145-参-予算委員会-9号 平成11年03月03日
平成十一年三月三日(水曜日)
午前十時開会
─────────────
本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○平成十一年度一般会計予算(内閣提出、衆議院
送付)
○平成十一年度特別会計予算(内閣提出、衆議院
送付)
○平成十一年度政府関係機関予算(内閣提出、衆
議院送付)
─────────────
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
がらっと変わりまして、現下の経済情勢を中心に少々質問をさせていただきます。
先ほどから失業率を含めて失業者の話が出ておりますが、きのうの新聞によりますと、もう失業者三百万人に迫る、非自発的な失業者は百万人だということでございます。特に中高年の方が多く失業されているということでございます。
私も、ことし正月から町工場がたくさんあります東京都の大田区とかずっと回っておるんですけれども、町工場のおじさんに聞きますと本当に仕事がない、それから多摩川べりを歩いてもいわゆるホームレスと言われる方がいる、また失業者も本当にベンチの上で座ってぼうっとしているというような、そういう方が本当にふえてきたと、そういうようなお話を伺いました。
また、仕事はどうですかと聞くと本当にないと。それから、保証枠で少しはよくなったでしょうと聞いたら、いや、お金を借りてもまた返さぬといかぬし、仕事がふえる見込みのない段階では借りることもできないと。工場を閉鎖するんですかと言えば、閉鎖するにも旋盤を持っていってもらうにも七万円かかるんですと、こういうようなお話を伺いました。本当に今大変な状況だなと。そういう状況の中でのこの予算審議であります。
今般、平成十一年度の予算を見まして、税制の改革というものがありますが、やはり国民一人一人から本当によかったな、これで消費に回そうと、そういうふうに思えるには、今政府にも御協力いただいて地域振興券ということがありますけれども、また一人一人税制改革に伴って本当によかったなと私は思う必要があるんだろうと思うんですね。
この平成十年度の税制から見れば、年収七百九十三万円ですか、それ以下の方は実質増税になる。調べてみたんですけれども、一家四人、大人二人子供二人という世帯で年収四百万円の人は三万六千三百二十五円実質的に増税になる。また、五百万円の人は九万三千二百五十円増税になる。六百万円の方は平成十年度よりも六万八千九百円増税になってしまうと。大変な私は消費気分というものを冷やしてしまうんではないだろうか、そんなふうに考える次第でございます。
この激変緩和に私は二兆円程度の戻し金は絶対に必要であるというふうに考える次第でございますし、引き続き要求をしてまいりたいというふうに考えておるところでございまして、この点につきまして、もう何度か御答弁をいただいておりますけれども、総理と大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思います。
○国務大臣(小渕恵三君) ただいま魚住委員から御指摘のありました昨年と今年との税制の仕組みから申し上げまして、そこに差異が生まれてきたということについて、補てんすべきだ、その一つの考え方として戻し税について御言及ございました。
昨年のような諸外国に比して突出した高い水準の課税最低限が継続し、納税者が構造的に大幅に減少することとなり、基幹税たる個人所得課税のあり方としては適当ではない、こう考えております。
なお、今回の見直しにおきまして、定率減税に頭打ちを設け、控除率をある程度大きくすることとなりまして、中堅所得者に配慮するとともに、一定の扶養控除額の加算を行うことによりまして、子育て、教育等の負担のかさむ世帯に配慮しているところでございます。
このような大規模な減税を一時的でなく、期限を定めず継続して実施することによりまして、消費者や企業のマインドを高め、景気に効果的に作用するものと考えております。
以上が今年度予算編成に当たりまして、政府としての基本的な考え方でございます。
御指摘のように、確かに今年度実施をいたしてまいりました四兆円の特別減税という効果は効果としてございましたが、そのままに引き続いて来年度同じような仕組みがなかなかできかねる。そういった形で、形を変えてという御提案であることはよくわかるわけでございますが、政府といたしましては、そのような理由から、今回これを取り入れることは甚だ困難であると申し上げざるを得ないわけでございます。
○魚住裕一郎君 現時点における御答弁はそういうものかなと私は思っておりますけれども、引き続き要求をしてまいりたいというふうに考えております。
さて、失業が多くなって、非自発的ということから、突然のお父ちゃんの失業で学校に行けなくなる、そういうようなことが先般新聞記事で出ておりました。文部省の統計でもあるようでございます。経済的理由による退学というのが高校で二千八百名ですか、そういうふうに出ているようでございまして、来年度予算の修正協議の中で新しい奨学金制度、本当に大きな前進であると私は考えております。
特に、貸与人員の大幅なアップあるいは成績要件を事実上撤廃するというようなこと、また貸与基準、世帯の所得制限、これも一割アップしたということもございます。そしてまた、緊急採用奨学金制度、今の失業みたいな状況の中で勉学を続けたいという場合に、一万人という規模ですか、そういうようなことは大きな前進かと思いますけれども、それはあくまでも現下の状況下における緊急対応策というふうに私ども考えておりまして、やはり少子社会、本当にみんなが勉強しやすい、そしてまた将来の日本を背負う人材というものを育成するためにも、本当に抜本的な私は奨学金の拡充というのが必要ではないか。
ですから、今、有利子になっておりますものを例えば無利子にする、あるいは入学金も奨学金の対象に含めるとか、高校生あるいは専修学校生、これも修学年限が一年以上であればいいのではないかとか、さらには留学が決まっているような方にも貸与してもいいのではないか、そんなふうに私ども考えており、昨年の参議院選挙のときにもお訴えをさせていただいた次第でございますけれども、もう少し抜本的な奨学金制度につきまして、文部大臣の御所見を賜りたいと思います。
○国務大臣(有馬朗人君) いつも御答弁の際に申し上げておりますように、私も大変苦学をいたしましたので、奨学金に対する認識は非常に深いものだと思っております。
そういう観点から、平成十一年度の予算案におきましてはかなり抜本的な増強を図った次第でございます。
まず第一に、無利子奨学金の貸与月額の増額や貸与人数の増を図るとともに、第二に資金を有効に活用いたしまして、極力多くの学生を支援するという視点に立ち、有利子ではございますが、有利子奨学金について貸与人数の抜本的拡充や貸与に係る学力基準及び家計基準の緩和等を図ることにいたしました。
そして二番目に、奨学金につきましての去る二月十八日の自由民主党と公明党・改革クラブとの政策合意につきましては十分承知しており、先ほど御指摘のように、文部省といたしましてはこの合意を重く受けとめ、誠実に実行していく所存でございます。
また、御指摘のような育英奨学制度において入学金貸与制度を創設したり所得制限を撤廃し、すべての奨学金を無利子で貸与するということにつきましては、これまでの国会審議等を通じまして私としても強い御要望があるということをよく認識いたしております。
しかしながら、現在の厳しい財政状況のもとで、どうしても限られた資金の中で事業を実施していかなければならないということを考えましたり、また育英奨学事業の目的ということから考えまして、先ほど御要望がございましたそのすべてを実現するということはなかなか難しいと言わざるを得ないかと思っておりまして、御理解賜れれば幸いでございます。しかし、最大限の努力はしていきたいと思っております。
いずれにしましても、何といっても奨学金は重要でございますので、今後とも、学生の要望を踏まえまして可能な限りその希望にこたえられるように努力をさせていただきたいと思っております。
○魚住裕一郎君 先般、経済戦略会議の最終報告が出ました。その中で能力開発バウチャーというようなことも出ていたというふうに思っておりますが、これは大人で能力開発する場合にはバウチャーという形でお金を出しますよと、そういうようなやり方ですね。
ですから、将来ある若い層に対しても、本当にそういう意味で能力開発バウチャー、勉強するというのはそういうことなんじゃないかと。そういう発想に立てば、今、文部大臣がおっしゃったような官僚答弁のようなものじゃなくて、もっと前向きに御検討を私はしていただきたいというふうに思います。
次に、今、文部大臣から出ました修正協議における合意の中で、「新しい児童手当制度」というものが書かれております。言葉としては、「欧州各国で行われている児童手当制度を参考に、新しい児童手当制度の検討をはじめる。」、そういうような言葉になっております。
その欧州各国、どういうような児童手当制度があるのか。私たちは今高齢化社会あるいは少子社会と言われていますけれども、やはりそれに対応する制度の先輩として欧州各国の制度が見られるのではないか。
ちょっと挙げてみますと、例えばスウェーデン、急速な高齢化、高齢社会と言われたところでありますけれども、もう一九四八年からやっておりまして、対象が十六歳未満、学生の場合は二十歳未満、しかも支給月額も第一子、第二子、第三子、第四子、第五子とどんどんふえていくという形でございます。第一子の場合は一万一千八百八十八円、第五子以下が二万三千七百七十五円、しかも所得制限なし、全額国庫負担、こういう制度がスウェーデンではあります。
また、イギリスにおいても、一九四六年から十六歳未満を対象に、第一子、第二子以降ということで分けながらやっています。所得制限はありません。全額国庫負担という形になっております。
ドイツにおいても、一九五五年から、こちらの方は十八歳未満、学生の場合は二十七歳未満までやるようでございまして、これも第一子、第二子、第三子、第四子というふうにだんだん額がふえていく、そういう制度になっております。所得制限はないようでございます。財源も公費の方で負担するということでございます。
私どもは、第一子、第二子が一万円、第三子以降が二万円やったらどうだろうかと、所得制限もなしという形で御提案をしているわけでございまして、これは政務調査会長の池田行彦さんと公明党・改革クラブの政審会長坂口さんとの署名入りでございますので、今言ったような制度としてしっかり御検討いただけるということで理解していいんでしょうか、厚生大臣。
○国務大臣(宮下創平君) ヨーロッパの児童手当制度の現状につきましては、先生が今詳しく御説明したとおりでございまして、私の方から重複は避けさせていただきます。
ただし、ヨーロッパと我が国の違いと申しますと、基本的にはまず賃金構造の違いがございます。欧米の賃金は、おおむね能力給体系をとっておりますので三十歳ぐらいから大体フラットになっていくという傾向がございますし、我が国の賃金は、おおむね生活給あるいは年功給体系でございますので五十歳前後まで賃金が上がるという構造になっております。そのことは児童手当と大きく影響し合っております。
また、扶養控除につきましても、今諸外国の例を言われましたが、スウェーデンとかイギリスなどでは扶養控除はございません、税制上の。それから、ドイツでは扶養控除と児童手当の選択制がございます。アメリカでは児童手当制度はありません、扶養控除のみでございます。そういうように諸外国でもいろいろ差がございますし、我が国では児童手当と扶養控除制度が併存していることは御承知のとおりでございます。
そこで、今、委員のお尋ねは、去る二月の半ばごろ、十八日でございましたか、自由民主党と公明党・改革クラブの間で合意をされました。そのことは私どもとしては重く受けとめさせていただきますが、今申しましたような点で多くの問題がございます。
なお、今の我が国の児童手当制度は、三歳未満であって、資力制限をかけておりまして、一子、二子は五千円、三子以降が一万円ということで、全体として千八百億くらい所要額がございますが、今の貴党の提案によりますと、これがかなり増嵩する。資力制限なしにやりますと二千万人を超える、二百六十万が二千万人くらいになるということでございまして、当然額も二兆九千億くらいかかります。よしんば所得控除をそっちへ振りかえたとしても、国、地方の住民税の控除制度はやめたと仮にいたしましても一兆四千億もかかるというような代物でございますが、私どもとしては、公党間のお約束でもございますから、検討を開始するということでございますから、これ自体は重く受けとめさせていただきまして、検討は十分させていただくつもりでございます。
○魚住裕一郎君 今私の方からは述べませんでしたけれども、当然扶養控除等については廃止を含めて検討せざるを得ないだろうし、今、厚生大臣がおっしゃったように、賃金体系が違う。しかし、もう今は日本も賃金体系が変わりつつあるというのが経済の実態ではないか。そうすると、実態に合わせてこういう児童手当制度もやはり将来を目指して変えていく必要があるということを付言しておきたいと思います。ぜひ誠実に御検討を賜りたいというふうに思うわけであります。
もう一つ、こういう失業が多くなって今大変だという中で、住宅ローンが払えずに、家を競売とかそういう形で追い出されてしまうというような状況が多いわけでございます。
先般も、新聞記事でございますけれども、バブル期は貸すだけ貸して、銀行はつれなく競りに出したというような言い方でございますけれども、実際に一カ月間ホームレス生活をせざるを得なかったというような事例が紹介をされておりました。
また、我が党の主張によりまして、例えば昨年の緊急経済対策ですか、ゆとり返済制度の特例措置というものをやりました。また、返済期間の延長という形で制度をつくりまして、これが結構利用されているようでございますが、それでも昨年の個人破産というものは十万件を超すというような、そういうような状況になってまいりました。
今実際に、あした各銀行の公的資金注入の申請をやるというようなお話でございますけれども、一般庶民感覚からすれば、銀行に競売されて家を失って、それで冷たい空に身を置きながら、銀行には公的資金をがばっと入れる、これはおかしいんじゃないかと、これが一般の国民の感情ではないだろうかというふうに私は思います。
いわゆるローン破産であるとか、そういうことを少しでも私は防いでいかなければいけないと思うわけで、経済対策としての住宅取得税制とかありますけれども、既にバブル期を初めとしてローンを背負っている人たち、こういう人たちにも何とか温かい手を伸べる必要があるのではなかろうか。既存の住宅ローンの利子を所得あるいは税額から控除するような、そういう制度を創設してはどうかというふうに我が党は主張しているところでございますけれども、これにつきまして大蔵大臣から御所見をいただきたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) このたびの住宅ローンにつきまして、従来の制度を根本的に拡大いたしまして、平年度で一兆二千億円という税制上の特例を、租税特別措置法の特例を設けたわけでございますけれども、これは申し上げるまでもなく、国民が非常に住宅を必要としておられる、そのときに景気対策としてこれはまた有効であるということから、大変に大きな特例を設けたわけでございます。
そういう議論をしておりますときに、これから借りる人がそういう恩典を受けるのであれば、既に借りて困っている人にもその恩典を及ぼす方が公平ではないかという議論は当然にあったわけでございますけれども、そこのところは実は甚だ申しにくいのですが、一つは、なぜ住宅かといえば、やはり住宅をつくってもらうことがこの際景気対策に役立つという、そういう意味合い。ほかのローンもいろいろありますけれども、それは、ですから、申しわけないが住宅だけにいたしますということと同じ意味で、住宅をつくってもらいたいわけでございますから、既につくった住宅については、どうもそのローンはちょっと考えにくいなと。
こういう特例はかなり目的的な特例でございますから、公平論を言い出しますといろんなことがあるというのはおっしゃるとおりだと思うんですが、そこは耳をふさがせていただきまして、この際の景気対策としての意味合いということで御理解をいただきたいと思うわけでございます。