164-参-国土交通委員会-21号 平成18年06月01日
平成十八年六月一日(木曜日)
午前十時二分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 羽田雄一郎君
理 事
伊達 忠一君 脇 雅史君 山下八洲夫君 西田 実仁君
委 員
市川 一朗君 太田 豊秋君 小池 正勝君 末松 信介君
田村 公平君 中島 眞人君 藤野 公孝君 松村 龍二君
吉田 博美君 加藤 敏幸君 北澤 俊美君 輿石 東君
佐藤 雄平君 田名部匡省君 前田 武志君 山本 香苗君
小林美恵子君 渕上 貞雄君
国務大臣
国土交通大臣 北側 一雄君
副大臣
国土交通副大臣 江崎 鐵磨君
国土交通副大臣 松村 龍二君
大臣政務官
国土交通大臣政
務官 吉田 博美君
事務局側
常任委員会専門
員 伊原江太郎君
政府参考人
林野庁林政部長 石島 一郎君
国土交通大臣官
房技術審議官 中島 威夫君
国土交通省住宅
局長 山本繁太郎君
環境大臣官房審
議官 桜井 康好君
参考人
明治大学大学院教授 青山やすし君
東洋大学工学部教授 内田 雄造君
慶應義塾大学法科大学院教授 松尾 弘君
国民の住まいを守る全国連絡会代表幹事 坂庭 国晴君
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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○住生活基本法案(内閣提出、衆議院送付)
○政府参考人の出席要求に関する件
○建築物の安全性の確保を図るための建築基準法
等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院
送付)
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○参考人(内田雄造君) 内田雄造でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私は東洋大学工学部の建築学科の教員でございまして、大学ではまちづくりとか住宅計画を専攻しております。また、中越地震の被災地であります旧山古志村の復興住宅の計画を取りまとめた役割を担いました。
皆様のお手元に、一応、住生活基本法案をめぐってという私のレジュメをお届けしてあるかと思いますけれども、このレジュメに沿いましてお話を申し上げたいと思います。
私の住宅政策に関する基本的な立場は、国民の居住の権利、英語で言いますとハウジングライツですけれども、を重視したいということでございます。居住の権利を保障し、あるいは豊かな住生活を保障するために何をするかということになりますと、良質な住宅ストック、良好な居住環境を形成し居住水準を確保する、市場メカニズムを重視し住宅市場の環境を整備する、住宅セーフティーネットを構築すると。これは社会資本整備審議会の答申にもうたわれていましたけれども、私もこういうふうに思います。
そういう立場で本法案に対して若干のコメントをしたいと思うわけでございますけれども、一つは、私は市場メカニズムあるいはセーフティーネットを非常に重視する立場でございますけれども、この市場メカニズムやセーフティーネットの前提となる居住のイメージが弱いんではないかというふうに感じます。
それから、全体を通して見ますと、市場メカニズムの重視あるいは住宅の質の確保、これは必要なことだと思うんですけれども、配慮がなされておりますが、セーフティーネットの構築への配慮はいささか不十分ではないかというふうに思います。
私自身は、生活者の視点に立って、憲法二十五条を受けて、いわゆる生存権の保障を受けて居住の権利を明記した方がよいというふうに考えております。ただ、セーフティーネットとしては、公共賃貸住宅供給に特化する必要はないと、余り絶対化しないで幅広い家賃補助を考えた方がいいんじゃないかと。
私は、昨年の四月に衆議院の国土交通委員会でこの問題に関しまして意見陳述を行いました。現行の公営住宅制度はいささか機能不全に陥っているんじゃないかということを申し上げて、抜本的な改革を訴えたわけです。
それから、本法案は、借地借家法とか生活保護法などの他の官庁が主管する法案とのすり合わせが若干不十分じゃないかという気がいたします。
それから、最後にですけれども、本法案は、従来から検討されてきた基本法、これは長い歴史を持っているわけですけれども、住居法あるいは住宅基本法と称されておりましたけれども、いささか内容を異にしているんじゃないかと、現実的には一種のこれは計画法ではないかという感じは持ちます。
そういうことを踏まえまして、この新しい法案及び住居法に関する議論を少し整理してみたいというふうに思います。
私たちの分野では、住居法と建築基準法は次のように理解されてきました。住居法というのは、一人一室など居住の質を規定している法律であると、それに対して建築基準法というのは、耐震性とか耐火性など住宅を含む建物の質、最低限の質でございますけれども、を規定してきたというふうに理解されています。今日、住宅の品質とか性能とか新しい問題が出ておりますので、必ずしもこのような二つの区分が十分だとは思いませんけれども、一つの流れとして御理解いただければと思います。
それから、国交省のこの法案上程の経緯によりますと、住宅や居住をめぐる状況の変化があると。住宅をめぐっては量から質へと。あるいは良好な住宅ストックの形成と活用がテーマだと。あるいは住環境の質がいよいよ問われていると。私はこれに関しましては全面的に賛成でございます。ただ一つ申し上げたいのは、相変わらず国民の居住への不満あるいは不安が非常に根強いということを強調したいと思います。
それから、レジュメの三に移りますけれども、住宅建設計画法が今回この新法案が通りますと廃止されるわけでございます。一九五〇年代に形作られましたいわゆる戦後の住宅政策の三本の柱、公営住宅制度、住宅金融公庫制度、公団住宅制度は、住宅金融公庫は廃止されますし、公団も民営化を含めて大きく変化しておると思います。そういう前提の中で、現在の住宅建設計画法の住宅供給計画のフレームというのは既にでき得なくなっているということを指摘したいと思います。にもかかわらず、ある種の計画法はどうしても必要なわけで、この住生活基本法はその役割を負っていると。しかも、市場メカニズムが充実している結果、アウトカム目標というふうななかなか難しい目標を設定しているわけでございます。
少し住居法の今までの経緯を振り返ってみたいと思います。
大正七年に内務省の救済事業調査会、これは調査会と申しますけれども、当時、社会政策を取り扱う内務省の審議会でした。多分唯一の審議会だったと思います。その審議会において小住宅改良要綱がなされるわけですけれども、その中でイギリスの住居法を、ハウジングアクトを随分研究したと思われます。イギリスの住居法というのは、一八三二年ですかね、公衆衛生法以来、労働者住居法とか長い歴史を持っていて、十九世紀の半ばにほぼ骨組みができるわけでございますけれども、それを随分意識したと思います。それから、昭和十六年には内務省系の財団法人である同潤会が住居法案要綱を作成しております。
戦後も、実は建設省内部でも何回もこの住居法を作るという議論はありましたし、あるいは住宅宅地審議会、現在の社会資本整備審議会の前身ですけれども、住宅宅地審議会で検討がなされているわけです。
あるいは国会に対しても、公明党の住宅基本法、旧社会党の住宅保障法、旧民社党の居住基本法が、党派によっては数回にわたって上程されているということがございます。
じゃ、その具体的な住居法の内容はどういうものだったかといいますと、当時イギリスの住居法がモデルになったと思うんですね。このイギリスの当時のハウジングアクトでは基準が明快に定められておりまして、この基準以下の住宅はアンフィット・フォー・ヒューマン・ハビテーションという形で、地方自治体が居住禁止を命ずることができるという内容でございました。居住禁止を命ぜられるということは、じゃ住み替え措置をどうするのか、あるいは融資システムをどうするのか、公営住宅をどうするのかなんていうことが裏に整備されていたわけでございます。
日本における住居法の議論というのは、このイギリスのを参考にして、居住の権利を認め、これは大体認められておったと思います。その上で、住居にかかわる最低基準のレベルをどこに設定するか、あるいは最低基準の拘束力をどう考えるか、あるいは国や自治体にどういう責務を負わせるかということで議論が分かれたわけでございます。現行の住宅建設計画法では最低居住水準と誘導居住水準と二つの水準があります。それで、残念なことに、その最低居住水準も余り拘束力はないという状況でございます。
それから、諸外国の事例を見ますと、アメリカではアフォーダブル・ハウジング・アクトがございます。これは、アフォーダブルというのは居住水準とか住宅水準、あるいは特に住居費が適正だと、取得しやすいという意味でございますけれども、適正な住宅取得への支援をどうやるかということがこの法案の内容でございます。
それから、二〇〇三年に韓国で住宅法が作られておりますけれども、この住宅法では、最低住居水準を明示して、その水準以下の世帯に対して優先的な支援を明示しているわけでございます。
私は、このような住居法をめぐる歴史とかあるいは諸外国の事例を基本法の役割として尊重する必要があるんじゃないかというふうに思っております。
では、住生活基本法はセーフティーネットとして十分に機能するかどうかという問題でございますけれども、多分国交省としては居住水準などは個別法で規定するというスタンスだというふうに考えます。ただ、今日、最低居住水準未満の世帯数は約二百万、それから公営住宅の入居基準を満たしながら民間賃貸住宅に住んでいる人が百五十から二百万ぐらいと推定されます。これは旧基準によりますけれども、そういう状態です。そうしますと、個別法ではうまく対応できていない、あるいは個別法の谷間に陥っている国民が多数存在するということだと思います。どの層をセーフティーネットの対象として、どんな施策で対応するのか、それを是非基本法で定めていただきたいと考えるわけでございます。
ただ、私は、セーフティーネットの場合には、幅広い家賃補助とか公共賃貸の供給、私は今の公営住宅制度は見直しが不可欠だと思っているわけでございますけれども、あるいはグループホームとか、多様な手段を考えたいと思います。
それと、今回の法律を拝見しますと、基礎自治体の役割が非常に不明快だというふうに思います。住宅行政というのは自治事務でありますし、もっと基礎自治体に活躍してほしいというふうに思うわけでございます。
そういう立場から、住宅にかかわる個別法を超えて、住生活基本法の備えるべき構成要素を考えたいと思います。これは、この内容に置き換えよということではなくて、こういう問題が起きているんじゃないかという指摘でございます。
一つは、理念としては、居住の権利を保障したいと。目標としては、最低居住水準、住宅水準、住環境水準、適正な住居費の確保などを挙げたいと。その上で、国、自治体、民間企業、国民の責務と役割を挙げたいと思います。居住水準、住宅水準、あるいは住環境基準などもここで述べられておく必要があると思いますし、適正な住居費の負担についても言及があってしかるべきかというふうに考えます。
その上で、これが重要だと思うんですけれども、最低居住水準以下の世帯などに対してはどういうふうな支援をするのかということで、施策体系を明示する必要があるんじゃないかというふうに思います。それから、現在の外国人居住の問題、ホームレスの問題を考えますと、居住差別の禁止もうたっておきたいと思います。
以上が私の基本的な住生活基本法に対する意見でございます。
先ほど申しましたように、私は市場メカニズムを重視する立場であります。市場の環境整備が必要だと思うんですけれども、特に住宅に関する情報の開示が必要だというふうに思っております。例えば、中古のマンションの売買の問題を考えたいと思うんですけれども、現在中古のマンションを売買する場合、非常に情報が不備だというふうに感じます。例えば設計図書。その後改築とか増改築があった場合には、改修等の履歴がちゃんと明示される必要があると。それから、住宅管理組合の規約。それから、中長期の修繕計画と費用の積立ての実態、まあ通帳の写しか何かになるのかと思いますけれども。さらに、住宅の品質や環境性能、これは今度の法律では随分重視されていると思いますけれども、そういうふうな情報が購入希望者に対して開示されることによって安心な住宅が手に入れることができるというふうに思います。
以上で終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。
○小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。
今日は、四人の参考人の皆さん、貴重な御意見をいただきまして本当にありがとうございます。
私どもは、この住生活基本法案に関しまして、やはり国民のいわゆる居住の権利を明確にするということが非常に大事なことだというふうに考えております。例えば、国民の住まいに対する権利の規定、目指すべき居住また住環境の水準の法定化、適切な住居費の負担の設定、公的住宅の質量ともの改善の明確化、国民の権利を守るための国や自治体や住宅関連事業者、金融機関などの責務の明確化などが本当に必要ではないかというふうに考えてまいりました。
先ほどのお話の中にもイスタンブール宣言のお話がございましたけれども、この日本が承認をしていますイスタンブール宣言の中にも、国民が適切な住まいに住む権利ということで、家族のための最小限の広さの確保、負担し得る居住費、強制立ち退き、プライバシーの侵害のないことなどをうたっているわけでございます。
そこで、私は、内田参考人、それから松尾参考人にお伺いしたいと思いますけれども、いわゆるこの宣言から見てこの法案をどのようにごらんになるでしょうか。
○参考人(内田雄造君) 私は、アジア居住のネットワークのメンバーでございまして、私たちとしてはそのイスタンブールのに積極的に参加したグループでございます。ですから、私は居住の権利ということはちゃんと基本的に主張していきたいと思っています。
ただ、日本の場合には居住の権利というのはかなり幅広くて、豊かな住生活を営む、そういうことも含めて居住の権利としていきたいと。エビクション、要するに強制撤去の問題とか、それから最低の居住の問題だけではなくて、ある程度幅を広く考えたいというのが一点でございます。
それからもう一つは、居住の権利を主張するということが、同時に公営賃貸住宅を造るということには余り直結させない方がいいと。ある程度幅を広く、その居住の権利をどういうふうに、これだけ発達した資本主義国の場合、市場メカニズムをどう活用するかなんということもきちんと考えた方がいいんじゃないかという立場でございます。
以上でございます。
○渕上貞雄君 次に、内田参考人にお伺いをいたしますが、住宅に対する国民の意識というのは、私は持家というのが非常に強いと思うんですね。そのときに公的住宅が果たす役割というものは一体どのような役割というものを持たなければならないのかというのが一つと、これまで国が進めてきた住宅政策についての問題点は一体どこにあったのかと、あるのかと。
あと加えて、憲法二十五条の基本的な権利のところについて、やはりもう少し私どもはしっかりとした方針をこの基本法の中で示していくことが大事だと思っているんですが、そこの部分が欠落しているというのは一体どういうことなのでしょうか。その辺をお伺いします。
○参考人(内田雄造君) 今の御質問というのは非常に難しいところがありまして、公的住宅の果たしてきた役割というのは、一つはモデルとしての役割があると思います。あるべき今後の日本の都市居住の在り方を提示するということと、もう一つは、一番生活的に苦しい方に対してちゃんと手を差し伸べると。ただ、それが結局、先ほどトランポリン効果という話がありましたけれども、ソーシャルな意味でのインクルージョンにならないで、要するに公営住宅層というのが一種の、ずっとそのまま同じ階層が続いていくと、あるいは一種の既得権みたいなことになっているということは問題があったというふうに思います。
それからもう一つは、最後、私はやはりこれは、ちょっとこの住生活基本法案というのは、今までありました住宅建設計画法のニューバージョンみたいなところが強くて、今まで私たちの国で話されてきた、住生活がどうあるべきかと、あるいは基本法的な役割はどうあるべきかという点が弱いと思います。そういう点をもう少しちゃんと、特に、先ほどおっしゃったように、私も都心回帰なんかはどんどん増えてくると思いますし、都心というのはインフラが非常に優れていると思うんですね。そういう中で、一方で木造密集の問題もありますし、中高層のマンションの売買とか建て替えの問題もあります。そういうことも含めて、どういうふうな政策体系を持つかということを基本法で定めていただきたいと。あるいは、住宅に困窮している人に対してどう手を差し伸べるかということをもう少しはっきり出していただきたいと思います。
以上です。