【 平成13年度決算特別委員会(一般)平成141112-1125日−06号 】

◆柳本顕委員 

 次に、ホームレス対策関連についてお聞きいたします。ホームレス対策事業といたしましては、本市ではこれまで臨時夜間緊急避難所、自立支援センター3カ所、大規模公園における仮設一時避難所といった施設整備を行ってきているところであります。もちろんこれらのハード面での対策のほかに、巡回相談事業や雇用対策といった間接的・直接的なソフト面での対策も実施していただいているところであります。

 しかし、それぞれの施策がホームレス問題全体の中で、どのような効果がどれぐらいあるのかということについては検証しにくいという側面もあると思いますけども、余り積極的には検証されていないようにも思います。中でもハード面での対策については、地元住民の方々から御理解と御協力をいただき、調整を図りながら進めている事業であり、事業期間についても約束をしていることから、その事業の展開については十分検証・調査を行い、地元の方々にも的確かつ迅速に説明していく必要があると考えます。

 そこで、平成12年に地域の方々から、施設を整備することにより何らかの地域環境の改善が見られるのであればということで、御理解をいただき建設された臨時夜間緊急避難所について、その現状と効果についてお伺いいたします。

◎倉谷健康福祉局福祉本部生活福祉部保護課長 お答え申し上げます。

 臨時夜間緊急避難所についてでございますけども、現在定員600人規模で運営しているところでございます。開設当初に行いました利用者アンケートでは、約60%に当たる362人の方から回答を得ました。そのうち219人が55歳以上の労働者でございました。また、毎日利用していると回答した人は203人で、そのうち131人、約65%の方が55歳以上の労働者ということでございました。地域における野宿の状況は、避難所の設置によりまして、高架下や商店街等での野宿生活者が減少しまして、地域住民の夜間の生活の安定に寄与していると考えているところでございます。

 また、直接的な因果関係については明らかではありせんが、平成12年度以降の西成区における行旅死亡人が減少もしております。

 地元からの要望でございますが、環境改善の観点から関係局と連携しまして、トイレの設置を初め道路中央部へのポストコーンの設置やフラワーボックスの設置を行ってきております。また、放置自動車及び自転車の撤去を適宜行うとともに、避難所周辺の清掃につきましても毎日実施しているところでございます。

 このように、地域住民と野宿生活者の双方にとりまして、一定の効果が見られる施設であると考えているところでございます。以上でございます。

◆柳本顕委員 効果がなかったわけではないというふうには思いますけども、私もインターネットでホームページ上に公開されている事業評価システムの業績評価調書を見させていただいたんですけども、あったのかないのかようわかりません。臨時夜間緊急避難所があるあいりん地区内で、テント・小屋掛けが見るからに減ったわけではありませんし、地元から建設当初要望のあった夜間避難所前の三角公園周辺の環境改善についても全くと言っていいほど進んでいません。

 また、避難所利用者についても、避難所がなければ支出を抑えて簡易宿泊所に泊まるけれども、避難所があるから持ち金を使い果たして避難所に泊まるという話も聞きます。避難所自体の必要性は認めざるを得ない面がありますけれども、その場所や運営のあり方については今後も十分に改良していただかなくてはなりません

 ちょうど緊急夜間避難所は、来年3月で地元との約束の3年の期限が過ぎます。長居公園の避難所については、初日に答弁あったように前倒しで撤去するような方向でありますけれども、ほかにも自立支援センター3カ所も、来年度には約束の3年の期日が来ます。

 本年7月31日にホームレスの自立の支援等に関する特別措置法が成立し、今後基本方針、実施計画が策定されると、さらなる施設整備にも取り組む必要が出てくるように思います。そのようなときに、施設整備には何といっても住民との信頼関係が必要であり、その信頼関係を守るためにも、これまで整備された施設についての住民との信頼関係の実績をつくっていくべきと考えますが、この点についての局の決意をお伺いいたします。

◎倉谷健康福祉局福祉本部生活福祉部保護課長 お答え申し上げます。

 施設整備に当たりましては、委員の仰せのとおり、住民の方々の理解を得ることが最も重要であると考えております。

 事業の実施に当たりましては、地元住民への説明会の開催を行うことによりまして、施設の必要性や運営方法などにつきまして十分説明を行い、理解と協力を得る努力を行ってきたところでございまして、さらに必要に応じてきめ細かな説明も重要であると認識いたしておるところでございます。住民の方々からの要望や意見につきましては、真摯に受けとめまして、誠意を持って対応する姿勢が大切であると認識しております。

 また、施設の運営に当たりましては、本市と地元住民等で、例えば運営委員会を組織して定期的に運営状況や利用状況、そして地域の現況について意見交換を行いまして、同じ認識に立ちつつ、その都度改善に努めていくことが大切なことであると思います。

 こういったことによりまして、住民の方々との信頼関係を築いてまいりたいと考えております。以上でございます。

◆柳本顕委員 行政側から住民との信頼関係を崩すようなことはないようにお願いをしておきます。

 初日に我が党の大内委員が生活保護費の扶助費の決算額についてお尋ねしたところ、平成13年度の決算額は約1,721億円で、前年度と比較して11.6%増加しているとの答弁がありました。雇用状況の悪化という出口施策での閉塞状況がある以上、一定容認せざるを得ないことかもしれませんけれども、ホームレス対策の最終地点が生活保護の適用になりがちで、生活保護費が増加し財政を圧迫しているのが現状であります。

 また、ホームレスから生活保護という流れにより、ホームレスの集中する地域周辺に生活保護受給者も集中し、その社会的弱者に群がる、例えば麻薬の売人であるとか悪徳業者によってまちの環境が悪化しているという光景も見られます。さらに、大阪を本籍地、出身地としないホームレスが大阪で生活保護適用となったとき、長年の居住者のように居住地域に愛着や関心を持たない場合に、地域住民との間に摩擦が起きてしまうこともあります。

 このような状況をかんがみると、まず各局を横断した組織である野宿生活者対策推進本部の機能をより一層充実強化させ、安易に生活保護に頼らないホームレス対策が必要でありますし、生活保護は国が責任を持って国民に最低限度の生活を保障する制度である以上、国に対して全額負担を求めていくべきであると考えます。それと同時に、あいりんを中心とした地域についても、ホームレス対策やそれに伴う重荷を一人で背負わすことにならないような特段の配慮をもって、あらゆる行政措置の手段を講じていただきたいと思うわけです。

 ホームレス対策及び生活保護について、今後の展開について、健康福祉局の見解をお聞きいたします。

◎武内健康福祉局福祉本部福祉援護担当部長 お答え申し上げます。

 ホームレス対策についてでございますが、かねてより要望いたしておりました特別法の制定が、今委員が御指摘ございましたように、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法という形でこの8月7日に施行され、来年1月から2月にかけての全国実態調査も予定されています。これに基づいて、国の基本方針の策定、さらに関係する関係地方自治体の実施計画の策定が予定されているところでございます。

 一方、この対策の一番大きな柱は、就労の確保が最も大きな柱となってございますので、本市としても引き続き国に対しまして効果的な特別就労対策の実施を求めていきたいと考えているところでございます。

 また、今委員がお触れになりましたように、あいりん地区に関する問題でございますけれども、この特別措置法の中でもホームレスであることを余儀なくされるものが多数存在する地域として明文化されています。この規定はあいりん地域や東京の山谷地域を、対策の必要性があることから念頭に置きまして、明文化された経緯がございますので、まだ国の取り扱い内容が示されておりませんけども、今後の国の基本方針にこれらが打ち出されるものと考えております。この際、大阪市としましても、地域の環境改善とあわせて強くその推進をしていく必要があるものと考えております。

 また、大阪市におきまして、今言われましたように市長を本部長とする野宿生活者対策推進本部におきまして、今触れましたように国の基本方針に即して速やかに実施計画を立てて、全庁的にその具体化に取り組んでまいりたいと考えています。

 次に、ホームレスに対する生活保護についてでございますけども、ホームレスの中には高齢や病弱等により就労ができない方や仕事がないために就労できない方がおられ、その場合、生活保護は安全ネットとして大きく機能いたしておりますが、今後とも今御指摘がございましたように、適正な保護の実施に努めてまいる所存でございます。

 また、ホームレス問題は一地方自治体の問題でなく、国の責務のもとに全国的な対策を行うべきとの観点から、生活保護費の費用負担のあり方につきましても委員を初め広く御助言を賜りながら、いろいろな保護の仕方もございます、適用のあり方もございますので、その内容を吟味した上で国の負担を強く求めてまいりたいと考えています。

 いずれにしましても、あいりん地域を含めたホームレス対策の現状は緊急を要する課題でございますので、委員御指摘の内容、趣旨を真摯に受けとめまして、対策を積極的に推進してまいりたいと存じます。

◆柳本顕委員 ホームレス対策についても、ただ漫然と現状に対応しているだけでは抜本的な解決になりません。既存の建物を利用するなど、できるだけ費用のかからない方法を検討するべきであり、対策の効果も十分に検証していただかなければなりません。例えば、毎年建てては壊す越年対策事業についても、そのあり方を検討するように要望しておきます。

 また、最近、生活保護受給者をうらやむ声が聞かれます。余りにも行政サービスが行き届いているのがその理由のようであります。最初に取り上げた市税も非課税、市営住宅に入っても住宅扶助があります。それでも家賃を滞納する方があると聞きます。保育料も免除。このことをよくないと言うつもりはありません。

 しかし、生活保護制度が社会の中で本来の趣旨を果たす制度として機能するような調整は必要であると考えます。家族のつながりが希薄である現代だから生活保護がふえるという見方もありますが、本来家族によって助け合うという家族愛というもの、あるいは地域の中で隣近所が家族のようにお互い支え合うという日本古来の風土というものを、かえって保護制度が希薄にする要因ともなりかねない事態であるように見受けられます。少子・高齢化の進行など、そういった状況の中で多様化する福祉ニーズに対応するため、よりきめ細やかな福祉施策の展開を図る必要があるのも事実であります。

 しかし、本市を取り巻く財政状況は極めて厳しい状況となっており、限られた財源の中でありとあらゆる市民ニーズに対応していくためには、生活保護世帯に対する行政サービス水準の再検討や市営交通料金や上下水道料金の福祉措置制度など、本市独自の福祉サービスや高い水準にある福祉サービスについてもこれを聖域とせず、改めてそのあり方について精査・検証する必要があると考えますが、いかがでしょうか。

◎寺本健康福祉局理事兼総務部長 私ども健康福祉局におきましては、これまでも高齢者保健福祉計画、障害者支援プラン、児童育成計画あるいはすこやか大阪21などに基づきまして、安全ネットの構築に向け、市民の健康・福祉を守るための施策の推進に努めているところでございます。

 しかしながら、これら施策の推進に当たりましては、本市を取り巻く非常に厳しい行財政状況のもと、限られた財源を最大限活用いたしまして、多様な福祉ニーズに的確に対処していくことが必要であると考えており、個々の事業の内容につきまして精査・検証し、今日的なあり方について幅広く検討を行い、市民の方々が安心できる福祉サービスを適切に提供できるよう取り組んでまいる所存でございますので、よろしくお願いします。