165-参-教育基本法に関する特別…-9号 平成18年12月07日
平成十八年十二月七日(木曜日)
午前九時七分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 中曽根弘文君
理 事
岸 信夫君 北岡 秀二君 保坂 三蔵君 佐藤 泰介君
櫻井 充君 蓮 舫君 風間 昶君
委 員
岩城 光英君 小野 清子君 岡田 直樹君 岡田 広君
小泉 昭男君 鴻池 祥肇君 坂本由紀子君 中島 啓雄君
舛添 要一君 松村 祥史君 神本美恵子君 下田 敦子君
鈴木 寛君 辻 泰弘君 西岡 武夫君 林 久美子君
福山 哲郎君 藤本 祐司君 水岡 俊一君 浮島とも子君
山下 栄一君 鰐淵 洋子君 井上 哲士君 近藤 正道君
福島みずほ君 亀井 郁夫君 後藤 博子君
発議者 西岡 武夫君 鈴木 寛君 水岡 俊一君 林 久美子君
国務大臣
文部科学大臣 伊吹 文明君
国務大臣(内閣官房長官) 塩崎 恭久君
国務大臣(内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画 )) 高市 早苗君
国務大臣 佐田玄一郎君
副大臣
文部科学副大臣 池坊 保子君
大臣政務官
文部科学大臣政務官 水落 敏栄君
政府特別補佐人
内閣法制局長官 宮崎 礼壹君
事務局側
常任委員会専門員 山口 俊史君
政府参考人
内閣官房内閣審議官 山中 伸一君
内閣官房構造改革特区推進室長兼内閣府構造改革特区担当室長 大前 忠君
内閣法制局第二部長 横畠 裕介君
内閣府大臣官房長 山本信一郎君
警察庁生活安全局長 竹花 豊君
文部科学大臣官房長 玉井日出夫君
文部科学大臣官房総括審議官 金森 越哉君
文部科学省生涯学習政策局長 田中壮一郎君
文部科学省初等中等教育局長 銭谷 眞美君
文部科学省高等教育局長 清水 潔君
文部科学省高等教育局私学部長 磯田 文雄君
参考人
明海大学長 高倉 翔君
杉並区立和田中学校校長 藤原 和博君
古山教育研究所所長 古山 明男君
名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授
犬山市教育委員 中嶋 哲彦君
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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○教育基本法案(第百六十四回国会内閣提出、第
百六十五回国会衆議院送付)
○日本国教育基本法案(輿石東君外六名発議)
○地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律
案(輿石東君外六名発議)
○学校教育の環境の整備の推進による教育の振興
に関する法律案(輿石東君外六名発議)
○派遣委員の報告
○公聴会開会承認要求に関する件
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○団長(中曽根弘文君) ただいまから参議院教育基本法に関する特別委員会甲府地方公聴会を開会いたします。
私は、本日の会議を主宰いたします教育基本法に関する特別委員長の中曽根弘文でございます。よろしくお願い申し上げます。
まず、私どもの委員を御紹介申し上げます。
私の右隣から、自由民主党の北岡秀二理事でございます。
同じく自由民主党の小泉昭男委員でございます。
同じく自由民主党の岡田直樹委員でございます。
公明党の浮島とも子委員でございます。
次に、私の左隣から、民主党・新緑風会の佐藤泰介理事でございます。
同じく民主党・新緑風会の水岡俊一委員でございます。
社会民主党・護憲連合の渕上貞雄委員でございます。
国民新党の亀井郁夫委員でございます。
以上九名でございます。
次に、公述人の方々を御紹介申し上げます。
山梨県高等学校PTA連合会事務局長浅川宏雄公述人でございます。
山梨学院大学法学部教授・山梨学院生涯学習センター長黒沢惟昭公述人でございます。
川崎市立川崎高等学校教諭小林和紀公述人でございます。
早稲田大学文学部教授喜多明人公述人でございます。
以上四名の方々でございます。
当委員会におきましては、目下、教育基本法案、日本国教育基本法案、地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案及び学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案、以上四案の審査を行っておりますが、本日は、四案について関心の深い関係各界の皆様方から貴重な御意見を承るため、本公聴会を開会することとなった次第でございます。
この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
皆様には、御多忙のところ御出席をいただきまして、大変ありがとうございました。
皆様から忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、今後の本委員会の審査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
次に、会議の進め方について申し上げます。
まず、浅川公述人、黒沢公述人、小林公述人、喜多公述人の順序でそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただいた後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、これより公述人の方々から順次御意見をお述べ願います。
まず、浅川公述人にお願いいたします。浅川公述人。
○公述人(浅川宏雄君) 私は、ただいま御紹介いただきました山梨県高等学校PTA連合会の事務局長をしております浅川宏雄と申します。
実は、初め、このお話を承ったとき、素人でございますし、きつく御辞退申したわけですが、それでも関心があるのならと大変温かくお勧めいただいたものですから、別に教育学者でも法律の専門家でもない、元現場の教員だったというだけの、ほんの平たい市民感覚に根差すそうした感想や意見でもよろしいのならばと申し上げましたら、それで結構ですのでということで、それではということで、恥を承知の上でこの席へ参らせていただいた次第です。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、私が教育の現場を去って七年になりますが、今もって心にずしんとこたえますのは、若者の非行や犯罪のニュース、さらには、三十数年前に教壇から見送った、今五十代の働き盛りの社会の中心を成す大人たちの一部が様々な分野で引き起こす残念な行状の数々です。責任重大な交通加害事故から、かっ払いや暴力や殺人や子供の親殺し、若い親の子殺し、詐欺、横領、地位利用の公務員の不正、特につらくて情けないのは、元気な若者が路上生活者や老女、果ては車いすの身体障害者からさえ、あるいは特にそういった弱者に絞ってハイエナのごとく平気で金品を強奪する事件の報道等であります。やりきれない思いで我に返ると、一体なぜとこう自問しながら、自らの責任も思い回しながら、やっぱり教育のせいかなとの結論にたどり着くのであります。
弱者から奪うというのは、本来人間としての自分への嫌悪感と裏腹のためらいの行為ではなかったか。あるいは、よしんば他人にやいばは向けることがあっても、自らの親や、まして自分の腹を痛めた子をあやめるなどということが、こんなにありふれた事件になってしまうものなのでございましょうか。かつてそこに超えられぬ何がしかのたがが、あるいは歯止めがおのずとあったのではなかったか、一体それがいつどこへ行ってしまったのだろうと、唐突かもしれませんが、そんな素朴な思いが今の私の教育基本法問題との接点となります。
私は、現在山梨県の高等学校PTA連合会に御厄介になっておりますが、平成十五年の七月、そのPTA連合会の関東地区の大会が我が山梨で開催されまして、そのときの大会宣言の起草にかかわりました者ですが、そのときの考えが今の私の考えとも重なりますので、少し引用させていただきますと、次のようでございます。
二十一世紀を目前にした平成十二年十二月、前首相、森元首相でございますが、の諮問機関の教育改革国民会議はその報告書で、いじめ、不登校、校内暴力、学級崩壊、凶悪な青少年犯罪の続発など、教育をめぐる現状は深刻で、このままでは社会が立ち行かなくなってしまうと、今日の日本の教育が未曾有の危機に直面しているとの厳しい認識を示した。その上で報告書は、今までの教育は個人が要求することを主力に置いたものであったが、これからは、与えられ、与えることの双方が個人と社会の中で温かい潮流をつくる方向に向かわねば、日本は将来取り返しの付かないことになるだろうと続け、希望を語るべき新世紀を前に悲壮な警告を発せざるを得なかった。
戦後日本は、過去への反省から、社会のありようを民主的で個人が尊重される個人第一主義へ大きくシフトしました。それは当初、過去を清算する新生日本の希望の理念として大歓迎された。しかし、それから半世紀余り、かつての公、国家でございますが、その公偏重へのアレルギーもあって、その後の過剰とも思える個人重視の風潮は、いつしか結果的に私と公の望ましいバランスを超えた、私至上主義の利己的で無秩序な社会をつくり上げてしまったと言えないだろうか。
私と他者、その総体としての社会、そうした大きな秩序への配慮を軽視し、ギブとテークのバランスを欠いた個々人の他者への一方的要求、主張のはんらんこそが今日の社会や教育の混乱と閉塞を招いた一大要因と言って差し支えないだろう。
個人の安寧、幸福は社会という安定した土台があって初めて成り立つという余りにも自明な理を、我々は今日から学校教育の場で、同時に自らの家庭で子供たちに改めて説き諭すところからすべてを始めなければならないのかもしれない。こういうふうにしておりまして、これが宣言でございます。
今もその宣言を起草した当時の思いはほとんど変わっておりません。何とかしなければと、元一教育者としてのそんな思いが、戦後六十年と言われる様々な見直し、改革の流れの中で、私に教育の改革への関心、あちこちから起こった教育基本法の見直しの動きに若干の期待の気持ちを抱くようになり、今日につながっております。
時間の関係もございますから、今回の政府の教育基本法改正案の特に重要と考える点を端的にこれから五点ほど述べさせていただきます。
まず、第一点は、第二条の教育の目標に公共の精神が盛り込まれた点でございます。
戦後の我が国の教育は、戦前への反省に立ち、個人の価値に重点を置きながら進められてまいりました。個人の価値は普遍的な理念であり、今後とも教育において重視しなければならないことはもちろんでございます。しかしながら、これまでの教育においては、個人の価値とセットになるべき公共の精神が必ずしも十分に尊重されてきたとは言えなかったのではないでしょうか。このことが、自分さえ良ければといった今の風潮にもつながっているのではないか。どうでしょうか。
しかし、人は、人とのつながり、社会を形成する中で、互いに思いやり、助け合いながら生きるものであります。今の子供たちにそうした気持ちがないとは考えたくございません。そうした気持ちを体験する機会が少ないだけではないかというふうに思うわけであります。実際にボランティア活動などで人と助け合い、だれかに喜ばれる経験をすると生徒たちの目は輝き出します。そうした人としての当たり前の基点を教育の根本法であります教育基本法で再確認することは大切なことだと考えます。
第二点目は、これも第二条の目標の一つとして、日本の伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する態度が盛り込まれたことです。
国際化が進む中で、国際社会の発展に尽くすことが今一層求められています。その際の前提は、まず自分の国や地域の伝統や文化を理解すること、日本人としての自覚や郷土を愛する姿勢等でありましょう。その上で、他国やその地域の伝統、文化を尊重し、国際社会の一員として信頼されることを目指すのが重要でありましょう。
英語教師としての個人的経験からも、外国人と接したとき、相手が知りたがる自国のことをうまく説明できなくて冷や汗をかいた苦い経験が思い出されます。まず、自国をよく理解し、愛していることが何よりも大切になると思います。こうしたことはこれまでも学習指導要領で指導が行われてきたはずですが、今後、基本法に明記し、一層の指導の充実を図っていく必要があろうかと考えます。
第三点は、第三条に生涯学習の理念が明記されたことであります。
現在、私はPTA関係の仕事をしておりますが、これも生涯学習の一環を形成しております。教育は学校を終えた段階で終了するものではありません。教育の目的は人格の完成を目指すことでして、生涯にわたって追求をされるべきものでしょう。生涯を通じて社会の中で生き生きと自分を生かすことができるような、そんな社会を実現していくことが強く求められていると思います。問題のまたフリーターやニート問題の解決にも、こうしたいつでも学んで再びチャレンジすることのできる社会の実現が極めて重要であると考えております。
第四点でございますが、第十条として家庭教育についての項目が盛り込まれたことでございます。
家庭教育はすべての教育の出発点であり、その重要性は時代にかかわらず不変なものがあります。しかしながら、最近は親による子供の虐待など悲惨な事件が相次ぎまして、家庭の教育力の低下が問題視されております。こうした事態の改善のためには、まず親が子供としっかり向き合っていくことが重要であり、また行政等も側面から家庭教育の支援を十分に行っていく必要もあると考えます。このような点で、家庭教育の重要性が盛り込まれたことは一定の評価ができると思います。
第五点目でございますが、第十三条に学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力が盛り込まれたことでございます。
言うまでもなく、教育は学校だけで行えるものではございません。学校とともに家庭、地域における教育が相互に連携して、社会全体で子供を育てるという意識を共有することが大いに必要であろうと思います。
しかし、現実にはコミュニティーの人間関係が大変希薄化しておりまして、ひどい場合には、隣に住んでいながら住人の顔も知らないというような状況もあり、社会全体で子供を育てる状況にはほど遠いケースが多々あるようでございます。これからの教育を考えていくとき、我々がもっと考えなければならないのは、自分の子供とともに、地域の他の子供たちにも手を差し伸べていくことではないでしょうか。私たち高等学校PTA連合会の取り組んできましたアンケート調査の結果からも、人間関係が希薄であることが高校生を万引きや暴力、自傷行為などの様々なリスク行動に走らせてしまっていることが明らかになっております。地域の教育力の再生こそが急務でありまして、学校、家庭、地域が連携して、大人が本気で子育てにかかわり、進んで公共の精神を発揮していく必要があり、その意味で第十三条は非常に意味があるかと考えております。
雑駁でございますが、以上、教育基本法改正に関する私の素朴な感想や意見を申させていただきました。
新しい時代を担う子供たちのために、政府の御提出なさった教育基本法案の早期成立を図るとともに、施策を裏付ける教育予算の一層の充実を是非よろしくとお願いしながら、以上で私の素朴な意見発表を終わらせていただきます。
ありがとうございました。