164-参-財政金融委員会-9号 平成18年03月23日
平成十八年三月二十三日(木曜日)
午前九時開会
本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○所得税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出、衆議院送付)
○国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○尾立源幸君 ちょっと反論を申し上げますと、平成十四年―十六年の三年間で認定は三十法人になりました。十七年度で十法人増えました。平均すると変わんないんですよね、一年間に十法人ずつぐらい。こういうちまちました、何というんですか、改正では、全く私は増えないと思っております。本当にやる気があるのかと、こんなふうに思うわけでございます。
一方、これもまた昨今の新聞で、財団法人、社団法人については寄附金を優遇する対象法人を増やすという、こういう検討に入っているという話を聞いております。NPOに対する優遇税制は厳しいのに、公益法人や財団法人には増やしていくと、こういう新聞記事でございます。三月二十一日、日経新聞にございました。
すべての公益法人に問題あるとは私は言いませんが、先ほど冒頭にお話ししました衆議院の調査局が行った予備的調査によると、四千法人に約二万二千九十三人の国家公務員が天下っていらっしゃると。そして、そこに五・五兆円以上の税金が流れていると。五・五兆円は大分少ないなということが明らかだと思いますが、最低五・五兆流れている。そこで、国所轄の公益法人の数は七千ですから、この四千法人というのが、約六割が官僚の天下り先というふうになっているわけです。こういったところに税制の優遇があって、NPOへの優遇税制が余りない。私は、何かこれ、官尊民卑の何か思想がここに出ているんじゃないかな、民は悪いことするんじゃないかな、こんなふうに思うわけでございます。
そこで、民間でちょっと頑張っている例を紹介をさせていただきたいと思います。谷垣大臣、この「ビッグイシュー」って、私持ってまいりました。トム・ハンクスという格好いい人の顔が出ておりますが、この雑誌、御存じですか。ごらんになったことあります。
○国務大臣(谷垣禎一君) 申し訳ありません。今日、初めてお名前を伺いました。
○尾立源幸君 この表紙を八ページ目に付けておりますけれども、ここにカラーがございますので見ていただきたい。
実は、これはホームレスを応援するためにつくられた事業なんですけれども、元々はロンドンで出発いたしまして、日本では日本法人がやっております。これ、仕組みをちょっとお話をさせていただきますと、まずホームレスの方に、これ一冊二百円で駅頭で売っているんです、大体。私もこれ梅田の駅頭で買ってきたんですけれども。最初、無料で十冊を、ホームレスの方にこれを差し上げるんですね。つまり、二千円元手、資本金をホームレスの方に差し上げて、そのお金で次回からはこれ一冊九十円で仕入れをしていただいて二百円で売る、つまり百十円の利益が出るようになっています。
こんなすばらしい事業をやっておるわけですが、ここでこの販売員の方の言葉を紹介したいと思います。何がこれで変わったか。「ビッグイシュー」を売り始めて一番大きく変わったのは、鏡を見るようになったこと。最低限の身だしなみは整えておかないと、まあ不潔だとやっぱり手に取って買ってくれないわけですよね、そういったこと。そして、この機会に仕事を見付け、もう一度働きたい、「ビッグイシュー」を売ることで働くことの楽しさを思い出すことができたと、こういうふうな感想、この中に販売員の生々しい言葉も出ているわけでございます。
私も思うんです。いきなりホームレスの方が正社員として働くというのは、これはなかなかギャップがあって、いろんな意味で、私は難しいと思います。こういう事業にまず参加をすることで、就職へのテークオフの機会をつくるのに私大変いい事業なんじゃないかなと、こんなふうに思っているわけです。
それで、これまで、実はこれ百二十万冊が売れておりまして、これは第四十六号ですか、ホームレスの人々に一億三千二百万の収入をもたらしたということなんですが、実はこの会社、一千万の赤字を出しておるんです、いまだ。非常に厳しい状況です。
そこで、どうするかといいますと、次の九ページを見ていただきたい。この雑誌の中に寄附金、サポーターを募集をしておられます。まあ助けてください、応援してくださいということで、「ビッグイシューは企業(団体)サポーターを求めています」と、一口十万円からですと、まあ高いな、十万円、そういうことでございますが。
ここで私、問題提起をさせていただきたいんですが、資料十ページ目、先ほど申し上げました「官尊民卑のNPO税制」というすごいタイトルを付けておりますけれども、この寄附金の数が少ない、寄附金の優遇税制を受けられる数が少ないことも問題なんですけれども、もう一つは、実際に寄附をしたときの税の取扱いにも大変な私は官尊民卑、不公平感があるというふうに私は思っております。
横の欄を見ていただきますが、寄附の受け手、寄附した金額の損金算入額、受け手の利用可能額ということで、もらい手と寄附をした人の税制メリットと受け手の、何というんですか、純額で使える金額をこの三番目に書かせていただいております。国、特殊法人、特増、公益法人、NPO法人、企業というふうに書いてございますが、これ四つの分類にさせていただきました。
ここで一番見ていただきたいのは、国、地方公共団体に寄附をした場合、例えば資本金一千万円、所得が一千万円で百万円を寄附した場合、実効税率四〇%、私は仮定をしましたが、どういうふうな税制のメリットがあるのかということをこれで見ていただきたいと思います。
まず、国、地方へ企業が寄附した場合は、この百万円というのが丸々損金、経費になります。つまり、法人税はこれからは掛からない、控除されるということですね。そして、受け取った方、国、地方、当たり前です、ここには税金は掛かってこないので、受け取った方も百万円純額で使えるわけですね。これはいい制度です。いい制度です。
一方、今申し上げたこの「ビッグイシュー」というのは有限会社でやっておるわけですが、これに百万円例えばある会社が同じように寄附した場合どうかというと、一番下の欄を見ていただきたいんですが、損金算入額、つまり控除できる、経費として控除できるのはたったの二・五万円なんです。国には百万円控除オーケーと言っておいて、企業にはたったの二・五万円。その結果、法人税が三十九万円も掛かってきている。寄附した上に三十九万円の法人税も取られるというのがこの構造です。
そして、受け手の方、ここは有限会社ですから、収益事業を行っております。百万円は寄附金として収入に上げなきゃいけません。百万円もらった場合、実効税率四〇%で四十万円のまた税金が掛かってきちゃうわけですね。結局、百万円もらっても、ほかに使わなければ、実質六十万円、四十万円の税金が掛かって、六十万円しか手元に残らない、こんな構造になっておるわけでございます。
谷垣大臣、ちょっとこういうことを申し上げているんですけれども、私は、この官尊民卑という、先ほど第三の領域を広げていかなきゃいけないというふうに申し上げました。こういうところが非常に障害になっているんです、実は。もっともっと真剣にこの部分を使いやすく広げていただけるように応援をしていただきたいと、改正をしていただきたいと、このように思うわけでございます。
ただ、中にはいい加減なNPOもあります、はっきり言って、企業もございます。だから、例えば会計参与を付けるとか付けないとか、そういった例えば情報公開、お金の管理を徹底することでそういう優遇税制をするという、これも一つの私はアイデアではないかなと思うわけです。ただ単にパブリックサポートテストの分母や分子をいじるだけの小手先のではなくて、もっと抜本的に、こういうところに、本来官がやるべきことを民に担っていただく、そういうことを私はやるべきではないかと思うわけでございますが、谷垣大臣いかがでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 尾立委員のお母様がNPOの役員になられて、地元のために頑張っておられるのを心から敬意を表するところでございますが。
私はこの議論をいたしますと常に思いますのは、私は元々、法律書生から出発したものですから、憲法の結社の自由というのがなぜ近代社会が始まったときに、あれほどみずみずしいものとして憲法の議論の中で大きく扱われたか、初め勉強したころは分からなかったんです、当たり前じゃないかそんなことと思っておったわけですが。その後、やっぱり最近のNPOの動きとかいろんなことを考えますと、尾立さんのおっしゃる、官でもないそういうものがやっぱりパブリックを担おうというのがそれぞれ結社をつくると、それぞれのところで結社をつくる。それが、あるいは政党になったり企業になったり、あるいはまだその時代ですから政党にも企業にもならない、自分たちの地元をどうやったら良くできるかという役割に使ったのかもしれない、そういう多分、何というか、エネルギーが近代社会をつくる力になったんじゃないかと。だから私は、もう一回、今、当たり前のように書いてある、憲法に書き込んである結社の自由というのをもう一回我々は再認識すべきじゃないかという気持ちを実は持っているわけでございます。
そこで、今、尾立委員の御議論でございますが、私もそういう観点から、自由に集まって、そして公益、パブリックのために働こうというのは何とかサポートしなきゃいかぬと。
実は、ちょっと官尊民卑とおっしゃったんですが、こういう考え方の背景にあります一つの考え方は、やっぱり収益を上げるための営利法人はなかなか、これは優遇等々与えた場合にあるいは配当に向かっていってしまうかもしれないというようなことがあって、公益法人とかそういうものを、そこにちょっと官尊民卑のように見えるかもしれませんが、公益法人あるいは中間法人といいますか、そういうものと営利法人の差がやっぱりこの税制の背景にはあるということは御理解いただきたいと思っております。
それから、若干、数字、この尾立委員がお作りいただいた資料で、国、地方公共団体に寄附すると百万円まで損金算入できるが、あとは五万、二・五万だと。これ、特殊法人、学校法人等の場合は二十七万五千円までできるんじゃないか、それから公益法人や企業は十三万七千五百円までできるんじゃないかと、ちょっと後ろの事務方がメモ書いて入れてまいりました、私ももう一回よく勉強して申し上げたいと思っておりますが、そういうことでございます。
ただ、私も先ほどのような、えらく大だんびらを振りかざしまして結社の自由なんということを申し上げましたが、やはりこれを、寄附金控除等々を認めるためには、委員もちょっとおっしゃいましたけど、やっぱりいい加減なことをやっているということでは困るんでございまして、やっぱり運営の適正性とか情報の公開ということがどうやって担保されるかということをきちっと踏まえて、私たちも考えていかなきゃいけないと思っております。