第39回国会 衆議院 地方行政委員会議録 第8号
昭和36年10月17日(火曜日)午後3時11分開議
● 纐纈委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
警察に関する件につきまして調査を進めます。
質疑の通告がありますので、順次これを許します。阪上安太郎君。
● 阪上委員 先般来から警察問題が審査の対象になっておるのです。そして前会までに、御承知のように、公安条例の間題が一応質疑が終わったわけでございますが、私はきょうは釜ケ崎事件を中心といたしまして、スラム街対策、これにつきまして若干の質問をいたしてみたい、かように考えております。
御案内のように、釜ケ崎事件は、例の交通事故の取り扱いをめぐりまして、これが導火線となりまして、8月1日の夜半には交番の焼き打ち、それから一般通行中の白動車に対する放火、さらに西成署本署の襲撃、こういうふうにだんだんと事件が発展いたしまして、3日から4日にかけまして、さらに国電、市電、南海電鉄、こういった無関係なものに対する襲撃が行なわれ、一方町の状態をながめてみますると、猟銃や日木刀を持った暴力団が構行闊歩して、ちょうど映画に出てくる西部劇のような状熊があの釜ケ崎の地帯に発生したわけであります。そして、ついに警察は実力行使に入りまして、相当がまんしたようでありますが、最終的には六千名の警棒のあらしによってようやくこれを鎮圧した、こういうような状態であります。
この事件に際しまして、当時植木法相は、思想的な背景の究明、こういうような推定をいたしまして、思想的な背景を追及Lようというかまえになっておる。また大阪府の公安委員会は、かつて公安委員会がこういった事件に対しまして告示をしたということはないのでありますが、異例の告示を出した。地検もまた異例の捜査本部を置いて、そして騒乱の罪の適用を検討するというような状態に入っております。
この事件に対しまして、池田総理は特に発言せられたようでありまして、関係各省初めての連絡協議会、こういうようなものを作らなければならぬようなところまで発展してきた。このようにいたしまして、中央も地方も調査であるとか視察であるとか、あるいは資料の収集であるとか、それに伴って会議を持つ、こういうような大騒ぎになったわけであります。
そして、その結果、きわめて弥縫的ではありますけれども、街灯を30ヵ所くらい作るとか、あるいはスラム街の緑化を進めようとか、あるいは第二愛隣会館の設立、あるいは大阪府の労働部の西成分室を設置するとか、あるいは簡易な、しかも恒久住宅、高層建築をやろう、こういうような策が関係自治体としては出てきた、こういうような状態であります。
しかしながら、この問題は、はたしてこの程度でいいのかどうか。私どもといたしましては、こういった問題は、これは必ずしもぴったりと同じケースとは言えませんけれども、ちょうど一年前の同じ日に発生いたしましたところの東京の山谷の事件とかなり様相が似ておるということで、大へんこれを重大視いたしますとともに、今言いましたような程度のことでいいのかどうか、こういうふうにわれわれは考えるわけであります。
地元の声を聞いてみましても、一般の人々の人権は守られてきているけれども、一体こういったカスパと称されておるところに住んでおるおれたちの人権というものは、全く守られることがないのか、こういうような声が、当時私も現地を視察したのでありますけれども、出ておったようであります。
前回、山谷の事件が起こりました当時も、わが党の方からも国会におきまして質問をいたしまして、再びこのような事件が起こらないようにということでもって、強く要望をいたしておったわけでございますけれども、非常に遺憾ながら、再びこの事件が、山谷の事件よりもさらに大きく上回って発生した、こういうことでございます。
結局、結論は簡単な言葉で言い得ることだと思いますけれども、スラム街があるからこういう事件が起こるんだ、こういうことじゃなかろうかと思うのであります。そこでスラム街を解消するということがこの際非常に重大な対策になろうかと思いますが、このスラム街を解消することによってこういう事件の発生を防止していくというところの大きな、抜本的な対策を打ち立てなければならない、かように、われわれはこの事件から判断するわけであります。
そこでこの際二、三伺ってみたいと思いますが、非常に基本的な話でございますけれども、こういったスラム街を解消するためには、スラム街のできるところの原因というものを追及しなければ対策が出てこない、かように存じますので、スラム街の発生の原因は一体那辺にあるのか、こういったことにつきまして、最初に自治省の方からその見解を伺ってみたいと存じます。
● 大上政府委員 ただいまの御質問にお答えしますが、政府当局なり自治省として、これがどういう原因で発生するかということを討議したことも、まだないようでございますが、ただ、私の主観的な考えのみにとどめさしていただきますと、もちろん労働条件もあれば、あるいは既往における犯罪者心理と申しますか、いわゆる村八分というか、こういうひがみ等もある。しかし、根本的には正業につかせ、これをよりよく指導するというのが根本問題かと思います。ただ、しかし、一部におきましては、従来はしょうちゅうであったものが、労働賃金が上がったのでこれがピールにかわっておるというようなことも、これは新聞等で見たりしたようなことがあるのですが、それとてもどういうふうに指導していくかというような問題については、いろいろな方面の原因があろうと思いますが、お説の通り、これをさらに慎重に研究し、そして善導するということは、われわれ政府の重大なる使命と心得ております。
● 阪上委員 さらに大上さんにお伺いいたしますが、今おっしゃいましたことは、発生したものについての対策としてはこういう対策を講じていかなければならぬ、こういう意味のことを示唆されたと思う。
私先ほどお伺いいたしたのは、なぜスラムができるかということなんです。こういったものをはっきり握っておりませんと、スラム解消にはならない。こういうことでございますので、私はお伺いしているわけで、なぜスラムがこうできてくるのか。特に大都市のまん中にああいったスラムというものができ上がるのか。このことなんでありますが、これに対する見解を伺いたい、こういうことなんです。
● 大上政府委員 ただいまも少し触れました通り、いろいろな原因が潜在的にあろうとも思います。ただここでどこに原因があるか。原因も、遠因あるいは近因等にも分かれるとは思いますが、ただ私から率直に申しますと、いわゆる政治の貧困という面も一部現われておるのじゃないか。この程度より私としては申し上げにくいと思います。
● 阪上委員 警察庁長官はどういうふうにお考えでございますか。
● 柏村政府委員 非常にむずかしい問題と思いますが、私はこういうスラム街等ができてくる基本は、やはり貧困、いわゆる定職のない貧困層というようなもの、それをさらに突き詰めて言えば、社会における一種の落後した層、定職につかない落後した層というものの吹きだまりと申しますか、そういうものが自然に集まってできてくるのではないか、基本にはそう思います。
しかし、ただいま白治政務次官のお話のように、そういうものが起こってくるのは一体何だということになれば、社会の現実がそうさせているんだと、一がいに申し上げる以外にはないかと思いまするけれども、そこにはやはりそうした労働関係においてできるだけ定職につくような施策というものが十分に講ぜられない。
それから先ほどこれもお話しの中に出てきましたように、あのスラム街におる人たちを分析してみますと、その中には一部でございまするけれども、身寄り、縁故というようなもののない者、またそういうものがあっても、そういうものからしいて離れて生活したいというような人が、ある意味の非常に貧困的なものではありまするけれども、そういう自由といいますか、拘束を受けない生活というようなものに望んで入っていく人もあるということのようであります。
入っておる構成についても非常に複雑でありますので、一々についてその原因を究明していく必要があるかと思いますが、概括的に申し上げまして、やはり貧困、そしてまた貧困者をああいうふうに集まらせる社会的環境、政治の問題というような点が非常に大きく原因しているのではないかと思います。
● 阪上委員 今警察庁長官は、一言にしていえば、社会で落後した者の吹きだまりという現象だ、その通りだと私も思います。しかしその社会の落後という問題は、それがどういう原因で落後するかということについて、政治の貧困だという言葉も一つ出ておった。これは大上さんからもそういうお話がありました。私はやはりそういった社会的な面からも一つ原因がある。
同時に考えなければならぬことは、個人的な面がやはり一つある、こういうことでなかろうかと思います。こんなことを私ここで皆さん相手に楽しんでおっても仕方がないので、私どもの考えとして申し上げてみたいと思うのであります。
結局は、一つは社会的な原因としてスラムができてくるということは、やはり資本主義の都市におけるところの必然性を持っているんだ。従って、こんなものを除去していくためには、どうしてもその点にはっきりと大胆不敵に取り組んでいかなければできない問題である。それをおおい隠しておいて、いくら百万言言辞を弄してみても、この問題は解決しない、こういうふうに私は思っているわけであります。これはおいおい御質問を申し上げたいと思います。
そこで厚生省の社会局生活課長さんが見えておりますが、あなたはこういった問題について直接担当しておられるように思いますので、お伺いいたしますけれども、先ほど申し上げました個人的な欠陥を除去する一つの方法がある、いま一つは社会的な欠陥を除去していくということでありますので、この際個人的な欠陥、個人的な原因をスラムに対してどういうふうに握っておられるか、このことを一つお伺いいたしたいと思います。
● 翁説明員 スラムについての所管課長といたしましてお答えいたします。ただいまの御質問は、スラムをどのように把握しているかというように承ったのでございまするけれども、
スラムということは、もちろん御承知だと思いますが、先ほど来御答弁のございましたように、貧困あるいは定職、定住のない人々の吹きだまりということでございますが、客観的に申しまして、スラムといわれるものは、不良住宅地区が密集しておりまして、外見的に、環境が保安上あるいは衛生上きわめて危険であるというふうに考えられ得る地域をスラムとさしているように解しております。
なお釜ケ崎あるいは山谷のように外見上不良住宅地区の密集ではないけれども、そこに問題があるといわれております通称ドヤと申しておりますのは、定まった住居を持たない人々が簡易宿泊所を宿といたしまして、そこで生活を繰り返し、そこから毎日いろいろ日雇いに出たりあるいは土木工事に出たりする人たちが、集団的に住んでいるというような地区をドヤというように申しておるのでございます。
そういうものもあわせまして通称スラムと言っても差しつかえないではないかと存じますが、そういった地域の人々に対して、現在の施策といたしましては、貧困な人々に対しては御承知の生活保護法あるいはそう他国民保険、医療保障等の施策がございますが、
ただこういうところに住んでおられる人々の中には、そういった籍を持たない、いわゆる登録と申しますか、居住のはっきりした人がおりませんために、ただいま申し上げたような生活保護法とか医療保障という法律制度の網にかかってこないというような方々がおられるのでございます。
もとよりそういった人々の問題につきましては、現行制度ででき得る限りの個人的な施策としての救済と申しますか、保障は行なわれておるのでございますけれども、われわれが所管している限りにおきましては、こういった人々が気やすく相談のできる、またそれを利用して定職につき得るような機会を与えられる隣保事業と申しますか、生活館、先ほどおっしゃいました愛隣館のようなものがそれに該当するわけでございますが、そういったいわゆる窓口となってお世話をするような施設を作っていくということを一つの考え方といたしております。
それ以外になお建設省がおやりになっております住宅地区改良法による改良住宅を建てまして、そこに共同利用施設として将来は共同浴場とか、共同作業場とかいったものが設置し得るようなことを助成して参りたいというように考えている次第でございます。
● 阪上委員 私はまだそこまで質問していないのですが、あなたはお先に答えられたわけであります。
そのスラムの定義はいろいろありましょうが、あなたは不良住宅地区、こういうふうにいってもいいということを今言われた。
私が聞いているのはそうじゃなくして、スラム街に居住するその居住の原因となる個人的な原因は何かということを聞いている。
そういうことについて、あなた方は研究していられるのですか、データをお持ちですか、この点一つ・・・・・
● 翁説明員 大へん先走ったことを申し上げて失礼いたしました。先ほどの御質問の、そういうところに住んでおられる人々が、どうしてそういうところに住むようになったかということを御質問だと思います。
従来社会局では、生活保護被保護世帯に対しまして、定期的に世帯調査というものをやっております。あるいは生活保護基準の算定のために、通常の世帯を含めた調査をやっております。ただ、おっしゃいましたような、こういう地域自体におけるこれらの人々の何と申しますか、こういうようになった経過を詳細に知るような調査というものは、いたしておりません。
● 阪上委員 だから私は、こういった原因を実は質問しているわけなんです。おそらくそうだと思います。それじゃ結局、スラム対策などということを幾らやかましく言ってみたとしたって、くつの裏から足をかいているようなものです。そういった基本的なものを、はっきりと特に厚生省あたりが持たないといけないのであります。これはあなたに言っても仕方がないから大臣に言いましょう。そこで私どもの考えとしては、これは何も学のあるところを言うわけじゃないのですが、やはり諸外国ではこんなものははっきりとつかみ上げてしまっておるのです。たとえばスラムに住むようになった個人の不幸なタイプというものが、ずらっと並べてある。そういったものを基礎にして、対策というものが講じられている、こういうことになっております。
たとえば一つの例をあげてみれば、経済的な破産等によるところの破綻、これなんかははっきりした一つの理由になっております。それから疾病が一つの大きな理由になっておる。その結果としての、就業が不能であるという問題が一つ出てきている。それからこれは家庭争議とかいろいろなものがあるのでありましょうけれども、情緒的な不安定、その結果としての就業不能、こういうふうな問題がはっきりとつかみ上げられている。離婚、アルコールの中毒、麻酔薬の常習、賭博、犯罪、非行、売春、それから不規則な性生活、色情の倒錯、それからなおかつ働く能力というものがそこに限られている。これは今度の釜ケ崎でもよくわかることであります。
ほかにいろいろな職業を選択するだけの能力を持っていない。当然、対策として職業訓練等のものが考えられるのでありますが、そういった個人的な原因というものを、欲をいえばもっとパーセンテージまで出して、どういうようなものがスラムに居住しておるか、その原因は何かということを追及していかない限り、スラム対策なんというものはできっこないのです。
先ほど建設省の分野にまで触れられましたが、今日は建設省は来ておりませんけれども、私どもといたしましては、さらに大きな問題が建設関係にあると考えております。社会的な大きな原因の一つといたしまして、建設省関係の施策がぜひ要求されなければならぬと思っております。
しかしながら、今日は見えておりませんので、次に、やはり社会的な原因の一つとしまして、今申し上げました、しかも最近大へん問題になっております経済成長、政府の所得倍増十力年計画、こう言ってしまえば身もふたもないのでありますけれども、この経済成長の速度の問題、これから出てくるところの地域問のあらゆる格差の拡大、こういった結果、その経済の繁栄から置き去られた底辺に住むスラムの住民というものが一つ考えられやしないかと思うのであります。
最近建設省では広域都市建設構想、自治省では基幹都市建設構想、それから商工では例の低開発地域工業何とかいうものがありますが、こういった構想が必要であるそのこと自体の中に、スラムの発生する原因がある。これは、言葉をかえていえば、資本主義の都市計画の問題も入ってきておるわけなんであります。
そこで、自治省として、あなたの方では基幹都市建設計画構想というものを持っておられるのでありますが、かつてスラム街の対策として、あるいはその構想の中に、スラム街解消の構想を持っておられたかどうか、このことを一つ伺っておきたいと思います。
● 大上政府委員 ただいま御質問の、この法案について特にスラム街を織り込んだかという御質問と心得ますが、それについては考えておりません。
● 阪上委員 しかしながら、地域の格差の拡大という問題がスラムを作る一つの原因になるということはお認めになりますか。
● 大上政府委員 もちろん経済速度あるいは格差の程度というもの等によって、個々のいわゆる私経済はそれぞれの様相を呈すると思いますが、今直ちにそれを即答は―しばらく検討させていただいてお答えをさせていただきたいと思います。
● 阪上委員 それでは、原因についてはまだはっきりとつかんでおられないように私は思います。
次に、やはり社会的な原因の一つとして、警察にお伺いいたします。
この事件の中でわれわれが察知した一つといたしまして、あの釜ケ崎のスラムの中には、反社会的な集団があるということなんであります。
その一つは、手配師といわれているところのものであります。言葉をかえていえば、これは私設の職業安定所みたいなものができ上がっておる。一日1,500円程度とれる労務者が、これらのものによって大体において900円くらいはとられてしまう。あとの600円が本人の収入になる。これは新聞の報道でありますけれども、早朝そういうような者が横行いたしておりまして、まじめに働いていきたいという人たちが地下たび姿であの辺を歩き回っておりますると、この手配師がやってきて、手とり足とりこれを押えつけまして、待たしておいたタクシーの中にほうり込んで、そうして自分たちの関係のある職場にこれを運び去るというようなことを在来からやっておった、こういうことであります。
こういった反社会的な集団である一つの手配師、それからいま一つは、売春暴力団とも称すべきものがあるわけなんでありますが、これらの実熊につきましてもつぶさにはわれわれは承知いたしておりませんが、いわゆる婦女に対してひもつきとなって、そうして肉体を提供さして売春さして、それの上前をはねておる、こういういわゆる愚連隊がおります。
それからいま一つ、これも新聞等で多少片鱗が出ておったようでありますが、あの地域には黒い組というものがある。おそらくこれがあの事件のまっただ中に日本刀と猟銃を持って歩き回って、もちろん警察からそんなことを頼まれた覚えは絶対ないということを彼らは言っておりますし、否定もいたしております。これらの連中が背後に回って、あの当時のあの暴動を起こしておるところの大衆の裏からあおって、前へ出てきてはこれを阻止するんだ、何とか鎮圧するんだということを頼まれもしないのに勝手にやっておる。しかも銃砲刀剣類等所持取締法に違反するような日本刀と猟銃をそういった場所で振り回しておる、そういうことであります。
こういった一連の反社会的な集団、これがやはりああいった釜ケ崎事件の原因の一つになっておるんじゃないか、私はこういうような考え方をするのでありますが、警察庁ではそういうふうにお考えになりますか、どうでしょう。
● 柏村政府委員 釜ケ崎地域におきまして、ただいま御指摘のような暴力的な手配師あるいは売春暴力団、そのほかに麻薬の取引をする連中、いろいろ反社会的な集団がありましたことは御指摘の通りでございます。また、いわゆる暴力団といわれるようなものも相当な数に上っておるようでございます。
ただし、これらが直ちに計画的にあの騒ぎを起こしたというふうなところまでは確証は握れないのでありまして、あるいは表になりあるいは裏になって策動するというようなことももちろんあったかという想像はできるのでございますけれども、そのどれがどういう程度にやっておったというようなところの確証は得ておらぬのでございます。
あるいは御質問に対するお答えになっていないのかもしれませんが、そういうふうなスラム地域におきまする反社会的集団というものが非常に輻湊しておるということが、一そうあの地域を暗いものにしておるということは事実のようでございますが、
この手配師等につきましても、私はこれは法律違反である、さらに暴力を使うようなものは全く許しがたいものであるというふうに考えますけれども、同時にまた職安に登録して仕事につく者の数という点から見ますると、そういうことでなしに生活をしている、たとえば手配師を通じてピンはねをされながらも、むしろ職安よりも有利な賃金を得ているというような者も相当おるわけでございまして、こういう点につきましては、やはり職業あっせんと申しますか、就労の機会を軌道に乗せて、法的にそういうことが堂々とできるような仕組みというものをさらに強化していかなければ、目に余るものを取り締まっていくということだけではなかなか根絶しにくいものではないかというふうに思うのであります。
売春、麻薬等につきましても、警察としてかなり取り締まりを強化しておりまするけれども、これも客観的に見ますれば、私は、九牛の一毛とは申しませんが、徹底しないものであったのではないか。ただ、うわさされることによりますと、そういう取り締まりということが警察に対する反感を買っておる。そういうことがまた騒ぎを大きくする一因になったというふうな見方をする人もあるくらいなわけでありまして、確かにただいまお話しになりました反社会的な集団というものがあそこに暗躍をしておることによって、事態を一そう暗いものにしておるということは、これはいなめない事実だろうと思います。
● 阪上委員 その手配師の間題、それから売春暴力団といいますか、その問題、それから黒い組というのがおるのですが、あなた方の方で、今そういった暴力団が、反社会的集団がおるという事実は認めますか。
● 柏村政府委員 そういうものがあるということは、先ほどお答えの中にも申し上げましたように、相当の数の団体がございます。非常に大規模なものではございませんが、小規模なものが相当数存在しておるということは承知いたしております。
● 阪上委員 私どもの調査によりますると、手配師は大体2,000人くらいおる。売春暴力団というものがどのくらいおるか、愚連隊でありますが、これもやはりそれに近いものだと私どもは承知しております。ただ、黒い組というのは、これはちょっと性質が違うようでありまして、今そういう大規模な組織でないと長官は言われましたが、私どもが知っておる筋としましては、これはかなり根強いところの地方政治の相当枢要な部門と関係のあるような人物が親方になって、その黒い組というものを作っておる。そうしてパチンコ屋とか何かで得てきたところのたばことかなんとか、あのいわゆる景品であります。ああいうものも一手にそれが処理をしておる。こういうようなことでありまして、そういった仕事から奪われていく者も、あのスラムの中に、はきだまりとして、たまってきておるということまで聞いておる。これはかなり広範な組織である、こういうふうに考えておりますが、その点、あなたの方でおわかりになりませんか。
● 柏村政府委員 地方政治につながる相当な勢力のある者ということまでは承知いたしておりませんが、たとえば、博徒についても12団体、テキ屋6団体、青少年不良団15団体、売春暴力団20団体、その他というようなことで、60くらいの、先ほどお話しの反社会的な団体というものがおり、その構成も千名余に上っておるというような状況でございますし、その中には相当に名前を売っておるような何々組、何々会というようムものもあるわけでございまして、あの土地におきましては、かなり強い勢力を持っているということが言えると思うのであります。
● 阪上委員 今まで原因をどういうふうに皆さん方が考えておられるかということについて質問を申し上げてきたわけでありますが、これらの点につきましては、各省各庁とももっと努力していただいて、ほんとうにスラムの発生する原因というものをそれぞれの部門によってよく調査研究されて、そしてその対策を立てていくという方向というものを皆さんで総合的に考えていただかなければならぬ、こういうことでございます。
そこで、特にこの中で、建設省、自治省と最も関係の深い問題でありますが、具体的な対策について、どういうふうに今後スラム対策をやっていくかということについて一つ伺ってみたいと思うのであります。質問があまり上手でありませんので、かえって混乱を生ずるおそれがありますので、私の方から問題点を出して門みたいと思います。
先ほど申し上げました建設省の関係も非常に深いのでありますが、都市計画面におけるところの考え方なのであります。建設省は来ておりませんので、どうにもしようがない。そこで、自治省にかわって見解を述へてもらいたい、私はかように思うのであります。
結論はやはり大都市の集中排除をやらなければいけないんだということであります。これについて、地域開発関係の施策等はもう不即不離のものであるというふうに私は考えておるわけなのであります。そのことを忘れてしまって、ほかの対策ばかりに頭を使っておっても、どうにもならぬ問題がこのスラム問題である、こういうことだとわれわれ考えるのですが、この点について先ほど伺ってみましたところ、せっかくはなばなしく打ち出されたところの地方開発基幹都市建設構想などというものの中には、全くそういうものが含まれていない、こういうことであります。おそらくこの問題については、建設省の広域都市構想の中にもスラム解消の問題というものは含まれていないのではなかろうか。ましてや現在提案されているところの低開発地域工業開発促進法の中に、工場立地の問題はあったといたしましても、あるいは地域格差の拡大を縮小していくのだというようなことはうたい文句としてあったといたしましても、あるいは雇傭の安定というものを考えていく方向であるというようなことをうたっておりましても、このスラムの問題が、そういった地域開発と不即不離のものであるという透徹したものの考え方というものは、おそらくないのじゃないかと私は思うのであります。
そこで、一つ次官にお伺いいたしますが、そういった大都市集中排除、都市の改造、こういったことについて、スラム解消という問題を今後頭に置いてそういう法案の作成その他を考えられるかどうかということなのであります。これは、どうでごさいましょうか。
● 大上政府委員 お答えします。もちろん基本方針なり自治省の全般的な政策につきましては、大まかは、私も行政官に就任した以上、基礎的には承知しております。ただ、いわゆる専門的なことになりよすと、少し勉強が足りないので申しわけございません。率直におわび申し上げますが、ただいまの問題につきましては、当然阪上委員が御指摘されたごとく、将来この法をもっていくについては、当然国全体の面から考えなければならぬと私は考えます。従いまして、将来これを運営し、または実際法治国家としてこれを施行する場合においては、十分考えますと同時に、さらに私個人といたしましても、幸い明日政務次官会議がありますので、新しい問題として私は出していきたいという決意だけを披露しておきます。
● 阪上委員 これは次官からお答えいただくのは非常に無理かとも思いますが、やはり一連の地方開発という問題につきましては、各省間でそれぞれ連絡もとっておられる、そうして聞くところによると、新産業都市建設促進法などという、どこにポイントがあるかよくわからぬような法律が出てきそうでありますが、そういう関係から、自治省としても全然それは建設省かやる仕事だというふうにいうわけにはいかない問題ではなかろうかと思うのであります。
私一例をとってお伺いしてみたいのでありますが、そういう新都市計画なり都市建設計画なり大都市の改造計画なりというような問題を、新しい法律に求める以前に、現在すでにそういったスラム、などというものが全然頭にないところの膨大な都市計画というものが進められているのであります。
一例をとってみますと、たとえば、大阪府の問題なのでありますけれども、大阪府の衛星都市である吹田市の一画に400億円からの金をぶち込みまして、いわゆる今はやりのニュー・タウン建設が行なわれておる、こういうことなのであります。このニュー・タウン建設の内容につきましては、こまかくは知りませんが、どうもその方向を考えてみますと、これは全くニュー・タウンではなくて、単なるベッド・タウンにすぎない、こういうことであります。
これは大なり小なり東京の郊外においても行なわれている問題ではないかと思うのであります。あるいはその他の都市においてもそういう考え力で、漫然とベッド・タウンを作ることによってニュー・タウンだなどというような、非常にあさはかな都市建設計画が進められている、こういうことなのであります。
今どき世界のいろいろな都市計画なりあるいは新都市建設なりの実能心をながめてみましても、スラム街の解消を頭に置かないような新都市計画などというのは、世界のどこにもないです。日本だけであります。
そうして単にペッド・タウンを作って、新都市計画だ、新都市計画だというような言い方をし、しかも膨大な行政投資をこれにぶち込んでおる。そして大都市の姿をながめたところが、今言ったような吹きだまりかあって、もううみがどんどん出ておる。
この様相を考えてみるときに、全く関係地方自治体も、あるいはそれを指導している自治省も、こういう面においては全く無為無策であって、一体何を考えているのかということを私は言いたいのであります。400億円の行政投資をやって町作りをやっておる、
私は先年ヨーロッパの方へ視察に参ったときに、ちょうどロンドンの郊外にあるスティーブネージという新都市を見てきたのであります。
この新都市計画の内容をながめてみると、まず第一番にロンドンのスラムを解消する役割を果たさなければならぬ、こうなっておる、そうして職のない人に対して、住居と職場をその新都巾の中で一挙に与えていこうという計画が実現されているわけなのであります。これは、ニューヨークの場合も、パリの場合も同様であります。そういったほんとうにスラムを解消していこうということが不即不離の関係において新都市建設につながっておる、こういうことなのであります。
ところが日本で今あの住宅公団等がやっております、あるいは都道府県の直営でやっておりますああいったベッド・タウンの建設は一体何であるか、ああいうことをやっておるならば、いつまでたってもこの吹きだまりは除去されないのであります。
それに対して建設省も、自治省も、もろ手をあげて賛成して、膨大な投融資のあっせんの役割を果たしてみたり、こういうことをやっているわけなのであります。
今どき都市開発をやり、新しい都市建設をやるものが、雇用という観点を離れて、どうして地域間の格差というものが是正できるか、こういうことであります。
私は、自治省なり、建設省なりのここ数年来とってこられたところの都市計画に対する考え方を、根本的にこの際是正されなければいけないと思う。
それから同時に、この関係地方自治体なんかの意見を私は聞いてみたのでありますけれども、こういうことを言っております。
あのスラム街の環境を浄化するのだ、花を植え、木を植えるのだという、それはいいでしょう。それから住宅が非常に不良住宅であるということ、これはその通りです。
従って、鉄筋5階建のアパートを作って、安い家賃で貸すのだということ、これもよかろう。あるいは今言ったように、愛隣館をもう一つ建てるのだ― 一つや二つでは足りませんけれども、愛隣館をもう一つ建てるのだ、それから西成分室をもっと拡張するのだ、こういうことを言っておりますが、それをじっと考えておりますと、
そのことは明らかにスラム街の改良にはなる、少し今より程度のいいスラム街を作ることにはなるけれども、スラム街を改消するという方策は全然この中には含まれていない。
最近関係各省の次官を集めて何かスラム街対策協議会とかいうのを作っておられるそうですが、自治省はその中に入ってないように思うのでありますけれども、一体これは何を考えておるのか、私にはよくわからない。新聞発表等によってながめて見ますと、当然今までやらなければならなかったことをやっておらなかったので、これをやるのだという程度にすぎません。当該自治体自体が、そういうものの考え方で、徹底的に解消する、そうしてあの建物はブルドーザーでもって一挙にぶちこわすのだ、こういうようなほんとうに解消していこうという熱意がない。それが証拠に、せっかく新都市を作っておきながら、ベッド・タウンを作っておきながら、その中にスラムの解消対策というものを全然含んでいない。なぜあんなものを自治省が許されたか、なぜ建設省があんなものに対してもろ手をあげて賛成しておるか。貴重な公共投資をするのでありますから、もっと真剣な態度で、しかも咋年苦い経験を山谷においてわれわれは持っておるのでありますから、スラム対策に対して、もっと抜本的にこれをなくしてしまうのだという考え方をぜひとも私は持ってもらいたいと思うのであります。
このことについて、各関係省でもって十二分に私は検討してもらいたいと思うのでありますけれども、一体その協議会というのは、そういったものを内容としてスラムを解消することの決意に燃えた協議会であるかどうか。これはどれだけの権限を持っておる協議会か。自治省がなぜ入っていないのか。そういう点について一つ次官からお答え願いたいと思います。
● 大上政府委員 いろいろの御質問が含まれておると思いますので、順次申し上げます。ただいま吹田等においていわゆる地方公共団体が400億円余りのベッド・タウンを作っておるじゃないかというお話でございますが、私も聞かぬことはございませんでしたが、これにつきましては、建設省は特に、先行法と申しますか、基礎法としては、いわゆる不良住宅の改良法とそれから市街地改造法によってこれをやっておるのだろうと思いますが、さてそこで、私たちの省の関係になりますと、お説の通りいわゆる財政投融資、すなわち公共の国家財政がより効率的に使われておるか、その効率を分析しますと、ただいまのようなスラム街の解消というものを潜在的に考えたかどうかというような御質問と思います。従いまして、その効率を分析するのには、当然ただいま申しましたように、これを許認可する事項があれば考えたと思いますが、その経過につきましては、事務当局から答弁させます。
次いて、スラム街は、次官会議があるが、これに入っておらぬじゃないかということですが、この会議には自治省も入っており、現に8月24日の会合には文書課長も出席したそうでありますが、たまたま当委員会にも出席しておりますので、その模様が必要とあらば、答弁いたさせます。
最後に、この方法としていろいろな観点から見ますと、お説の通り、われわれも、さいぜん申しましたようないわゆる財政の効率的な適用の面と、国家施策の細部までの浸透という面から申しまして、スラム街の解消あるいはこれに付随する労働問題等は十分に検討して、将来実施したいと考えております。
● 阪上委員 どうも政務次官だけで、あと各省の方は肝心なところが抜けてしまって、歯の抜けたような格好になっておりまして、この際会心の回答を得るわけにいかないようであります。従って、またこの問題は適当な時期を得まして、さらに質問を続けていきたいと思いますが、
当面結論からいいまして、このスラム協議会というのは、一体どういうことをやろうとするのですか。新聞の内容は私は存じておりますか、あの程度のことでしょうか。あれを思い切ってスラム街を撤去するスラム街撤去法案というものをこの際打ち出して、総合的に、抜本的にスラム街を解消していくのだとことでやっておりますかどうか。
● 大上政府委員 ただいまお説の会議は、関係課長会議だそうでございまして、お説の通り政務次官会議でもしてもらっておりますれば、ただいまの阪上委員のおっしゃるようなことはぶちますけれども、御了解を願いたいと思います。
● 阪上委員 そこでこの際、先ほどからの経過を考えていって、ただ単に不良住宅をなくすという程度の甘い考え方では、スラム街はなくならないのだ、そこにはやはり雇用の安定というものが維持されていかなければならない。
日雇いか何かが手配師のピンはねの対象になるような、そういう不安定な状態でなしに、まじめにそこに定着して働くことができる雇用の態勢、それと住居というものを一緒に与えなければならぬ。ですから、ニュー・タウンというのはそこです。せっかく作るなら、そういうものを作って、そこに何割かはほうり込んでやる。そうして今はそんなことは行なわれておりませんが、ただ住宅を建てるだけでなしに、そのまわりに中小企業団地なり、あるいはその他の工場立地を求めてきて、そしてその町に住む者はその職場に行く。そういう形の中でスラムの解消をやっていく。住宅さえ与えればいいということではだめです。それでは程度のいいスラム街かでき上かるということだけであって、解消にはならない。安定した職業を一緒に与えていくということか必要だと思います。
それから、先ほど厚生省からも言っておられるように、もっともっと個人的な原因を追及して、おれたちだけがなぜ法律から守られないのだ、保護を受けられないのだという点をよく頭に入れて、そういった社会保障制度というものも一緒にぶつけて、そこへ持ってきて警察の治安対策というものがぶつかっていって初めてスラムというものは解消できるのだ。従って、そういったものを内容とするスラム街の撤去法というようなものを、この際政府は関係各省か寄ってほんとうに真釧になって作り上げて、そして撤去に一路邁進 していくという方途を考えなければいかぬと思うのであります。これは総理も、スラム街対策については考えるということを言っている。いつ考えるかわからない、このごろまだ考えていなくて、将来考えるのか知りませんけれども、そんなことじゃこれはだめですよ。まして、今伺ってみたら、私は次官会議ということで多少有力だと思っていたが、課長会議にしかまだ発展していない。一休何をやっているのですか。この点どうですか。自治省てもスラム街撤去法というようなものを出しなさいよ。
● 大上政府委員 本委員会の冒頭に阪上委員にお答えしましたように、明日幸いにして政務次官会議がありますので、新しい観点から、またるる教えていただいた点を責任を持って次官会議に提起し、またその結果は後日の委員会で御報告したいと思います。
そこで言い得ることは、われわれ政府内部においてどういう形でもって出るかわかりませんが、いわゆる所管課長会議よりも権力を持ち、そして十分実施でき得るような考え方で持っていこう、この程度の答弁で御了解願いたいと思います。
● 阪上委員 なかなか了解できないところですが、そこで次に質問を進めまして、スラムが発生した原因じゃなくて、あの暴力事件の発生の原因についてお伺いしたいのです。
先ほどの質問には出ておりませんが、この導火線になったのは、あの老人がタクシーか何かにはねられて、そして生きているか死んでいるかわからないが、現場に居合わせた警察官が死んでいるものと判断した。
そして救急車ではなく、たしか警察の車であったと思うが、ようやく来たときにはもうすでに二十数分を経過しておった。
こういうことが導火線になったというように私は承っております。
そこで消防庁長官に伺いたいのですが、私もその当時これは導火線であったと思いますが、この導火線自体が非常に人権無視の重大な問題だ、かように私は考えますが、そこでそれらの点についてはいろいろと批判も出ております。その点を私はとやかく言いませんが、
一体大阪市に救急自動車は何台あるのですか。
● 鈴木政府委員 大阪では救急車と言わずに救出車と言っておりますが、6両あります。
● 阪上委員 東京都に何ぽありますか。
● 鈴木政府委員 東京都は全都域で61台。
● 阪上委員 政務次官、これをどうお考えになります。あの大大阪市が6両であります。それから東京都が60。あの付近にあります人口20万くらいの都市でも2台や3台持っておる。私がかつて市長をやっておった高槻市でも1台はある。人口6万から8万。一体これをどうお考えになります。これほど政治の貧困さはないと思うのですが、どうでございます。
● 大上政府委員 私も率直に申し上げまして、聞いてあぜんとしております。
● 阪上委員 あぜんとされた結果、どういうようにお考えになりますか。
● 大上政府委員 全く、私も実を申しますと大阪にずっと居住しておりました関係上、あの地形並びに家屋の密集状態あるいは人口等も十分承知いたしております。それだけに6台ということを聞いてあぜんとして、ただいまここで、じゃ政務次官として、いわゆる行政官としてどう処置するかと言われますと、言葉がないので、一晩ゆっくり考えさせていただいてお答えいたしたいと思います。
● 阪上委員 かつてのこの国会周辺を取り巻く安保のときに、ちょうど樺美智子という人が死んだ、あのときに相当なけが人が出ておりました。事件のよしあしを言っているんじゃない。そのときに私は、ここにおられる長官に、あのときに3台しか来ておらなかったので電話いたしました。さしずめ手配をしてくれて40台の救急車が来た、もちろんちゃんと医師もこれについております。その事件の問題は別といたしましても、こういう手厚い救急の措置というものが行なわれておった。
ところがあの大都市の大阪に6台しかない、災害救助も何も私はできたものじゃないだろうと思うのであります。それがただ単なる、釜ケ崎事件のあの問題が特殊事情に火をつけたということでありますけれども、この種の問題は、あの状態ならば間々起こってくるんじゃないか。
聞くところによると、警察から電話をした、ところが消防の方では、死んだ人間は救急車じゃ運ばない、それは霊枢車の範囲だということで出動を拒否しているのです。
消防長官、これはあなたは報告をお聞きになったと思うのですが、どうでしょう。
それから何も消防とけんかしてくれとは私は言いませんが、どうでしょう、こういう状態は。これで警察は責任を持って人命救助をやれますか。
● 柏村政府委員 ただいまお話しのような事情であったということは、私聞いております。ただ、ああいう場合におきましては、消防の救急車に限らず、警察の車でも何でも、すみやかにやはり措置するという配慮が必要であったのではないか。そういう意味におきまして私は、
必ずしもあのときのあのことが、交通事故に対する措置のためにああ大きくなったというふうには必ずしも考えませんが、
あのときの措置というものについては大いに反省すべき問題があるように、警察白体として考えておるわけであります。
● 阪上委員 消防の方へ伺いますが、ああいった事件の場合に、警察官がおって、そうしてこれは医者じゃないが、これはもう死んだんだ、しかしながら本人も不安でありましょうから、消防の方に連絡があった。ところが消防の方では、それは死骸は霊枢車だ、こういうことで断わった。仕方がないのですぐ警察本部か何かに連絡してやっと警察の車が出てきて処置した、こういうことになっております。
それで何ですか、消防の方の指導としては、そういう死んでいるか生きているかわからぬ者については、一応人の言うことを聞いて、死んだ、こういうふうに判断して救急車は出動させない、こういう組織になっているのでしょうか、どうでしょうか。
● 鈴木政府委員 救急車の救急活動はあくまで救急でございまして、死体運搬には使わないことになっております。これは救急車を持っておる東京都などでもそういうことになっております。
ただ、現実に釜ケ崎事件の場合のことを報告を基礎にして判断いたしますと、私ども受けております報告は、
1日の午後9時50分、派出所から119をもって、東田町交差点において交通事故のために死んだが、運搬してくれという派出所の巡査から連絡があった。
消防の方で、すでに死んでいるのであれば救出車で運搬はできない旨を回答をいたしましたら、そうですかといって電話を切った、こういう報告に一応なっております。
もちろん死んだことが明らかであれば、先ほど申し上げましたように、救急車は、御承知のように、救急業務のために、サイレンを鳴らして、ほかの車をとめてまでも運搬をするということになっておりますので、死んだことが明らかな者を救急車で運搬するということは、原則としてしないことになっております。
この場合にもちろん確実に死んだことであれば救急車は行かないことになっておるわけですが、警察官が、死んでしまったとこう言った。まあ言った、言わないの問題はあるかと思いますが、死んだか死なないかは、これは専門家が見なければわからぬわけですから、その点でどうも警察と消防とが、救急業務に対する理解がお互いに足りなかったと申しますか、意思の疎通が十分できてなかったといううらみがあったのではないか、こういうふうに考えます。
● 阪上委員 医者でない警察官から、死んだものと思われる、しかしながら救急車を出してくれという要望があったことは事実なんです。その場合に消防当局のお考え方として、そういうふうに言ってきたんだからこれは死んだものと断定する、従って、これはもう出動しないのだ、一体これでいいんですか。人命、財産を犯罪から防止するのは警察の役目でありましょうが、災害から防止するのがあなた方の役目でしょう。それでいいんですか、その点もう少し確かめておきたいと思います。
● 鈴木政府委員 単にそういう言葉のやりとりだけで断定して救急車が出なかったというのは、必ずしも適切な処置ではないと私は考えます。
● 阪上委員 柏村長官に伺いますが、三輪さんからでもけっこうですが、しかし警察官が死んだということを断定することは、このこと自体どうなんですか。
● 三輪政府委員 私の聞いております限りでは、しろうと目といいますか、
警察官が行きましたときは全く動いていない、口と耳から血を出しておる状態、脈がないという状態、そこで即死と判断をしたようでございます。
これはしかしまことに慎重を欠いたものでございまして、先ほど消防庁長官もお答えいたしましたように、ほんとうに生命がなくなったという判断をするのは、これは医者でなければできないことだろうと思うのでございます。
そういう意味で、しろうと目に判断をしたということは、慎重を欠いたと思っております。
このことについては、これを契機といたしまして、交通事故の処理の適切を期する意味で、警察庁長官から各県に通達をいたしまして、注意を喚起いたしまして、今申し上げましたように、死んだというふうにしろうと目に思われても、まず救護に当たると言うことを先決と考えるようにということを通知をいたしたような次第でごいます。
● 阪上委員 この問題はもう多く論議されている問題でございますので、警察としても反省すべきところは反省し、あるいはそういう声明も一部出しておられるように私は記憶いたしております。従って、この問題は私はこれ以上追及しようとは思いません。
そこで、二番目にお伺いしたいのは、先ほど手配師だとか黒い組、それから例の売春暴力団だとか、これは私は端的に言ってもっと徹底的に取り締まるべきだ、こういうふうに思うのです。今までは別といたしまして―今までやらなかったとは私は言いません。検挙数も相当あるようであります。しかし、今後もっと本腰を入れてこの問題と取り組まないと、当面の応急対策すらも成り立たぬと私は思う。この点について、その後警察当局はどういう態度を持っておられるか、これを伺ってみたいのであります。
● 三輪政府委員 最初に暴力手配師の問題でございますが、従来あそこで手配師として、いわゆるやみ手配師としてやっておりましたものは、山田組、若桜組、50名と30名くらいのものがありまして、山田組の方はほぼ一日1,000人くらいの人夫を手配しておった。若桜組の方は300人くらいの人夫を天王寺公園を中心に手配をしておったというようなことでございまして、
これは実は先ほど長官からもお答えしましたように、ピンはねについては不満を持っておりますけれども、職安に行って自分は身分をあかしたくないというような考え方もあるようでございますし、また職安の給与そのものが、職安に行った場合には手配師の頭はねをされた後の給与に比へても必ずしもよくないというようなことで、これに行っておったわけでございます。
従って、取り締まりをやる一面、これにかわる職業あっせんをしてやる必要がございますので、西成分室という大阪府労働部の分室を作って、これで自来手配をいたしますと同時に、警察本部では、職業安定法違反捜査班という警部補を長とする5名の者を特にこの地域の手配師の連日にわたる取り締まりに当てまして、
現在少なくとも街頭にこれが出て手配をしておるという状態はございません。
まだ実はドヤ街等に行って内々でやっているのは絶無とは申せないようでございますけれども、少なくとも今までのような大っぴらな顔出しをしていない。
そこで、西成分室の方では、今一日平均1,400人ぐらいの人をやっておりまして、一方職安の西成出張所の方では2,900人ぐらい、これは従来もやっておったわけでございます。
職安の方でやりますというと、失対事業では350円ないし500円、西成分室の労働部の新しくこしらえましたところでは850円ないし終夜までやりますと1,800円というような賃金であっせんをいたしておるようでございます。
売春の方は、これは従来とも相当きつくやっておりまして、36年上半期に、釜ケ崎及びその周辺では、売春防止法違反で検挙いたしましたものが544件に及んでいるのでございます。
麻薬につきましても、西成で犯行を起こしましたもの268名、西成の居住著によるもの116名、こういうものをこの地区で検挙をいたしておるのでございます。
そういうことで、取り締まりの強化もやりまするけれども、同時に、たとえば手配師の取り締まりにつきましては、今のように別にかわってあっせんをするものを作る。これと今協力しつつ、両面の行政を行なっておるというふうに聞いておるのでございます。
● 阪上委員 今まで伺いましたところによりますと、ちょうど彼らがほんとうに不平を率拍に言っておりますように、法の取り締まりという対象には若干なっていくのでありますけれども、全く法の保護というものを受けていない。従って、一番彼らを搾取しておりますところのこういった反社会酌な集団に対しては、今伺いまして多少心を丈夫にしておりますけれども、私は、もっと抜本的な撲滅対策というものを警察当局は立てなければいかぬと思う。こんなものを放置しておいて、どうして彼らの生活を守ってやることができるかということになろうと思うのであります。この点については、今後一つもっと撲滅対策に力を入れてもらいたい、こういうふうに思うのであります。
なるほど、この問題につきまして、当初警察の態度、手の打ち方が非常に緩慢であったというようなことをよく言われております。しかし、現地に行って本部長その他から意見を聞いてみますと、山谷のドヤ街の事件の経験に徴すれば徴するほど、高圧的な手というものを最初から打つということはかえってまずいのだということを、るる私どもに説明もいたしておりました。
私はこれはもっともだという考え方を持っております。ところが、国家公安委員の中では、先ほどからいろいろと質問申し上げておりますようないろいろな深い原因というものを持っておるこのスラム対策に対して、単に警察は当初から強権をもって徹頭徹尾、ああいう蜂起した暴力者に対しては弾圧を加えるべきだというようなことをとうとうとしゃべっておる公安委員がある。これは新聞等で私は見たのであります。それがまた今度の改選に際して公安委員となっておる、こういうことなんでありますが、大上さんどうでしょうか、そういう公安委員というものをほんとうにあなたの考えで適当な公安委員だとお考えになりますか。どうでしょう。
● 大上政府委員 お答えいたします。実はこれは国家公安委員の関係で、私、政務次官としての所管外でございますので、御了解を願いたいと思います。
● 阪上委員 それじゃそのことは安井国家公安委員長にいずれ聞くことにいたしましょう。
そこで、私最後にお伺いいたしますが、この事件の余波ともいうべきものだと思うのでありますけれども、非常に警察の威信を失墜するところの事件が発生いたしております。
それは警察官によるところの人権侵害事件であります。私は新聞の報道だけしか持っておりませんが、大阪の淡路署でもって釜ケ崎事件の公務執行妨害容疑者が二人の刑事に暴行されて、釈放寸前になって暴行の事実は絶対に口外するなと、余罪と取引にかたく口どめされた事件がそれであります。この事件についての今までの取り調べの状態を御説明願いたいと思います。
● 新井政府委員 御指摘のように、公務執行妨害といいますか、投石の容疑で取り調べをいたしておりました被疑者に対して、2人の刑事が暴行をしたという疑いがございましたので、警察といたしましては、検察庁に全面的に捜査を依頼して、公平な立場から真相を究明していただこう。こういうことで今全面的に検察庁におまかせをしております。
ただ、今御指摘のありましたうちで、余罪を追及しないから暴行の事実を言うなという取引をしたということでございますけれども、これは若干誤解がございまして、実はこの被疑者は咋年は窃盗の被疑事実によって手配をされておったことは事実のようでありますが、軽微なものであり、なかなかつかまらないというので、昨年の5月にすでに手配解除になっております。従いまして、取引の具に使われるという客観的な状況にはなかったようでございます。
ただ、そういう余罪というものが、去年手配になっておったけれども、お前何しておったのだと聞いたところが、私は窃盗じゃなくて臓物をあっせんしたのだということを言っておる、こういうことでございます。
これらの問題につきましても、いずれ真相は明らかになると思いますけれども、取引の具に供するという客観的な状態でなかったということだけ申し上げます。
● 阪上委員 それでは拷問の事実はどうですか。
● 新井政府委員 ただいま申し上げました通り、私の方で監察官が調べましたことが最初の日はあったのでございますけれども、事件が事件でございますから検察庁に全部おまかせして、先方で真相を追及していただこう、こういうことでございます。監察官はあまり大して時日もございませんから十分に追及いたしておりませんけれども、その調べでもそういう疑いがあるということで報告を受けております。
● 阪上委員 これに対する警察庁長官の感想はどうですか。
● 柏村政府委員 刑事被告人の取り扱いにつきまして常に慎重を期するように指導をいたしておるのでありますが、今回こういうふうな暴行事件というものが非常に疑い濃厚なものとして出ましたことは、私として非常に遺憾に存じております。常々申しておることでございますが、今後さらにそうした不祥事件の起こることのないように厳戒して参りたいと考えております。
● 阪上委員 これは私から、申し上げるまでもなく、公務員の拷問というのはほんとうに重罪であります。明治憲法においてすら拷問というのはやはり禁止されておったのであります。ましてや新憲法36条によりまして「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」と非常に強い口調をもって憲法はこの点を保障しております。
今回のこの拷問の事実は、目撃者は病院の窓から見ておったわけなんでありますが、証人もあるわけであります。
ことにこれは警察の威信を失墜するおそるべき事件だ、私はかように考えております。従って、刑法第195条であるとか第196条等の規定によりましても、あるいは刑事訴訟法等によりましても、これに対して準起訴手続というものを認められておる。だから、かりにこれが不起訴になったといたしましても、被害者から起訴手続をとることができるところまで、法はこの問題については救済もし、保障もしておる問題であります。
こういう事件がたまたま釜ケ崎事件等の捜査の過程で出てきたということについて、私はこれは非常におそろしいことであるというふうに考えておるのです。
なぜおそろしいことかといいますと、冒頭に私が申し上げましたように、この事件は騒乱罪を構成するかもしれないという検察庁の態度もあった、それから植木法相はこの事件に対して徹底的に思想的背後というものを洗い出せというような強い発言もしておった、そういう中で、この事件の公務執行妨害その他の被疑容疑でもって取り調べをされておる。しかも世間では、私はそうは思わないが、一般的には警察の態度が最初非常に不手ぎわであったというような言い方が出てきており、国家公安委員の一人は盛んにその点についてもっと徹頭徹尾やるべきだったというようなことを平気で言っておる。
こういったこの事件を取り巻く雰囲気の中でこの捜査が行なわれている、こういうことなんであります。
その結果出てきたのが、憲法が絶対禁止しておるところの拷問でこれが捜査されている。何か警察当局はそういうふうにして、それにこたえるために、この事件は警察が不手ぎわであったためにああいう発展をしたのであるということをおおい隠そうというような魂胆から、拷問までしてでっち上げをしようというような考え方になっておるのじゃないか、私はこういうふうに考えるのです。もちろんあなたに質問してみても、長官は、いやそうじゃございませんというだろうと思うのでありますが、こういった客観情勢をずっと考えていくと、あまりにもこれはそういうふうな考え方をせざるを得ないような取り調べの方法である、私はこういうふうに思うのであります。
柏村長官も現揚に行っておられますが、なかなか強硬な態度を持っておられたようであります。
警察の責任じゃないのだ、うしろから何か思想的に扇動しておる者があるのだということでもって、責任回避の方向への一つの道具立てとして、こういうことが行なわれているのじゃなかろうか、こういうふうに思うのですが、それはどうでしょう。
● 柏村政府委員 警察の責任を回避するために強い取り調べをするというようなことは、毛頭考えておりません。これははっきりと申し上げるわけでございます。
私も大阪に参りまして、ただいま非常に強硬な態度だったというお話でございますが、私はやはり警備の実施の措置というようなものについて、やり出したらぴしっとやるということが必要であるという問題と、容疑者については徹底的に追及するということがやはり必要である。これは公正に警察の責務を果たす上において必要なことでありまして、是が非でも無実の者までつかまえて白状させるというような意味の強さというようなものは、私少しも考えたことはございません。
私は警察がその本来の使命に従って、責務に基づいて、仕事をするについてちゅうちょすることのないようにという意味において、強く言い、態度をとったように世間で受けておるかもしれませんが、私としては、あの事件について初め手ぬるかったので、あと非常に強くやって挽回しようというようなさもしい気持は、毛頭持っておらないことを付言しておきたいと思います。
● 阪上委員 そこで、先ほどお伺いしておりますと―今の御答弁は、それは当然そうあるべきでありますが、こういった拷問、これが事実にならなければ、これに対して警察庁としては何らかの行政措置はとられませんか。
● 柏村政府委員 ちょっと今の御質問がわかりませんので、もう一度お願いいたします。
● 阪上委員 それではもう一度。今被疑の段階でありまして、取り調べ中であります。そういうことが明確になり、裁判の結果を見なければ、警察としてはこういった拷問事件―私は拷問事件、こう思っておるのですが、これに対して何か善処方というものはお持ちになっていないのですか、このままで黙って判決を待って、それからじっくり考えていく、こういうことですか。
● 柏村政府委員 この事件について、刑事事件としては今検察庁に送っておりまするので、その方で十分真相を究明していただくことになるわけでございますが、必ずしも裁判の最終の決定を待ってでなければ一つの行政的な措置がとれないというものではございません。われわれの―われわれと申しますか、県警察の幹部において判断し得る材料が出ますれば、それに基づいて適切な措置をとり得ると考えておるわけでございます。
● 阪上委員 これは警察庁にお伺いしなければならないのですが、地方自治体では、私の考えでは、法の占有領域を越えても、集団示威行動等については、条例をもって自主的にああいう取り締まりの強化というのですか、をやっておる。
一体、先ほど言いましたような黒い手だとか、ああいったものについて、公安条例はこれを取り上げないのか、同時に、今言ったような、これは裁判の結果を見なければわからぬ、こう言われるかもしれないけれども、ほぼ私は明白だと思うのですが、こういった行為をやったところの警察官に対して、どうも在来からうやむやになっておる傾向があるのではなかろうかという気持がするのであります。
この際ほんとうに警察の品位を保っていくために―いかに上の力で良識をもって警察行政が行なわれたとしても、遺憾ながら末端において不心得な心得違いをする者も、これはなきにしもあらずであります。
もう少しこういった問題について、公安委員会というものが、ただ単にああいったデモ条例みたいなものばかりに取り組んでいないで、こういった問題とも取り組んで、そういうことのないように、条例を作れとは私は言いませんけれども、そのくらいの気持になって、公安委員会がきぜんとして警察官のそういった不法行為というものに対して、これを全然なくしていくというような方途というものを考えなければならぬと思うのです。
もしそれを考えないようでしたら、これはやはり警察監察委員会でも作って、そうして民間の手でもってでも、やはりそういった、ことに憲法で絶対に禁止するといわれているものが、たとい1名でも2名でも出てくるというような状態に対して、これは放置するわけにいかないと思うというような気持になるのですが、
そういった考え方について、私は警察庁長官のあなたにお伺いするのは気の毒かと思うのですが、公安委員長がおれば私はほんとうに公安委員長に迫っていきたいくらいなんです。私は、こんなものは新憲法下に一つも出してはいけない問題だと思っているくらいなんです。
しかしどうしてもこれは警察でもって撲滅できないというようなことでありますれば、公安委員会がほんとうにそれに対して、そういったものをなくするところの措置というものを十二分に講じていかなければならぬ。
ところが現在の公安委員会というものは、これは軒並みには言えませんけれども、あまりその方へのものの考え方というものは徹底していない。そうなれば、むしろこうなってこういった事件が発生するのだから、民間でもってでもそういったものを監察していくというような制度というものができなければならぬというような気がするのですが、この点どうでしょう、
そういうものを作ってやってもらうのは非常にけっこうだというふうにお考えになるでしょうか。
● 柏村政府委員 先ほども申し上げましたように、警察官の規律、特に人権の保護ということについては、私どもとしましても口やかましく指導をいたし、警告をしておるわけでございまするし、国家公安委員会初め、各府県の公安委員会等におきましても、そういうお気持でやっておられるわけでございます。従いまして、警察全体の空気としては、私は相当にそういう気持を強く抱いておると信じておるわけでございますが、遺憾ながら今回のような事件が出まして、まことに申しわけないというふうに考えておるわけでございます。
従来とも、警察におきましては、そうした不当な、不法な行為については十分に部内において措置するという建前をとっており、今回も直ちに監察官によって調査をし、なお警察だけでこれをやるということが世聞の誤解を生ずるというようなこともあるいは起こり得るということから、公正に検察庁において捜査していただくようにしたわけでございまして、被疑事実についての捜査は検察庁でやっていただきますけれども、部内規律の問題としては、警察の責任において十分適切な措置をとることになると思います。
決して、部内がゆるい気持であるから、むしろ民間の方にそういうことをお願いしたいというような気持は、現在のところ毛頭持っておりません。
● 阪上委員 あと門司委員の御質問があるようでございますので、これで終わりたいと思いますが、どうぞ一つこの釜ケ崎事件につきましては、ほんとうに政府は関係各省と一つ十二分に連絡をとられまして、そしてスラム撤去の徹底的な方策というものをこの際打ち立ててもらいたい。
なお、警察当局につきましては、当面のスラムの治安対策のために、先刻からるる申し上げておりますような問題について、特にああいった暴力団とか反社会集団撲滅のために、一そう一つ御努力願いたいと思います。
これだけ希望を申し上げまして、私の質問を終わります。
● 纐纈委員長代理 門司亮君。
● 門司委員 私は今の阪上委員の質問に関連して、自治省当局に聞いておきたいと思います。
そのことは、例のスラム街の改善にはいろいろ策があると思うのです。
一つは新しい家を建てて、そして収容する場所をこしらえるということが当然一つの策として考えられると思うのです。その場合に、自治省はこれに対する起債認可等についてはどういうふうに考えておりますか。
自治体は、新しい家を建ててやって、そこに収容してやるということがよろしいと考えておっても、事実上金がなければやれないことです。これについて起債を認めるという態度はございますか。
● 大上政府委員 ただいまの点につきましては、従来の諸規定と申しますか、法律等の施行の面からどの範囲までそれに該当し得るかという問題と思いますが、それにつきましては事務当局から説明いたさせます。―恐縮でございますが、次の委員会に現在施行の事務規定と申しますか、内部規定と申しますか、そのものに照らしてお答えした方がはっきりすると思いますので、そうさせていただきたいと思います。
● 門司委員 これは特に一つ次官に頼んでおきたいのですが、この問題は何も大阪や東京だけではないのです。都市という都市のほとんどにあるのです。どこでも手をやいていることは事実なんです。だから、それを早く処置しようとすれば、結局やはりああいう地帯の撤去と新しい施設がどうしても必要になってくる。この地域は、私はほとんどといっていいほど全部不法建築だと思うのです。公有地の占拠というようなことはこれはつきものなんです。それを放任しておく自治体もよくないが、しかし放任せざるを得ない祉会環境が悪いのであって、それをなくしてやろうとするには、やはり特別の財政措置が講じられなければ、地方の自治体ではそれはなかなかやれないと思うのです。別に大した収益があるわけでもありませんし、
従って、もし起債の認可等が十分にできたり、あるいは特別の補助規定等があるなら、今お尋ねをしたようなこれらの不法占拠をしておる地域を改めることは、私は容易だと考える。そうむずかしい問題ではないと考える。これらについて一つ十分自治省としての態度をはっきりしておいていただきたいと思います。
それから、ついでにもう一つ警察側にこの問題について聞いておきたいと思いますことは、先ほど阪上委員からかなり詳細に聞かれましたので、必要ないと思いますが、私どもが心配するのは、
警察行政の今日までのあり方が、どうもならず者という言葉はあまりいい言葉じゃありませんが、かつての犯罪者というような者の潜行している場所、あるいは潜在している場所というようなものは、大体きまっていると思うんですね。どの辺にどういう犯罪を犯した人が集まっているということが、割合に一ところに集めておくということが、警察が取り締まりの上から実際は便利だと思うんです。これが散らばってしまったのでは、なかなかどこにいるかわからないので、取り締まりにくい、警察にはこういうふうな変な今までのしきたりがある。
だからある程度の犯罪者というものは、飼っておくという言葉は悪いかもしれませんが、容認しておく。そうすると殺人罪を犯して逃げてきたような者がそこに集まりやしないか、潜伏しやしないか、それらを手づるして検挙して取り締まることができるというので、警察には一種異様な反社会的のものの考え方がある。それが、何としても今日まで行なわれていることは、事実だと思うんです。そういうものとの関連性で聞いておきたいと思いますことは、
これらの人たちの集団的の生活、いわゆる一ヵ所に集めるという一つの方法を警察は望まれるのか、あるいは分散を望まれるのか、その点は警察行政の面からどうなりますか、お考えがあるなら一つはっきりしておいていただきたいと思います。
● 柏村政府委員 犯罪者が一ヵ所に集まることが望ましいかどうかという御質問のようでありますが、犯罪者はできるだけすみやかに逮捕するということが望ましいのでありまして、これがどこにたまり場があることが望ましいかというようなことは毛頭考えておらないわけでございます。
● 門司委員 そうすると、警察側としては、そういうことが望ましいのだということは、おそらくあなたは言えないでしょう。どこか一ヵ所によりどころみたいなものをこしらえておいて、それで検挙するのが便利だということは言えないでしょうが、事実はそういうことであって、実際問題としてはなかなか警察側の思うように取り締まりができないということですね。
やはり何かどの辺にどういう犯罪者が集まるのだというようなことは、大体従来の警察行政の中では考えられていると思う。もし警察がほんとうに警察行政だけの形で取り締まりをしていこうとするには、私はそういういろいろな問題があろうと思うから、
それではっきり聞いておきたいと思いますことは、自治体がかりに現在のスラム街の全部をなくして、そして新しい住居を与えて、さらにそこに、職安を設けまして、十分法の保護が受けられて、さらに職業が安定するような形をとっていくというような場合に、一ヵ所にこれらの諸君が集められるということは非常に困難だと思いますが、
処置としては一カ所に集めるのがよろしのか、あるいは分散して往ませるようにしたのがよろしいのか、
これはおのおの自治体の財政に関係があると思います。しかし、私たちの考えとしては、一カ所に集めて、いかにもあそこはスラム街だというような地理的条件からくる、あるいは地理的環境からくる一つの歴史的なものの考え方のようなところは、実際はこしらえたくはない。
やはり住宅、それから周囲の環境等も十分に一般人としての環境のようなところに置いて、そうしてスラム街自身というものが偏執的な考え方にならないようにこれを指導していくということも一つの方法だと思う。
そうすればスラム街を解消する、解消すると言いますけれども、それらの諸君の住居というものは分散するがよろしいか、集めるがよろしいかという二つの議論が出てくると思う。
こういう場合についての警察側からの考え方を、この際一つ伺っておきたいと思う。
● 柏村政府委員 警察の犯罪捜査というような点からは、別に集めるのがいいとか、分散するのがいいという考えは私持っておりません。
これはもっぱら都市計画、あるいは労働関係の需給関係というようなことから、それぞれ専門的に考究されるべき問題であろうというふうに考えるわけでございます。警察としては、特別にそういうものはすぐに犯罪のたまり場所というふうな考えを持っておりませんし、従いまして、
そういうものが集まる、集めておいたがいいとか、あるいは分散したがいいということは、警察の見地からは、犯罪捜査の面からも、そういうことは考えておらないわけであります。
● 門司委員 あとはこの次の委員会等に、根本的にそういう対策、住居の対策、さらに職揚の安定等の対策についてはまた機会があろうかと思いますから、譲りたいと思います。