【 昭和50年2・3月定例会常任委員会(民生保健・通常予算)-03月03日−02号 】
◆薩摩夘三郎委員 それでは、年末と年始につきまして、非常に新聞を騒がせました愛隣問題について伺いたいと思います。
実は先だって私どもの知り合いの天理教の非常に有力な方から忠告を受けたわけでございますが、越冬といいますか12月から1月につきまして、天理教の有志的なボランティア活動といいますかお世話をいただく方々が身の危険を顧みず市の行政のお手伝いをしたわけでございますが、これも先ほど市長との討論の中でも新聞批判をしたわけでございますが、心ない新聞が非常に天理教の人々が逃げて行ったという表現をなさったことにつきまして、天理教の人々が非常な憤慨を持っているわけでございます。ともすれば、新聞の論調は行政が悪い、天理教が逃げて行ったというふうな扇動的な論調は比較的書きやすいと思うわけでございますが、私はやはり、世の中を明るく楽しくすることは、行政ももちろん当面の責任者ですが、報道機関もいろいろな形で啓蒙運動といいますか、お手伝いしていただけたらありがたいなと思うわけでございますが、その問題が1点とそれと、この天理教の話を聞いていますと、年末に急に難問題の現場に天理教の方々をお手伝いただいたということで非常な混乱があったということが事実らしゅうございますが、私は急きょ、12月とか1月にお願いするというような形ではなしに、少なくとも暖いといいますか、9月、10月という時期に、お正月、せっかくのお休みを犠牲にしてまで市にお手伝いいただく方に、愛隣の実態あるいは非常にきびしいんだというふうな、トレーニングといいますか、心づもり、あるいはその現場に対する勉強会というふうなものがあってもよかったんではなかろうかというふうに思うわけでございますが、局長さん、あるいはご担当の方に、逃げていったという、天理教の名誉のためにも真実をいうていただきたいことが1点と、来年以降のボランティア活動に対しての、どうあるべきかということについていっていただきたいと思います。
◎高野民生局福祉部長 ただいまの問題でございますが、大阪市におきまして、愛隣地区の労働者が年末年始にかけまして、全国から飯場が閉鎖するために、愛隣地区に戻ってまいるわけでございます。簡易宿舎の収容等も関連があるわけでございますが、実際に宿舎に泊まる能力のないという方が非常に多くあるために46年以来、年末年始にかけまして、労働者の方々の野宿を防ごうという大きな意味合いから、大阪市におきまして臨時宿泊所を開設しておるわけでございます。今年は社会的な非常な不況のために非常に多数の方々が臨時宿泊所にはいったわけでございまして、当初、われわれは1,200人ほど予定しておったわけでございますが、30日の日に1,300人ほどの方々が来られたという現状でございました。そこでこの臨時収容施設は5カ所開設いたしまして、昨年に引き続きまして藤沢会館も開設したわけでございますが、この臨時宿泊所の場所の選定なり、あるいは施設の選定につきましては非常に困難性がございまして、いろいろ苦慮したわけでございますが、大阪市が現在持っております体育館でありますとか、あるいは学校であるとかという施設等もいろいろわたりまして、開設すべくやったわけでございますが、なかなか困難な面がございまして、結局、旧栄養学院跡なり、あるいは大阪港宿泊所の施設なり、それらを用意いたしまして、30日から開設したわけでございます。
ただいま委員からのご指摘の天理教の件でございますが、この方々に対しましては11月の初旬に、ちょうど期間が正月でございますので、なかなかボランティアとして働いていただく方が非常に少ないという面がございますので、いろいろ一昨年以来のボランティアの方々等にも当たったわけでございますが、なかなか人を得ることができないので、11月の上旬に天理教に私が行って、実はお願いしてまいったわけでございますが、そこで天理教の方々が天満の宿泊所と藤沢会館につきまして、期間中をお手伝いいただいた、それから大阪港の宿泊所につきましては4日以降お手伝いを願ったわけでございますが、宿泊所の内部の問題で、いわゆる釜ケ崎の越冬対策委員会というのがございまして、これらの方々が、施設内におきます処遇の改善なり、あるいは労働者にします処遇につきまして、いろいろと中において集会を開き、実際に所長等もみんなの前に出しまして、いろいろな話し合いをするという場面が出たわけでございますが、他の大阪港以外の施設におきましても同じような状態が出たわけでございます。ちょうど大阪港におきましては、4日のはじめ、それまで3日までは釜ケ崎協友会というキリスト教団体にお願いしておったわけですが、4日になって天理教の方に交代していただいたわけでございます。ちょうど30日から3日までの間におきます各施設とも非常に秩序的な面であまり好ましくない結果が非常に多く出ておるという現状でまいったわけでございますが特に大阪港につきまして協友会と交代の時期から施設内が非常に混乱とはいきませんが、一部の扇動者によりまして、労働者諸君がそれに扇動されているというふうな現状が出たわけでございます。そこで4日の日を越しまして、5日の朝だったと思いますが、そういう施設内の状況をわれわれが判断して、ボランティアである天理教の方々に非常にご迷惑がかかるというのを判断いたしましたので、天理教の指導者の方々に事情を説明いたしまして、そしてとりあえず施設から出ていただいた、したがいまして、大阪市のわれわれの意思で天理教の方々にその施設から出ていただいたというのが実情でございます。それが新聞記事にああいう形で出たわけでございまして、そういう点で天理教の方に対しましてまことにご迷惑をかけたわけでございますが、実情はそういう現状でございます。
それから第2点でございますが、いわゆるそういうボランティアの方々を従事していただくためには事前に十分実情をお話しなければならないではないかということでございますが、委員のおっしゃるとおりだと思うわけでございますが、何分、年末年始の期間中働いていただく方々が非常に少ないというので、あっちこっち交渉しながら、結局11月の中旬になったわけでございます。先ほども申し上げましたとおり、11月の初旬に大阪の天理教の教区の区長さんにお話して、それと同時に教区のそれぞれの理事の方にお会いいたしまして、46年以来の臨時宿泊所の性格なり、あるいは運営等につきましていろいろご説明申し上げたわけでございますが、幹部の方々は一応持ち帰って検討するということで、検討していただいた結果、快く引き受けていただくということになったわけでございますが、幹部の方々に対しましてはいろいろ事情をご説明申し上げたわけでございますが、天理教の方々が、それぞれの施設に来られる方々が日によってみんな違う方が来られたという面がございます。そういう面でこちらの天理教の方々に対します実情説明というものも不十分な点があったということを反省しておるわけでございます。今後の問題といたしましては、これは愛隣地区のいろいろな基本的な問題にもかかわる問題もございますので、来年につきましてはボランティアの方々にお願いするか、あるいはまたほかの方法をとるか等、これから3カ月ないし4カ月かけまして、十分検討してまいりたい、そのように考えております。
◆薩摩夘三郎委員 せっかくお正月の休みを犠牲にされてまで大阪市のため、また、愛隣地域のためにご苦心いただいた方々が、逃げたという、非常に名誉を損ねるような表現をされたことを、私は非常にお気の毒だと思いますが、ただいまの部長のお話で真実はこうであったということが十分わかりました。
さて、私は当問題を実地調査するために単身港区の現場へ行ってまいりましたが、建物はマジックといいますか、スミといいますか、非常に落書きが多いというようなことでございまして、やはりみんなの施設はみんなで大切にしょうというようなことも越冬なさる人々にも啓蒙することも必要ではなかろうか、それは言うはやすく、なかなか行なうはかたいことでございますが、せっかくの施設が相当傷んでいるという実情をまのあたりに見てきたわけでございます。
さて、北の例の衛生研究所のほうにも冬を越す施設がつくられたわけでございますが、あれにはいかほどのお金がかかったのかというようなことが地元で一つの話題になっております。と申しますのは、わずか短期間のうちに、あるいはトイレをつくったり、あるいは風呂をつくったり、あるいはプレハブをつくったりという、相当多額のお金を投入したであろうときに、毎年このようなやり方をするのか、あるいはもっと固定的な建物のほうが長期的に安くつくのではなかろうか、または、建築するだけのお金をそれらの必要な方々に宿代、または食事代として現金支出したほうが安くつくのではなかろうかというふうな地元の、全体がわからない市民的な意見かもわかりませんが、そういうような意見もございましたことについて、ご担当の方々にそういう意見をどういうふうに説明されますかお伺いしたいわけでございます。
◎藤野民生局福祉部主幹 天満の臨時宿泊所の経費でございますが、まだ精算確定金額は出ておりませんが1,680万円程度でございます。なお、これにつきましては先ほど部長も一部お答えいたしておりますが、恒久的な施設、また年末年始の遊休施設等の活用ということで、約30カ所の施設につきまして協力方を要請したわけでございますが、なかなか各施設の事情もあり、協力が得られなかったということで、やむを得ず、大阪自彊館なり、長柄の寮、衛生研究所の跡にプレハブの施設を建てまして臨時対策を講じた、こういうことでございます。来年以降につきましては、できるだけ恒久的な施設で越年対策を実施するようにいたしてまいりたいとかように考えております。
◆薩摩夘三郎委員 先ほど愛隣問題について質疑が終わったわけでございますので、今度は環保局でございますが愛隣問題に関しましてお尋ねいたします。
私の尊敬するお医者様の井上先生とおっしゃる方から、愛隣地域の結核の問題につきまして貴重な論文をいただいているわけでございますが、この論文、非常に私ども医学にはうとい人間でも、これは大変だなというふうなことがこの内容に示唆されているわけでございますが、いま結核患者は10年前に比べますと、全国的には半分以下に減少しているというふうに統計は示しているのでございますが、大阪市においてはまだまだその数は多いように思われます。特に愛隣地区に多く見られるということがこの論文に示唆されているわけでございますが、そこで環保局といたしましては、この大阪市民全体についても非常にゆゆしき愛隣の結核問題につきまして、実態がどうか、そして今年度の予算でどういうふうな対策をお持ちであるかということをお聞きしたいわけでございます。
◎水原環境保健局保健部保健衛生課長 大阪市におきます結核患者の現状でございますが、先生ご指摘のとおり、全国的に最も率が高いわけでございます。数字的に全国平均と比べまして、10年近い遅れがある。いちばん新しい昭和49年の数字でございますが、49年中1年間に新しく結核患者に登録されましたのは、大阪全市6,409名になっております。この中でうつる危険が非常に多い、いわゆる感染性でございますが、2,055名、ただいまの愛隣地区でございますけれども、813名が愛隣地区になっております。昨年の12月31日現在の全市の結核登録患者が3万6,298名、このうち愛隣地域の患者が1,738名になっております。なお、感染の危険のある結核患者は全市で6,216名、愛隣地域が695名。愛隣地区の結核患者は全国から流入するケースが多ございます。私どもといたしましては全市的な対策といたしまして、いわゆる感染源対策、それと早期発見のための健康診査、予算で申し上げますと医療費の公費負担につきましては、40億の数字があがっております。大阪市内の中でも特に問題になります愛隣地域の対策といたしまして、従来一般地域では年1回やっております結核のレントゲン検査、これを特に重点を置きまして、愛隣地域では毎月1回定例的に、年12回でございますけれども、検診を実施いたしまして、その際、いろいろな衛生教育なり、また療養のやり方といった面もあわせて、現場でも行なっておるわけでございます。もう一つ、患者の療養教育のために愛隣の厚生相談所の一室にございます西成保健所の分室で療養相談コーナーを昨年の2月から実施いたしました。いわゆる結核の専門医によりまして、現在のところ週3回でございますけれども、患者さんの療養サイド、あるいは療養方針等の指導を行なっておるわけでございます。
◆薩摩夘三郎委員 ただいま当該地域ではその他の地域よりも検診が非常に充実しているという説明を聞いたわけでございますが、それはいわゆる夜間人口といいますか、愛隣地域以外の西成の付近住民もよその地域よりも多く結核の検診を受けるという制度になっているわけですか。
◎水原環境保健局保健部保健衛生課長 一般的には各校下毎に年1回という法に定められました検診を実施いたしておるわけでございます。主として愛隣の労働者を中心にただいま申し上げました月1回の検診、これは人が入れかわるというふうなことで、その前の月にお受けになった方は除外するわけでございますけれども、こういう形で機会を多くし、できるだけ早期発見につとめておるわけでございます。
◆薩摩夘三郎委員 それは地元にお住いのいわゆる愛隣の労働者でない方々に対してももう少しきめのこまやかな充実したご配慮をしていただいたほうが結核菌というのは感染といいますか、非常に付近の住民に危険な要素を持っておりますので、そのことにつきまして十二分にご配慮いただけたらありがたいと思います。
◆辻昭二郎委員 時間もかなり押し迫っておりますので、多くの点に触れることは無理かと思いますが、二、三、議論の中から、将来への指針を私自身も知りたいと思いますので、質疑をしてまいりたいと思います。
先ほど薩摩委員からお話がございました愛隣地区対策について、若干お伺いいたしたいと思うわけでございます。かねてこの愛隣地区の問題については、分散論を取るか、また集中論を取るか、市会において種々論議をなさってきた問題であるわけでございますが、しかし、極言をいたしますと、大阪市の社会福祉そのものがどんなに充実をしょうとも、大阪市内であの愛隣地区が厳然として今日の状態をなお続けるということになれば、大阪市の福祉対策はなっていない、こういうように極言されてもいたしかたないのではないか。まずあの地域がわれわれ委員側が熱望いたしますように、ほんとうに人間性豊かな町になるのが、これはいいかえると、大阪市の民生事業がどこまで浸透したかのものさしになるのではないかと私自身もそういうふうに考えておる次第でございます。ただ、最近非常に疑問がわいてまいりましたことは、過日も昭和49年の越冬対策にからみまして、花園公園に一部の目的をもった方々がテントを張った、しかもそのテントの中には大阪市が医療の温い手も差しのべない。また、最近の企業のまことに暇だという不景気のあおりをくらって働けない、したがいまして寝るとこも食うものもない人を民生局がほったらかしておるから、われわれがこのようなテントを建ててめんどう見ているのである、こういうふうな新聞の報道が実はなされておることはご承知のとおりでありますが、そこで私はもう一度掘り返して、この委員会でつまびらかにしてもらいたい。ということは、昨年12月28日から1月l1日にいたるまで、民生局はどのような処置をもって、この年末年始の労働対策に対処されたのか、こまかくご報告お願いいたします。
◎藤野民生局福祉部主幹 ただいまご質問の昨年12月30日から1月I1日まで行ないました越年対策についてご説明申し上げます。
まず、不況の折りから職にあぶれ生活に困るものが相当数出るだろう、こういうことで1,300床のベッドを確保いたしたわけでございます。藤沢会館、天満、大阪自彊館、長柄寮、大阪港、5カ所に収容のベッドをつくったわけでございます。12月30日に厚生相談所で相談室を開設いたしますと、たちまちのうちに1,000人近くの方が相談に見えた、こういうことでそれぞれの施設に収容いたしたわけでございます。
先ほどの薩摩先生のご質問にもお答えいたしたわけでございますが、その間、いわゆる釜共闘のガタクリと申しますか、いやがらせが多々あったわけでございますが、1月11日午前9時を期して越年対策を終了いたしたというのが実態でございます。その後、厚生相談所には1日大体、150名程度の相談がまいっております。これは例年に比べまして約3倍程度である、厚生相談所で面接いたしまして、それぞれの施設に送致いたしておるというのが現況でございます。
◆辻昭二郎委員 先ほどこの年末対策におよそl,680万円を要した、こういうふうにご説明があったわけですが、そこで私、もう一つお聞きしたいのはそういう施設を建てても、その運営は一体どういうふうな体制でやられたわけですか。それぞれの厚生相談所にお正月も相談に応じられたでしょう。三カ日の間も、しかも収容なさったところでは食事の世話もしたわけでしょう。たばこの配給もなさったんでしょう。そういうことは一体どういう体制でやられたのか。
◎藤野民生局福祉部主幹 先ほど、1,680万円と申しましたのは天満の宿泊所の設備費でございます。天満だけでございます。
それから、対策に本市の職員が一応30日から3日まで、厚生相談所で受付業務をいたしております。なか4日以降は施設の出入りのチェックをするということで、おおむね課長級以上が出動したわけでございますが、937名一応これに従事いたしております。
それから、労働者の世話でございますが、これにつきましては1月3日まで釜崎協友会に協力を得たわけでございます。その後は天理教のボランティアの活動によりまして従事していただいたわけでございますが、約2,800人従事していただいた。そこで施設に収容いたしましたものは延べ1万3,000人程度でございます。
◆辻昭二郎委員 いまの報告を聞きますと民生局として局長以下陣頭指揮を取られて、冬休みを返上してそれに対処していただいた、ところがその後にいまいうたような公園の占拠というようなこと、これはなぜそういうことが起こるのか、一般の市民は非常に疑問を感じております。しかも公園の周辺の住民というのは1日たりとも安心して寝れる状態でなかった。戦々恐々とした1日がつい最近まで続いたわけです。約2カ月、しかも隣接の中学校では十二分な授業ができない、いろんな騒音の問題、また通学に対して先生方が責任がもてないというようなことで、授業を休止せざるを得なかった、こういう事態がおこっているわけなんです。しかも、新聞を見ていると、あのテントを強制執行するときに労働者は涙を浮かべて、この寒空にすき腹をかかえて、働く仕事もないわれわれは街頭にほおり出されて、明日からどうして生きていったらいいのかというようなことが新聞に書かれとるわけです。一体、そういう努力を民生局がして、いつまでも議員から聞かれたら、こわごわ答弁するのではなしに、われわれは十二分の対策をしました。しかしこういう問題がおこりましたけれども、この問題についてわれわれ自信をもってやってまいりましたということを答えられますというようなこといえませんか。
◎高野民生局福祉部長 まず最初の臨時宿泊所の運営の問題でございますけれども、これは民間の委託ということを本筋にしております。一つは社会福祉法人の自彊館、それから大阪市市民援護事業団、その他の団体に対しまして運営の委託をしておるわけであります。これは年末対策に対します臨時宿泊所の運営等につきましては、従来から厚生施設等をもっておりまして、これらの中にはいられる方々の扱いといいますか、サービスの面につきましてこの団体はどちらかと申しますとくろうとでございまして、そういう意味合いから、やはりそれらの方々に対しますサービスをまったくするという意味合いから、そういう二つの団体に委託して運営した。それでその運営を委託したわけでございますが、それらの方々の手足になる方々、いわゆるボランティアとして、先ほども話が出ました天理教の方々とか、あるいはその他のボランティアの方々が従事しておったというのが期間中の問題でございます。
ところで、1月11日に臨時宿泊所を閉鎖したわけでございますが、これはやはり民生局といたしまして、この問題につきまして、民生サイドの問題もさることながら、やはり、労働問題というものが基本的にあるわけでございます。したがいましてこれらの方々に引き続き、仕事がないというだけのことで宿泊所を続けるということに対してはやはり問題もあるわけでございますが、やはりそこには行政の府と市とのいろいろな問題があるわけでございます。そういう面から1月11日に閉鎖をしたわけでございます。
ところがその後、釜崎越冬対策委員会のほうでは引き続きテントを張って、あそこでやったわけでございますが、その間民生局のいわゆる愛隣地区にあります厚生相談所の窓口は常に従来よりも人を強化いたしました。そして、あらゆる相談に応じたわけでございます。その間1日平均、多いときで250人ほどの相談を受付けいたしまして、そして、それらの方々の中に、病人の方は病院に入院さし病弱な方は通院させるということで窓口を大きく開けとったわけでございます。ところが実際の問題といたしまして、テント村におられる病人の方々も相談にまいってそして入院させるわけでございますが、また次の日同じようにテント村へ帰ってくる、しかも結核で入院をして和歌山、あるいは兵庫等に連絡してやっと入れていただいた患者が次の日は酒を飲むためにテント村へ帰ってきているというような現状の繰り返しがあったということも事実でございます。愛隣地区におきます結核の問題が先ほども出ましたが、これらの方々に入院さしていただく病院そのものが非常に困難性があるわけでございます。一人の患者を入院さすために5時間も6時間もあちこちの病院に電話をして、やっと取っていただく、ところが取っていただいた患者は再び戻ってくるというようなことが繰り返しがあったわけでございますが、テント村があってもなくても、厚生相談所の窓口は、仕事がないという条件がありながら、生活に困るという方々に対しましては対処してきたというのが現状でございます。
◆辻昭二郎委員 ただいま部長のご答弁の中にも出てきたわけですが、愛隣対策というものが、労働問題は府である、そして民生問題は市が担当するそういう形ですね、本来はそうあるべきでしょう。ところが私たちが見ておりまして、最近、労働者とは何ぞやという、ちょっと疑問がおこるような点があるわけなんです。ですから後ほど国に対して今後ともどういう説明、処置を求められるのかもう一ぺん聞きたいわけなんですが、現実に大阪市民であるかないかということですね。不特定多数の方が全国の飯場で仕事がなくなったら流れ込んでくる、また、一身上の都合で逃避的な立場でこの愛隣地区へ行けば何とか生活ができるんではないか、こういう方がたえず流動的に出たりはいったりしているわけです。ですから現実に今日までいろんな調査に基づきまして、一体そういう方が2万5,000人おるのか3万人おるのかこれは国勢調査によってももう一つ明らかにはなっておりません。そこで越冬対策として、今年はどうなさるんですかとお聞きしたいんです。昭和50年12月から51年の新年にかけてどういう処置をお取りになるのかということをお聞きしたいんですが、その前に、ほんとうに働く意思がありながら職がなくて失業なさっておられる方、そして働く意思はあるけれども、胸部疾患、結核というふうな病気をもっているために働けない、それからもう一つ、全然働く意思がない浮浪者というものを一括しての対策というものは、これは非常にむずかしいと思うんです。一括しては。では労働対策とは何ぞや、働けない人に職を与えるなり、それに見合ったところの生活保護をやっていくというのは府市が力を合わしていけばできると思います。ところが全然働く意思がなくて、ルンペンのような人を、これは別の対策を考える必要があるのではないか、なぜそう申し上げるかというと、本年は1,300名の人が一応厚生相談所の相談の手を経て、大阪市が手厚くお正月を暖いところで、毎日お風呂に入れて、腹をすかさないように食事のお世話までなさった、本年は一体何人になるのかということを、予想をお聞きしても答えられないと思うんですよ。これはほんとうに公平にやろうと思うと、あの簡易宿泊所に泊まっておられる方々、また年末あの簡易宿泊所に泊まられる全員の労働者を大阪市の施設に収容しなければおさまらないのではないか、なぜかというと、本年でも、毎年簡易宿泊所に泊まられる方は、10日なり15日といういわゆる日家賃を前もって預けていかれるわけです。暮れになったら帰ってきて、何々荘、ここでお正月お世話になりますから、予約金として十何日分部屋代を置いておきますから私の部屋を何日から何日まで開けておいてくださいということで予約をするわけです。そうでないと泊まるところがなくなってしまう恐れがある。ところが今年はそうして予約をした労働者が直前になりますと、友だちの家へ泊まることになったとか、いなかへ帰ることになったので予約金を返してくれということで、予約金を取り戻しておるわけです。これがほんとうに田舎へ行ったんならいいんですが、それをポケットに入れて、そして厚生相談所へ行って、わたしは金もないし、泊まるところもないから泊めてくれといったものがたくさんあるんです。このけじめをどこでつけるかということです。ほんとうに金がないのかあるのか、身体検査、これは警察といえどもできない。そうなってくると、来年は今年の手厚い処置を見たり聞いたりした人が、これは大阪市の民生局の施設で泊まったほうが楽しくて、みんな一つの部屋で和気あいあいと、カラーテレビ見ながら酒を飲み、寝ころんで、これはええでということになったら、この対策をどうなさるか、まず一つお聞きしたい。
それから、今後一体、大阪市だけの問題じゃないと思うんです。全国から流れてくるわけでしょう。だから国に対して、議会も議決をして愛隣対策についての処置を求めたはずです。その後一体国のほうではどんな考え方で今日まで話し合いというものが進んできておるのか、さらに現在の時点を踏まえて、では一つ国に対して今後民生局としてどういうふうな交渉の態度であたっていかれるのか、それと同じように、私たちが見ているところでは、大阪府は愛隣対策については非常に冷淡であると私はいいたいようなことを耳にするわけです。民生局として大阪府に今後どういう態度で協力を求めていかれるのか、その中から新しい愛隣対策というものがどんなものが生まれてくるのか、この点まとめてご答弁をお願いしたいと思います。
◎内山民生局長 愛隣地区の労働者対策はたいへんむずかしい問題でございまして、就労の問題、あるいは福祉の問題、宿舎の問題、それぞれ大阪府、大阪府の警察本部、あるいは大阪市と三者が一体になりまして歯車がかみ合ってこそ、初めて立派な施策ができるわけでございまして、そういう意味で私たちは1年間に10回程度の三者会議をもっておりまして、大阪府警、大阪市とこの問題につきましていろいろ討議をいたしております。越冬対策につきましても、三者の協議の上でこの施策を進めているわけでございます。この施策自身が福祉でもあり、また労働施策でもあり、いわゆる中間的な存在のものでございますので、三者が一体になってやらなければ、とうてい実行することができないわけでございます。臨時簡易宿泊所におきましても、ただ普通の給食等でございましたらよろしゅうございますが、せめて年末年始、寒いときは暖い住まいと暖い食事ということで給食の設備をし、あるいは風呂の設備をし、あるいは便所の設備をいたしました。できるだけのことをいたしておるつもりでございますが、なかなか労働者の方々がそれに満足できませんでいろいろな問題をおこすわけでございます。また、夜間には病人等が出ます関係上、民生局の職員は約2週間にわたりまして24時間の対応をいたしております。徹夜勤務をいたしておるわけでございまして、なかなかこの問題一挙に解決することは困難かと思っております。先日も私、東京へまいりまして、東京の山谷、あるいは横浜の寿町、大阪の釜崎、この三地区に対しまして、特別地区の指定をしていただくように、ただいま国のほうと折衝しているわけでございますが、予算委員会も終わりました時点ではさらに強く国にせまりまして、この問題の解決にあたりたいと考えております。
◆辻昭二郎委員 では最後に簡単にお答えいただきたいんですが、現実にテント村の赤軍派の方々がいわれたように、職のないものに職をよこせ、これに対して府はどういう現実的な対策を取っておられるのか、いよいよ仕事がない、金がない、寝るとこもない、食べるものもないということになりますと、これは今度は大阪市の民生関係になりますな、それに対してはどういう厚生相談にあたられておられるのか、この答えによっては実際大阪市にしても大阪府にしても、決して寒空にひもじい思いをしてほり出したのではないということがいえるわけですが、その点はどうでございますか。
◎高野民生局福祉部長 労働問題に対します府の問題でございますが、たしかに2月13日だと思いますが、大阪府に対しまして、民生局サイドから考えたテント村の状況の中で仕事の問題というものが非常に大きく出ておりますので、それで愛隣地区に対します就労対策について大阪府のほうに要望を出したわけでございます。内容といたしましては、できましたら特別公共事業を興していただきたいということと、それから各建設協会なり、あるいは元請け業者に対しまして雇用促進をしていただくような方法は取れないかというような内容の要望書を府へお願いしたわけでございます。
それに対しまして、府のほうからは元請業者、あるいは建設協会に対しましては、就労のあっせんを強くお願いするような、いわゆる文書をもってお願いするというような回答が返ってまいりまして、特別公共事業につきましてはいろいろな問題があるので、いますぐ興こすということは非常にむずかしい問題があるということで、その2点につきまして回答が返ってきたわけでございます。
われわれといたしましては、やはり先ほども申し上げましたとおり、この問題は民生だけのサイドではなしに、やはり基本的には労働問題というものが大きくあるわけでございますので、やはり平常的な時代ならば別といたしまして、特にこのような不況下におきましては、強く大阪府の愛隣地区に対します労働対策というものについて、強く要望しておるわけでございますが、その点まだちょっと遺憾ながら、われわれとしては満足のいくような回答が来ないというのが実情でございます。
それから、先ほども申し上げましたとおり、厚生相談所におきましては、いわゆる病人、病弱者につきます対処というものは今後引き続き当然行なっていくわけでございますが、問題は病人の入床なり、あるいは病弱者の方々のはいる厚生施設というものが不足しているというのが実情でございます。そういう面から、まず病院の入床に対しまして、それが入院しやすいような方法を取っていくべきであろうということで今年の50年度の予算に対しましてもいわゆる入院者一人について5,000円程度の謝金制度というものを計上さしていただいているとともに、ベッドを確保するというような方向で150床ほどの民間病院のベッドを確保するように努力をしておるわけでございますが、現在90床程度確保しておりますが、もうすでにそれが満床になっているというのが実情でございます。が、やはり愛隣地区の労働者の方々が病院にはいるについてのはいりやすいような方法といたしまして、たとえば被服等、着ているものがまっ黒でございますので、入院するとともに新しい被服を着ていただくというような日用品の支給なり、あるいはベッドの確保というような方向、もう一つは厚生施設というものが非常に足りない面がございますので、その厚生施設の確保ということについて今年度は努力していきたい、そのように考えております
◆辻昭二郎委員 予算書を見さしていただきましても、生活相談所に2,873万円、愛隣銀行の運営費1,870万円、地区の清掃特別事業費として350万円とか非常にきめ細やかに努力していただいていることは、ほんとうに地元民も最近では非常に民生局に対して感謝しておる、これはこの機会に私からお伝えさしていただきたいと思います。
ところが先ほど申し上げましたように、新聞を見ておりますと、民生局は何にもやっていない、だからこういう騒動がおこっているんだという、へんな住民から批判がおこるようなことだけは一つ何とか努力してもらえないか、おそらくあの記事を書いているのは西成警察に詰め込んでいる新聞記者じゃないかと思うんです。ですから民生がいろいろな事業を愛隣地区で施行されるのなら、たまにはそういう警察関係の記者の方々とも懇談をする場をつくられて、また近くには市民館があるんですから、あそこでも一ぺんそういう方々に集まっていただいて、大阪市の民生局がやっているところをつぶさに理解してもらう、また、そういう記者の方々が見聞されたことを大いに取り上げて、民生局の事業を進める参考にする、こういうふうにやっていただいて、−−−−−−−−−−−−−−−−今後の努力を最後にご注文申し上げておきます。