【 平成9年度決算特別委員会(準公営・一般)平成10101112-1116日−03号 】

◆船場太郎委員 市長もお越しでございます。

 野宿生活者対策についてちょっとお伺いしたいと思います。

 先般、野宿生活者概況調査の結果をいただきました。市内の野宿者数は 8,660人というふうなことでございまして、新聞報道によりますと、東京都の野宿者は 4,300人。東京の方が圧倒的に人口が多いにもかかわらず、この野宿者というものは倍ほど大阪市の方が多いというふうなことでございます。この数字について当局としてはどのような感想を持っており、また、何で本市にこのように野宿者が多いのか、見解を問いたいと思います。

◎出海民生局総務部連絡主幹 お答え申し上げます。

 東京都の調査につきましては、昼間に、かつ、調査地点を特定して行っておりまして、本市の調査とは調査方法も時間帯も異なっておりますことから、単純な比較は困難でございますが、東京都よりもはるかに多い数字に驚いておるところでございます。これは景気の低迷等によりまして、全国一の寄せ場でございますあいりん地域における日雇い労働者が仕事にあぶれ、簡易宿所、いわゆるドヤに泊まれずに野宿を余儀なくされている方が増加し、全市域に拡散したことがその最大の要因であると考えておるところでございます。

◆船場太郎委員 そういう理由も確かにありましょうけれども、ここ一、二年の間に何か別に仕事を探すふうでもなく、公然と公園や道路に小屋がけするなど、公共施設を集団で不法占拠する野宿者がふえてるように思います。うちの公園でも、随分とブルーシートの数がふえてまいりまして、どういう気持ちでいてはんのか知りませんけれども、段ボールでつくって、その上にブルーシート敷いて家をつくりはって、垣根までつくってはるんですな。それで、砂利道つくって、玄関まで小道をつくりまして、あげくの果て玄関に鳩時計までぶら下げてはるいうふうな形で、これが大阪の風致地区である桜之宮、大川沿いもそうなんですけれども、大阪城の公園であるとか、また、スポーツの殿堂の長居公園でたくさん見受けられるということなんです。これでは集客都市大阪の名前が泣くと思うんです。これが本当に続いていきましたら、オリンピック誘致に大変影響も出てくるんではないかというふうな気がいたします。子供たちに公園へ行って遊んで来いというふうなこと言いましても、あそこ行ったら野宿してるおっちゃんなんかがいてて、どうのこうの声かけられたり、何か言われたりして怖いから嫌やというふうなことで、全く市民の憩いの場所が今そうした状況で占領されてしまってる感じになっております。

 何かやっぱりこれ、大変な不安材料がいっぱいなんです。それに本年5月と10月でございましたですか、こうした野宿生活者の間で、赤痢患者が集団発生したというふうなことでございました。これも大変心配でございます。関係当局が一生懸命頑張ってくれはったおかげで、拡大は防止されているというふうな状態ではございますけれども、身近に野宿生活者がいる住民の皆さん方は、大変不安に感じていらっしゃると思うんです。これまでどのような取り組みを行っていらっしゃいましたかちょっとお伺いしたいと思います。

◎出海民生局総務部連絡主幹 お答え申し上げます。

 公園や道路等の管理者サイドでは、違法なテント、小屋等の撤去を指導、勧告するなど、粘り強く退去を求めているところでございます。また、テント等の撤去に当たりましては、ごみ処理や消毒等も行っております。しかし、現行法ではこれらの公共施設を不法占拠しております野宿生活者に対しまして、強制力をもって氏名や年齢等を調査したり、あるいは強制退去を求めることは困難でございまして、対応に苦慮しているところでございます。

 野宿生活者問題につきましては、福祉援護の問題はもとより、公園や道路等の管理上の問題、また、保健・医療上の問題、ごみ収集上の問題、さらに、野宿生活者と地域住民との人権摩擦の問題等、1つの視点では対処しがたい要素を多く含んでおります。このため、本年5月、庁内関係6局、民生局、環境保健局、環境事業局、市民局、建設局、計画調整局と3区、これは浪速区、東住吉区、西成区でございます、の部課長級職員で構成する野宿生活者問題検討連絡会を設置し、全庁的な取り組みに向けまして、就労対策、福祉・保健医療対策、公園・道路等の適正管理対策等の諸課題ごとに問題点の整理を行うとともに、総合的な施策の検討を行っております。先般発表いたしました実態調査もこの一環としてこの連絡会で検討を行いまして、今後の施策検討の基礎資料を得るため、大阪市立大学に委託をしたものでございます。

◆船場太郎委員 調査はもちろん必要なんですけれども、その結果、分析して、それを施策に生かしてこそ初めて意味があると思うんです。これはもう難しい問題がいっぱいだらけでございまして、例えば、コンビニエンスストアの賞味期限の切れたものをどういうふうにしているのか、また、段ボールを扱う会社がこの段ボールをどういうふうに管理しているのか、いろんなことが問題にされると思います。関係当局による庁内組織で施策検討に入ってくれてはるというふうなことではございますけれども、どうしても仲間内ではどうも限界があるんではないかなというふうな気がいたします。

 ですから、この際、第三者機関といいますか、そうしたいろんな方、専門家やら、それから、何かそういう道のエキスパートの方もいらっしゃると思いますんで、いろんな意見を聞いて対策を練り上げて、何かこの具体的な施策案を提言してもらえるような、そうした第三者機関の委員会が必要なんではないかなというふうな気もいたしますが、見解をお伺いしたいと思います。

◎宇野民生局総務部長 お答えいたします。

 今回の野宿生活者の調査につきましては、本市全域の、しかも区別の野宿生活者の概数と野宿の形態等を初めて明らかにしたものでございますが、今後さらに市民の意識調査や野宿者本人からの生活実態やニーズ等も聞き取る等の調査を行いたいというふうに考えております。そして、その調査結果を施策検討に生かしてまいりたいというふうに考えておりますけれども、委員御指摘のように、今後の施策案や中長期的な対策方針を固めてまいる際には、幅広く英知を集める必要があるというふうに考えられますので、有識者懇談会等の第三者機関の設置につきまして、重要な課題として検討をしてまいりたいと考えております。

◆船場太郎委員 これは世界の大都市が共通に抱えている問題ではないかなと思います。東京の方でしたですけれども、ことし2月でございましたですか、新宿駅の西口におきまして、ホームレスの段ボールハウスが燃えて5人の死傷者が出たことを受けて、これは何とかせないかんというふうなことで、期限つきの受入施設をつくりはったそうでございますけれども、これは地元調整や経費、運営面などと非常に問題が多いと思います。何とかして助けてあげた方がええの違うかというふうなことで、施設をつくって、手厚くすればするほど、よそからわっとまた余計に集まって来はるような気もするわけでございます。結局、そういう施設をつくれば、お金もぎょうさんかかって、いろんな気ばかり使こうて、まるで苦労だけしょい込むようなことになってしまうのではないかなというふうな気もいたします。最も今、我が国におきまして深刻な状況にある本市の野宿生活者問題について、今後どのように取り組まれていくのか、大変難しゅうございますけれども、市長のおっしゃる集客都市に大きな足かせになるような状況でございますので、ひとつ市長の御答弁をお願いしたいと思います。

◎磯村市長 委員のおっしゃいますように、最近、野宿で、それも非常に整った設備の定住式の家に住んでるような形になっている方々が目立ってふえておりまして、これは私のところにも市民の方々から、一体大阪市どうするつもりなんやという話が、実は相当前から来ておりまして、非常に気にしております。率直なこと申し上げて、一人一人の方々にはそれなりの事情もあって、非常に困ってそういう状況になられるということを同情はいたしております。

 しかし、実はよく考えてみますと、今の日本の社会保障制度のもとでは、自分が暮らしているところで本当に困ったことが起これば、通常の場合は福祉の網の目で何かの形で引っかかることになっております。体が悪いなら悪い、経済的にうまくいかないならいかない、家庭的な問題があるならあるで、どこまで我慢するかという問題はありましょうが、何らかの形で社会福祉、あるいは保障の網の目にかかるはずなのですが、あれだけの方々がああいうふうになるというのは私も実は不思議でたまらなかったんですが。ちょうど先ほど職員の返事がありましたように、今、大阪市立大学で調査をしていただいている。私、たまたま五、六年前に市大でやった調査書というのに目を通したことがあります。それによりますと、ほとんどが北海道から九州までと、よその町から来た方々のようであります。ですから、身元がわからないわけですから、大阪市が大阪市の市民に対してするような救済措置をとるような法的根拠は何もございません。ただ、我々としてはそういうことを承知の上で、例えば、年末年始に特別に宿泊施設つくったり、いわば、身元確認なしの社会保障的なことをやるんですが、これをやりますと、いつの間にか、毎年毎年大阪へあの時期には行ったら大丈夫ということで集まって来られると。その結果、大阪に居ついてしまうというような結果にもなるようでございます。といって、大阪で市民の方々が意地悪にそこにおれんようにしますと、要は、どこかへ行かれるだけのことで、だから、1つの町で解決できる問題ではもうございません。これはもう全国一律にきちっとした法的、財政的な措置をしていただいて、こうしようと決めていただかない限り、一方で違ったことやれば、流れ込むか、よそへ移っていくかになって、結局は解決になりませんので。

 実は私、この間11月2日でございましたが、小渕総理とお話をさせていただいたときに、率直に申し上げました。これは1都市の問題ではございませんと。できれば、例えば、大阪のあいりん地区のように、もともと寄せ場制度というのがあって、そこで仕事を求めて来た方々は労働意欲がある方々で、これは今本当に仕事がなくて困っておられるわけですから、何かやっぱり、かつてありましたような失業対策の方策で雇用政策という形で財政的なことを考えていただかないと、大阪市としてはどうにもなりませんと、まず申し上げました。

 それから、勤労意欲もなしに公園なんかで定住してしまってる人たちについては、少なくとも法律をつくっていただいて、身元の確認ができて、そして、いろんな相談に乗ってあげられて、法的な形でその人にとってやりやすい方法で助けてあげられる方法というのを考えてみたいと。そういう制度をぜひ国として考えていただけませんかというふうに申し上げておきました。

 今後ともこういう問題は一挙に解決できるような問題ではございませんし、私も別にオリンピックがどうだから、国際集客都市がどうだから意地悪をしようという気持ちは毛頭ございませんで、できることなら、非常に重大な社会問題として正しい解決方法を一番経験のある大阪市から提案をしたいと、こういうふうに思っておりますので、ぜひ、お力添えをいただきますようにお願いいたします。