり府なりに、大きな声で物申したいような感じがしているんじゃないか、という感じがするんです。今おっしゃるような労働問題にいたしましても。

 その点では、まったく府市協調でやってもらわなきゃならんと同時に、根本には国の問題がありますけれども、府はいったいどこ向いて仕事しているのかというような強い感じが、私どもはするわけなんですが、その点局長と部長、どんなお考えですか。一ぺんお聞かせ願いたいと思います。

◎内山民生局長 先日も愛隣対策については、いろいろご質問にお答えしたわけでございますが、私たちは先ほどご指摘のように、治安の問題は警察、労働の問題は府、福祉の問題は市ということで、三者で会談を持っておりまして、1年に約10回ばかり、三者会議というのを持ちまして、いろいろその問題については討議をいたしております。

 特に年末につきましては、簡易宿泊所、いわゆる臨時宿泊所設置につきまして、やはり治安の問題もございますので、何べんも何べんも三者会議を開きまして、結論に達するわけでございます。

 また、国に対しましても、たえず物を申しておりますのは、私ども一人だけでは力が足りないということで、横浜の寿町、あるいは・東京の山谷、大阪の愛隣地区の三者を、特別地区に指定していただきたいということで、厚生省にたびたびお話を申し上げておるわけでございます。今後とも、さらに努力を続けていきたいと思います。

◆栗須斉委員 先ほど申し上げましたように、過日のテント村の問題もございましたが、ああいう新聞の取り上げ方、あるいはテレビの放映等については、ちょっと私ども納得いかない点があると思うんです。職員が一生懸命やっておるという事実もございますし。

 しかしながら、先ほど私が訴えておりますように、やはり放置してはおけない、社会的な問題があろうと思うんです。したがって、テレビのディレクターなりマスコミの記者なりが、やっぱり社会的問題として何か訴えているという、そういうとらまえ方を、われわれ議員なり、あるいは行政の皆さんが受け取って、真剣にこれに対処していくという努力が、なお必要ではないかと思いますので、せっかくご努力お願いいたしたいと思います。

 それで、その浮浪者の問題でございますが、実は市長さん、この浮浪者が非常に多くなってまいりまして、公園愛護会の皆さんが、市民の公園だから、そんなとこへふとん持ってきたりしないで、きれいにしてもらいたい。あるいは、通り掛かった婦女子に相手になるんで、若い衆が何をするんやということで、そこへ走って行くと、殺したろうかということをいうわけなんですね。家に火付けたろかというような、こういう脅迫めいたこというわけなんです。こう、いうてみれば、浮浪者がうろうろしているという事態は、典型的な民主国家で、何の法の束縛も受けないという、一つの現われだろうと思うんですけれども。

 また、一面考えてみれば、こういう浮浪者がおるという自体、昔物もらい、こじきというのがありましたが、こういうこと自体が、国の労働政策なり福祉政策が行き届いてないという、こういう一面も持っているんではないかと思うんです。

 したがって、このように自由奔放に生きている浮浪者が、市民生活を圧迫するというような事態は、これは異常な事態だと思うんで、非常に困ったもんだと思うんです。

 したがって、この都市の美化という観点に絞ってまいりますと、この浮浪者が、公園にふとんを敷いて寝ておる。あるいは私鉄のガード下に、箱の居宅を造って、住んでおる。街をきたなくしている。こういう事態を考えてみますと、ほんとうに困ったもんであるという感じがするわけなんです。

 そういう点も、民生局の問題と関連して、今申し上げておるわけなんですが、それはさておきまして、あとで、その点と結び付けて、ご見解をお聞きしたいと思うんですが。

◆栗須斉委員 環境基準達成については、56年まで。さらに目標23年でも短縮してやりたいというような、積極的な見解をお聞きしたわけなんです。

 せっかくご努力をお願いしたいと思いますが、問題は、やはり見た目にきれいになるかどうかという問題なんですが、これについても、鋭意努力をされるようでございますが、いろいろと浮浪者の問題と、河川の問題も取り上げてみたわけなんです。

 実際は、清掃の不法投棄の問題等にも触れたかったわけなんですが、これらのものをひっくるめて考えてみますと、国際都市にふさわしい大阪市にするという、大きなスローガンがあるわけです。国際的な大阪にするということには、産業経済の問題もありましょうし、一つには、やっぱり街の美観、都市の美観という問題があろうと思うんですが、そういった点では、みんながせっかく努力しているのに、ちぐはぐな感じがするわけです。中には、各局が連携してやらんと処理ができないような問題もあるわけなんです。

 私どもも、この浮浪者の箱車を一掃するために、各局集まってもらって、区長さんの音頭取りで、土木局あるいは環境事業局、あるいは警察、こういうような役所が一体となって努力をして、箱車をのけたという、そういうようなこともあるわけなんです。

 それから、不法投棄の問題についても、これを取り締まるために、お聞きしていると、夜間、環事局が網を張る。そのために警察も協力をしてもらう。しかしながら一つも不法投棄、網を張っているときには掛からないというような問題があったりするんですが、今いう箱車にいたしましても、道路管理の問題もあろうと思うんです。この道路管理の問題は、警察の道交法の関係もあると思うんです。

 そうして見ますと、すべての局が連携を保って、一体になって運動を進めんと、どうにもならんという、都市の美化についてのむずかしさがあるんではないかと思うわけなんです。

 ここで市長が、前年もそうでしたが、街の美しさを取り戻すということをいわれておるんですが、今年こういう、世界の大阪にふさわしい街づくりをするということをうたっておられるわけなんですが、いったいこれに対応する対策、機構なり、あるいは連絡協議会とでもいうか、そういう各局の連絡体勢、そういうものをいったい考えておられるのかどうか。実際に世界の大阪にふさわしい街づくりをするための熱意というものを、お聞かせ願いたいと思うんです。

◎大島市長 ただいま栗須委員から、都市の美観という観点からいたしまして、各種の問題を提起され、ご質疑を賜わり、またご所見をいただいたわけでございますが、この都市の美観というものは、各般による総合的な問題でございますし、同時にまた都市の美観というものは、たとえば水でありますとか、緑でありますとか、そういう非常に目立つ問題と申しますか、ポイントがある問題であろうかと思います。

 先ほど来ご指摘になりました水の問題にいたしましても、川の問題として、あるいは大阪湾の水の問題として、都市の美観に非常に大きなウエートを持つポイントの問題でございますが、ただこうしたむずかしい問題になればなるほど、およそ一般的に行政というものは、それぞれ組織上一定の限られた職分を持っておるけれども、その対象である事態そのものは、きわめて広範な関連性を持っておる。したがって、一般行政全体につきましても、総合連絡、総合調整ということは、必ず必要なことでございますけれども、特にむずかしい問題ほど、私はそうしたことが、なおさら必要なことだと思うのでございます。

 したがって、ご指摘のとおり、都市の美観の問題でも、特に大事な問題、たとえば愛隣対策の問題にいたしましても、水の問題にいたしましても、それこそ市役所各局の間の緊密な連携、総合調整というものは、特に必要であろうと思うのであります。

 そうした意味合いで愛隣対策につきましても、大阪市役所内の各局各部の連絡機構も作り、また大阪市役所のみならず、大阪府、政府、警察、その他との関係官庁の連絡機構も作って、鋭意努力いたしておるところでございます