165-衆-厚生労働委員会-6号 平成18年11月10日

 

平成十八年十一月十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 大村 秀章君

   理事 鴨下 一郎君 理事 宮澤 洋一君

   理事 吉野 正芳君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君   石崎  岳君    加藤 勝信君

      川条 志嘉君    木原 誠二君   木村 義雄君    岸田 文雄君

      清水鴻一郎君    菅原 一秀君   杉村 太蔵君    高鳥 修一君

      戸井田とおる君   西川 京子君   林   潤君    福岡 資麿君

      馬渡 龍治君    松野 博一君   松本  純君    松本 洋平君

      三ッ矢憲生君    御法川信英君   内山  晃君    大島  敦君

      菊田真紀子君    郡  和子君   園田 康博君    田名部匡代君

      筒井 信隆君    細川 律夫君   柚木 道義君    坂口  力君

      古屋 範子君    高橋千鶴子君   阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山浦 耕志君

   (厚生労働省健康局長)  外口  崇君

   (厚生労働省医薬食品局長)            高橋 直人君

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       藤崎 清道君

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   (環境省自然環境局長)  冨岡  悟君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十四回国会閣法第七六号)

     ――――◇―――――

 

○外口政府参考人 平成十六年における結核病床の利用率は、病床数一万三千二百九十三床に対して四八・六%となっております。

 しかしながら、結核については、高齢者等の患者数が増加するなど依然として厳しい状況にあります。こうした動向を踏まえると、結核病床の扱いについては慎重に判断していく必要があると思います。

 現在、厚生労働省として、空き病床に対する財政措置は特段講じておりませんが、空床問題については、病床区分の見直しに対する御要望や感染の動向など、総合的な観点から検討して、政策が後退しないようにということを十分踏まえて考えていく必要があると考えております。

 

○菊田委員 感染症のための空き病床には運営費補助金が出ているはずですが、結核病床に対するものはないわけでございます。地方自治体の裁量、あるいは結核対策に熱心に取り組んできたお医者さんの自負心や病院のやりくりだけに任せておいて本当によいのでしょうか。ぜひとも前向きに検討していただきたいと思います。

 続きまして、地域格差拡大についてお伺いしますが、地方自治体はそれぞれ懸命に頑張っておりますけれども、地域格差が拡大しているようです。東京や大阪など大都市圏は、人が多いですし、住所不定者やホームレスなど社会的弱者も多く、罹患率が高いと言われています。

 東京の中でも極めて患者が多い地区、あるいは大阪の中でも罹患率が高いところは既に特定されているわけですが、ここにどう対策を講じていくんでしょうか。地域を特定したピンポイントの対策も必要ではないかと考えます。地方自治体の取り組みだけに任せず、国が主導して手だてを講ずるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 

○外口政府参考人 我が国における結核の罹患率の地域間格差は、やや縮小はしているものの依然として大きく、罹患率の最も高い大阪市の結核罹患率は、最も低い長野県の約五・五倍となっております。大阪を初め、東京、兵庫の大都市を中心に結核の罹患率が高い状況であります。

 この原因としては、結核に感染するリスクの高いグループが特に大都市部に多く存在することや、過去において大都市を中心に蔓延していたことの影響が残っていることなどがあるものと考えられます。

 地域格差の対策としては、結核対策特別促進事業、これは地方自治体に対する国庫補助事業でございますけれども、こういったものを活用し、特に罹患率の高い地区においては、治療成功率向上のためのDOTS事業を実施するなど、地域の実情に応じた取り組みを行っているところであります。

 

○菊田委員 そして、その事業の結果、現実に、罹患率の高い地域ではこれがだんだんと改善されておられますか。

 

○外口政府参考人 リスクグループの多い地域におきましては、そのリスクグループ自体がかなり流動性がございます。そして、やはりこれから特に対策を講じていく必要があるのは、例えばホームレスの方ですとかそれから外国人の方ですとか、いわゆる今までの結核対策で割と見過ごされていた部分でございます。やはり、こういったところをきめ細かく対応して、例えば、普通の結核対策じゃなくてDOTS事業等を行いながら、あるいは外国人向けのわかりやすいパンフレットとか、そういったものも活用しながらきめ細かくやっていく必要があると思っております。

 これは、ではどのぐらいうまくいったかというのが、流動性があるものですから評価がなかなか難しいわけでございますけれども、やはり、そういったそれぞれの大都市の現場の担当者の御意見を伺いながら、国としてもできる支援を行っていきたいと思っております。

 

○菊田委員 まさに、ホームレスの方あるいは外国人に対する対策をしっかりと行っていき、そして、そこが改善しているのかどうなのか、今の政策で不十分であるのであればもっとほかにどういう手当てができるのかどうか、ここを真剣に対策を講じていかないと、私はなかなか、大変難しいとは思いますけれども、改善していかないというふうに思っています。

 今、外国人のお話がありましたけれども、今後労働市場の開放がより一層進めば、さらに大きな問題になる可能性があるわけですが、外国人結核患者への対応はどうなっているのか、お伺いしたいと思います。

 在留資格者はまだしも、全国を転々とする外国人不法労働者が結核にかかったとして、本当に彼らが進んで治療に通うんでしょうか。特に、長期にわたって服薬管理しなければならないDOTSを根気よく受け入れるんだろうか、大変危惧されるわけですが、現状についてお聞きしたいと思います。

 

○外口政府参考人 現行の結核予防法や改正後の感染症法には国籍条項はありません。外国人の方も当然この結核対策の対象となっていただいております。

 厚生労働省におきましては、先ほどから申し上げております結核対策特別促進事業等を通じまして、各自治体の地域の実情に応じた外国人対策を支援しておるところであります。

 具体的に行われている対策としては、例えば、結核健診を受診する機会の少ない外国人に対する健康診断事業、これは、例えば日本語学校等に結核検診車が行って健診を受けていただくとかいうのが幾つかの自治体で行われております。また、外国語のパンフレットを利用した正しい知識の普及啓発等も実施されておるところでございます。

 今、二万八千人、新規に結核になられる方がおられますけれども、外国人の方が今千人弱ぐらいおられると思います。そういった方への対応を今後ともきめ細かく考えていきたいと思います。

 

○菊田委員 私が心配しているのは、日本語学校に通ってくれたり、あるいは役所に足を運んだり、外国人用のパンフレットを読んでくれる外国人というのは心配要らないと思うんですね。

 そうではなくて、そうじゃない全国を転々としているような方々あるいは不法就労の方々、こういう外国人が結核を持った場合にどのような影響が出るのかということでございまして、ここに具体的な対策を講じていかないと罹患率は決してよくならないということを厚生労働省ももちろん御承知であると思いますけれども、そこにぜひ知恵を絞っていただきたいというふうに思います。

 時間が大変少なくなってまいりましたが、次に、法律の第四条に、国民の責務として、国民が、感染症に関して正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、感染症の患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならないと明記されているが、現状では全く不十分だと言わざるを得ないと私は思います。今後どのように取り組んでいくのか、お聞きしたいと思います。

 日本では、あるセンセーショナルな情報、例えば台湾人の旅行客がSARSを発症したなどという場合、日本国全体がパニックになるくらい、国民がその情報に翻弄されます。SARS情報が流れた際にマスクが売り切れになったり、O157のときにはかいわれ大根の不買行動になったり、偏ったメディアに翻弄されない、冷静で確かな判断が必要だと思いますが、政府が国民に向けて確実な情報をタイムリーに出していないということを指摘させていただきながら、この質問をさせていただきたいと思います。いかがでしょうか。

 

○外口政府参考人 感染症法においては、第四条で、国民の責務として、感染症に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めること、感染症の患者等の人権が損なわれることがないようにすることを規定しているところであります。これは、第一条の目的及び第二条の基本理念で示した感染症対策の基本的考え方に基づき、感染症対策において国民が果たすべき役割について明らかにするものであります。さらに、国及び地方公共団体には、正しい知識の普及に努め、感染症の患者等の人権を保護しなければならないとされており、必要な対応が求められているところであります。

 このため、感染症法の規定として、入院等に当たっての人権への配慮、患者の情報の漏えいに対する罰則等を設けるとともに、厚生労働省としては、ホームページなどさまざまな機会を通じて感染症に関する情報を提供しながら、国民がその責務を果たせるよう引き続き努めてまいりたいと考えております。