165-参-厚生労働委員会-4号 平成18年11月28日

 

平成十八年十一月二十八日(火曜日)

   午前十時開会

 

  出席者は左のとおり。

    委員長         鶴保 庸介君

    理 事

      阿部 正俊君  中村 博彦君  櫻井  充君  津田弥太郎君  浮島とも子君

    委 員

      岸  宏一君  清水嘉与子君  武見 敬三君  中島 眞人君  中原  爽君

      西島 英利君  藤井 基之君  足立 信也君  島田智哉子君  下田 敦子君

      森 ゆうこ君  柳澤 光美君  山本 孝史君  山本  保君  小池  晃君

      福島みずほ君

   国務大臣

       厚生労働大臣   柳澤 伯夫君

   副大臣

       厚生労働副大臣  石田 祝稔君

       厚生労働副大臣  武見 敬三君

   大臣政務官

       厚生労働大臣政務官       菅原 一秀君

   政府参考人

       内閣官房内閣審議官       山浦 耕志君

       警察庁警備局長  米村 敏朗君

       外務大臣官房地球規模課題審議官        鶴岡 公二君

       文部科学大臣官房審議官     辰野 裕一君

       文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少

       年総括官     西阪  昇君

       厚生労働大臣官房技術総括審議官        西山 正徳君

       厚生労働省医政局長       松谷有希雄君

       厚生労働省健康局長       外口  崇君

       厚生労働省医薬食品局長     高橋 直人君

       厚生労働省雇用均等・児童家庭局長       大谷 泰夫君

       厚生労働省保険局長       水田 邦雄君

    ─────────────

  本日の会議に付した案件

○政府参考人の出席要求に関する件

○感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に

 関する法律等の一部を改正する法律案(第百六

 十四回国会内閣提出、第百六十五回国会衆議院

 送付)

    ─────────────

 

○浮島とも子君 今後も課題にしっかりと取り組みながら、是非とも万全な手だてを講じていただきたいとお願いを申し上げたいと思います。しっかりした訓練を行ってこそ、やはり国民に対しても、安全、安心の面からでもしっかりしていただきたいと切にお願いをまずさせていただきたいと思います。

 そして次に、結核についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 日本は、結核の新規患者が年に三万人近く登録されるということなどから、結核の中程度の蔓延国と位置付けられてしまっております。我が国では、国内最大の感染症である結核に対して結核予防法によって個別の対策を進めてきたものの、欧米並みの患者数に減らすところまでは残念ながら至っておりません。

 政府として、このような我が国における結核の現状をどう認識しておられるのか。また、結核患者がなかなか減らない理由をどう分析されておられるのか、お伺いをいたします。

 

○政府参考人(外口崇君) 我が国では、昭和二十六年に制定された結核予防法を中心とした対策によりまして、戦後間もなくと比べて結核罹患率は飛躍的に改善されたところでありますが、依然として欧米先進国より罹患率が高い水準にあり、まだまだ十分な対策を講ずる必要があります。

 我が国の結核の罹患率が高い理由としては、これは幾つかの分析が専門家によってもなされておりますけれども、第一には、現在、急速な高齢化の進展に伴い、結核の蔓延が著しかった当時に感染を受けたと考えられる高齢者が多く再発しているということが一つあります。また、欧米では、十九世紀前半ごろ、いわゆる産業革命の時期に大流行を迎えた後で、十九世紀後半から徐々に鎮静化しているのに対して、日本では流行が始まるのが遅く、戦後まで大流行が続いていたと。このため、昭和二十六年当時の日本と米国の結核死亡率には当時で約六倍の格差が見られる等、こうしたことが現在も欧米先進諸国と比べて罹患状況が悪いことの原因の一つであるという分析もございます。

 いずれにいたしましても、このほかもまだ幾つか可能性としては、例えば最近の若年者に対する理解の問題でございますとか、それからあとは外国人の方とかホームレスの方の問題でございますとか、幾つか大事なポイントありますので、そういった点に十分留意しながら対策を進めていきたいと考えております。

 

○浮島とも子君 この結核予防法の、今回、感染症法への統合について次にはお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、結核予防法が廃止されることになって、結核予算、結核関連の予算が大幅に削減され、対策が後退してしまうのではないかという不安をお持ちの方がいらっしゃいます。

 一九七〇年代のアメリカでは、結核患者数が減少したということに伴い、結核関係予算も大幅に削減をされました。しかし、その後の外国人、ホームレス、そして受刑者といったハイリスクグループ、このグループにおける罹患率が増加してしまい、一九八五年には患者数が増加に転じてしまったという経緯がございます。米国政府は、すぐにこの結核対策予算を増額し、罹患率を減少さしてまいりましたけれども、一度対策を怠った代償はとても大きく、患者数の回復に費やした費用は、削除した結核対策を継続していた場合にかかわる費用を大きく上回ってしまったと言われております。

 こうした事例を見る限り、結核対策には長期的展望が必要であり、患者数の減少に応じた予算の削減は妥当ではありません。今後、結核対策を推進していくことに先立ち、まずは予算を従来どおりしっかりと確保することが重要になってくるかと思いますけれども、結核対策予算の確保に向けた大臣の御決意をまずお伺いをさしていただきたいと思います。

 また、国民、特に若い人の間では、結核は既に過去の病気であって自分には関係ないと思われている方がたくさんいらっしゃることも事実でございます。結核対策の第一歩として、まず結核とはどういった病気かということを知っていただく、こうしたことが必要になるのではないかと私は考えております。

 結核の知識の普及に向けた政府の取組、そして先ほどもお願いしましたこの結核予算の確保に向けた大臣の御決意をお伺いさしていただきたいと思います。

 

○国務大臣(柳澤伯夫君) 現行の結核予防法につきましては、これは国会決議でもそういうことを御指摘いただいたわけですけれども、特定の感染症の病名を冠した法律は差別、偏見の温床になりがちだということがございまして、今回、このような御指摘を踏まえて感染症予防法に統合しまして、人権の尊重の手続を拡充するなど、従来の対策に加えまして実効ある対策を講じようと、そういう考え方の下で改正法を御提案申し上げたところです。

 今、浮島委員御心配の予算の確保についてでございますけれども、御指摘のようなアメリカの例にもかんがみまして、この対策を講じる上で必要な予算の確保にはしっかりと努めてまいりたいと、このように考えております。

 また、御指摘の知識啓発普及でございますけれども、これについては全くお説のとおりでありまして、結核対策を推進するに当たりましては、国民一人一人が結核についての正しい知識を持つということが必要だと考えておりまして、今後とも引き続き、結核の発生動向に関する情報提供、あるいは地域における一般住民等に対する講習会やパンフレットの作成等を通じまして、結核に関する必要な普及啓発を怠りなく進めてまいりたいと、このように考えております。

 

○浮島とも子君 ありがとうございました。

 今大臣がおっしゃっていただいた実効ある対策、そしてしっかりとした予算確保をお願いしたいと思います。また、知識の普及、これが本当に大切だと思いますので、これにもしっかりと取り組んでいただきたいとお願いを申し上げさしていただきたいと思います。

 次に、医療機関におけるこの結核の院内感染についてお伺いをさしていただきたいと思います。

 医療施設は、既に結核菌に感染している高齢の患者さんと、未感染者が多い医療従事者が接する機会が多い場となっているため、集団感染が生じやすい環境となっております。医師や看護師だけではありません。伺ったところによりますと検査技師の結核罹患率が非常に高く、その率は医師や看護師に比べて約三倍から五倍になるとも言われております。

 結核罹患率が低下し、結核が昔に比べて一般的でなくなったということで、国民だけではなくて、医療従事者の結核に対する意識も低下してきてしまっているのかもしれません。こうしたことが患者の受診の遅れ、それに対して医師の診断の遅れにつながり、感染性の高い患者が放置される可能性を高める遠因となっているのではないでしょうか。

 このような事態を対処するために、結核感染予防の徹底を病院全体で行う必要があると考えますけれども、医療機関における結核感染は、現状どのようになっているのでしょうか。

 

○政府参考人(外口崇君) 近年、多くの薬剤に耐性を有する結核は世界的に大きな問題となっておりまして、治療をめぐって新しい課題も発生しており、多剤耐性結核菌に関する新薬開発の要請は大変高いものと考えております。地域で見れば、例えばアフリカでございますとか、それから東欧でございますとか、そういったところでは、やはりこの結核又は多剤耐性結核ということが大変深刻な問題となっております。

 多剤耐性菌への新薬の開発については耐性発現のメカニズムを含む基礎的、応用的研究を推進することが重要であり、こうした視点から厚生労働省としては厚生労働科学研究費補助金研究事業において多剤耐性菌の研究を進めてきているところでありますが、今後とも、結核をめぐる動向を注意深く見守りつつ、新薬開発に資する研究の推進等を図ってまいりたいと考えております。

 

○浮島とも子君 最近の結核の動向を見てみますと、高齢者、ホームレス、外国人労働者など、結核に関してハイリスクである集団がある程度特定ができるところでございます。

 その中で、次は高齢者の結核対策についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 日本の新規登録結核患者数の六割は六十歳以上の高齢者と言われております。高齢者は結核が蔓延していたころに結核菌に感染した方が多いため、年齢を重ね、体力そして免疫力が落ちてきたころに結核を発症するといった方が多くなってきております。既に結核菌に感染しているけれどもまだ発症をしていないといった潜伏感染をしている状態の高齢者を早く発見し、その潜伏している結核菌を管理そして治療をしていくことができれば結核患者数も減っていくのではないかと考えております。

 こうした潜伏感染をしている高齢者に対しては、現在どのような管理そして治療が行われているかについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 

○政府参考人(外口崇君) 現在、我が国におきましては、高齢者の結核患者の割合が非常に高く、社会への結核感染源ともなり得ることから、その予防対策が重要であります。

 高齢者の結核対策としては、従来より結核予防法に基づき六十五歳以上の高齢者を対象とした定期の健診が行われており、今般、感染症法と結核予防法統合後もこの定期健診の条文は改めて規定することとしております。今後とも、こうした定期健診を通じ早期発見に努め、発症後の早期の治療に結び付けることにより高齢者の結核に関する治療、管理に努めてまいりたいと考えております。

 

○浮島とも子君 この潜伏に関してはしっかりと、増やさないためにも管理、治療を今後しっかりとしていただきたいと思います。

 またもう一つ、ハイリスクグループである外国人の結核対策について次はお伺いをさせていただきたいと思います。

 外国人労働者の増加に伴って結核の新規登録に占める外国人の割合は全国的に年々増加をしているところでございます。外国人の結核患者は、言葉の壁によって意思疎通が困難であったり、文化、習慣が違っていたり、医療保険未加入であったりするなどのことから健康診断や治療へのアクセスがとてもしにくく、また治療や服薬を途中でやめてしまうといった傾向が多くあります。

 不法滞在して労働をしている外国人も中にはおります。こういった不法滞在外国人がわざわざ自ら医療機関や保健所に足を運ぶということはとても思えません。このような状況下では結核を発症している外国人労働者の発見が遅れ、排菌している結核患者が町を歩くことにもなりかねないと思います。さらに、結核治療において治療、服薬を中断するということは多剤耐性結核菌を出現させてしまうことにもつながるために、何としてもこうした事例は絶たなければならないと考えております。

 結核を我が国に持ち込ませない。そうするためには入国の段階で結核保持者を排除するといったことが大切な一つの対策として考えられるかと思いますけれども、移民が多いアメリカでは、移民申請者に対して胸部エックス線検査が課せられて、結核の疑いのある方に関してはツベルクリン反応検査を受けるように義務付けて入国の制限をしていると伺っております。

 そこで、我が国における外国人の入国に対しての検疫体制についてお伺いをしたいと思います。現在、外国人が入国する際に、特に就労ビザを持って入国される場合、検疫においては結核についてどういった扱いになっているのかお伺いをさせてください。

 

○政府参考人(外口崇君) 結核につきましては、現在、検疫法においては検疫感染症とはなっておりません。このため、検疫においては海外から国内に入ってくる方に対しては結核の罹患の有無に関する検査は特別行っておりません。

 なお、感染症法におきましては、当該者の国籍にかかわらず法の規定を運用することができます。御指摘の就労ビザを持って入国してきた者についても適用されますので、健康診断の実施など国内において感染症法に基づく措置というのは可能であります。

 なお、自治体の取組の中に、日本語学校を対象として健診を行う取組、あるいは外国人向けのパンフレットを作成して普及啓発する取組などが行われているところでありますので、こういった実情も見ながら対応してまいりたいと考えております。

 

○浮島とも子君 この件に関してはとても重要なことだと思いますので、今後ともしっかりとした対策を考えてやっていっていただきたいと切に強くお願いを申し上げさせていただきたいと思います。

 そして、最後になりますけれども、高齢者、外国人労働者に絞って今までちょっとお伺いをさせていただきましたけれども、結核対策というのは一律横並びではなくて、こうしたハイリスクを持った集団ごとに特性に応じたきめ細やかな対応が必要だと考えております。現在、高齢者等に対する結核予防総合事業、大都市における結核の治療率向上事業といった形で結核対策事業が進められているところでございますが、いずれも、高齢者という結核ハイリスク集団、大都市という結核ハイリスク環境に特化した事業でございます。最近の結核の動向を踏まえますと、こうした従来の事業に加えて、外国人労働者に特化したあるいは対策が必要ではないか、またホームレスについても大都市で一くくりにするのではなくてピンポイントでホームレス対策事業を立ち上げるのが必要ではないかと考えております。

 これからの結核対策はハイリスク集団ごとの特性に応じて進めていくべきと考えておりますけれども、御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

 

○副大臣(石田祝稔君) 高齢者は結核の罹患率が高くて、また所得の少ない外国人やホームレスの方など、経済的弱者は結核の治療を開始した場合それを中断をすると、こういうリスクが高いと考えられております。ですから、こうした罹患、発症のリスクの高い人に対して個別にしっかりと対応していくことが私は必要であると思っております。

 その対策としては、保健所等において服薬状況を確認しながら指導していくと、いわゆるDOTS、直接服薬確認療法、こういうことが大変効果的であるというふうに考えられております。DOTSについては、これをより強力に推進するために平成十六年に結核予防法を改正して所要の規定を整備したところでございますが、今回の改正につきましても感染症法の中で引き続き行うことといたしております。具体的には、患者の状況に応じて入院中は院内でDOTS、退院後は患者のリスクや生活形態、また地域の実情等に応じて外来、訪問、また連絡確認DOTS等を行ってまいりまして、終了後は治療成績の評価を行うと、こういうことも推進をしてまいりたいと思います。

 今後とも、先生の御心配なことにならないように、しっかりと必要な予算を確保しながらきめ細やかな結核対策を推進をしてまいりたいと考えております。

 

○浮島とも子君 ありがとうございました。

 結核対策は本当にきめ細やかなことが必要だと、対策が必要だと思いますので、是非政府としても一生懸命一丸となってこの対策に取り組んでいただきたいと思います。

 私の質問を終わります。ありがとうございました。

 

○政府参考人(外口崇君) これからの結核対策でございますけれども、やはり地域によっての差が大分出てきておりますので、地域の実情に応じて進めることが重要であると思います。確かに患者数が少ないと結核に対する意識が低くなって対策がおろそかになるおそれもあると思います。そういったこともありますし、それから、我が国においてはいまだ年間約三万人の結核患者が発生し、諸外国と比較しても大変高い状況にあるということであります。

 今後、こうしたことにかんがみまして、地域における結核対策をどうやって維持していくか、意識を下がらないようにしていくかということについては十分留意して、注意喚起の方法などいろいろと必要な対応に努めてまいりたいと思います。

 

○小池晃君 注意喚起だけじゃなくてしっかりお金も付けていただきたいと思いますが、一方で、その感染率、罹患率高い自治体をどうするのかという問題もあります。東京、大阪など高齢者、独居、ホームレス、外国人、ハイリスクグループを多く抱えているのが特徴です。

 私聞いたのでは、東京の台東区、ここは山谷があるわけですが、ここは百二十七名の患者がDOTSを受けている。ホームレスも多いですから、ホームレス対象の結核健診も行われています。なかなか健診率上がらないということなんです。治療中断が頻繁で、数年前には三名のホームレスが多剤耐性結核で亡くなっております。

 自治体としても力を入れてやろうというふうにしているんですが、一方で、台東区の実態を言うと、保健所はリストラされていて、浅草保健所がなくなって、台東区内二か所の保健所が一か所になっている。結果的に保健所の体制は、保健師が三名、看護師が一名。この体制で母子保健も含めて通常業務をこなしながら地域の結核対策やらなきゃいけない。大変厳しいと聞いているんですね。

 やはりその結核を本当に制圧していくということに本気で取り組むのであれば、こういう困難な地域にやはりしっかり体制をつくる。特にそのハイリスクグループ一人一人丁寧に対応するためには、やっぱり保健所に対する特別の加配なども含めて、これハイリスクの方が多い地域についてのこれまた特別の手だてが、きめ細かな手だてが必要ではないかと思いますが、その点はいかがですか。

 

○政府参考人(外口崇君) 議員御指摘のように、我が国の最近の結核の動向の中では、やはり大都市の問題が大きな課題となっております。例えば、人口十万人単位の新規登録結核患者数では、大阪市の結核罹患率五八・八は、最も低い長野県、一〇・七の五・五倍となっております。また、東京や兵庫といった大都市でも罹患率が高い状況にあります。

 この原因としては、結核に感染するリスクの高いグループが特に大都市部に多く存在することや、過去において大都市を中心に蔓延していたことの影響が残っていることなどがあるものと考えられております。このため、罹患率の高い地区においては特にDOTS事業を集中的に行うなど、地域の実情に応じた取組が必要であります。

 こうした対策が推進できるよう、私どもも取り組んでいきたいと考えております。

 

○小池晃君 大臣にお伺いしたいんですが、今までの議論を踏まえて、先ほども指摘ありましたけど、アメリカで八〇年代に結核が増えた理由というのは、これ、関心が低下したことと、患者数が減ったことで予算を削減した、その結果患者が増えたという歴史的事実があるわけですね。専門家の間でも、この轍を踏むなという声が上がっています。法律変えて、結核予防法は廃止されるけれども重要性は変わらないという、先ほどのそういう答弁ありましたけれども、やっぱり法律が廃止されることによって地方自治体当局者の関心も薄れるということも予想されるわけで、そういったことは絶対あっちゃいけないというふうに思うんですね。

 私は、結核対策は引き続き重要だと、法律では一歩も後退させないというのであれば、やはり予算を、これ、兆の単位の話じゃなくてまあ億の単位の話だと思いますが、これは政府の姿勢を示す上でも、やはり増額することを含めてしっかり対応すべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

 

○国務大臣(柳澤伯夫君) 結核がアメリカで一九八〇年代に非常に減少したと。そうして、予算が削減されたら、今度はあたかもそれに対する反発のように反転上昇してしまうと、こういうことが指摘をする向きが確かにございます。

 予算の削減だけだったかといえば、まあ移民の増加なぞの背景もあったというふうに伺っているわけでございますが、我が国においてもずうっと戦後、一九九八年ぐらいまでは下がってきたものが、それで少し我々も過去の感染症かというような気持ちになった途端というか、そういう時点からまた反転上昇の傾向がある。最近はちょっとそれがまた収まってきているという動きなんですけれども、何か、確かに結核があたかも、まあこれは言い過ぎかもしれないんですが、予算の動向を反映する感染症であるかのごとく、これを反映するというか、そういう動向が反映するということは非常にまあ皮肉なことだというふうに思います。

 したがいまして、私ども、そういうことのないように、先ほど来御意見が予算の充実のことについて各方面から政府の見解をただすという形で督励をいただいているわけですけれども、私どももその辺りの事情をよく踏まえて、これから予算あるいは人員等の確保について努めてまいりたいと、このように思っております。

 

○小池晃君 引き続き、結核病床の問題についてお聞きをしたいんですが、これは病床数は入院期間の短縮と並行して全国的に減少傾向にあります。民間は相当撤退して、国公立、公的病院に集約されてきております。一方で、やはり感染防止のための入院治療というのは必要不可欠であるし、移動中の感染リスクということを考えれば、そんなに遠くにあっちゃ困ると。やっぱり一定地域ごとになきゃいけない。

 その点でいうと、やはり今は、自治体にこのくらいはお願いしますみたいな、そういう基準しかないんですが、やはり二次医療圏ごとに最低病床数などの基準も設けて整備に努めていく必要はあるんじゃないかと思うんですが、この点、いかがですか。

 

○政府参考人(外口崇君) 平成十六年における結核病床の利用率は、病床数一万三千二百九十三床に対して四八・六%となっております。

 このことから、現時点で目標値を示す必要性は少ないものと考えておりますが、一方で、結核については、高齢者等の患者数が増加するなど、依然として厳しい状況にあります。

 こうした動向を踏まえると、この結核病床の扱いについては慎重に判断していく必要があると認識しております。

 

○小池晃君 満杯になっていちゃ困るわけですよ、これ性格からいって。やはり行って空いていなければいけない病床なわけですから、私は利用率だけでこれは増やす必要はないという結論を出すものではないと思います。まあ慎重に対応するということだったと思います。

 なぜその結核病床が減少してきたかということの最大の原因は、やっぱり不採算問題にある。私は、ある都内の結核病棟を持つ民間病院に昨年の収支聞きました。ここは結核病棟だけで、まあほかにも病棟あるんですが、結核病棟だけで九十一床。この結核病棟に限って収支を見ると、収入が昨年五億四百万円に対して支出が五億四千四百万円、差引き赤字が四千万円だというふうに聞いています。来年度はこれは病棟定数六十まで減らすんだけれども、引き続き同程度の赤字が見込まれるということでした。ここは利用率七六%という全国トップクラスの施設なんですが、それでもこれだけ赤字なんですね。

 このように、ほとんどもう病院側の持ち出しによって結核病棟は支えられているという、これが実態だと思います。しかし、不採算だからということで削減するわけにいかないということで、頑張って維持している。しかし、このままいくと、今後患者が減少していくと、採算面から一県一施設さえ維持できないのではないかということも考えられる。

 結核病学会は二〇〇三年に、結核撲滅前に結核病床の壊滅的崩壊が予想されると、こうしまして、診療報酬の抜本的増額を要望しています。診療報酬引上げはもちろんなんですが、診療報酬だけでは、これ稼働率の低下の問題もあるわけで、不採算要因も大きいわけですから、私は直接の財政的支援なども含めて結核病棟に対する支援という枠組みを考える必要があるのではないかというふうに思うんですが、その点いかがですか。

 

○政府参考人(外口崇君) 結核病床に対する診療報酬上の取扱いについては、現在、看護配置、看護師比率、平均在院日数その他の事項につき結核病棟入院基本料として評価するなど、結核医療の特性に応じ様々な評価が実施されているところであります。

 空き病床に対する財政措置については現在特段の措置を講じておりませんが、空床の問題につきましては、病床区分の見直しに対する御要望や感染の動向など様々な観点から、総合的に検討していく必要があると考えております。

 

○副大臣(武見敬三君) ただいまの御指摘でありますが、まず、平成十五年に母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法の制定によって、こうした母子家庭の就業支援、自立支援、これを更に充実させていくというのがまず大きな柱として確立し、充実させていくということであろうと思います。

 その上でこの一部支給停止の具体的内容についてでありますけれども、この児童扶養手当法について、障害を有する方や三歳未満の児童の養育者に対して配慮するよう定められております。平成十四年改正時の附帯決議においても、今後、子育て・生活支援策、就労支援策、養育費確保策、経済的支援策等の進展状況及び離婚の状況などを十分踏まえて決めることとされているところであることから、今後全国母子世帯等調査の結果などを十分踏まえつつ検討を進めたいというふうに考えております。

 

○福島みずほ君 削減は決まっているのですが、よく言われるように、児童扶養手当が母子家庭の命綱ということが言われております。母子家庭の年収が全く上がっていない、非正規雇用が拡大をしている、女性の貧困の問題、母子家庭のいわゆる貧困の問題などを踏まえて、これについては是非見直し、あるいは内容について検討していただきたいと強く申し上げます。

 結核予防法が感染症法に統合されるに当たって、三十日ごとの診査会で入院日数が決められますが、一律的な対応ではなく、患者さんのそれぞれの事情を考慮した対応が必要ではないか。例えば、雪深い地域で冬の時期に入院されたいわゆる独居老人やホームレスの人が退院してその後の治療の継続をチェックできるのかなどの問題があります。この点はいかがでしょうか。

 

○政府参考人(外口崇君) 今回の改正後における結核にかかわる入院につきましては、人権を尊重しつつ、客観的な検査結果等により入院日数が決められるものと考えております。

 また、独居老人やホームレスの方など社会的弱者の方々については、結核の罹患率が高く、また、その治療を開始した場合、それを中断するリスクが高いことも考えられております。このため、保健所等において服薬状況を確認しながら指導をする直接服薬確認療法、いわゆるDOTSを推進することがその対策として重要であります。

 退院後における治療の継続に関しては、患者さんのリスクや生活形態、地域の実情等に応じて様々な形態のDOTSを実施することとしており、地域の医療機関とも連携しつつ、こうした退院後の地域DOTSを着実に進めてまいることによって対応したいと考えております。

 

○福島みずほ君 結核の診療報酬が極めて低い中で、結核病床の稼働率が低いことが病院運営にとっては非常に厳しい現状にあります。しかし、結核病棟を都道府県ごとに確保しておく中で、負担は病棟を持つ病院の負担となっております。こうした問題をどのように改善できるのか。

 また、複数疾患を持っている患者さんが非常に増えている中で、結核であれば結核病棟を保有する病院にしか入院できないとなっております。しかし、一般病院でも陰圧管理が可能な病室での受入れができるように国として取り組む必要があるのではないでしょうか。

 

○政府参考人(外口崇君) 平成十六年における結核病床の利用率は四八・六%となっており、結核病床の空き病床について様々な御要望があることも承知しております。

 しかしながら、一方で、結核については高齢者等の患者数が増加するなど依然として厳しい状況にありますので、こうした動向を踏まえると、地域における結核対策を確保する観点から、結核病床の扱いについては慎重に判断をする必要があると認識しております。

 現在、空き病床に対する財政措置については特段の措置を講じておりませんが、空床問題については、病床区分の見直しに対する御要望や感染の動向など、総合的な観点から検討していく必要があると考えております。

 また、議員御指摘の複数疾患を持つ結核患者の入院についてでございますが、これは結核患者収容モデル事業というのをやっておりまして、その実施要領に基づきまして、合併症を有する結核患者等に対して、一定の条件の下で、一般病床又は精神病床において収容治療をするためのより適切な基準を策定するべくモデル事業を行っております。

 今後、当該モデル事業による実施状況を踏まえ、中長期的な観点から一般病床又は精神病床において結核の患者さんを収容治療するためのより適切な基準の策定に向けた検討を行ってまいりたいと考えております。