【 平成11年第1回定例会(平成11年2・3月)-02月24日−03号 】
◆ 49番(勝田弘子君)
次に、あいりんは結核の罹患率が全国平均の45倍と大阪市の中でも際立って高くなっています。労働者を対象に検診を実施して、患者の早期発見に努めているそうですが、せっかく検診で患者を発見し治療を開始しても、途中で中断する者の割合が高いと聞いています。ニューヨーク市でもかつては同じような問題がありましたが、ホームレスの人などを中心に、DOTSという治療方法を採用し、結核患者の治療に大きな成果を上げたと言われております。ニューヨーク市と本市では法制度や保健システムに違いがありますが、このような治療法を大阪市の実情に即して導入し、患者の治癒率の向上を図るべきであります。
また、患者の早期発見、早期治療に関して、現在あいりんの労働者を対象に労働センター前や西成保健所の分室での検診を実施していますが、もっとより多くの人が集まる機会をとらえた検診を実施することを積極的に考えていくべきであります。
いずれにいたしましても結核対策は緊急の課題であり、対策の実施に当たっては学校における結核検診との連携や中小企業における定期検診の徹底を図るなど、全市を挙げて取り組んでいくべきであります。結核対策に取り組む市長の決意をお伺いいたします。
◎ 市長(磯村隆文君)
また、結核の罹患率が極めて高く、本市における結核事情の悪さの大きな原因となっておりますあいりんにおきましては、患者の治療中断率が一般の患者に比べて約3倍と高いため、結核治療の実を上げるための方策として、服薬を直接確認する結核短期療法DOTSを厚生省や関係団体とも連携しながら試行的に実施いたします。さらに、従来のあいりん検診に加えまして、新たに年末年始の南港臨時宿泊所の入所者を対象にレントゲン検診を実施し、結核患者の早期発見、早期治療になお一層努めてまいります。
結核対策は、保健や医療の面だけにとどまらず、学校や事業所、社会福祉施設などとの連携協力が必要であり、全市的に取り組んでいくべき課題であると認識しております。そのため、今後医療関係者はもちろんのこと、市民を初め教育関係者、事業者などにも積極的に普及啓発を行って、結核に対する警戒心をいま一度呼び起こしますとともに、厚生省や関係機関と密接な連携を図りながら対策を実施し、本市の結核事情の改善に努めてまいりたいと考えております。
◆ 82番(辻昭二郎君)
次に、野宿生活者対策についてお尋ねをいたします。
野宿生活者対策は、従来、あいりん問題と認識されてきたように思いますが、今や本市では全市域にわたって野宿生活者が拡散をしており、また主要公園にはほぼ例外なく野宿生活者の青いビニールシートが不法に設置されており、ターミナル駅周辺などの野宿生活者の数もますます増加しているように思います。
自然と触れ合い安らぎを求める場であり、健康づくりや子供の遊び場でもある公園を市民が安心して利用できない。また、繁華街や名所には野宿生活者があふれている。このようなありさまでは、集客都市大阪の名が泣いてしまいます。もとより、この問題は、日雇い労働者などが景気の低迷や高齢化などによって仕事にあぶれ、簡易宿所に泊まることができず、その結果、野宿生活を余儀なくされたことに加えて、全国から仕事を求めて生活困窮者が大阪市に流入したという状況から、雇用問題が大きな要因であり、国レベルでの取り組みを行わなければ解決し得ないものと考えております。
このような状況を踏まえて、市長は昨年11月、小渕総理が来阪された際、この問題の深刻さと重大性について直接訴えられ、総理の英断でこのほどホームレス問題連絡会議が設置され、国としても総合的な対策を検討し、関係省庁が今までになく横断的に取り組んでいくことになったと承っております。
いわば大都市問題である野宿生活者対策について、各都市の先頭に立って国に働きかけておられる市長には敬意を表したいと思うのでありますが、国に対してどのような視点で、どのような取り組みを求められたのか、お聞かせをいただきたいと思います。
また、我が党はかねてより、本市の対策を検討するに当たっては、実態調査、庁内連絡会における検討も大切ではあるが、もっと幅広く専門家や関係者の意見を聞くべきであると指摘しておりますが、具体的にどのようにされるのか、あわせて所見をお伺いいたします。
◎ 市長(磯村隆文君)
次に、野宿生活者対策についてでございますが、議員御指摘のとおり、公園や道路にテント等で小屋がけするケースが増加しておりますし、駅周辺の野宿生活者の増加ぶりも目につきます。しかもこの中には、日雇い労働者とはタイプも違い、年齢も比較的若い野宿生活者も見受けられるように思います。これらの野宿生活者の多くは身元不明であり、強制力をもって調査はできませんので、福祉制度等のネットにもかからず、有効な手も打ちづらい状況にあります。もはや一地方公共団体のみの取り組みでは、人的にも財源的にも限界を超えた状況に立ち至っており、このまま放置すれば人道上の問題とともに市民生活にも重大な影響が及び、また治安面での問題も危惧されると考えております。
このため、本市といたしましては昨年7月の国家予算要望からこの問題を重点項目の1つとして位置づけ、国の対策指針の策定等について要望を行うとともに、昨年10月7日、厚生、労働、建設、自治、国土、通産の各政務次官及びこの問題について深刻な悩みを抱えている地元国会議員で構成するホームレス問題勉強会に本市からも出席するなど、あらゆる機会をとらえて国に働きかけてまいりました。
また昨年11月2日、小渕総理が来阪された際には、この問題の深刻さをじかにお話しさせていただきましたところ、早速、総理の指示により12月9日に関係省庁によるヒヤリングがあり、さらにこのほど総理の英断により、内閣内政審議室並びに関係省庁と本市や東京都など関係自治体とでホームレス問題連絡会議が設置されました。国からは、ことしの夏までに会議を重ね、一定の方向性を出すとともに、今後関係省庁が連携を図り総合的に取り組んでいくと伺っております。第1回の連絡会議は2月12日に開催され、本市は私自身が出席し、この問題についての重大性を訴えるとともに、各都市のさまざまな単独事業に対する財源措置が必要なこと、野宿生活者にも勤労意欲があるが、就労の機会に恵まれない方、多重債務を抱えている方、病気で働けない方などさまざまなタイプがいるので、それぞれに応じた対応策が必要なこと、このためには法整備を含む抜本的な対策指針の策定が必要であり、さらに自立支援の観点から雇用対策等の実効ある緊急施策が必要であると申し上げてまいりました。
次に、本市の対策の検討に当たっては、内部検討だけでなく幅広く有識者の意見を生かすべきであるとの御指摘につきましては、大阪市立大学の調査の進捗状況も視野に入れながら、有識者懇談会を設置させていただく予定であります。
今後とも、国等との役割分担を踏まえ、有識者等の意見も参考にしつつ、市会を初め皆様方の御理解をいただきながら野宿者対策に取り組んでまいりたいと考えております。