【 平成6年3月定例会常任委員会(民生保健・通常予算)-0318日−05号 】

◆辻昭二郎委員 非常に短い時間の中でございますので、いろいろ質疑申し上げたい項目はございましたけれども、1点に絞ってひとつお伺いをいたしたいと思います。一堂に会していただいております理事者の皆さん方、それからプレスの皆さん方、同僚議員の皆さん方にも、ひとつよく西成区というものの再認識をしていただくために、私はあえて訴えをいたしたいと思いますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。

 私たちが住んでおります西成区、西成区というと非常にすさんだ人の住みにくいような地域のような印象が、まことに強うございます。それが証拠に、私たち体験をいたします就職の問題、結婚の問題、これまで大きな差別と言いましょうか、偏見を持たれておることは確かでございます。

 商店街の店主がどうしても若手の店員が欲しい。そういうことで、自分の生まれ故郷の四国・九州に出かけて行って、職業安定所にお願いをし、中学の卒業生をぜひとも一人私のほうにお願いをしたい。やっとこさと理解を求めて、中学の卒業生の女性店員を確保いたしました。ところが、だんだんと卒業の時期が近くなってまいりました。そうすると、職業安定所のほうから、お約束しとったけれども、どうしても娘さんの両親が承知をしてくれないので、まことに申しわけないけれどもこの約束は取り消していただきたい。そんなことじゃ困りますというので、また即刻職業安定所に行ってお話を聞きますと、両親が大阪へうちの娘は就職をすることはお願いをした。よりによって西成区の商店街にお世話してくれと頼んだ覚えがない。そんな恐ろしい地域にうちの娘はやれませんといって、ついにこれは破談になってしまいました。

 大体阿倍野区でもそうなんです。我々西成区を見下しとる。何でや言うと、地盤が高いんですからね、見下ろしとるんですよ。ところが、阿倍野再開発の事業をやって、旭町という商店街は阿倍野から西成区までずうっと続いとるんですよ。ずうっと歩道を煉瓦舗装していって、西成区のまだ坂の中途でペッと止めてまいよるわけです。住民・商店街どない思います、これ。文句言いに行ったら、これは阿倍野再開発でございまして西成関係おまへんねんと、そんなことは私は行政の中で絶対にあってはならないことやと。雨降ったら、阿倍野の泥水が西成区に、床上浸水することがあるんですよ。そやのに、再開発に関しては西成区は別やというような、私はそれ以上の深い考えはないと思うけれども、現在西成区の区民というものは言うに言えない不公平をこうむっておることは確かでございます。

 私が当選をさしていただいた昭和34年ごろは、西成区の人口も20万近くあったんですよ。それが36年に釜ケ崎の暴動が起こりました。これから暫時減っていって、現在では人口139,000しかない。ところが、不思議なことに、所帯数は7万2,360あるんです。所帯掛ける2で人口足らんのです。1所帯に2人いない。これは一体何やということですね。ということは、老人が多いんです。ひとり老人のところが多い。その子どもはどうしたんかと言うと、結婚するときにこれ幸いに西成区から逃げ出していくんです。住んでよかったなというような気持ちじゃないんです。ああ、出て行ってよかったなというような、そういう若い人に気持ちを持たせておるということは、まことに私情けない限りであります。

 しかも、西成区民はありとあらゆる問題に積極的に今日まで対応してまいりました。民生委員といい、保護司といい、町会単位の各団体が福祉問題にしても何にしても、気安く率先して行政に対して協力をしておるわけであります。

 ちなみに、昭和36年西成区に起こってはならない暴動事件が起こりました。私も当選しましてまだ2年目の新米の市会議員でした。びっくりして西成警察に駆けつけたところが、包囲されて丸1日警察の缶詰になりました。外に出られない。

 なぜそんな問題が起こったということの反省に立ちまして、これは行政だけではございません。まず、労働者の皆さん方が非常に生活に困って、子どもを連れて職場を渡り歩きながら、小学校へも、中学校へも行けない子どもがたくさんおるという不就学問題が起こりました。これには、大阪市も、大阪府も力を合わせてあいりん小・中学校で対処いたしました。

 また、不衛生な木賃宿、これを改修するために地域の業者の皆さん方も、ありとあらゆる力を合わせ協力をして、現在で簡易宿泊所というものも立派な環境に変わってまいりました。

 そして、今度は就労に対してのいろんな意味でのピンはね、賃金の問題がございました。これについては行政は労働センターをつくり、公正な職業の安定に現在まで努力をしていただいております。

 そして、一方、民生事業に、また社会福祉の事業に、いろんな進展がございました。診療所を兼ね備えた病院の設置、歯医者の診療所、そしてまた地域の再開発につきましては低家賃の市営住宅を建設して、そして末端まで行き届いてなかった都市再開発を、全力を挙げていたしました。道路も立派にでき上がり、そしてそこには道路の清掃、食事の問題、そしてまた民生局からもお力を得て民間の力での道路清掃、とにかく地域を美しくしよう。環境を何とか住民の力で変えようと、今日まで努力を多年に渡って続けてきたんでございますけれども、いまだ西成区の汚名はぬぐい去られないのが現実でございます。

 そこで、私はきょうこの観点に立って、阪口助役にもお聞きをいただきながら、短い時間でございますけれども、西成区民の本当の心からの悲痛の叫びを皆さん方に聞いていただきたいと思うわけでございます。

 現在、経済の不況がいろんな社会問題を醸しておるわけでございますが、この当地の労働問題について大変な問題が提起されております。現在の推定労働者数、これの激増、激変についてひとつ民生局のほうで把握されておる数字を、ひとつお知らせをいただきたいと思います。

◎三島民生局福祉部保護課長 お答え申し上げます。

 あいりんの労働者の数ですけれども、労働人口は大体2万1,000というふうに言われておりますけれども、就労の関係で言いますと、平成3年、年間で大体165万件の就労がございましたけれども、今現在でしたら約それの半数近くの数字になっておるというふうに思います。

◆辻昭二郎委員 確かに、景気の動向によって働いておられる方々の実数は少なくなっているようです。ところが、困ったことに、それ以外の労働に関連のある難しい問題がたくさん起こってるように思うわけでございます。本年度提示されております予算を拝見いたしますと、あいりん対策事業費といたしまして232,147万円、昨年5年度予算に匹敵しまして112,265万円の増額を認めていただいておりますことは、この問題に対する民生局のご熱意というものを、ありがたく私も受け止めるところでございます。

 しかしながら、今日までの趨勢を考えていきましても、今東京都の新宿のホームレスの問題が報道されておりますけれども、言うに言えない幾多の難しい問題を私ははらんでいると思うんです。一昨年でしたか、サンフランシスコへ6年ぶりに行ってびっくりしました。あの美しかった町が、何とも言えない荒廃の状態になっております。ニューヨークのスラム街は申すに及ばず、これは世界的に大都市が包含するところの、解決のしにくい難問であるなあということは、私も感じておるわけでございます。

 今このあいりん地域におられる労働者、これを区別するということはおかしい話かもわかりませんけれども、私なりに考えておりますのは、西成区に居住権を持って、住民票を持って、そして労働に携わっておられる人々、住所氏名が明らかでない、本人が自称でございます。しかし、それを正しく受けとめて労働センターなり、公共職業安定所の指導によって働いておられる方々、それ以外に働く意思が全くない、とにかく西成の釜ケ崎に行けば何とかしのげるだろうというような、そういう言い方によるとホームレスと言いましょうか、屋外居住者の方もたくさんあるようでございます。

 それと、もう一つ、働く意思は大いにあるわけです。ところが、長く住みついて老齢化してまいりました。しかも、若いときほど健康状態がよくありません。言いかえると、働く意思があっても働けない状態にある労働者の皆さん、四つぐらいに分けられるんではないかと思います。

 その中に、憤慨に耐えないのは、名古屋から、岡山から、片道切符を市役所で買うてもらいまして、というのはそれぞれの役所で、あんたはうちへ相談に来るけどうちではうまいこと対処でけへん、いいとこ教えたげる、大阪の西成区というとこへ行ったら仕事もあるし、仕事にあぶれたら手当てもくれるし、寝るところもあるし、食べることの心配ないよって行きなさい言うて、片道切符を渡して送り込んでるというのは事実なんですよ。何人あるか実態はつかめません。

 では、そういうことをずうっと考えてきますと、今申し上げたこの四つの労働者の皆さん方にいろんな施策を手厚くやっても、これからもどんどん、どんどんと全国から流れてくる。これを一体大阪市の責任で処理せないかんのか。言いかえると、大阪市民の責重な税金を使ってですよ、この対策にあくせくすることが行政として、私はちょっといささか逸脱してるんではないかという気持ちがしてなりません。まことに複雑な、割り切れない問題でございます。きょう、ここにお出での理事者の皆さんにもお聞きしたいんですが、東京の山谷、何区にあるかご存じの方は少ないと思いますよ。横浜の寿町、これは何区にあるのかご存じないですよ。ところが、あいりん地域とか釜ケ崎というたら、西成とこうくるわけです。

 これは、ぼくはこの前も決算委員会で報道の皆さんにお願いしました。東京は山谷でどんな問題が起こっても、東京の山谷と言って報道されます。それならば、あいりん地域も釜ケ崎も、大阪の釜ケ崎という報道をしてもらいたい何にも罪のない西成区民が、この地域のためにどれだけ金を使い、どれだけ労力を使って、しかもそれを厚い、厚い愛情をくるめて努力をしてくるにもかかわらず、なぜ我々が汚名を着なければならないんだろうか

 きょう、私は小学校の卒業式に行きました。前途に光あれ、立派な社会人として社会にも役に立つような立派な子どもに育ってほしい。これは、言葉では美しいことです。ところが、現実のあのあいりん地域の周辺に住んでいる子どもたち、夢もありません、光もありません。だんだん悪くなる一方であって、これを食いとめるだけで必死なんです。

 これは、助役も聞いてほしいんですが、今この予算を手厚く考えていただいたと、お礼は申し上げました。しかし、これは労務対策なんです。労務者に対する福祉対策なんです。忘れられておるのは、住民の福祉というものがどこにも盛られてない。これからのあいりん対策のあり方というのは、私は福祉の原点に返り、そこに住む住民、子どもたち、おとしより、これらに希望のあるような行政を進めていただきたい。労働対策と同じように、私は進めていただきたいと思うんです。

 今、大きな問題が起こりまして、やがてこの委員会にも提示されてくると思うんですけれども、現在の西成区の労働対策に対する施設は、絶対ふやしてもらったら困る。むしろ今の施設をありとあらゆる行政の努力で、少なくしていってほしい。そして、住民の福祉を取り返してもらいたいと、これが住民の切なる願いであります。もっと近郊に大阪市が努力して、ご協力していただいて、特別養護老人ホームを、また緊急施設として郊外へ持っていってほしい。そして、困った人をそこで引き抜いていくと言いましょうか、あの地域から少なくしてほしい。そして、西成区自体を本当に住みよい区にしてもらいたい。これが念願でございます。

 この点について、前回の委員会で民生局長に私答弁を求めました。これからのあいりん対策は拡大策はとってもらいたくない。とにかく分散をしていくような方向でお願いをしたいということで、ご快諾を得ました。

 この点について、今日まで私の知る限りでは、局長のご意思をもって門脇福祉部長が、今まで福祉は市といった行政の縦割りを横につなぐために、非常な努力をしていただいた。やっと府の労働部長と大阪市の福祉部長が、膝を交えて対等に相談のできるような体制をつくっていただいたことは、私は本当にありがたいことだと思っております。どうかこの際、長らくお勤めになり、この委員会が最後とお聞きしておりますけれども、局長が今日まで考えてこられたこと含めて、この点についてのご見解をひとつ後続の局長に残るようにご発言をいただきたいと思います。

◎香山民生局長 私どもが中心になって担当いたしておりますあいりん問題につきまして、いろいろな観点からご論議をいただきまして、本当にありがとうございます。

 私どもつい最近、一昨年の10月の1日に暴動が起こりまして、私どもの厚生相談所の事務をめぐってが中心であったわけですが、中のやりとりで私と運動体との間で食事券を出せ、ドヤ券を出せという厳しいやりとりもございました。出せない。出せば、おれの首を取ってから行けと、こういうような非常にきわどいやりとりをしたこともございましたが、これはまさに委員おっしゃったように、手厚いことをやることが果たしていいことかどうか、こういう問題もいろいろございます。そういうことも含めまして、この問題やはり地域の住民の方々の理解と協力のもとに、進めていくことも必要でございます。

 一方また、先ほど三島課長がお答えいたしましたように、この地域におります労働者、大体2万1,000人ぐらいじゃなかろうかと、しかもだんだん高齢化してまいっておりますし、また健康な生活を送ってる方が少のうございますので、やはり一般の方々、一般の方々という表現はふさわしくないかもわかりませんが、いわゆる普通の住居で暮らしておられる方々に比べまして、健康状態等やはり相当悪くなっているというのが実情でございます。

 こういうことも含めまして今後どうするのか、私どものほうとしましては滋賀県のほうにも施設を建設もいたしております。ですから、市民の方の理解と協力を得ながらこれをどうするのか、根本的に考え直す必要があるんじゃなかろうかと、当然大阪市内、あるいはまた府外がいいかどうかということも含めまして、今後ともこの問題いろいろ先生方のお力も、またお知恵もいただきながら、そしてまた私どもの考え方としては労働対策が中心じゃなかろうかということで、大阪府ともいろいろ論議もいたしております。それも含めまして、関係者と十分協議をしながら、あるべき姿を求めまして精いっぱい頑張ってまいりたいと、こういうように思っております。

 当然、この問題、私どもが進めていく問題につきましては、当然後任のほうにもより一層スムーズにつなげるようにするのが当然の義務でございますので、その辺の問題につきましても十分に留意をしながら、努めてまいりたいとこういうふうに思っております。どうか一層のご支援賜りますようにお願い申し上げます。

◆辻昭二郎委員 本当に長らくご苦労さまでございました。

 助役、お聞きのとおりですね、本質はそういう問題でございます。この3月10日には約500人の西成区の各種団体長が集まりまして、西成アメニティ宣言というものを行いまして、これから後も行政機関と各種団体・住民が一体になって、このあいりんの環境美化を初め、犯罪のない憩いと安らぎのあるまちづくり、住みよい西成区をつくろうではないかという宣言ではありますけれども、これは平坦な道ではないと思います。

 私たち西成区の汚名を挽回するためには、住民は必死になって今日まで立ち上がり、努力をしてきております。どうか行政の上でも、西成区の名声が高まるような公共の施設を優先的に持ってきてでも、これら住民の真摯な活動をひとつ支えていただきたい。これこれということは申し上げません。おわかりだと思います。どうかひとつ、そういう線で頑張っていただきたい。

 また、環境保健局のほうにお聞きしたいと思っておったんですが、時間がありません。このあいりん地区の結核患者の罹患率というのは、市内の平均の22倍なんです。開放性結核の患者もたくさん町に野放しになってるような感じがしてなりません。どうかこれらの処置につきましても、手厚いひとつご処置のほどを考えていただくように、これは強く要望をいたしておく次第でございます。最後に、この問題を含めまして、阪口助役からひとつご見解を述べていただきたいと思います。

◎阪口助役 あいりん対策について、またその問題、これまでの経緯、並びに西成区民の皆さん方の思い、今辻委員からお聞きいたしました。私も全く同感でございます。

 実は、昨年、一昨年と2回、越年対策をやっておりますが、私も見せてもらいました。大阪市の職員だけが、なぜこういうことをせなきゃならんのかと、痛切にこれはおかしいというふうに思っております。何としてもこういう状況をなくさなきゃいかんと思っております。しかし、率直に申しまして、今までのあいりん対策というのは、あそこに集まっておられる労働者対策であったことは事実でございます。

 今、辻委員からおっしゃっておられること、単にあいりん対策というのは向こうに集まる労働者の対策だけじゃなしに、まちづくりそのものをどう変わるのかということであろうと思います。正直言うて、しかし私今名案ございません。私どもができることと言えば、環境整備と、それからあそこに集まっておられる方の高齢者、あるいは病弱者を民生の立場から救うということでございます。不安定な就労の問題等については、もっと労働対策として本当は汗もかいてほしいなというのが、率直なところでございます。

 この辺については、先ほどご紹介ございましたように、府の労働部と大阪市民生局との話し合いの場も設定されてますし、また府警本部もそこに入ってくれております。そこでも相談するとともに、大阪市内部の対策については単に労働者対策というだけじゃなしに、西成区、あるいはあいりんの周辺のまちづくりという観点から、大阪市として何ができるかということについて、今後先生方のご意見、また住民の西成アメニティということもおっしゃってるようでございますで、ぜひお知恵もお借りいたしまして、今後取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。