165-参-厚生労働委員会-5号 平成18年11月30日

 

平成十八年十一月三十日(木曜日)

   午前十時開会

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   委員の異動

 十一月三十日

    辞任         補欠選任

     南野知惠子君     荻原 健司君

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  出席者は左のとおり。

    委員長         鶴保 庸介君

    理 事

       阿部 正俊君  中村 博彦君   櫻井  充君 津田弥太郎君  浮島とも子君

    委 員

       荻原 健司君  岸  宏一君  坂本由紀子君 清水嘉与子君  武見 敬三君

       中島 眞人君  中原  爽君  西島 英利君 藤井 基之君  足立 信也君

       島田智哉子君  下田 敦子君  辻  泰弘君 森 ゆうこ君  柳澤 光美君

       山本 孝史君  山本  保君  小池  晃君 福島みずほ君

   国務大臣

       厚生労働大臣   柳澤 伯夫君

   副大臣

       厚生労働副大臣  石田 祝稔君

       厚生労働副大臣  武見 敬三君

   大臣政務官

       厚生労働大臣政務官       菅原 一秀君

   政府参考人

       内閣官房内閣審議官       山浦 耕志君

       内閣官房内閣参事官       伊奈川秀和君

       警察庁警備局長  米村 敏朗君

       法務大臣官房訟務総括審議官   大竹たかし君

       外務大臣官房参事官       辻   優君

       文部科学大臣官房審議官     辰野 裕一君

       厚生労働大臣官房技術総括審議官        西山 正徳君

       厚生労働省医政局長       松谷有希雄君

       厚生労働省健康局長       外口  崇君

       厚生労働省医薬食品局長     高橋 直人君

       厚生労働省労働基準局長     青木  豊君

       厚生労働省雇用均等・児童家庭局長       大谷 泰夫君

       厚生労働省保険局長       水田 邦雄君

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  本日の会議に付した案件

○政府参考人の出席要求に関する件

○感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に

 関する法律等の一部を改正する法律案(第百六

 十四回国会内閣提出、第百六十五回国会衆議院

 送付)

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○国務大臣(柳澤伯夫君) 結核につきましては、今清水委員御指摘のとおり、昭和五十年代後半から次第にまあ順調に減少してきたんですけれども、その減少の足取りというものの勢いが鈍りまして、ついに、昨日私ちょっと九八年と申したんですが、これは私の誤りで大変恐縮ですが、九六年にボトムが打たれたんですけれども、その後反転上昇ということで罹患率の上昇が見られる。そういうことで、平成十一年に、今御指摘の宮下大臣当時でございますが、結核非常事態宣言ということがなされたわけでございます。その後、鋭意、厚生労働省におきましてはこの罹患率抑制のための努力を続けているわけでございますけれども、その後、顕著な低下というものが見られないんですが、最近ようやく少し低下の兆しが見え始めたといったところが現況かと思うわけでございます。

 そういう中で、今回私ども、結核予防法というものを廃止しまして、これを感染症法に統合するということを行ったわけでございますけれども、これは元々、こういう特定の感染症の病名を冠した法律というのはとかく差別、偏見の温床になるという御指摘を各方面から実はいただいておりまして、そうした指摘を踏まえて今回、感染症法の改正のこの機会にこれを統合するということをいたしたわけでございます。

 しかし、その中身はと申しますと、結核予防法にございましたいろいろな措置というものをしっかりとこの感染症法の中に盛り込んでおるわけでございます。加えまして、それに人権の尊重という、かねて問題視されておりました、指摘をされておりましたこの手続規定を拡充するということをいたしておるわけでございまして、私どもとしては、これによって結核対策が何か疎漏になるというようなことはゆめ考えておらないわけでございまして、この統合によりまして更に一段と私どもは真剣にこの結核の罹患率の引下げというものを実現すべく努力をしていきたいということでございますので、是非御理解を賜りたいし、また国民の理解もいただきたいと、このように考えておるわけです。

 

○清水嘉与子君 ありがとうございます。

 今、特に大都市におきます結核の治療率を向上させるためにDOTSというのを、事業が進められて効果上げているというふうに、一昨日も随分これ問題出てきて評価をされておりました。

 私も、この質問をする機会に、そういうことにかかわっています現場の人たちの話を聞いてまいりました。看護師、保健師、本当にこういうのをやっているのかなと思いましたら、本当にやっているんですね。もうすごい勢いでやっていました。実にきめの細かい対応をしていることが分かりました。患者さんが登録されるとすぐに保健師さんが行って、そして病棟に入られたらそこに面接に行き、そして入院中も何回か面接に行き、退院されてからずっと地域のDOTSにつなげていくというようなことをやっているんですね。元々は、これ喀たんの塗沫の陽性の方を対象にしたと思うんですが、今はもう登録者全部にやっているんですね。保健師さんが実際に対象入院患者さんのところに行く率は、九三%の患者さんのところに行っているというふうに伺いましたので、相当みんな保健所が努力してやっているのかなというふうに拝見しております。

 また、病院は病院で、病院の方も看護師さんたちがしっかりとこの方針に従って、最初は、何だよ、子供扱いにしてと怒られた患者さんもいらっしゃるようでございますけど、そういう人だけ外しておくとまた逆に差別になるのでみんな一緒にやっているんだそうで、これは大変みんなに喜ばれているというんでしょうか、もうそれが普通になってしまっている。で、そういう細かいことをやっているおかげで、地域にもずっと広がってうまくいっているんですよね。

 例えば、ホームレスの人の罹患している人を見付けて、そしてその人たち入院させて、そしてずっとDOTSを続け、そのホームレスが毎日毎日保健所に来るようになったなんという事例もありまして、すごいものだなと思って私も感心したところなんですね。正にこれが看護の原点なんですよね。そして、地域クリティカルパスと、もうこの前のとき随分問題になりましたけれども、それの正に実行例なんだと思うんですね。

 今日のあれじゃありませんけれども、これから療養型病床に、療養病床に入っている方々を地域に出ていただくときに、やっぱりこういう優しさを持って進めていただければやっぱり成功例上がるんじゃないかというふうに思いますので、これは是非参考にしていただきたいなというふうに思っているわけでございます。

 ただ、問題はやっぱり費用なんですよね。これ税金でやっている限り、なかなかこれ進まないといいましょうか限界がある。だから、やりたいと思っても、県によっては持ち出しがあるのでできない。どうしてかというと、保健師さんだけではできないので、ボランティアの方を採用したり教育してやってもらうとかいうようなことで、やっぱりお金が掛かっているわけですよね。それが、予算を見てもちっとも広がってこないというようなこともあって、本当に徹底的にやるんだったら、対象も限られているわけだし、ある一定の期間だけやればいいわけ、だけということもないですけど、できるわけですから、しっかりとやっぱりやるべきじゃないか。できれば、これ本当に医療機関の中でもやれというのであれば、将来はやはり診療報酬の面で手当てをするということも考えられるんじゃないかと思うんですよね。

 これは水田局長には通告もしておりませんでしたけれども、将来こういうことも是非お考えいただきたいなと思うのですが、もし御意見があったら答えていただくし、なければもう聞き流しで、どうも聞き流しのようですから、じゃそれは是非お考えいただきたいというふうに思っております。

 そしてまた、外国に比べて、先進諸国に比べてちっとも下がっていかない罹患率、これを改善しない理由として、先回も多剤耐性結核の方が多いことでありますとか、あるいは高齢者が、かつて既往のあった高齢者が再発するというようなことがあったり、それから外国人だとかホームレスだとか、そういうようなことが出されておりました。今、老人ホームに入っている方々が仮に再発しますと、免疫のない若い看護師や介護士がすぐにもう本当に集団発生する、感染する可能性はあるんですよね。

 私、せっかく今この機会に、この機会というのは、つまり結核予防法がなくなって感染症に一体になるというときに、みんなが本当にこれどうなるのかと心配しているときに、もう剛腕大臣の下で、是非こういう結核撲滅の運動のキャンペーンでもつくっていただいて、本当に思い切ってそれをなくすための努力していただけたらいいんじゃないかと思うんですが、大臣、一言御意見を。

 

○国務大臣(柳澤伯夫君) 先ほど申し上げましたし、また清水委員の既に御質疑の中でも取り上げていただいたわけですが、結核非常事態宣言というものがございまして、これはこれで私ども非常に、やはり言葉からしましても緊迫感を持った、緊急事態宣言、これを既に行ったところでございます。

 こういう緊急事態宣言等を発出するような場合に、これを重ねてまた、まあ少しは言葉を変えるかもしれませんけれども、やることについてはこれはいかがかと。オオカミ少年と言っては少し語弊があるかもしれませんが、やや効果を期待できないようにかえってなってしまうというようなこともあろうかと思います。

 この上は私どもは、地道な取組ということがかえって必要なのではないか。そういう宣言をした以上、それにふさわしい政府側の努力というものもあるなという、そういう努力、それがかえって必要なのではないかと、このように考えているわけでございまして、そういった意味では、予算とか人員の確保というのが何よりも大事なんですが、現今、行政改革という大変な逆風がこのことには吹いておりますので、その中でできるだけ頑張ってまいりたいと、このように考えている次第です。

 

○足立信也君 そのときの議論の話をしますね。

 今日もこの法案が成立したときには、いろいろ附帯決議の案が出されているようであります。

 平成十六年のそのときの審議ですね、四月二十二日、参議院の厚生労働委員会です。私が出馬表明する直前の話ですが、附帯決議のその四に、非正規労働者が増加している状況にかんがみ、結核に関する知識の普及・啓発、健康診断の実施を図る方策を検討することとあります。

 施行されて一年八か月になりますか、これで結核患者さんの、登録患者さんのその職業、正規か非正規か、あるいは非正規労働者への啓発や健康診断、これ附帯決議でやることとなっているんですが、実施状況を教えてください。そして分析を教えてください。

 

○政府参考人(外口崇君) まず、保健所の管轄する結核登録票においては、これは、患者の職業は、これは記録されておりますけれども、この労働が正規か否かについては、これは把握はしておりません。で、これを非正規労働者の方に対して、じゃどうするのかということでございますけれども、この基本指針というのがございまして、基本指針では、職場での健康管理が十分ではない労働者など、結核の発症率が高い住民層については、地域の実情に即して定期の健康診断その他の結核対策を総合的に講じることとされております。

 すなわち、この非正規労働者と申しましても、その非正規の度合いが大分違うということもあります。で、非正規労働者の方の中でも、まあ特に極端な場合は、今都市部でいろいろ問題となっておりますホームレスの方とか外国人の方とか、あるいは何と申すんですか、いわゆる日雇の方でございますか、そういった方おられるわけでございますけれども、こういった方も広くあまねく必要な措置を講じるということが重要でございますので、そういったことに着目して、今職場でしっかりと健診を受けられる方以外の方について、幅広く知識の普及啓発とか、健診の実施とか、そういった取組をなされるよう、今自治体の方でもいろいろ取り組んでおるところでございます。

 

○足立信也君 二年八か月前の附帯決議、読みますよ。「なお、近年、企業の健康診断の対象外とされがちな非正規労働者等が増加している状況にかんがみ、これらの者への結核に関する知識の普及・啓発に努めるとともに、健康診断の実施等が図られるような方策を検討すること。」。

 正規か非正規かの把握もしていないと。これ行政として、この立法府が決定した法案と、それに対する附帯決議、二年八か月前、何もやっていないということですね。まず最初の段階である非正規か正規かも分からないと。これでよろしいんでしょうか。

 

○国務大臣(柳澤伯夫君) この附帯決議については、当然、厚生労働省としても重く受け止めているわけでございます。

 私は、このお話を承ったときに、これはもう労働安全衛生の問題だろうと、こういうふうに思ったわけでございます。で、ちょっとただしましたところ、労働安全衛生法でどうなっているかと申しますと、これは一つは、一年以上引き続き使用される者は、当然健康診断をやらなきゃいけないと。短時間労働者の中でも、一日一日が短時間労働者であっても、所定労働時間の四分の三以上である場合には、これは一週間単位で考えるわけですけれども、これはもう当然労働安全衛生法上、健康診断の対象にしなければいけないと、こういうことになっております。したがって、一年以上であって一週間四分の三以上である労働者は、短時間労働者といえども、いわゆる非正規雇用者でありますけれども、それらについてはこれはもうちゃんと健康診断の対象にしなければいけないということが今の法律の運用でございます。

 加えまして、これらの二つの要件を満たさない者でありましても、通常の労働者の一週間の所定労働時間のおおむね二分の一以上である者については健康診断を実施することが望ましいということで、言わば労働管理、雇用管理の面から健康診断の義務というものは非正規と言われる労働者の中にもかなり広くとらえられていると、こういうことが一つございます。

 そういうことで、それ以外の者についてはどうなるかということが今、外口局長の答えたものでございまして、これらについては、むしろその生活の実態の方からとらえて知識の普及啓発を図っていき、それをまた健康診断につなげていくという考え方が取られているということであります。

 

○足立信也君 私なりに解釈すると、先ほどの附帯決議に合わせると、実施はできていないけれども方策は検討しているということだと思いますね。これはもう現状がそうなんですからやむを得ないとは思うし、努力しなければいけないことだと私は思います。この附帯決議にあることが実施されてもいないのに、その法案は廃止されてしまうんだという現実を受け止めて、先ほど清水委員の発言にもございましたように、決して結核対策がおろそかになることのないように、これはもう行政としてお願いするしかないと思いますから、これ以上は申しません。是非ともお願いします。

 そこで、先ほど石田副大臣から答弁がありました、差別や偏見の温床になると、人権侵害の面もあるかもしれないという発言に関連してお聞きします。

 私は、これ結核症というのは、当然皆さん御存じのように結核登録票があって、これは法が変わりましても今後も継続されてきちんとフォローされるわけですね。登録制度なんです。法が変わってもそのまま引き続く。私が関連した今年の法案、今年に行われた法案で、例えばアスベストによる中皮腫、あるいは私は良性石綿疾患も含めたいと思っているんですが、あるいはがん対策基本法において、これ、本当に分析をして治療の効果があったのか、あるいは健診の効果があったのか本当に分かるためには登録制度が必要だというのをその都度私は申し上げてきました。

 そこで、いろいろ理由はありましたが、その中で一番多かったのは、できない理由の多かったのは、個人情報保護法との関連で人権の問題であるということを主に言われました。それで登録制度はなかなかできないんだと。ということは、今回、感染症に結核予防法が統合されて、しかし結核に対する登録制度はそのまま残る。で、フォローをすると。ここの問題、それは先ほど副大臣がお答えになったように、人権に配慮してあるいは個人情報のことにも配慮してこういう法案に変えたんだと。そこでも登録制度は残す、やるべきだと。ということは、登録制度と直接個人情報の保護や人権の問題は関係ないということをおっしゃっていると私は思うんですが、その理解でよろしいですか。まず局長で結構ですよ。

 

○政府参考人(外口崇君) がん登録と結核の登録制度の違いということがあるかと思いますけれども、まあ私もがん登録、できるだけ早く進めたいと思っているんですけれども、やはり結核登録のようにいかないということの一つの理由は、やはり結核の場合は人から人への感染をする疾病であると。がんの方は感染する病気ではないということで、そこがまず大きく違うと思います。

 それから、がんの場合は、やはり一番難しいのは、日本の特性かもしれませんけれども、患者さんの同意を得て登録するといった場合に、その患者さんへの告知の問題ということがまだ確実にコンセンサスが得られていないということもあります。

 そういった中で、がんの場合は結核の場合と違う中で、やはり個人情報という問題の扱い方についても少し違ってきているのかなと。そういったところで、結核の登録とそれからがん登録の場合でプロセスが違ってきているんではないかというふうに私は考えております。

 

○山本保君 それからまた、副大臣にもう一度、繰り返しになりますが、ちょっとお聞きしますけれども、厚生省の発表などによりますと、相当多くの機関や大学、研究所などで、今回対象になった病原体といいますか、それを持っているということがあるようです。

 これについて、今から短期間の間に連絡をして、それがきちんと管理できるようになるのかどうかちょっと心配なところもあるんですけれども、その辺の相手に対する情報とか、またそのための啓発というようなことについてはどういう手を打たれるつもりなのか、副大臣、お願いいたします。

 

○副大臣(石田祝稔君) これは、研究機関もそうでありますけれども、やはり国民に対しても十二分な周知徹底もしていかなきゃいけない。先ほども申し上げましたように、午前中でも、もう病原体の一種、二種と、それから危険性の病症としての一類から五類と、こういう混同についても心配があるのではないかと、こういうお話もありましたので、こういう点につきましても研究機関を含めて国民それぞれに周知徹底をしていくことが大事ではないかと、こういうふうに思っております。

 こういうことで、具体的には、厚生労働省や国立感染症研究所のホームページ、こういうものでも関連情報の掲載、またメディアに対しても、現在のところ二週間に一度、記者クラブで情報を提供していると、こういうこともこれはやってきておりますので、この辺りもしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 

○山本保君 じゃ、分かりました。どうぞよろしく、また遺漏のないようにお願いしたいと思っております。

 次に、結核について何点かお聞きしますが、結核予防法が感染症今回の予防法へ統合されるということで、実は私の方に、私、名古屋市に住んでおりますので、名古屋の担当の方からも幾つか割と具体的なちょっと心配だという話がありましたので、それも含めてお聞きしたいと思うんですけれども。

 最初に、今日、結核の全体の罹患率の状況などもお話がありましたけれども、いろいろお聞きしますと、地域格差、地方と都市部というのでも格差があるともお聞きしておりますし、また、言わばホームレスの方ですとか、また外国人、特に日系の方など非常に増えているわけですが、こういう点で、この方たちに対する結核予防ということがうまくいっているのかどうか、少し心配になるところがありますけれども、この辺は現在どんな手が打たれているのでしょうか。

 

○政府参考人(外口崇君) 我が国における結核罹患率の地域間格差は、やや縮小したとはいえ依然として大きく、罹患率、人口十万人単位の新規登録結核患者数の最も高い大阪市の結核罹患率は五八・八、これは最も低い長野県の一〇・七の約五・五倍となっております。結核に感染するリスクの高いグループが多く存在する等の理由により、大都市を中心に罹患率が高い状況になっております。また、御指摘の社会的弱者の方に関しては、例えばホームレスの方などは結核の罹患率が高く、またその治療を開始した場合、それを中断するリスクが高いと考えられております。

 こうした地域格差の縮小や社会的弱者の方の救済のための対策として、結核対策特別促進事業を活用して、特に罹患率の高い地区においては治療成功率向上のためのDOTS、直接服薬確認療法事業を実施するなど、地域の実情に応じた取組を行っているところであります。

 こうした対策を今後も積極的に推進することによって、地域格差の縮小、社会的弱者の救済のための対策に取り組んでいきたいと思います。

 

○山本保君 今の、DOTSでというんですか、何か訪問型で飲むタイプだというふうに聞きまして、先ほどお話がちょっと出たような、まあ毎日のように保健所へ行くような必要はないんだろうと思うわけですけれども。

 やはりこの辺は、私も福祉の方を見ていますと、特に、正にいろんな社会的な問題が重なりますとまた健康面も重なるという例が非常に多いわけでありまして、是非、一般的な対応に加えて、この辺の方たちに対するものはしっかりやっていただきたいということをお願いしておきます。

 次に、ちょっと具体的な問題なんでございますが、この結核患者が多い場合、特に名古屋の場合は、いろんな分類があるんでしょうけれども、三百五十例以上の、一年間のという数字もちょっといただいているんです。そうしますと、今度の法律で、診査のための協議会の開催ですか、これが七十二時間以内に行わなくてはならないというふうにあるようでございますが、そうしますと、もう毎日のようにこの協議会を開くということになるのだが、そうなりますと、なかなか負担もあって開催が難しいのじゃないかと、こういう質問が来てるんです。この辺についてどういう対応が考えられるのか。また、今日もお話ありましたけれども、入院延長するというような場合については、例えばもうそれはまずやっておいてからでもいいのではないかなという気もするんですが、この辺はどういう制度を、どういう運用を考えられておられるのか、教えていただきたいと思います。

 

○政府参考人(外口崇君) 各自治体において、七十二時間以内の協議会の開催が可能となるような運用上の方策を検討していただくことになるとは思いますけれども、御指摘のように、結核の患者さんの数が多い地域では、委員の招集を前提とした協議会の開催が事実上難しくなるような事態も想定されます。このため、客観的な検査結果により結核の診断が可能な、いわゆる定型的な事例等につきましては、結核患者さんの人権を尊重するということが大前提ですけれども、この当該協議会の開催方法を簡素化する方向で検討をすることとしております。

 

○山本保君 では、そのことはまた徹底して連絡をきちんとしていただきたいと思っております。

 次に、今も人権ということが出ました。強制入院というふうな言葉もあるのかということで、今先ほど小池先生にもちょっとお聞きしておりましたら、勧告をするんですか、そういう形なんだということでありまして、もちろん御本人の人権ということも大事なわけでありますけれども、二次感染というような心配もあるわけでありまして、こういう一般の方の人権ということもあるわけであります。

 この辺、両方がなかなか大変かなという気がするんですけれども、何か今回の法律によってこの辺の規制といいますか、その対する勧告をするんだそうですけれども、今まで以上に何か弱くなるのではないかというちょっと心配をされている向きもあるんですけれども、この辺はいかがでございましょう。

 

○政府参考人(外口崇君) 実際には、この勧告の制度を使ったときに、弱くなるのか、それからもし勧告で駄目なときに強制措置をすることになるのかと、いろいろ御懸念あるかと思いますけれども、一つの例として、今の、普通の、結核じゃない感染症法の方で、例えば勧告した際に拒否して強制措置が発動される場合があるかということで申し上げますと、例えば患者さんが入院を了承しない場合に、法律の規定上、即時強制としての措置を行うことができるわけでございますけれども、実際には、二類の感染症、例えばこれ、コレラですとか赤痢ですとか、そういった場合が入るんですけれども、そういった患者さん、平成十六年の一年間において入院が三百件ありました。それすべてが勧告によるものでありまして、実際そこでトラブって措置によるようになったケース、一件もございません。

 こういったことから考えると、公衆衛生の重要性というものをかなり御理解いただいていると思いますんで、これを勧告の制度にしても実際にはトラブルは多分起きないだろうと考えております。

 

○政府参考人(外口崇君) 感染症法におきましては、法に規定する入院の勧告が行われた以降の入院が感染症法に基づく入院となります。当該措置は、公衆衛生の観点から知事が入院の必要性を判断した結果なされるものでありますが、他方、勧告前の入院は当該患者自身の判断による入院となりますので、これは公費負担の対象となりません。

 それからまた、結核の疑いで入院した後に結核ではないと判明した場合であっても、結核の疑いで入院していた期間については感染症法の規定に基づく公費負担の対象とする方向で考えております。

 

○福島みずほ君 結核の発生率については他の委員も先日質問されましたが、最も多い大阪市と最も少ない長野県では五・五倍の開きがあります。特に都市部においては、外国人労働者あるいはホームレスの人たちが結核になるケースが今後増大すると予想されます。都道府県ごとに地域における医療関係者の育成対策並びに結核発生の予防策はどのように考えられているでしょうか。

 

○政府参考人(外口崇君) 外国人労働者やホームレスの方などは結核の罹患率が高く、またその治療を開始した場合、それを中断するリスクが高いと考えられております。さらに、こうした方は都市部に多くおられますことから、都市部において結核対策は大変重要な課題となっております。こうしたリスクの高い人に対しては個別に対応していくことが必要であり、保健所等において服薬状況を確認しながら指導する直接服薬確認療法、いわゆるDOTSを推進することがその対策として重要であります。

 また、こうしたDOTS等の結核対策を推進するためには、結核対策に知見を有します医療関係者の育成が重要なポイントとなります。医療関係者に対しては、国庫補助の下、財団法人結核予防会において、医師を始め、診療放射線技師、保健師、看護師、臨床検査技師等、医療従事者に対してこれまで様々な研修コースが実施されてきました。

 厚生労働省としては、引き続きこれらの研修を支援するとともに、学会等関係機関と連携を図りながら、今後とも結核の診療に携わる医療従事者の人材確保、人材育成に取り組んでまいりたいと考えております。

 

○福島みずほ君 結核予防法が廃止されることになりますと、結核を冠とする法律がなくなってしまう。ですから、まだ病気があり、まだ日本は結核患者の方がいて、死亡例もあるにもかかわらず、どうもそこがやっぱり薄まってしまうのではないかというのが率直な当事者の皆さんの心配です。後退をするのではないか。

 ですから、また改めてお聞きしますが、後退をしないために、保健所や医療現場での周知徹底や努力、あるいは厚生労働省として早急な実態の把握と、入院や退院をどうするか、退院後の対策をどうするか、国の責務としてのガイドラインやマニュアル作りや専門施設の設置が重要であると考えますが、いかがですか。

 

○政府参考人(外口崇君) 改正感染症法におきましては、結核にかかわる措置に関し、人権を尊重した適正手続を拡充するとともに、入院勧告の規定など、感染症対策全般に共通する規定が適用されることになります。

 さらに、結核対策にとって固有に必要となる定期健康診断や通院医療、直接服薬確認療法、DOTSについて、感染症法において引き続き関係規定を設けるとともに、今般の改正により、疫学調査や動物の輸入に関する措置など、従来の結核予防法にない措置が新たに結核について行えるようになります。

 御指摘のとおり、結核は引き続き我が国において無視できない重要な感染症として十分な対策を講ずる必要があると認識しており、今回の法改正による措置も活用しながら、保健所や医療現場における周知も含め、結核対策の一層の推進を図ってまいりたいと考えております。

 また、国の責務としてガイドラインやマニュアル作りという御指摘もございました。現在のところ、ガイドラインの、特に多剤耐性結核菌等についてのガイドラインの作成が必要だと考えておりますけれども、厚生労働科学研究費において現在研究を進めているところでございます。また、多剤耐性結核治療の施設整備につきましても、平成十一年より多剤耐性結核専門医療機関整備事業を開始して、都道府県域を越えた広域圏拠点施設の整備を図っているところでございます。

 私も、結核予防法と感染症法のこの統合に当たりまして、特に結核の治療に長らく当たってこられた方から随分いろんな意見をお聞きしました。それで、彼らはやはり今後の運営を、一部の方は心配されておりますんで、よくよく現場がこれからどう変わっていくかということについても意見をよくお聞きしながら、適正な運用を図っていきたいと思っております。

 

○福島みずほ君 補助金の拡充など、是非よろしくお願いしますが、いかがですか。

 

○政府参考人(外口崇君) 結核対策についての補助金につきましては、患者さんの減、それから様々な要因により減少していることが事実関係としてございますけれども、やはりこれからの結核対策、特に外国人労働者とかホームレスの方々とか、そういったところに対してきめ細かく対応していくためにはやはり必要な予算というものがあると思いますので、予算の確保に努力していきたいと思っております。

 

○福島みずほ君 それはよろしくお願いいたします。

 法案第二条、基本理念にある人権の尊重には、患者だけでなく施設周辺の住民に対する人権尊重が含まれますか。