【 平成10年度決算特別委員会(準公営・一般)平成111012月・12年1月-0111日−03号 】

◆柳本顕委員

大阪市が、今、早急に解決の方針を示す必要がある問題としてホームレス問題があります。先ほど集客都市の副作用の話でも少し触れましたが、この問題に対しきっちりとした対策を練っておかなければ、全国から、あるいは全世界からホームレスを大阪に集結させることにもなりかねません。

 そこで、ホームレス問題について幾つかお尋ねします。

 平成10年8月に実施された実態調査によりますと、市内の道路、公園、河川敷などのホームレスの数は 8,660人を数え、現在では1万人を十分超しているものと見られ、その数は全国1位であります。市内の公園にテントや小屋をつくり、不法占拠している件数を見ても、ここ1年、平成10年8月から平成11年8月で 1,452件から 2,152件へと 700件、率にして実に50%も増加しています。しかも、市内 896カ所の都市公園のうち、70カ所の公園で青テントなどが確認されています。

 このような公園を抱える区は16区に及び、現在の状況を見るとホームレス問題はまさに全市的な問題であります。

 全国的には、大企業の普通のサラリーマンや中小企業の経営者や自営業者といった市民が、不況、リストラ、家庭崩壊などといった社会背景をきっかけにホームレスになっているという見方もあります。実際、そのような人がいることは確かでありますが、ホームレスのほとんどはあいりんなどの寄せ場の元日雇い労働者、すなわち建設・土木産業にかかわってきた労働者であると考えます。大阪では特にこのような特徴が顕著であります。

 現在のホームレス問題は、まさにこの元日雇い労働者のホームレスとしての大阪市全域への拡散であると考えますが、民生局の見解はどうでしょうか。平成11年度にも実態調査を行ったと聞いていますが、その結果を踏まえてお聞かせいただきたいと思います。

◎出海民生局総務部連絡主幹 お答え申し上げます。

 平成11年度の実態調査は、大阪市立大学に委託いたしまして、主に公園や河川敷にテント、小屋がけなどをいたしておりますホームレスの動向、ニーズ等を詳細に把握し、本市の地域事情を踏まえまして、より効果的なホームレス対策の検討を行うために、聞き取り方式で市内各地の公園等におきまして、平成11年8月から9月にかけて実施いたしました。

 現在、大学において中間まとめ作業をお願いいたしておりまして、まとまり次第、市会の皆様方への御報告はもとより、報道提供するなど、市民に広く公表いたしたいと考えています。平成7年9月の大阪市立大学社会学研究室のあいりん周辺の4区における聞き取り調査によりますと、約8割があいりんでの就労経験があると回答しております。

 今回の調査では、全市域を対象にいたしまして、15区のホームレス、 672人から回答を得ておりますが、大学側によりますと、今回の調査でも本市のホームレスはあいりんとのかかわりが極めて深い結果が出ているというふうに聞いております。

 このように、本市のホームレスの大半は、委員御指摘のとおり、景気の低迷や機械化の進展、日雇い労働者の高齢化等の理由により、あいりんでの厳しい就労条件の中で野宿生活へと追い込まれ、これが周辺区に、さらに全市域に拡散していったものと考えています。

 いずれにいたしましても、ホームレスの実態やニーズをしっかり把握して、これを今後の施策に生かしてまいりたいというふうに考えております。よろしくお願い申し上げます。

◆柳本顕委員 実態調査の結果を踏まえて、ホームレスとなる原因を十分に分析し、把握した上で対策を講じる必要があります。平成11年の結果は、一日も早く出していただきますようお願いしておきます。

 御答弁のとおり、ホームレスの大半があいりん経験者であるという調査結果を得たならば、しっかりとしたあいりん対策を講じていかなければ、大阪市におけるホームレス問題は解決できません。

 例えば、昨年9月から開設している臨時夜間緊急避難所のテントやあいりんセンターの夜間開放は、衛生面や治安面において一定の効果を示しているように思われますが、民生局はあいりん対策についてどのように考えているのでしょうか。

◎堀田民生局総務部保護課長 お答えいたします。

 あいりん地域におきましては、長期の経済不況、建設・土木産業の求人の低迷、日雇い労働者の高齢化などによりまして、現在、日雇い労働者の生活はここ数年厳しい状況にあるというふうに認識いたしております。

 民生局では、従来から各種の施策を実施し、あいりん地域の環境改善と福祉の向上に努めてまいったところでありますが、生活に困窮する日雇い労働者への緊急の対応が求められ、平成11年6月にショートステイ事業であります生活ケアセンターの定員を20名から 170名に拡大したところでございます。

 また、11月より就労による自立の機会を提供するため、国の第一次補正予算の緊急地域雇用特別交付金事業を活用いたしまして、あいりん生活道路清掃事業及び市有地の除草等作業におきまして、日々45名から 150名に雇用拡大を図ったところでございます。

 また、委員御発言のとおり、昨年9月よりあいりん地域内に野宿日雇い労働者のための大型テントを本年3月末までの間、大阪府用地に民生局で設営いたしまして、緊急一時的対応として夜間の宿泊場所を提供しているところでございます。

 現在、ボランティア団体設営の大型テントと合わせまして約 500名のあいりん野宿日雇い労働者が夜間利用しておりますが、地域内の野宿労働者が半減していることから、地域住民の方々から夜間安心であるとの評価もいただいており、地域の福祉の向上と安定に大きく寄与しているというふうに考えております。

 4月以降も継続いたしまして、地域内に夜間利用できるテントにかわる臨時的な宿泊場所を開設していくことが必要ではないかというふうに考えております

 民生局といたしましては、あいりん地域の住民の方々が安心して生活していただけるとともに、日雇い労働者の生活の安定のために、これら各種の福祉援護対策を実施してまいったところでありますが、あいりん問題の根本原因は現下の厳しい雇用情勢の中、日雇い労働者が仕事にあぶれ、日々の収入が不安定なことであります。労働行政を所管する大阪府、また全国レベルでの就労対策こそがあいりん地域の安定並びにホームレス対策にとって、最も重要なことであるというふうに考えるところでございます。

◆柳本顕委員 確かに雇用問題は決して大阪市の取り組みだけでは解決することは困難であります。

 国、府においてもそれぞれ雇用創出を図り、対策事業がなされていますが、より実効性のある特別就業事業の実施など、ホームレス対策として抜本的な労働施策を国に対しても、引き続き要求していただきたいと思います。

 また、現在の建設・土木産業における機械化の傾向、日雇い労働者の高齢化の進展などを勘案すれば、あいりんの寄せ場としての機能そのものについても改革が迫られているように思います。

 大阪には人材派遣業をリードする企業があります。労働者派遣法が昨年改正され、人材派遣の領域が広まった2000年代においては、民間の人材派遣業との協力やシルバー人材センターのように、高齢者雇用対策を行う機関との連携を模索するなど、新たな発想でのあいりん対策を大阪市が中心となって講じていかれることを強く要望いたします。

 ホームレスに対する対策を考える際には、ホームレスに陥ることを防ぐ方策とともに、快適なまちに住みたいという住民の立場に立った視点が極めて重要であります。公共施設の不法占拠状態に対して、総合的な対応策を講じ、一刻も早く正常な状態に地域環境を復元することが市民の願いであります。

 公園などの公共施設の管理者は、今後どのような方法で不法占拠状態を減らそうとしているのかお尋ねいたします。

◎松下建設局花と緑の推進本部緑化推進部企画主幹 お答えいたします。

 先ほど委員の御指摘がございましたように、市内のホームレス増加に伴いまして、公園におきましてもホームレスによるテントや小屋がけ等の著しい増加がございます。

 このため、市民の快適な公園利用に支障を来すのみならず、周辺住民には安全面、衛生面などの不安も生じております。子供やお年寄りが安心して遊べる広場、またくつろげる場所としての公園の機能回復を求める要望も多く寄せられております。

 公園管理者といたしまして、公園の適正管理につきまして痛感をいたしておるところでございます。

 ホームレスのテント等につきましては、公園は住み着いたり生活する場所ではないことを注意し、テント類や持ち込まれた荷物の公園からの撤去を指導するとともに、悪質なものにつきましては、集中的な対応を行っております

 しかしながら、一時的な改善は見られるものの、すぐにもとの状況に戻るといった状態を繰り返しておりまして、根本的な解消に至っていないのが実情でございます。

 このような状況の中、特に多くのテント、小屋がけを抱えている公園事務所に、専任の巡視員を配しまして、重点的、継続的な巡回指導を行っているところでございますが、今後もこの体制の充実を図りまして、テント、小屋がけの整理、減少はもとより、公園内のホームレスと周辺住民や公園利用者との摩擦の軽減に向けて積極的に取り組んでまいりたいと、このように存じております。

 また、本市の野宿生活者対策推進本部におきまして、地域環境整備を担当する関係部局とも十分協議、調整を図りまして、より効果的な対応策の検討を進め、公園の機能回復、地域環境の整備に向けて積極的に取り組んでまいりたい、このように存じております。よろしくお願いいたします。

◆柳本顕委員 冒頭でも言いましたように、現在70カ所以上の公園に青テントがあるということですが、これを今年度か、あるいは何年後かに幾つぐらいに減らそうという具体的な目標はあるのでしょうか、お尋ねいたします。

◎松下建設局花と緑の推進本部緑化推進部企画主幹 お答えいたします。

 ホームレスのテント等の減少目標についてのお尋ねでございます。

 最近3年間に6割という急激なテント等の増加によりまして、市内の約70カ所の公園に 2,100件を超えるホームレスのテント、小屋がけがある現状でございます。

 現在、私ども公園の利用に著しく支障となるもの、また近隣にお住まいの皆様に御迷惑をおかけする行為、こういうものを中心に重点的、集中的な対応を行っておるというようなところでございます。

 しかしながら、公園など公共施設でのホームレスの退去指導に当たりましては、施設管理面のみでの対応ではちょっと限界がございます。自立に向けました支援体制の確立、雇用の安定のほか、福祉、保健、医療、施設等の受け皿の確保などを含めました総合的な対策が不可欠でございますので、公園管理者といたしましても、今後これらの対策の進捗と緊密な連携をとりまして、計画的な退去指導に努めてまいりたい、このように存じております。

◆柳本顕委員 大阪市の各局の皆様が、住民の居住環境の整備のためにいろいろと御苦労いただいていることは私も十分承知していますが、結果のあらわれない対策では、大阪市は一体何をしているのだということになります。市民に目で見られる形での、体で感じられるような成果が出てくるような対策を練り、努力をしていただくようお願いしておきます。

 東アジア競技大会や、サッカーのワールドカップを行うに当たり、今の長居公園の現状は、国際集客都市を目指す大阪が他国に誇れるような状態ではございません。だからといって長居公園のみ退去指導等を強化し、ほかの公園にホームレスが集結したのでは意味がありません。御答弁のあったように、ホームレスの退去施策と受け皿確保の施策がホームレス対策の車の両輪となって進むことが重要であります。

 そこで、昨年12月の平成11年度補正予算で整備方針が決まった自立支援センターの設置は、本市の深刻な状況の解消にどのようにつながるのか、大阪市が全国に先駆けて自立支援センターをつくることにより、かえって全国のホームレスを大阪市に、また設置地域に呼び込むことになったなどとの事態を招くことがないかについてお聞きいたします。

 入所対象者をどのように、どんな基準で選ぶのか、どのくらいの期間入所させるのか、現時点での運営方針とあわせてお聞かせ願います。

◎松葉民生局総務部連絡主幹 お答えいたします。

 まず、市内の道路や公園で野宿生活をしていた人が、実際に就労支援により野宿生活から脱却したという実績をつくることが、現在の状況を解消するための第一歩であると考えております。また、委員御指摘のとおり、自立支援事業は一つの都市のみが行うべきものではございませんので、各都市との横の連絡も密にしながら呼びかけていき、また、国にも全国規模で実施されるように今後も要望してまいります。

 さらに、設置地域の呼び込みにならないかということでございますけども、入所相談につきましては、専門の相談員がホームレスがいる現地に巡回相談に赴きまして、面接を経た上で入所判定いたしたいと考えておりまして、設置する施設において、直接入所面談する方式はとらない方針でございます。

 自立支援センターへの入所基準につきましては、国でも現在検討中でございますが、就労意欲がありながら就労機会に最も恵まれにくい中高齢者に重点的に入所していただき、常用労働のあっせんによる就労自立を図ろうと考えております。

 そのためにも、関係機関へ高齢化した労働者に適合する雇用の確保を、引き続き要望してまいります。

 厳しい雇用情勢の中でございます。すべての入所者の就労は困難でございますが、仕事のあっせん以外にも各種資格の更新手続の支援、年金受給手続の支援、帰郷希望者への相談、悩み相談等、各種相談による援助も関係機関と連絡をとりながら行い、少しでも安定した生活への道筋をつくっていきたいと考えております。

 入所期間の基本的な考え方といたしましては、国が示しておりますおおむね1カ月程度ということになりますが、就労のめどはついても1カ月では自立に至らない場合も予想されますので、体調やその他の状況も総合的に勘案しまして、入所期間は最大6カ月の範囲内で、弾力的な運用も必要になるかと考えております。以上です。

◆柳本顕委員 確かに、支援センターで仕事が決まらなくても、入所して生活相談や職業相談を受けることはその人にとってプラスになるであろうし、現在多様化し、あらゆるニーズを持った人たちに、すべての面倒を見ることは、まさにかえって全国のホームレスを大阪に呼ぶことにもなります。センター運営に当たっては、安易に食事や宿所だけを目的として、同じ人が何度も繰り返し利用したりすることのないよう、しっかりとした入所管理体制で臨まれることを要望しておきます。

 また、現在ある、ほかの都道府県での自立支援センター設置の動きについても、早期に実効性、実現性のあるものとなるよう、国に対しての要望を続けていただくことを依頼するとともに、大阪での自立支援センター設置に当たっては、地域住民に対して十分な配慮を行い、意見を聞き、また状況説明などを小まめにオープンに行っていただくようお願いしておきます。

 次に、結核対策についてお聞きします。

 結核というと過去の病というイメージがありますが、平成9年には38年ぶりに罹患率が増加に転じ、平成11年7月には厚生省が結核緊急事態宣言を出すなど、今なお深刻な問題であるところを痛感しているところであります。

 特に、大阪市は日本一結核患者の数が多く、平成10年の全国の罹患率が人口10万人対で32.4であるのに対し、大阪はその3倍を超える 104.2、新規登録患者は 2,705人、先ほど触れたあいりんの罹患率は実に 1,923.3とお聞きしています。

 こうした現状を見ても、結核事情の改善は緊急かつ重要な課題であることは明白であり、大阪市会においても結核対策の積極的な推進に関する決議を可決したところであります。

 大阪市では、平成12年4月より全市を管轄する保健所を配置し、新しい地域保健体制のもと、今まで各区にあった保健所が保健センターとなり、保健所が全市1保健所となるということでありますが、この新体制で結核対策に取り組むに当たり、保健所、保健センターでどのような連携を進めていくのかお伺いいたします。

 特に、結核予防法により保健所に設置することと規定されている結核診査協議会については、どのような形で実施していくのか、全市で一つの協議会ですべての結核患者の診査をしていくためには、きっちりとした体制整備を進めていく必要があると思います。

 大阪市として、今後、結核診査協議会の運営のあり方を含め、結核対策をどのように進めようとしているのかお聞きいたします。

◎巽環境保健局感染症対策室保健主幹 お答えいたします。

 結核対策につきましては、既に本年度から結核に関する専門家で構成する大阪市結核対策委員会における議論も踏まえ、検診の拡充や市民への普及啓発に努めているところでございます。

 本年4月からの新しい地域保健体制のもとでは、保健センターは地域に密着した結核検診、ツベルクリン反応、BCG接種、公費負担の届け出、患者面接などの事業を従来どおり実施してまいります。

 また、保健所は結核対策の中心的役割を担うこととし、専門職員を配置して、結核発生動向調査、結核診査協議会の設置・運営、患者管理の徹底、接触者集団検診に関する保健センターの指導などにより、結核対策を強力に推進してまいります。

 結核診査協議会におきましては、大阪市全体を統一的な方針のもとに診査を行うとともに、毎週開催により、サービス向上を図ってまいります。さらに、その役割を補完するものとして、大阪市の4つの基本保健医療圏に複数の専門部会を設置し、二重チェックを行ってまいりたいと考えております。

 なお、今後の対策といたしましては、現在実施している対策に加えまして、短期、中期、長期の具体的な目標を設定し、対策を実行することにより、大阪市の結核罹患率を減少させていく所存でございます。よろしくお願いいたします。