【 平成18年3月定例会常任委員会(民生保健・通常予算)-03月15日−03号 】
◆長尾秀樹委員 今、御答弁ございましたように、平成10年の罹患率が約104.2、それが17年、概数値ですが58.8ということで40%減少と、正確には44%ぐらいですかね、減少したと。一方で、全国平均の23.3と比べますと、約2.5倍という御答弁でした。正確には2.65倍ぐらいですかね、そういう状況であるということであります。
昨年も指摘しておりますように、その中で、あいりん地域における結核の状況ということが本市全体の罹患率に与える影響が大きいと思います。あいりん地域の結核の現在の状況についてお聞きをいたします。
◎渡壁健康福祉局保健所感染症対策課長 お答えいたします。
あいりん地域の平成10年の新登録患者数は577人でしたが、結核健診や服薬を直接確認する短期療法であるDOTS事業などの結核対策を推進した結果、平成17年は、概数値ですが204人と、約65%を減少しております。しかしながら、罹患率で申し上げますと680.0で、全国平均23.3の約29倍と極めて高率となっています。
あいりん地域におきましては、重症で発見される方や合併症を持つ方が多く、治療に長期間を要するほか中断される方もあり、早期発見・早期治療の徹底並びに治療中断による再発・感染拡大の防止に努めることが重要であると考えております。以上でございます。
◆長尾秀樹委員 今、御答弁の中で、服薬を直接確認するDOTS事業についてお話がございました。18年度予算の中で、新たに利便性の高い薬局において服薬支援を行う薬局DOTSということが掲げられておりますが、市民にとって、この薬局DOTSがどのような利便性があるのか。また、これまで本市として行ってきましたDOTS事業全体の説明とあわせてお聞きをいたします。
◎下内健康福祉局医務監兼保健所保健主幹 お答えいたします。
DOTS事業は罹患率を下げるために不可欠な事業であると認識しております。
本市では、平成11年9月からあいりん地域の患者さんを対象に地域内の医療機関であります社会医療センターへ通院してもらい、看護師が直接服薬を確認するあいりん拠点型DOTSを開始しました。また、平成13年2月から対象を全市域に広げ、大阪市版「ふれあいDOTS」として、看護師が患者さんの事業所や自宅に伺い、服薬を確認する訪問型DOTSを実施し、新たに平成16年6月から、かかりつけ医で行う医療機関外来DOTSを実施してまいりました。このことが、罹患率の低下に大きく寄与したものと考えています。
しかしながら、現在、一般患者のDOTS対象者のうち、DOTSの実施率は58%であり、結核基本指針の目標値である80%を達成するためには、さらにDOTS事業を拡充していく必要があると考えています。
そのため、昨年10月から北市民病院を退院し、就労等で平日の昼間の訪問が不可能であり、特にかかりつけ医を持たない患者に対し、利便のよい薬局において一週間に一回、都合のよい日・時間帯に薬局で薬剤師等により服薬の支援を行う薬局DOTSを試行実施してまいりました。
この薬局DOTSの試行実施により、患者さんにとってDOTSの選択肢の幅がふえたことで、DOTSが容易となった結果が得られました。
このことから、18年度からは、本格的に全市域に拡大して実施することで多くの患者を治療終了に結びつけ、さらなる罹患率の低下に努めていきたいと考えております。以上でございます。
◆長尾秀樹委員 先ほどの答弁で、特にあいりん地域におきまして、早期発見・早期治療の徹底、それから治療中断による再発・感染拡大の防止に努めることが重要という御答弁がございました。
現在、あいりん地域において実施している結核健診については、住所が定まっていない方が多いため、健診結果を本人に伝えることが困難ということで、そのため、精密検査を受けない方が多いというふうにお聞きをしております。
そういう対策として、本年3月にデジタルエックス線装置を搭載した検診車を導入をして、その場で医師が診断して、医療が必要な方を確実に医療に結びつける新たな健診体制をつくり上げると聞いております。
昨年の御答弁でも、地域内の公園や宿泊施設等と連携した健診を行っていくということで、17年度からということになっておりましたが、購入がおくれたんですか、実質18年度からの事業ということになるかと思います。
それから、健診体制をそうやって充実いたしますと、患者の方が多く発見されるということになります。昨年9月の決算特別委員会におきましては、山本委員からも指摘しておりますが、そういう方を治療に結びつけることが重要であります。これらについて、どのように考えておられるかお聞きをしたいと思います。
◎下内健康福祉局医務監兼保健所保健主幹 お答えいたします。
あいりん地域での健診は、他の地域とは異なり、未受診者のフォローが困難な状況にあるため、迅速な診断を行い、確実に治療に結びつける体制の確保が必要です。このことは、あいりん地域外の野宿生活者の方についても同様であると考えています。
そのため、平成17年度に医師の診断がその場で行えるデジタルエックス線装置搭載の結核検診車を導入し、平成18年度からはこの検診車を配車し、従来行ってきた健診に加え、臨時夜間緊急避難所(シェルター)に宿泊される方の健診機会の拡大を図るとともに、新たに高齢者特別清掃事業に登録されている方、また、あいりん地域の宿泊施設で生活されている方などを対象に健診を行います。
こうした居住拠点や活動拠点での生活実態に即した健診を行い、受診機会の拡大を図り、早期発見・早期治療につなげるとともに、医療が必要な方の未受診の放置による重症化・感染拡大の防止に努めていきたいと考えています。
また、近年、結核専門病院は減少傾向にあり、発見された患者の受け入れ体制の確保が必要でありますので、北市民病院との連携を強化し、患者の受け入れ体制の充実を図っていきたいと考えております。以上でございます。
◆長尾秀樹委員 北市民病院との連携を強化して患者の受け入れ体制の充実を図っていくということでありますが、あいりん地域あるいはホームレスの方の患者さんが退院後、通院治療が必要な人でも治療を中断する方もあるということであります。
こうした治療の中断による再発や新たな感染拡大を防ぐには、治療を継続できる環境づくりが必要ではないかというふうに思います。患者発見から治療の終了までのフォロー体制が重要であるというふうに思いますが、この点について、どう考えておられるかお聞きをいたします。
◎小西健康福祉局保健所長 お答えいたします。
結核健診を受け、病院で治療できたとしても、治療を続けていくためには、委員御指摘のとおり、退院後、安定した生活の場の確保がなければ治療を継続することが難しく、治療中断により再発し、感染を拡大させるおそれがあります。
そこで、退院後、住居の確保が困難な患者さんに対しまして、治療終了までの服薬支援と自立に向けた支援を受けることの確認を行い、本市が借り上げたアパートに入居して自立支援型DOTSとして治療に専念してもらいます。
入居の期間はおおむね3カ月ないし4カ月を想定しており、この間、日常の生活指導や就労指導を行うとともに、自立支援センターにつなげるなど、完治後の自立に向けて支援をしてまいりたいと考えております。
このように、患者発見から治療終了、自立までの体制を整えることで治療中断による再発と感染拡大を防止し、さらなる結核事情の改善に努めてまいります。以上でございます。
◆長尾秀樹委員 あいりん地域での結核事情の改善が本市全体の罹患率の改善に大きく寄与するものと考えております。
ただいま御答弁がありましたように、デジタルエックス線装置を搭載した検診車の導入による健診体制の充実にあわせて、自立支援型DOTS事業を新たに始められるということであります。保健・医療・福祉が連携をして、患者の発見から入院、治療終了に至るまでの体制を整備して、あいりん地域・ホームレスの患者の結核事情の改善に努めて本市全体の罹患率を半減されるという目標に向けて、さらに努力をしていただくよう要望をいたしておきます。