【 平成16年第1回定例会(平成16年3月)-0304日−02号 】

次に、ホームレス対策についてお尋ねいたします。

 昨年7月に策定された国の「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」に基づき、本市においても実施計画を策定すると聞いております。実施計画案では、自立支援センターをホームレスの自立を総合的に支援するための中核施設として位置づけ、その拡充を図ることとされています。自立支援センターは、地域住民の方々の理解や協力を得ながら、現在、市内3カ所、総定員 280人で運営されており、自立支援に一定の成果を上げてはいるものの、市内のホームレス約 6,600人を対象とするためには、入所定員を大幅にふやす必要があります。また、野宿の主たる原因である失業状態から脱却するには、本人の努力を促しつつ、自立への意志・意欲を高めることによって就労に結びつけるとともに、就労後に再び野宿とならないようきめ細かく支援するなど、強力に施策を推進することが必要であります。

 一方、市内の公共施設に目をやりますと、大規模公園だけでなく小規模公園に至るまで、まだまだテント・小屋がけが目につき、地域住民の方々からは、「公共施設の利用が阻害されている」とか「地域環境が悪化している」という声が寄せられております。快適なまちに住みたいという地域住民の方々の視点に立って、公共施設の利用の適正化を迅速に進めていくことも重要であります。市長も公約とされているように、重点施策の一つとして、在任期間中にもホームレス問題の解決にめどをつけていただきたいと考えますが、市長の御所見をお伺いいたします。

P.218 ◎ 市長(關淳一君)

野宿生活者対策についてでございますが、野宿生活者に関する問題の解決を図るため、16年度から20年度の5年間を期間とする実施計画を策定中でございます。野宿生活者の多くは、就労する意欲はあるものの仕事がなく、失業状態にあります。そのため、就労自立を目的とする自立支援センターの定員枠を、16年度のできるだけ早期に大幅に拡充してまいります。自立支援センターでは、生活習慣の改善、心身の回復とともに、一人一人のライフヒストリーに応じた自立支援策を進めるため、軽易な作業を通して自立意欲を高めるための新たな事業や職業訓練なども行い、就労支援の充実を図ってまいります。さらに、就労した人が職場に定着し、再び野宿に戻らないよう、アフターケアも実施いたしてまいります。また、就労へつなぐ実効性のある仕組みづくりとして、16年度の早期に国、府、経済団体、労働団体等と共同して支援協議会を設置し、事業主への啓発、個々の職業能力に応じた職域の開拓など、雇用の促進を図ります。

 一方、市内の道路・公園等の公共施設の適正な利用が阻害されるなど、地域における生活環境への影響も見られることから、野宿生活者の自立の支援に関する施策の推進を図りながら、道路・公園等の本来持っている機能を早期に回復し、地域住民の方々が円滑に利用できるよう、今後、なお一層の取り組みを進めてまいります。自立支援センターの規模・機能を拡充しながら総合的な対策を推進し、野宿生活者問題の抜本的解決と道路・公園等の公共施設の利用の適正化に向け、野宿生活者対策推進本部の本部長である私のリーダーシップのもと、全力で取り組み、在任期間中に野宿生活者問題の解決にめどをつけてまいります。

P.224 ◆ 22番(長尾秀樹君)

次に、ホームレス対策についてお聞きします。

 長期化する不況と深刻な雇用情勢の中で、企業倒産や相次ぐリストラなどにより、ホームレスの増大をもたらしました。加えて、本市のあいりん地域は新たなホームレスを生み出す土壌ともなっています。ホームレスの実態に関する全国調査によると、全国で約2万 5,000人、そのうち大阪市が 6,600人と4分の1を占め、全国最大となっています。さらに、本市においては35%が60歳以上であることから、ホームレス問題はもう一つの高齢者問題とも言え、早急に効果的な施策の実施が求められています。

 国の基本方針に基づき策定される本市の実施計画に盛り込まれる就労支援や自立支援策の実施に当たっては、自立支援センターの拡充などハード面の整備だけではなく、ピアカウンセリングなどソフト面の充実も必要です。そして、この自立支援センターの整備に当たっては、事前に地域住民の理解を十分に得るなどして、施設コンフリクトが起こらないようにしなければなりません。また、ホームレスの雇用促進のために設置される経済・労働団体との協議会についても、早期に取り組むべきです。さらに、本市のホームレスの出身地域が西日本に集中していることや、近年、府県を越えて広域的に取り組まれている就業支援が注目されていることから、都市と地方の間における雇用調整や過疎に悩む自治体間ネットワークを創出することは、極めて大きな意義があります。ホームレス問題の抜本的な解決に向けて、我が会派は、さきの一般質問においてホームレス・ゼロプランの策定を提唱しておりますが、ホームレスの完全解消に向けた市長の御決意をお尋ねします。

市長(關淳一君)

野宿生活者対策についてでございますが、今年度内に策定を予定しております実施計画では、野宿生活者がみずからの意思で安定した生活を営めるよう支援することを基本とし、あいりん地域を有するという本市の実情を十分に踏まえ、国、府等関係機関との連携のもと、野宿生活にならないための予防と野宿生活からの自立の支援を兼ね合わせた生活上の支援方策がより一層進められるよう努めてまいります。

 自立支援センターの拡充に当たっては、地元の皆様の御理解を得ながら、16年度のできるだけ早期に開設するとともに、野宿生活者個々の状況を多面的に把握し、きめ細かな自立支援プログラムの設定を行い、支援を進めてまいります。野宿生活者の自立支援には、就業機会の確保が最も重要であり、自立支援センター等において、各種技能講習、職業訓練等の施策を活用して就労支援を行ってまいります。また、国、府及び経済団体、労働団体等と就労支援のための協議会を16年度の早期に設置するとともに、他都市との広域的な連携も図りながら、個々の職業能力に応じた職域の開拓など、就労支援策を推進してまいります。さらに、安定した居住の場所の確保、保健及び医療の確保などをあわせて、総合的な自立支援策を一層推進するとともに、高齢化している状況も踏まえ、問題の抜本的な解決に向け、野宿生活者対策推進本部の本部長である私のリーダーシップのもと、全庁的体制で取り組んでまいります。

P.236 ◆ 54番(待場康生君)

福祉の最後に、今日の大阪にとって避けて通れない課題にホームレス問題があります。ホームレス問題については、さまざまな都市問題が凝縮したものであると思います。かつて大正から昭和の初めにかけての大阪は、近代における最盛期を迎え、著しい発展を遂げましたが、反面、都市の急膨張に伴う諸問題が集中的にあらわれ、物価の高騰に伴う生活難、住宅難、失業の問題に加えて、ホームレス問題も大きな課題となっていたようです。そうした状況のもとで大阪市は、御堂筋の建設、地下鉄開通、それらを初め過密都市の大改造に取り組むとともに、都市政策の一環として、共同宿泊所、市民館、公営住宅などの施設設置、また託児所や市民市場、公園、民生委員の前身である方面委員の任命など福祉サービスの充実によって、先進的なアメニティー都市づくり、産業基盤の近代化と市民生活の質の向上を図りました。その結果、ホームレス問題もほとんど解消し、全国一の社会政策の先進都市と言われたわけでございます。その意味で、ホームレス問題については、自立支援などの直接の支援策だけではなく、総合的な都市社会政策の視点から根本的な方策を明らかにし、解決を目指すべきものと考えますが、市長の御所見をお伺いします。

P.242 ◎ 市長(關淳一君)

野宿生活者問題についてでございますが、本市では、この問題の解決を図るため、実施計画を策定中であります。野宿生活者対策を実施するに当たっては、野宿生活者がみずからの意思で安定した生活を営めるよう支援することを基本とし、就業機会の確保や安定した居住の場所の確保、保健・医療の確保など、総合的な自立支援策を進めてまいります。野宿生活者問題を初め、大都市特有の構造的な諸課題に幅広い観点から取り組み、全国・世界の都市政策をリードしていくことが、大都市としての大阪に求められる役割であると考えております。