【 平成16年2・3月定例会常任委員会(民生保健・通常予算)-0318日−06号 】

◆柳本顕委員

続きまして、ちょっと先ほどの介護と関連して、あいりん地域の問題に入っていきたいというふうに思うわけなんですけども、私たちの地元で、釜釜介護というのがあるんですね、釜釜介護。どういうものかといいますと、言葉どおり、もともと日雇い労働者の方が自立支援センターなどで職業訓練を受けて、ヘルパーの資格を取って介護サービスを提供するんですね。それで、もともと日雇い労働者で介護認定を要支援とか要介護1とかで受けた者のところに、事業者を通して介護サービスをすると。ピア的な意味というかその経験を生かして、釜ヶ崎出身の労働者が、釜ヶ崎出身の労働者で介護が必要な人のところに介護に行くということなんですけども、これは、介護というのはこれからも一定の人的増強が必要な分野なので、ホームレスの自立に向けた動きの中で、このような取り組みがされること自体は決して悪くないと思います。

 ただ、そういった釜釜介護の現場でよく不正の話、先ほどの話じゃないですけど、耳にするんですね。例えば釜ヶ崎の労働者だから、きちっとした介護サービスを提供しなくてもわからんやろうとか、それはサービスを受ける立場の話なんですけども、また、もともと日雇い労働者の方がヘルパーになったんですけども、仕事として適正なサービスの提供が困難な方もいるというふうに聞くんです。ヘルパーのためのヘルパーが要るとか、そういう実情もあるようでございます。

 そういった動きが出てくることと連動して、あいりん地区内ではもう介護は、普通10割としたら6割ぐらいのサービスをしといたら、あとは不正じゃないけども、水増し請求しててうまいこともうかるというような風潮さえあるというふうに聞き及んでいます。そういった現状を考えると、私、非常に危機感を感じるわけでございます。

 あいりん地域には労働センターがありまして、不況下でホームレスの震源地であるとも言われております。また、ホームレスの自立の出口である就労へのつなぎが見出しにくい中で、生活保護者の震源地であるという言い方もされております。市長に来ていただいておりますので、今の現状を確認しつつ議論を進めたいというふうに思います。

 まず、あいりんの労働センターですね、労働センターでの求人数と雇用保険被保険者手帳、通称白手帳と言われてるものです。白手帳の所持者数、またホームレス−−野宿生活者ですね−−の数をバブル最盛期と現在と比較した場合どのような状況なのか、お聞きいたします。

◎倉谷健康福祉局生活福祉部保護課長 お答えします。

 平成2年度のバブル最盛期におきます日雇い求人者数ですが、日々の現金雇用と30日以内の短期雇用を合わせまして1日平均約 9,600でありましたが、以降減少し、平成14年度では 3,500人と、最盛期に比べますと約3分の1の求人数となっております。

 また、雇用保険被保険者手帳−−いわゆる白手帳ですが−−を所持している者の数ですが、平成2年度末では1万 4,300人で、そのうち55歳以上の構成比が40.1%、平均年齢が51.9となっております。これが平成14年度末では1万 500人と約3分の2に減少しまして、55歳以上の構成比が54.8%、平均年齢は54.5となっておりまして、日雇い労働者の高齢化が進んでいるところです。

 一方、あいりん地域内の野宿状態にある者の数ですけども、平成2年度では1日平均90であったものが、平成14年度では臨時夜間緊急避難所の利用者も含めまして、1日平均約 1,000となっております。ただし、例年、年度当初の4月から7月中旬までは事業が発注されないことや、梅雨などによりまして求人が減少し、野宿状態にある者が約 1,100人から 1,200人ほどになります。反面、年度末にかけましては求人が増加するために約 800人から 900人で推移しているところでございます。以上でございます。

◆柳本顕委員 すごい数であります。バブル期と比べて仕事は半減以下、これは時代の流れで仕方がないこともありますけれども、ホームレスの数に至っては平成2年度で90人ぐらいだったのが今や 100倍以上ですか。 1,000人ですから 100倍以上ですね。こういった状況を受けて、まちの環境も大きく変わってきてるというふうに思うんですけども、あいりん地区の生活保護率、それから辻先生の方からも質疑ございましたけれども、結核の罹患率、現状をお聞かせください。

◎倉谷健康福祉局生活福祉部保護課長 お答えします。

 あいりん地域の生活保護率ですが、平成15年3月現在で 230.4パーミルでありまして、同じ時期の大阪市平均33パーミルと比較しまして約7倍となっております。また、人口10万人に対しましての結核の罹患率についてですが、あいりん地域が 953.3に対しまして大阪市平均は74.4でありますので、約12.4となっております。以上でございます。

◆柳本顕委員 こちらもすごい数です。先ほどホームレス、やっぱり10倍でしたね。

 それで、これ大阪の平均と比べてこれだけということですけども、大阪の平均値も高いんでこの点も注目しなければいけないと思うんですけども、ほかにもこのような地域的な、社会的な要素も加わって、決してこれは地元のことを卑下するわけではないんですけどもあえて言いたいと思います。

 高齢化率にしてもごみの不法投棄の量にしても、大阪24区で残念ながらナンバーワンなんですね。高齢化率なんかはそれをもって悪いとかいうわけではないですけども。あと、先ほどの介護の問題なんかでも、要支援、1、2、3、4、5と要介護の方の数でも、西成区は24区で現在、平成151231日現在で数でナンバーワンです。比率にするとまた高くなると思うんですけども。

 このような状況を考えると、何とかこの今の状況を脱するべく動きが必要じゃないかなというふうに思うんですね。

 あいりん地区内では、ホームレス対策の一環として、越年対策事業、特別清掃事業や臨時夜間緊急避難所の設置・運営、また自立支援センターへの入所誘導などを実施してるところであります。しかし、これらはあくまでも労働者を主眼に置いた施策であり、地域の住民にとっては地域環境等が改善されてないという話はよく聞きます。地域内の公園や路上のホームレスが一向に減少しないし、それに加えて先ほど来確認をさせていただいた保健衛生上の課題、不法投棄の問題、露店の問題等の解決にもつながってないように思います。

 これまでの諸施策を実施してきた中で、まちにどのような変化が訪れていると認識しているのか、お尋ねをいたします。

◎松山健康福祉局福祉援護担当部長 お答えいたします。

 あいりん地域における諸施策が、地域にどのような変化をもたらしていると認識をしているかというお尋ねでございます。

 あいりん地域の日雇い労働者の多くは単身であること、家族関係が疎遠であること、また人間関係や社会関係が希薄であることなどによりまして、生活基盤が脆弱でございます。そのため、本市では越年対策事業の実施、さらには臨時夜間緊急避難所の定員をこの1月から 1,040人に拡大いたしておりますけれども、緊急・一時的に宿泊場所の提供を行いますことにより、野宿への防止、これを図るとともに、環境改善にも寄与しているというふうに考えております。また、特別清掃事業の実施によりまして高齢日雇い労働者の生活支援を行うとともに、地域の環境美化を図っておるところでございます。

 これらの各種事業は、あいりん地域の状況に応じそれぞれ工夫を凝らして実施しておりまして、私どもといたしましては、日雇い労働者の生活の安定や野宿の防止に一定の成果を上げておりますとともに、また地域の安定にも寄与していると考えているところでございます。

 しかしながら、露店や不法投棄の問題、公園の適正化の問題、学校周辺の安全の確保の問題、こういった環境改善に対する強い要望が地域の皆様方から出されているということにつきましては、本市のあいりん対策連絡会議の場において関係局の方からもお聞きをいたしておるところでございます。また、日雇い労働者の高齢化や野宿状態にある方の増加に加えまして、生活保護受給者の増加、それから簡易宿所の転用住宅の増加などによりまして、従来の施策だけでは対応できない新たな課題が生じている、このように認識をしておるところでございます。以上でございます。

◆柳本顕委員 そうなんです。従来の施策だけでは対応できないんですね。本当にそういう状態になってきてるというふうに思うわけでございます。

 そこで、市長にお伺いしたいというふうに思うわけなんですけども、あいりんは産業構造が変わった現在の不況の影響を最も強く受けている地域であります。現在の状況を見ると、さらに状況が悪くなっていくのかなという、そういう懸念もあります。

 今、あいりん対策の主軸となっているホームレス対策を見ても、焼け石に水とまでは言いませんけども、目に見えた効果の出ない特別清掃事業や各種就労対策、臨時夜間緊急避難所も三角公園横のいわゆる今宮シェルターにおいては、住民との3年間という約束を破ってまで延長して、三徳寮横も強い住民の反対を押し切ってまで実行してますけども、一定の地域の安定につながってるとしても、それが抜本的な対策にはなり得ず、今後の展望が見えてこないのが現状でございます。

 越年対策にしても同じ手法、ただ単に建てては壊す、建てては壊すと継続するだけで事業の工夫が見られません。今日的な観点から、日雇い労働者というものを根本的に見直し、労働センターの廃止とか分配とか行政施策の転換を図っていかなければならないと考えるが、どうでしょうか。これは1点目です。

 また、地域の課題を考えるときには、どうしても労働者団体及びその関係者中心となりますけども、交通至便など、まちのポテンシャルを顧みると、もっと多角的な観点からまちの方向性を決めていく準備を今まさに、今、始めていく必要があるというふうに思うわけでございます。地域でもそういった動きが芽生えつつあります。

 例えば、大阪市のまちづくり活動支援制度を活用した萩之茶屋駅周辺まちづくり研究会というのが、平成14年3月に結成され、9月から動き出しております。清掃活動とかまちづくりに対して、子供から大人までが世代を超えて考えるという取り組みがなされまして、この3月に一定こういう冊子ができました。子供たちがまちづくりに思いを込めた絵とか作文を書いてます。

 ちょっと子供の書いた作文を読まさしていただきたいと思います。

 私の夢のまち。私の夢のまちは、緑や花を植えてほしいと思います。しかし、今はそういうことは全く考えられません。しかし、もしかしたらなるかもしれません。僕ならば、木がいっぱいになって緑がいっぱいでまちの建物をきれいにし、ホームレスをなくしてほしいと思います。それに公園がユニバーサル・スタジオ・ジャパンぐらいの広さになってほしいです。そうなるにはまずまちをきれいにし、きれいに掃除をして花や木を植える。建物をきれいにしようとしたらまちの全員の人の意見を聞いてから建物をきれいにする。ホームレスをなくすには、どんな年寄りでも仕事があるようになってほしいと思います。これらが実現すればきっといいまちになるかもしれません。

 こんな思いを子供ながらにいろいろと書いていただいてるわけですけども、こういう子供たちのこれからのことを考えると、まさに長期的な展望のまちづくりを考えていきたいというふうに思うんです。

 また、新今宮の駅周辺ではバリアフリー計画についても住民が積極的に意見を出して、一定の方向が出てきたところでもあります。こういった地域の動きとうまく連動させて、施策を集中的に実行することにより、まちを目に見えた形での改善がなされるように、行政がそれを強力にバックアップしていく体制が必要であるというふうに考えます。大阪のこれからの施策を考えるときに、プラス面、北ヤードとかを増強させるのも一つだと思いますけども、同時に今ちょっと負かもしれないというマイナス面を少しずつ改善させるということにも強い関心を持っていただきたいというふうに思うわけでございます。

 具体的には、あいりん対策連絡会議をもっと充実させて実のあるものへと転換していくとともに、現在の施策についても時期を区切って集中的強化、めり張りをつけることによってまちの課題解決につながると考えますが、今後のまちの位置づけ、施策についてどのように考えているのか、市長の御見解をお聞きします。

◎關市長 長年にわたりましてあいりん地区を見てきた者の一人といたしまして、私もこの地域の問題の根本は、やはり主として単身、すべてではありませんが、単身の日雇い労働者のいわゆる寄せ場相対方式という雇用形態をとっている日雇い労働者の非常に不安定な就労ということがもたらしているこれは社会問題であると、私は考えております。このような問題の抜本的な解決に向けまして、今後はより一層、国等関係機関に私自身も直接働きかけて解決に向かってまいりたいと思っております。

 また、現在のあいりんの状況は委員も御指摘のように、非常に近年の労働環境の悪化あるいは日雇い労働者自身の高齢化、さらにはそれに伴う野宿生活者の増加など、新たな問題も顕在化してきておりまして、大変厳しい状況にあると認識いたしております。

 委員も御指摘になりましたが、本市ではあいりん対策連絡会議というものを設けまして、この地域におけるいろんな課題の解決に取り組んでおりますが、地域の皆様からの御要望につきましても私自身も十分認識いたしております。今後はこの会議の機能を一層強化しまして、市の各局の連携も強めますと同時に、国や府、また関係機関と協議・連携しまして、必要に応じてこれからは学識経験者あるいは経済界の方の御意見も求めながら、現在実施中の各種の事業がより効果的に行われるように努めてまいりたいと考えております。

 いずれにいたしましても、このような施策を進めてまいりますには、地域の住民の方々の協力なしにはこれはなし得ないものでありますので、今後とも地元関係者の御意見を十分踏まえまして、委員も御指摘のように中長期的な展望に立ったまちづくりに向けて、積極的に取り組んでまいる決意でございますので、よろしくお願い申し上げます。

◆柳本顕委員 ありがとうございます。

 ただいまの市長の御答弁、大変私の心にしみました。本当に理事者の方と話してても、申しわけないですけどもいまいち思いが伝わってこない。まちづくりの上で大切なことは、やっぱり愛着心というか執着心というかまちを好きだということだと思うんです。そのあいりんのことについて現状を比較して、大阪市の中でもかなりよくないという現状をあえて露呈していただきましたけども、それでもやっぱり僕はこのまちが好きなんですね。恐らく市長も市大というあいりんの近くで学びをとられて、助役時代にも何度となく越年対策とか足を運んでいただいて、その地域に対する思いというのを強く持っていただいてるというのを感じさせていただいて、うれしく思ってます。これからも国とか府とかを牽引していっていただくぐらいリーダーシップを発揮していただいて、まちの改善に取り組んでいただきたいというふうに思います。

 ちょっと余談になりますけども、海外出張でニューヨークに行かせていただきまして、やっぱり治安はよかったです。そこで感じるのは、やっぱりジュリアーニ市長のいろんな施策があるわけですけども、初め警察動員とかブロークン・ウインドー理論とか、少ない小さな犯罪から摘発するという抑圧的な施策もあったと思うんですけど、それに対する反対もあったと思います。しかし、将来像を決めることによって、そこに突き進むんだということでうまくいったというふうに思うんです。

 やっぱりホームレス施策にしてもあいりん対策にしても、今、多種多様化する中で、反対意見も賛成意見もあると思いますけれども、将来こうなるんだということを示せば、そこに向かってやっぱり物事は進んでいくと思いますし、反対の意見もやっぱりそこにたどり着くんやったら我慢しよかという気持ちになってくると思いますので、そういった意味で今後とも、私どもも本当に全力を尽くして頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。