145-衆-予算委員会第四分科会-1号 平成11年02月17日
本日の会議に付した案件
平成十一年度一般会計予算
平成十一年度特別会計予算
平成十一年度政府関係機関予算
(厚生省所管)
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○鍵田分科員 民主党の鍵田でございます。
私は、一九九四年のころに連合大阪というところで仕事をしておりまして、特に、大阪にありますあいりん地区という地域につきましては、皆さんもよく御存じだというふうには思うのですけれども、その問題に組合としての関心を持ちまして、何回かその地域に足を運びまして視察をしてまいりました。朝五時ぐらいから、業者とあいりん地区に住んでおります労働者との相対した職業のあっせんでありますとか、それから仕事にあぶれた労働者に対する失業対策の職業安定所の作業でありますとか、また治安問題や食料などの炊き出しなどの状況、こういうふうなことを何回かにわたって視察をしてまいりました。
最近、この長引く不況の中で、この地域における労働者のホームレス化が大変進んでおるということが社会的に問題になっておるわけでありますが、大阪近辺のマスコミなどは盛んに大きく報道しておるのですが、関東方面では大阪の大体半分ぐらいしかホームレスになった人はいないというような実態もございまして、残念ながら余り大きく報道されないので、何か社会的に大きな問題としてとらえられないような向きもあるわけでございます。
実は、昨年は、決算行政監視委員会の皆さんもこの地域を視察をされて、特に治安問題を中心に視察をされたようでございますが、私は労働委員会に所属をしておりました関係で、労働委員会の皆さんにぜひともここを見ていただきたい、雇用問題、医療問題、さらには治安問題、そういうふうなことについて労働委員会でも興味を持ってもらいたい、各議員の皆さんにぜひとも認識を深めてもらいたい、こういうふうなこともありまして見ていただいたところでございます。
大阪の府でありますとか市でありますとか関係する機関ともいろいろ話をしておるのですが、何とか対策を立てたいということでいろいろなことをされております。
例えば医療センターでございますとか、炊き出しに対する援助でありますとか、年末年始の宿泊施設の提供でありますとか、そういうふうなことをやっておるのですが、非常に難しいのは、余り大阪なら大阪で手厚くやりますと、そこは非常に住みやすい、環境がいいというふうなことになりますと、全国から集まってくる。そうでなくても、大阪に対しては、東京の二倍ぐらいそういう人たちが集まっておるということでございますので、非常に対策が難しいということでございます。
しかし、先進国あたりでも、特に大都会を中心にして非常に問題になっておるわけでありまして、ニューヨークとかロンドンでもいろいろな対策を立てられておるわけでございますので、そういうところでとられておる対策は日本と比べてどういうふうな状況になっておるのかということにつきましても、今鋭意私自身も勉強しておるところでございますし、また、厚生省には質問主意書を出させていただいておりまして、この答弁書をお待ちしておるという状況でございますので、そういうことが出てまいりましてから後に、さらに勉強も進めまして、民主党内の皆さんとともに知恵を出し合いながら、いろいろな提言などもしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
最近、関係省庁が集まりまして、また関係の地方の皆さんも集まりまして、ホームレスの問題の連絡会議を設置をされたということも聞いておるわけでございますが、それらの状況もお聞かせいただきたいということもございますけれども、きょうは、特に緊急を要する課題につきまして幾つかお聞きをしてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
今私が申し上げましたようないろいろな問題は、特に高齢化も進んでおるし、高齢化がさらにホームレス化を進めておる大きな要因にもなってきておりますので、それらにつきましてどのように掌握をされておるのか、若干聞かせていただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
○宮下国務大臣 ホームレスの問題は小渕総理も大変気にしておられまして、過般、大阪を視察されております。そして、その状況をよく把握するようにということで、御指摘のように問題の連絡会議を設置いたしまして、局長クラスの会合も既に一回やっております。そして、それには地方自治体の関係者の皆さんにもお集まりいただくということで、実際には地方自治体の方の責任が非常に大きいわけでございますので、そういった中央と地方自治体の関係者が相集いまして対策をやろうということで、基本的に取り組ませていただいております。
なお、大阪は確かに八千数百人というように私どもお聞きしておりまして、東京も多いのですけれども、その半分くらい。大都市周辺の、大都市地域における問題だという意識もございますので、あらゆる面を検討いたしまして、ホームレス化の防止あるいは健康問題、その他万般の問題がございますから、対応を図っていきたいというように考えております。
○鍵田分科員 そこで、今も健康問題について大臣の方からお話ございましたけれども、昨年の夏ぐらいから赤痢が非常に多発しておるということを聞いておるわけであります。夏ごろは五十人ぐらいの集団発生であったようでありますが、秋ごろには百人を超えるような状況になってきた。また、冬場になりましてから若干少なくなってきたように聞いておったのですが、実は、またこの二月に入りましてから非常にふえてきておるというような状況でございます。
こういう集団感染が起こっておるということは、やはり地域の衛生問題というようなことも含めて大変深刻な問題でございますが、どのようにこれを把握されておられるのかということにつきましてお答えをいただきたい。
これは機関委任事務でございますので、大阪市なりが対応されるのではないかというふうには思いますけれども、大阪だけでは十分でないのではないか。そしてまた、他の地域でもこういうふうな問題が起こっておるのかどうかというふうなことも含めて、どのように認識をされ、そして対策を立てようとされておるのか、その辺をお聞きしたいというふうに思います。
○伊藤(雅)政府委員 大阪あいりん地区での赤痢の集団発生の問題でございますが、今委員御指摘のように、昨年の五月二十八日に初発患者が出まして、八月六日までの間に六十二人の患者が発生したということを大阪市当局から報告を受けております。
その後、一たん鎮静化いたしましたが、市からの報告によりますと、十月二十三日以降再び患者発生がございまして、その後の一カ月間に八十六人の患者が報告されております。ことしに入りまして、二月十六日までの間に百四十四人に達しているということでございまして、きょう現在におきましても、十名前後の方が入院されているというふうに聞いております。
この赤痢の集団発生等の伝染病対策の主体は地方自治体でございますが、このような集団発生に対しましては、国としても必要な技術的な援助を行っていくというのが私どもの考え方でございまして、市の方といろいろ相談をしながら必要な技術的な支援をやってきているところでございます。
今回のこの集団発生につきましては、一つ非常に難しい点が、特定の感染源なり感染経路ということが現時点におきまして同定されておりません。ただ、この菌のDNA分析を行いますと、同一のパターンを示しておりますので、何か同一の感染源から広がっているということは推定されるわけでございますが、今申し上げたような徹底的な疫学調査が今後特に国の技術的指導のもとに必要ではないかというふうに判断をしております。
○鍵田分科員 ぜひとも早急に対策を立てていただきたいと思いますが、問題は、そういう場所における環境ですね。ですから、赤痢に感染して、それの対策を立てるということも大事ですが、その前の予防ということを考えますと、やはり場所の環境改善ということが非常に大切なのではないかなというふうにも思いますので、それらにつきましては、地域の改善のための総合的な施策の中にぜひとも織り込んでいただきたいというふうに思うわけでございます。
それで、現在まだインフルエンザが大変猛威を振るっておる、いろいろなところで多くの死者も出ておるというふうに聞いておるわけでございまして、そういうことに関して、実はあいりん地域の問題に触れる前に、全般的なインフルエンザの状況が今どうなっておるのか、それに対する対策がどのようになっておるか、また、インフルエンザにかかりやすい状況というのはどういうことなのか、一般論で結構でございますので、若干教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○伊藤(雅)政府委員 インフルエンザの全国的な現時点におきます流行状況でございますが、私どもは二つの調査方法によりまして流行状況の把握をしております。
一つは、小学校、中学校等の学校におきます学級閉鎖、休校などの状況を毎週報告していただいておりまして、学校からの報告によりますと、ことしの流行状況はほぼピークを過ぎて、だんだん終息の方向に向かっているのではないか。ただ、昨年の流行状況に比べますと、かなり規模が小さくて、ほぼ例年並みの流行状況だというふうに判断しております。
それからもう一つは、全国二千四百カ所の医療機関にお願いをいたしまして、一週間に何人の患者さんがインフルエンザ様疾患で受診したかということを報告いただいているわけでございますが、これによりましても、流行のピークは一月末から二月の初頭にかけてというふうに判断しておりまして、現時点におきましては、流行はほぼ終息に向かいつつあるのではないかと判断をしております。
ことしの流行の特徴といたしましては、お年寄りの施設なり病院、精神病院などにおきまして集団で感染が起こりまして、かなりの方がお亡くなりになっているということもございましたので、老人の施設等につきまして、昨年も出しましたが、再度通知を出しまして、対策の徹底を期すと同時に、さらに、ことしにつきましては昨年の二倍以上の百五十三万人分のワクチンを用意いたしまして、どこの医療機関でワクチンの接種が受けられるかというようなことを各市町村において情報提供をしてきたところでございます。さらに、治療薬といたしまして、アマンタジンという薬をインフルエンザの治療に使えるように昨年の十一月に所要の手続をとりまして、治療方法の選択肢を広げてきたということでございます。
いずれにいたしましても、いろいろの対策を講じてまいりましたが、一応現在終息に向かいつつあるのではないかという状況でございます。
○鍵田分科員 全体の状況については大体わかりましたけれども、何かマスコミの報道などを聞いておりますと、例年のインフルエンザよりも非常に悪性で、死者もたくさん出ておるというふうな印象を受けておるわけでございます。
あいりん地域などでは、例えば住環境でありますとか、その地域の皆さんの栄養状態といいますか栄養の摂取状態なども、通常の我々の生活とは随分違うのではないかというふうな気がいたしまして、実は、どんな状況かということで大阪市などに問い合わせてみたわけでございますけれども、非常に重篤な患者とか急激に悪性化したというふうな人については救急車でどこかへ搬送されてしまって、その地域の病院では余り治療を受けておらないというようなことで、なかなか掌握が難しいというようなことを聞いておるわけでございます。
そういう住環境なり栄養状態などによりましてインフルエンザなどに非常にかかりやすい状況になっている、また高齢者も多いというようなことについて、厚生省は私の考え方と同じ考え方に立たれるのかどうか。もし同じ考え方に立たれるとしたら、大阪などに対してどんな施策を取り入れようとされておるのか、また、実際に取り入れられたのであれば、そのことについてお聞かせいただきたいと思います。
○伊藤(雅)政府委員 まず、ことしのあいりん地区でのインフルエンザの発生状況でございますが、先ほどお答えしたのは、全国的にどのような流行状況になっているかということは今申し上げたような仕組みでやっているわけでございますが、非常に限定された一部の狭い地域の流行状況を把握するというのは、やはり個別に医療機関なり関係のところに確認しなくてはいけないわけでございまして、ことしのあいりん地区での発生状況について見ますと、大阪市の流行状況と大体――一口で言いますと、平年並みの流行ではないかということでございます。
そういう中で、あいりん地区に着目してみますと、あいりん地区の周辺の小中学校におきまして学級閉鎖は報告されておりませんし、また、保護施設内でのインフルエンザ様疾患の流行というものは、一応確認いたしましたところ、そういう状況にはない。また、あいりん地区の中に市が社会医療センターというものを設置しているわけでございますが、そこにも確認いたしましたところ、特にことしは例年に比べて特段大きな流行はなかったという報告を受けているわけでございます。
しかしながら、インフルエンザにつきましては、インフルエンザウイルスが気道から感染していくという性格を考えますと、やはり家屋の構造でございますとか、狭いところにたくさんの人が集団で生活しているとか、それから施設にたくさんのお年寄りが入っているとか、そういう条件というものは非常にインフルエンザの伝播しやすい環境でございますので、当然インフルエンザの予防対策におきましては、そのようなことを念頭に置いて対策を講じていく必要があるというふうに考えているところでございます。
○鍵田分科員 ぜひともあいりん地区の問題だけではなしに、ホームレスの皆さんがあいりん地区からどんどん広がってきて、大阪府内の至るところにホームレスの方がいらっしゃるという現実がございます。中には、働く意欲がなくてホームレス化したのだというふうな人もありますけれども、しかし、そんな人は本当に一握りでございます。実は、読売新聞なんかも、一人一人に当たって、どうしてホームレスになったのかということの調査をしたようでありますけれども、やはり失業でありますとか、いろいろな事情からやむを得ずそういう状況になっておるという人が圧倒的でございまして、一部にそういう心がけの悪い人もおるかもわかりませんが、社会全体の責務としてこの問題を何とか積極的に取り上げていただきたいというふうにお願いをして、厚生省に対しての質問を一応これで終わりたいというふうに思います。
労働省の方から澤田局長に来ていただいておりますので、若干時間をいただいてお聞きしたいのですが、昨年の質問主意書に基づきまして、建設労働者の退職金制度であります建設業退職金共済制度の適正な運営についてお聞きをしたり、また、質問主意書も出させていただいて、答弁もちょうだいをしておるわけでございますが、これについて適正な運営が図られるようにということでいろいろ実態調査をしたり、その後、労働省としても研究をしていただいているんじゃないかというふうに思います。
この建退共から実態調査結果の概要というものも発表されておるわけでございますが、元請業者がやはり加入指導をもっと熱心にやらないといけないんじゃないか。下請業者が非常にこの問題について不熱心になっておるのは、元請の業者が不熱心だからそういう問題が起こっておって、証紙の張りつけなどが非常に低率になっておる、こういうふうな問題が出てきておるわけでございます。
こういうふうな分析を踏まえまして、労働省として、この問題の抜本的な解決のために、いつごろまでにどのような改善を行おうとされておるのか、それについてお聞かせをいただきたいと思います。
○澤田政府委員 今先生御指摘のように、昨年の秋に実態調査を行いまして、昨年十二月に取りまとめ、公表いたしました。
そこでは、御指摘のような元請業者が、特に資本金規模の小さな元請業者の方では下請に対する加入の指導等々が十分ではないという結果等も出ております。したがいまして、そうした調査結果その他を踏まえまして、私どもとして、現在、建退共制度の運営上の改善策あるいは制度上の検討事項等々について案をつくりまして、関係方面に今お示ししております。
改善方策の中身でございますが、一つは、共済手帳、共済証紙の受け払い簿を整備するために様式をきっちり決めるというようなことを考えております。それで、その様式を普及する。
二つ目は、共済契約者の事業主の方々に対しまして、退職金共済事務処理についての手引と申しますか、マニュアルというようなものをつくってお示しして、事務処理をできるだけ斉一的に、能率的にやっていただこうということも考えております。
それから、大変大きな問題であります退職金共済機構が定めております証紙の購入の目安、これにつきましてもいろいろ問題点、御指摘がございますので、目安のあり方について、多少時間はかかるかと思いますが、検討を始めるという点。
それから、すぐできることとしては、退職金共済機構が都道府県に設けております相談機能、こうしたものをもう少してこ入れをして、あるいは関係方面とのネットワークを組んで、被共済者、働く方々からの御相談等々に応じて、少しでも問題を解決できるような仕組みをつくりたい、こういうようなことを考えた案を提示しております。
今後、関係者からさらに御意見を伺うとともに、建設省と十分御相談をしながら、できるだけ早い時期に、先生、いつまでかという御指摘なので、できれば年度内に案を確定いたしまして、そして、できるものから実施していきたい、かように思っております。
○鍵田分科員 時間も余りありませんから、もう一問だけ質問させていただきたいんですけれども、この退職金制度というのは、業者の任意による共済制度であるというふうに位置づけておられるようでございまして、そういうことでこの適正な運営を図るために運営委員会を設置されておるわけでございますが、この運営委員会の規定を見ましても、私どもが主張しておりますようなことについて全く書いておらないんです。
といいますのは、この共済制度の原資というものは、公共事業を行うときの積算の中にこの退職金原資を積算して出されておる、こういう実態があるわけですから、言うたら国の金がこの中に含まれておるわけでありまして、単に業者がお金を出しておるということではないわけです。ということは、関係者がみんな集まってこういう運営委員会をやるということがあってもいいのじゃなかろうか。受益者である建設労働者がこの運営委員会に入って悪いということは全く考えられないんじゃないか。
経営者が自分の財布から自分でお金を出してこの制度をやっておるのであれば、任意の共済制度だという論理も通るわけでありますけれども、国のお金、それから地方公共団体のお金、そういうものが出ておる。もちろん、民間の部分もあります。しかし、多くは国の税金で賄われた公共事業の部分も含んでおるわけでございますから、そういうことを考えますと、その共済制度の恩恵を受けます労働者、受ける側の立場の人の代表もこの運営委員会に入って悪いということは全くないと思いますし、中小企業退職金共済法の運営委員会の項の中にも、そういう人が入ってはいけないということは全く一言も書いておらないわけでございます。
そういうことを考えますと、この委員の名簿を見せていただきましたが、大体有名な建設業者のトップクラスが入っておられるわけでございまして、この制度そのものをどこまで理解されておるのかということも私は疑問があると思うんです。
というのは、昨年の建設委員会に私が出かけていって大臣に質問しますと、おられないところでこんなことを言ったらいかぬのでしょうけれども、実は、この制度を私は知らなかったというふうなことを大臣自身が言っておられたわけでありますから、この運営委員のメンバーの皆さんはほとんどそんなことは御存じないんじゃないか。また、会議をされるにしましても、年に一回か二回、業者で何かの会議があった最後にちょっとおまけのような形で会議をされてお茶を濁しておるというのが実態だというふうに聞いておるわけでございまして、実際に建設業に携わる労働者の退職金を議論する場としてはふさわしからぬ場であるというふうに思うわけでございます。
この労働者の参加ということについて、労働省、真剣にひとつ考えてもらいたいということをお願いをし、また、考え方がありましたら聞かせていただいて、質問を終わりたいと思います。
○澤田政府委員 御指摘の運営委員会でございますが、これは、退職金制度をお預かりして運営しております退職金共済機構の退職金業務が円滑にいくようにという趣旨で設けられております。
退職金共済制度自身のあり方につきましては、この機構の方で議論するということではございませんで、まさに政府の責任において制度はいかにあるべきかということを議論いたしますので、そちらは関係審議会の方で、労使、有識者を交えた三者の場で議論をし、制度をつくり、必要なものは直していくということをしておりますので、そちらの方で利害関係人たる労働者の御意見は私どもは十分反映されているものと考えております。
○鍵田分科員 建設業の関係者の運営委員会ということから見ると、その中に労働者の代表をぜひとも入れていただきたい、そのことを強くお願いをしまして、質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。