164-参-予算委員会-16号 平成18年03月24日
平成十八年三月二十四日(金曜日)
午前九時開会
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本日の会議に付した案件
○委嘱審査報告書に関する件
○平成十八年度一般会計予算(内閣提出、衆議院
送付)
○平成十八年度特別会計予算(内閣提出、衆議院
送付)
○平成十八年度政府関係機関予算(内閣提出、衆
議院送付)
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○辻泰弘君
そこで、次の問題に移らせていただきます。格差の問題でございます。
それで、総理は三月二日の衆議院予算委員会で、どうしても自分一人で立ち向かうことができない方々に対しては、しっかりとしたセーフティーネットなり社会保障制度を整備していくことが政治として極めて重要なことだとおっしゃいました。
総理がおっしゃるセーフティーネットとは何でしょうか、お伺いしたいと思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは、社会保障制度の全般であります。年金にしても、医療にしても、また生活保護にしても、これはセーフティーネットの一環であります。
どうしても一人で立ち向かっていけない、今ホームレスの方、住むうちがないという方に対しても、公的機関に行けば必ずそのような住める場所、生活手段を提供できるセーフティーネットは整えられております。そういう面においても、私は、日本社会というのはセーフティーネットというものに対して配慮された社会であるし、このどうしても収入もない、一人で立ち向かっていけない人に対して一定の生活ができるという保障機能、これは大変重要なセーフティーネットだと思っております。
○辻泰弘君 そういたしますと、今非常に注目されている格差の拡大というのがございます。その点についての総理の御見解、よく承知しておりますけれども、そういった格差が拡大していかない一つの手だてとして、やはりそういった社会保障、セーフティーネットが極めて重要であると、そういうことの認識でいいわけですね。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) そのどうしても一人で所得を得る道がない、また生活できない人に対しては、一定の生活できる基盤は整えていく。さらに、能力のある人、意欲のある人、こういう人に対しては、できるだけチャンスを提供していくと、そういう道をたくさんつくっておく。
そういう人たちが活躍することによって税収も増えてくる。みんなを、強い人がいれば弱い人を守ることができる。そういう能力のある人、意欲のある人はどんどんどんどん伸ばしていくということによって、そうでない人を、強い者ができるだけより弱い者に対して支え合っていこうという、そういう社会をつくることが大事ではないでしょうか。
○辻泰弘君 それで、ちょっとパネルを見て、(資料提示)ちょっと手前みそになって恐縮ですけど、実は五年前に、小泉内閣が発足したのが平成十三年の四月の二十六日でございました。その二週間後に、私は実は当時候補者の立場でしたけど、どう言っていたかというのを地元の神戸版で見たんですけども、「小泉純一郎氏の改革は競争、効率が重視され、経済の視点が強すぎる。政治の目標は国民の生活を安定させること。」ということを総理が内閣発足後二週間後に申しました。そして、一か月後の五月二十六日には、「小泉内閣の改革は日本の社会の格差を広げる改革だ。」と、下のところですね、そういうふうに私は申しておりました。
それは、なぜそう言って、なぜそのようなことを申し上げていたかといいますと、例えば総理の一番初めの所信表明演説のときは、競争的な経済システムをつくると、それと同時に、経済、社会全般にわたる徹底的な規制改革を推進する、社会的規制も徹底的に緩和するんだと、こういったトーンがあったと。また、社会保障においても、自助と自律の精神を基本とするということで、正に競争、効率、自己責任のその論理が貫徹される姿勢だったがゆえに、そのような私の主張であったわけでございます。
それで、私、実はそのような問題意識の下に国会に参りまして、一番初めの厚生労働委員会でも格差の問題を申しました。
それから、二年前に初めて総理に御質問申し上げたんですけど、そのときも実は格差の問題について御質問申し上げたんでございます。そのときに総理に、所得格差の拡大の視点を持って政策に取り組んでほしいということを平成十六年二月五日に申し上げてるんです。そのときに私が引用しましたのが、今そこに、お手元にございます、ちょっと古いですけれども、十年前の経済白書でございます。一九九六年度の経済白書でございます。ちょっと読みますと、
戦後の日本は所得・資産格差が比較的小さく、それが社会的安定の維持や階層分化の防止に役立ってきたと評価できる。何よりも、所得・資産格差が固定していないことが、人々の意欲を引き出し、また能力の発揮を妨げないという意味で、経済の活力を高めたといえるであろう。
もちろん、やみ雲に所得・資産格差を是正することが唯一の目標となるわけではないが、できる限り個人の責に帰すことのできない所得・資産格差を発生させないことが、公平性の点からも、また、社会の活力という点からも重要なことと考えられる。こうした観点から、所得・資産格差の動向を注視していく必要があろう。
と、十年前の経済白書にこのように出ていたわけでございます。そして、ここで、「改革が展望を切り開く」と、こういうサブタイトルになっているわけですが。
私は、改革というものはこの視点を持って進めるべきものであると、改革は必要であるけれどもこの視点を併せ持って進めるものであったと、そのように思うわけです。結論的に言いますと、総理の改革はこの視点が欠けていたんじゃないか、その点を私は私なりの結論と思っているわけですが。
そこで、総理にお伺いしたいのは、実は二年前に質問したときに私、総理はどうおっしゃったか。実は今と同じようなトーンでおっしゃってます。その点については一貫していると思います。一つは、努力した人が報われ、成果が得られることが必要だとおっしゃいました。これは、今風に言えば勝ち組対策ということだと思います。そして規制緩和をされ、官から民へということもおっしゃってやられた、そのことについての一定の評価はあるかもしれません。
しかし、後者の、もう一つおっしゃっている、自らの力では成果を上げることのできない方に対して社会保障として対応することが必要と、これはさっき言った三月二日の衆議院のときも同じようなトーンでおっしゃっていて、その点は一貫していますが。まあ、正にこれが今で言えば負け組対策というんでしょうか、あるいはセーフティーネットという部分だと思います。
振り返って、中小企業金融だとか政府保証だとかかなり大きくやられたところもありますし、個人のレベルでも未払賃金の立替払制度の若干の拡充というのが平成十四年一月にありましたけども、そんなこともありました。
しかし、やはり振り返ってみて、個人に着目したセーフティーネットというものが、私は非常にお寒いものでしかなかった、新たに整備したものはなかったと、このように私は思うんです。
総理は、自らの力で成果を上げることができない方に対して社会保障として対応することが必要、セーフティーネットを張ることが必要だとおっしゃってきたわけですけれども、この五年間において総理として、セーフティーネットとして何をやったのか。将来のことじゃありませんよ。この改革期間中に、セーフティーネットから落ちるような可能性の方に対してどうやってセーフティーネットを差し伸べようとしたか、具体的にお答えいただきたい。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 厚労大臣が今日は出席されていますから後ほど具体的に話されると思いますが、職のない、収入のない人に対しては生活保護、これできちんと対応していると。そして、年金にしても医療にしても介護にしても、これは将来持続できるような制度に改革をしてきた。また、失業者も、私の就任時はたしか五・五%程度だったと思いますが、今や四%台に下がってきていると。そして、経済を活性化するという意味において、今や企業もリストラ、人減らしから新規採用を増やすような状況にしてきた。そして、ようやく最近は経済についても明るさが見えてきて、金融緩和策を解除するというような施策も日銀として打てるような状況になってきた。
デフレ脱却を目指すといってやってまいりましたし、経済活性化のための不良債権処理というかなり厳しいと言われる政策も打ち出してまいりましたけれども、明るさも見えてきて、企業もそれぞれ業績を上げるような状況になってきた。また、やる気のある人は会社を起こすこともできるようになってきた。お金がなくても会社を設立することができると。株式会社だって、一千万円以上ないとできないというのが、今や一円以上あればできるというふうになってきたわけですし、私は、そういう意味において、セーフティーネットにしても、これは教育の面においても、教育を受けたい人に対しては無利子の融資とか、働いた後にその資金は返せばいいと。言わば奨学資金なり教育資金を受けたいという申請者に対してはすべて手当てができるような制度になってきていると。
私は、今日の社会において、しっかりとしたそういう社会保障制度という点についても、私は、日本社会というのは世界の各国に比べて決して遜色のない水準になっていると思っております。