145-衆-法務委員会-2号 平成11年02月10日

 

平成十一年二月十日(水曜日)

    午前十時開議

本日の会議に付した案件

 法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件

    午前十時開議

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○左藤委員 私は、今緊急の問題として、前臨時国会において、そのときは無所属でございましたけれども、法務委員として質問をさせていただきたいと思っておりましたが、今回自民党の方へ移りましたので、そういう立場で、ホームレスの問題についてお伺いをしたいと思います。

 大臣に最初にお伺いしたいと思いますが、午前中の質疑で坂上委員の方からもお話がございました人権の擁護の問題に関連して、これは大変大切な問題であることは申すまでもありませんが、ホームレスの人たちの人権というものがどこまで守られるべきであるか、このことについて、その担当の大臣としてのお考えをお伺いいたしたいと思います。

 日本国憲法十一条から十三条というところによりますと、特に十三条におきましては、自由、幸福追求に対する国民の権利につきまして、公共の福祉に反しない限り、最大の尊重を必要とする、こうありますが、最近問題になっております野宿生活者いわゆるホームレスですけれども、この人たちの人権というものがどういう形でどこまで守られるべきであるかということについて、一般論として、法務大臣のお考えをまず伺いたいと思います。

 

○中村国務大臣 ホームレスの問題につきましては、今、憲法十三条のお話をされましたけれども、ホームレス側の人権問題、人権を擁護しなきゃいけないということと同時に、そのホームレスの方たちが生活している公園等の周辺住民側の人権の問題というのもある。また、通行者等の人権の問題もあると思うのであります。ただ、具体的な施策を考えるに当たっては、憲法が、公共の福祉に反しない限り、人権は立法その他国政の上で最大の尊重を要するとしている趣旨も踏まえて、両者間の調和に十分配慮をしていくべきことだろうと思っております。

 ただ、これは法務省だけでもなかなか解決できませんことでありまして、このたび総理大臣の指示によりまして、内政審議室が事務局になってホームレス連絡会議というのが設置されました。そういう中で、雇用、福祉、住宅等の分野、そういった対策もあわせて取り組まなければいけないということで関係省庁で会議をつくっておりますが、法務省といたしましても、積極的にそういった御論議に御協力を申し上げていきたいと思っております。

 

○左藤委員 今お話にありました、二月五日ですか、小渕総理がホームレスの問題の対策のための連絡会議を開かれた。そして、これからそういった緊急の問題について関係省庁で話し合っていくということについて、法務省はここへ入っておられるか。関係閣僚懇談会の中に法務大臣は当然入っていただいて、そうした今の人権の問題もありますし、緊急を要する問題でもありますので、そういったことで積極的に参加していただきたいと思いますが、内閣の審議室の考えはどうなんでしょうか。

 

○森山説明員 御指摘のとおり、ホームレス問題につきましては、関係自治体あるいは関係省庁におきまして、これまで大変御苦労されながら対策を講じてきておられるところでございます。しかしながら、昨今の経済、雇用状況を反映いたしまして、ホームレスの数が増加しているという現状にあります。

 このような状況を受けまして、御案内のとおり、二月五日の閣僚懇談会におきまして、総理から、いわゆるホームレス問題について、雇用、福祉、住宅など各分野にわたって関係省庁が連携を図り総合的に取り組むべく、厚生省、労働省を中心に、私ども内閣内政審議室の協力のもとに、関係省庁及び地方公共団体も含めた会議を開くよう指示を受けたところでございます。

 このように総合的に対策を講じるということでございまして、もとより、各省庁、各団体においても一生懸命取り組んでおられるところでございますが、今後ともこの会議の場におきまして、厚生、労働を中心といたしまして、各省庁力を合わせて一体的となりまして対策をできるものから進め、また取りまとめるように頑張っていきたいというふうに考えているところでございます。

 

○左藤委員 先ほど大臣からお答えいただきましたように、やはり人権の問題というのは、もちろんホームレスの人たち自体の人権の問題も大切ですけれども、それ以上にといいますか、非常に大切な、一般の市民の人たちが、治安上の危険性の問題とか、それから環境の問題だとか、いろいろなことにつきまして、我々の人権はどうしてくれるんだ、こういうこともあるものですから、その辺の関係を、いろいろな判断をされるときの一つの大きな調整をするためにも、私は、法務大臣が積極的にその懇談会に入っていただいて、より一層推進の役割を果たしていただきたい、このことを特にお願いをしておきたい、このように思います。

 そこで、具体的な、今お話しのように急増してきた問題につきまして、いろいろと問題点があろうと思います。

 これまた別の機会に質問するべきことかもしれませんけれども、この機会に、ホームレスをどうしてなくしていくか、いろいろな対策を内閣として積極的にやっていただかなければ、簡単に片づく問題ではないのじゃないか、このように思います。

 今ありました労働省、厚生省、建設省、警察庁、いろいろなそういった関係のお役所がばらばらにやっていただいては困るのであって、その点について、皆で何とかこの人たちを正業につかせる、それから、その人たちを一般の公共的な施設に野宿のような形で、当然の権利のようにそこにおらせること自体が私は非常に問題だろうと思いますので、それをなくするためにもやっていただきたい。

 特に、大阪市は物すごくホームレスが集まる場所になっている。この前伺ったところでは、八千六百六十でしたか、大阪市内だけでそれだけのホームレスがいる。特に、例えば年末の対策なんかで、仕事がないわけです。そういういろいろなことがあったので、緊急の施設をつくって、年末の間だけでもそこへ収容するということをやりました。やりましたら、今まで以上に物すごいたくさんの人がそこに来て、この間は暖かいところで寝ることもできる、そして食事も与えられる、仕事がなくてもお正月越すことができるということで、一月六日までですか、収容されたときに、たしか二千二百か三百の人たちが集まったということです。

 これは一体どこから集まってきたか。大阪市内のホームレスの人は、まだ依然として残っている人がかなりありまして、東京とか川崎とか、そういったところから来たとか、北九州の方から来たという人もあるというふうなことで、そのときだけえらくたくさんの人が集まってくる。これは、考え方によっては、大阪市がほかのところの市町村に比べていろいろな施設が行き届くといいますか、やってくれているので、それに便乗する。

 それから、そういったものがまた非常に情報が早くて、そういったことを応援している人たちが、ボランティアでやっておられるのだろうと思いますが、そういう人たちが新幹線の旅費まで出して、来い、こういうふうなことをやっている。そういう話まであるぐらい、公正な、公平な市町村の対策というものをとってもらわなければ困るわけです。

 中央の方でそういったことについて全部任せきりにしておるということであってはならないので、どういった基準でどういうふうなことでやってもらいたい、こういうようなものを打ち出したときに初めて対策がとれるのではないかな、このように思います。これは、そういった懇談会の席で、この問題については十分審議していただきたい、これを要望として申し上げたいと思います。

 その一つに、労働省の関係で、雇用の創出、非常に難しいわけです。これだけの不況の中で、仕事が減っていく一方であって、日雇い労務者の場合は特に厳しい状況があるのではないか。その辺につきまして、そういう日雇いの方々の緊急的な対策で、今までの、仕事をただ職業安定所とか相談所とかそういうところであっせんするだけのことではとても片づけられないので、何か特別の方法というものが考えられないのだろうかということが一点。

 もう一点、労働省に伺いたいのですが、現在、この日雇いであぶれる日が非常に多いわけであります。いわゆるあぶれ手当てといいますか、そういうふうに俗称言っているのですが、あぶれる人たちのための対策については、割とそういうものについて保障的なものが厳しい条件になっておると思うのですが、そういうものの緩和というものを考えられないか。この点については非常に緊急性を要する問題ですから、労働省で対策があれば伺いたいと思います。

 

○長谷川説明員 日雇い労働者の雇用失業対策についての御質問でございます。

 労働省といたしましては、日雇い労働者の雇用失業対策について、基本的には、国の雇用対策としては、民間企業による雇用の促進を図ることを基本に対策をやっておるところでございます。

 雇用失業情勢が大変厳しい中で、日雇い労働者を取り巻く雇用環境が厳しいということでございまして、そういったことで日雇い労働者がホームレスになるという部分もあるわけでございまして、今般、雇用活性化総合プランというものを取りまとめたわけですが、そういった中でこの日雇い労働者対策を強化をいたします。

 平成十一年の一月一日から、十五カ月の暫定措置といたしまして、求人開拓推進員による日雇いの求人の掘り起こし、これは大阪には二十六人配置をする、増加をするつもりをしております。そういったこととか、日雇い労働者を多数雇い入れる事業主に対する奨励金の支給、これも十五カ月で十一億円の予算を新設をいたしました。こういった対策を活用いたしまして、日雇い労働者の雇用状況の改善に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

 それから、雇用保険の日雇いの労働求職者の給付金の支給要件の緩和はできないかという御質問でございます。

 これにつきましては、実は平成六年度の雇用保険法の改正のときに、従来、受給要件となります印紙保険料の給付日数が月平均十四日、これは一般の被保険者の場合と同じであったわけですが、日雇いの場合は月平均十三日ということで緩和をいたしたところでございます。

 この問題につきましては、雇用保険制度全体の整合性の問題、また給付と負担の関係、日雇い労働者の場合は保険料に比べまして給付をたくさん出しておるという問題もございますので、この辺については十分慎重に取り扱う必要があるというふうに考えております。

 

○左藤委員 時間が限られておりますので、簡単に御答弁願いたいと思います。

 厚生省の方にお伺いしたいと思う問題としましては、こういったホームレスの人たちの、風邪ぐらいならいいわけですが、ほかのいろいろな伝染病的なものもあって、感染症というものが、非常にそういう心配があると思います。ワクチンを服用させるとかいうこともなかなかできないでしょうし、こういったことに対する対策というもの、基本的な考え方というものをひとつ伺いたいと思うわけであります。

 それからもう一つは、厚生省としてはとにかく、環境庁の関係もありましょうけれども、美化という問題がありまして、あんな状態では、大阪はオリンピックの招致を今願っていますけれども、とてもそれどころか、まず第一に、二〇〇二年のサッカーも長居公園でやることにもなっていますけれども、それもとてもできそうにないというふうなことだろうと私は思います。

 それほど今非常にふえておることがあるわけですから、ふん尿のまき散らしだとか、ごみの不法投棄だとか、いろいろな問題があって、もう無法状態みたいなことになっておるのですが、これに対する特別の、例えば公衆トイレをふやすとかなんとか、そんなような対策を考えておられるのかどうか、厚生省の方でお答えいただければありがたいと思います。

 

○伊藤(雅)政府委員 感染症対策の面につきましてお答えをさせていただきたいと思います。

 ホームレスの方々は栄養状態が悪くて、感染症対策上非常に重要な対象だというふうに考えております。具体的には、例えば、昨年、大阪の西成地区で赤痢の集団発生でございますとか、また、いろいろの報告から、結核などにつきましても他の地区に比べて大変高い発生率になっております。

 したがいまして、私どもといたしましては、根本的なホームレス対策はもちろん必要でございますが、まず、現状におきまして、その緊急の対策といたしまして、赤痢などの感染症の患者発生時におきましては、患者の治療に万全を期すと同時に、患者の同居者や接触者などの健康診断や消毒の措置を講ずることによって拡大防止に努めていくことを、各自治体を指導しているわけでございます。

 また、結核につきましては、これは大変大きな問題でございまして、今年度から、公衆衛生審議会の緊急提言を受けまして、保健婦が直接訪問をいたしまして、目の前でホームレスの方に服薬させるという特別対策を実施に移していきたいと考えております。

 また、お尋ねのワクチンの接種の件でございますが、現行の予防接種法におきましては、ワクチン接種は主として子供の病気を対象に制度化されておりまして、ホームレスが問題となる感染症に対しては有効なワクチンがないというのが現状でございまして、御理解を賜りたいと思います。

 

○小野(昭)政府委員 廃棄物処理法におきましては、「市町村は、必要と認める場所に、公衆便所及び公衆用ごみ容器を設け、これを衛生的に維持管理しなければならない。」という規定がございます。これは、市町村の責務として、公衆衛生の観点あるいは生活環境保全の観点から、市町村の判断できちっとやってくれということを法的に定めているわけでございます。

 私どもといたしましては、この規定の趣旨を踏まえまして、各市町村に地域の実情に応じた対応をしていただきたいと考えておりますが、今先生御指摘の、大阪の例をお引きになりまして、どういったことが必要なのかということにつきましては、大阪の方からの御意見も聞きながら、技術的な支援が必要であれば、そういったものも図ってまいりたいと考えております。

 

○左藤委員 そのほかにも、例えば道路それから公園の管理をしております建設省、それもまた実際にそこにおきましていろいろな問題がありまして、治安の点から見て警察庁との関係があるだろうと思いますが、実はこの前も、かなり年輩の御夫婦が、夜、ホームレスのおる公園を歩いておられたら、何か奥さんがだんなさんの前でレイプされたような、そういうひどい問題があって、今告訴するとかなんとかいうようなことを言っておられるような事例もあります。

 非常にそういう意味での市民の不安というものを起こしている問題がありますので、こういうことに対して、警らをするとか、二十四時間監視というのは難しいと思いますが、そういうことをやっていただいて、そういう人たちが全部犯罪をすぐ起こすような状況であるかないかということは別としましても、市民が安心して生活できるような体制というものをぜひ考えていただきたい。

 そのときに、非常に大きな問題、これは建設省にも警察庁にも関係する問題でしょうけれども、最初に申し上げましたような、そういったことについて、もちろん現行犯であればこれはすぐ押さえることができますけれども、市民の安全を図るためのいろいろなことができるかどうかということで、ホームレスの個人の調査というものはやっておく必要があるのではないか。また、生活保護を受けさせたり、そういう者を収容するためにもそういったことが必要だと思いますが、その人たちは個人の自由とかなんとかいろいろなことを言いまして、とにかくそういうことについて、調べられるということが非常に嫌だという問題があると思います。

 この辺、何か一つの、市町村に調査する権限というものを与えることができるのかどうか。これは人権の問題とも絡んでくる問題だと思いますので、後で裁判になったときの問題だとかいろいろなことについてその懇談会でよく煮詰めて、大丈夫だ、しっかりということで、そういう個人的なデータみたいなものを調査しておく必要があると思いますが、そういうことが懇談会でもやっていただけるかどうか。警察庁なり建設省なり、どちらでもいいですが、そういうことについてのお考えがあれば伺いたいと思います。

 

○村上説明員 ただいま先生から、いわゆるホームレスの方々の個人データの収集ができるかどうかというお話でございましたが、警察といたしましては、先ほど来お話が出ておりますように、地域の方々、またそこをお通りになる方々の安全等を十分配慮しながら、この問題に対処していく所存でございます。

 

○左藤委員 時間になりましたので、これは要望として、これからやっていただきたいと思いますが、今の御答弁というのは何のことか、答えになっていないのじゃないかな、私はこう思います。もちろん、地域の皆さんの例えば告発があったらそういうことをやるのか、積極的にいろいろ安全を図るための一般の警らをやるとか、そういうふうなことについて、個人的なデータみたいなものを持ってやるのとやらないのでは、私は非常に違うだろうと思います。

 これはまた、プライバシーの問題とかいうことがあったり、いろいろな黙秘権のようなものとの関連もあるだろうと思いますので、そういう意味で、やはり私が先ほどお願いしました関係各省庁間の懇談会か何かで強力にこれをひとつまとめていただく、しかも緊急にやっていただきたいということを特に要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。