【 平成13年第1回定例会(平成13年3月)-0306日−02号 】

15番(柳本顕君)

次に、ホームレス・あいりん対策と生活保護の適正実施についてお尋ねいたします。

 まず、ホームレス対策についてですが、昨年はホームレス関係施設が本格的に稼働したいわば「ホームレス対策元年」とも言える年でありました。巡回相談事業の充実を初め自立支援センターが地元の皆様のご協力のもと、北区、西成区、東淀川区に相次いで開設され、就労、自立に向けた支援事業がスタートし、また長居公園には仮設一時避難所が整備され、ホームレスの自立支援を図るとともに実効性のある公園適正化対策が始まったところでもあります。

 しかし、いまだにホームレスに占拠された公共用地は数多くあり、これらの応急手当施策がどれだけ真にホームレス対策につながるのか疑問視する声もあり、我が党としても抜本的な解決策を探るべく、国に対して国の責務の明確化、全国規模での自立支援事業や各種財政措置、公共施設の管理規定の強化などを柱とするホームレス対策を総合的に推進するための特別立法の制定を要求しているところであります。そこでまず今後の施策の取り組み姿勢並びに展望、ホームレス問題解決に向けての市長の決意をお伺いいたします。

 また、本市ではホームレスの増加の第一の原因でもある近年の長引く景気低迷の影響などを受けて生活保護世帯が増加してきており、平成13年度には民生費、 4,507億円のうち実に36%の 1,638億円が生活保護費として計上されています。もちろん生活保護制度は真に生活に困窮する市民にとって最後のよりどころとなる福祉制度であり、予算額の割合を見て多額であると批判すべきものでないことは言うまでもありませんが、その運用に当たっては公正、公平かつ厳正でなければならないと考えます。

 また、法の適用に当たっては、地域事情に明るい民生委員と連携をとっているわけですが、民生委員の活動にも限界があり、一定地域に保護世帯が集中することによる弊害も出てきているようであります。生活保護が市民の信頼を得て運営されていくためには、生活保護の適用に当たっては十分調査の上、保護の要否判定を厳密に行い、保護適用中の被保護者の生活相談や自立指導についても民生委員やケースワーカーを通じて積極的に取り組むことが必要不可欠と考えますが、生活保護の適正実施に向けた市長の決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。

 次に、あいりん対策についてでありますが、あいりん地域は大阪の拠点となり得る交通の利便を有しながら、時代の流れの中でさまざまな問題が複雑に絡み合い、さきに述べたホームレス問題も深刻化し、現在、まちづくりの取り組みは困難をきわめています。しかし、梅田、難波に次ぐ大阪の玄関口でもある天王寺に隣接するこの地域の有効なまちづくりは必ずや21世紀の大阪の発展に大きく寄与するものと私は信じております。地域の抜本的対策を考えるときには、今やその機能を失いつつある労働福祉センターの問題に着手しなければならないわけですが、まずは現在の数々の問題をひもといて、一つ一つ改善していく必要があると考えます。中でも悪質な違法露天商や山積する不法投棄のごみ、あるいは放棄自動車による通行障害はまちづくりの第一歩として解決しなければならない問題であります。道路構造を工夫したり照明灯の効果的な利用、またパトロールの強化などの対策に加え地域住民の協力が得られるような仕組みづくりと施策の総合的な取り組みを行うことによって、地域の環境美化を効果的、効率的に達成できるものと考えます。今後のまちづくりの展望も踏まえ、これらの対策についての市長の御所見をお伺いいたします。

市長(磯村隆文君)

ホームレス対策についてでございますが、一人一人の野宿生活者の生活実態やニーズ等をきめ細かく把握し、効果的な支援策について総合的な相談を行うことが対策を進める上の基本でありますので、昨年拡充した巡回相談事業を一層充実したいと考えています。また、昨年3カ所開設した自立支援センターの安定的な運営に努めるとともに、さらに1カ所新規整備に向けて取り組んでまいります。

 一方、急務である大規模公園の適正化につきましては、長居公園の効果を見ながら西成、大阪城公園におきましても関係先との調整を行い、13年度内に仮設一時避難所の整備に着手したいと考えています。またより身近な公園や道路等につきましても、その適正化に向けて取り組んでまいりたいと考えており、今後とも創意工夫を凝らし積極的に対策に取り組んでまいります。しかしながら、根本的な解決のためには実効性のある雇用対策が必要であり、さらに住居や保健医療など課題は山積しており、財源を含め本市単独では対応しきれない問題でありますので、国に対しまして、特別立法の制定並びに特別就労対策事業の実施について強く要望を重ねてまいりたいと考えております。

 生活保護の適正実施についてでございますが、生活保護制度は真に困窮している世帯の最低生活を保障する一方で、積極的に自立助長を促進することが制度の目的であります。大阪市の保護動向はバブル景気の崩壊後、増加に転じ、長引く景気の低迷等の影響も受け、高齢者世帯を中心に増加傾向で推移しています。市民の制度に対する信頼を確保するためにも、地域での協力者である民生委員の協力も得ながら、受給要件の確認を徹底し、自立に向けての指導援助に積極的に取り組むなど、制度の適正な実施に一層努めてまいりたいと考えております。

 あいりん対策についてでございますが、当該地域が現在抱えております課題の一つである環境改善につきましては、警察と協力して通行障害物の迅速な処理に努めており、また道路構造にも工夫を凝らしております。今後ともさらに具体的な形での効果があらわれるよう、より一層ハード・ソフトの両面から総合的に取り組んでまいります。また地域住民の協力を得て対策を推し進めていけるよう、行政施策を積極的に実施してまいりたいと考えております。当該地域は大阪市全体の活性化を考える上でも重要な地域でありますので、今後とも地元関係者の御意見を踏まえまちづくりについての検討を進めてまいります。

P.339 ◆ 4番(山崎誠二君)

次に、ホームレス対策についてお尋ねします。

 大阪市が平成10年度に実施したホームレスの概数・概況調査によれば、その数は 8,660名となっています。しかし、長引く景気の低迷により、ホームレスは増加し続けており、今後ともその傾向は続くと考えられます。現在、全国のホームレスは約2万人を超え、大阪市では全国の50%、1万人を占めていると推定されており、人口比にして実に東京の6倍と際立っています。

 最近では、長居、大阪城など大公園のみならず、周辺区の中小公園でも青テントが見られるなど、市域に拡散しており、周辺地域住民にとっては公園や河川敷の利用が制限されるなど、公共面や環境面での影響が顕在化しており、また昨年の長居公園における仮設一時避難所建設に見られたように、地域住民の生活権・環境権とホームレスの生存権をめぐって、激しい施設コンフリクトが起きています。

 大阪市は、国に対し、全国規模での自立支援事業や特別就労対策事業を内容とする特別立法を求めていますが、全国のホームレスの半分を占める大阪市が、主体的に大胆な決意のもと、先進的な取り組みを行うことによって、国や他の自治体をリードしていくことが求められています。そのためには、今後3年間で 8,660名のホームレス状態を完全解消するなど、政策目標を明確にした対策要綱を策定し、市民にはっきりと見える形でテント・小屋がけ状態をなくすとともに、総合的な施策を展開しなければなりません。

 今日の増加し続けるホームレスは、不況や相次ぐ企業のリストラなどによって生み出されており、いわば経済難民とも言え、災害被災者や高齢者・障害者施策などで行われている何らかの積極的な支援策がとられるべきであります。ホームレス問題の解決は仕事と住居の確保に尽きますが、それぞれの労働意欲や能力などのニーズに沿って支援メニューを準備しなければなりません。

 また、さきに発表された調査研究報告によれば、生活保護や生活費など現金給付へのニーズは低く、決して怠けているのではなく、さまざまな事情によってホームレス状態となり、そのうち約80%が生活維持のために廃品回収などの仕事をしています。これは就労の機会さえあれば十分に自立可能であることを示しており、雇用と就労確保に向けた支援策が重要であります。

 そのためには、経済界や産業界、さらには労働界へも呼びかけて、協議組織を設置するなど、雇用の拡大の取り組みを行うべきであります。また、新たな労働市場の創出や自治体間による雇用調整や過疎地対策を進めるために、自治体間協力ネットワークを呼びかけるなど、国の対策を先取りした積極的な就労・雇用対策を進めるべきであります。

 さらに、就労困難者や就労不可能者にあっても、住居と食事の確保は最優先の課題であり、緊急援護や仮設一時避難所の増設に加えて、より踏み込んだ住居確保策として、民間住宅ストックの活用や、高齢者・障害者に対してはグループホームなどの整備を図らなければなりません。

 また、これら支援策に加え、ホームレス問題の正しい理解と認識を得るため、市民への啓発活動も必要であります。あわせて、大阪市のホームレス問題の背景ともなっている抜本的なあいりん対策を進めるとともに、ホームレスの新たな発生防止へ向けた取り組みも行わなければなりません。これらの点について、市長の御所見をお聞きします。

市長(磯村隆文君)

ホームレス対策についてでございますが、近年、野宿生活者の増加と生活拠点の拡散化が進み、また聞き取り調査によれば、中高年齢層が多く、ほとんどが廃品回収に従事し、収入は少なく、他の仕事を求めており、約3割が体調が悪いなどの実態が見られます。これらの実態から、当面の対応策として、全市域をカバーする巡回相談事業や就労・自立を支援する自立支援センターの整備運営に取り組んでまいりました。

 巡回相談事業につきましては、一層の強化充実を図り、来年度には面接件数も大幅にふやして、就労自立や医療、福祉の相談・援助を着実に実施してまいりたいと考えております。

 自立支援センターにつきましては、昨年の秋以降、市内3カ所で開設しており、センターでの支援の実効性を高めるため、大阪労働局を通じて求人開拓について関係者に対し協力を求めるとともに、大阪府が計画している就労支援モデル調査研究事業などとも連携を図り、さらに国に対しては、大阪府とともに、環境や自然の保全事業等、農林業従事者を補う形での雇用創出などについても要望し、あわせて自立支援センターの新規整備に向けて取り組みたいと考えています。

 また、御指摘のとおり、住居確保への支援も重要であり、民間の低家賃住宅の紹介や福祉施設の充実などにも取り組んでまいります。

 一方、大規模公園の適正化と野宿生活者の自立支援を行うため、昨年末に長居公園内に仮設一時避難所を設置いたしましたが、自立支援や医療、福祉の相談・援助を実施し、順次縮小し、必ず3年以内に廃止してまいります。今後は、長居公園での効果を見ながら、大阪城、西成公園においても実施したいと考えておりますが、地域住民への情報提供や当事者のニーズを的確にとらえるなど、円滑な事業実施に努めてまいります。

 また、市民意識調査からは、働くのが嫌で野宿しているなどのイメージも強く、御指摘の市民啓発についても、さまざまな機会を利用して充実させていく必要があると考えています。

 一昨年の7月、私自ら本部長となり、野宿生活者対策推進本部を設置して対策に取り組んでおりますが、地元住民、ボランティア、経済界、労働界、学識経験者などからも効果的な自立支援方策の提言を求め、ことしの夏を目途に総合的な施策案の構築に向けて取り組んでまいります。この問題は、近年の経済・雇用情勢等を背景として、仕事、住居、家族等の問題が複雑に絡んだ都市問題であり、また大阪市では我が国最大の日雇い労働市場である「あいりん地域」の問題もございますので、国の支援のもと、関係機関との連携により、総合的に取り組む必要があると考えております。

 野宿に至る原因はさまざまであり、それぞれの実態に応じて全庁体制で一層取り組みを強化する所存でありますが、この問題の解決には、国の責務とその範囲、対策の根拠、財源等を明確にする必要もあり、野宿生活者対策に関する特別立法の制定について、市会の皆様方の御協力も得ながら、国に対して要望を重ねてまいりたいと考えております。