145-衆-予算委員会-9号 平成11年02月03日

 

平成十一年二月三日(水曜日)

    午前九時三十分開議

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本日の会議に付した案件

 平成十一年度一般会計予算

 平成十一年度特別会計予算

 平成十一年度政府関係機関予算

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○田端委員 ありがとうございます。

 まだ始めたばかりだからということですが、しかし、これからが大きいところ、大きい都市が始まるわけでありまして、東京とか大阪とか大都市がこれからどんどん三月末にかけて実施していけば、この反響はもっと大きくなっていくだろうし、もっと明るい話題が続々誕生するんじゃないか、私はそういうふうに思っております。したがって、そういう意味では、これがこの不況の中で明るい話題となり、活性化に大きく役立つことを大変に私も期待したい、こう思っております。なお政府の方も、引き続いてまた御検討をよろしくお願いしたいと思います。

 少し、ちょっと暗い話になりますが、路上生活者といいますか野宿生活者といいますか、いわゆるホームレスの問題についてお尋ねしたいと思います。

 昨年、私は財政特別委員会でこの問題を取り上げましたが、あれからまたことしになって大変ふえているわけですね。経済の状況の悪化が非常に深刻な事態を生み出していると思っております。

 私は大阪市西成区に住んでおりますが、いわゆるあいりん地区のあるところでありまして、ここには大変なホームレスがいます。私の感じでは、去年の秋には八千六百人大阪でいると言われたのが、実感として今はもう一万人を優に超しているだろう、そういうふうに感じます。

 東京でも五千は超えているだろうと思いますが、新宿かいわいだけでも千人はいる、あるいは、いよいよ皇居の広場のところにまでテントが出てきた。あるいは、川崎なんかも六百六十円の食券を配るわけですが、それに千人の人が列をつくる、こういう状況が今起こっているわけでありまして、何も大阪だけの問題ではなくて、これはもう大都市特有の問題として起こってきた、これは新しい日本の都市問題である、私はこういう思いをしております。

 きょうは、そういう意味で、私は地元なものですから、今お配りさせていただきましたが、写真で実態を見ていただきたい、こう思います。

 これは、一番の写真ですが、大阪城の中の大阪城公園が、こういう青いテントがいっぱいであります。そういった意味では、もう本当に金のしゃちほこが泣いているな、こう思うわけであります。

 それから、二番の写真ですが、長居競技場というのがありますが、長居公園、ここがまたこういうふうに青いテントがいっぱいある。

 先日、大阪女子国際マラソンが行われました。長居競技場を発着にして大阪城を回って帰ってくる、こういうコースでありますが、つまり、こういうテントの中をマラソンしていく、こういうことでありまして、もし大阪でオリンピックをするようなことになって、こういうテントが続いているとなれば、本当に恥ずかしいことだな、こういう思いをいたします。

 これは皆さんのお手元に、三番になっていますが、西成公園というところですが、この西成公園は小さい公園ですが、もう満杯のように、三百以上ぐらいの青いテントがありまして、真ん中に野球場があるんですが、そこに出入りするのは、親がついて行かなければ、子供だけでは野球場に出入りできない、こういう状況であります。

 四番の写真ですが、西成区に三角公園というのがございます。ここでボランティアの方々が炊き出しをやっているわけでありますが、これはつい最近撮った写真でございます。本当にすごい人が、お昼の炊き出しの時間にはこういうふうに列をつくって順番に待つ、こういう状況であります。

 下の、五番の写真は、もう一つその近くに四角公園というのがあるのですが、これは西成警察署の裏側にあるのですが、西成警察署を一周してこういう行列ができる、こういうことでございます。

 これらはボランティアでやっていただいているわけですけれども、あいりんセンターというのがございまして、あいりんセンターで支給しているところにも千人ぐらい列ができます。これは、こういう乾パンを、大阪市の災害救助用の乾パンを支給するわけです。これに千人ぐらいの人が列をつくる。これをどういうふうにするかというと、お茶わんみたいなものに入れて、砕いて水をぶっかけて食べているわけですけれども、こういう、これはお水ですが、これは今冬場はやっていなくて、夏のときにはこれも支給しているようですけれども、千人ぐらいの人がこれもやはり並ぶ。

 こういう状況でございまして、あと、七番というのは恵美須町という阪堺線の駅ですが、最終電車が終わりますと、ホームを開放してこういうふうにたくさんの人が寝泊まりをする。

 それから八番の、これはでんでんタウン、秋葉原のような日本橋の電気街ですが、シャッターがおりる八時から九時、シャッターがおりると同時に段ボールのおうちがずらっと並ぶ、こういう状況であります。

 九番は、例の隅田川のテラスで、白鬚橋から桜橋のあのかいわいですけれども、これは東京の写真でございます。

 六番は、これは今宮工業高校の横ですが、十二月末に今宮中学校周辺だけは撤去しようということで撤去しました。そうしたら、何のことはない、中学校は撤去されたけれども、今度今宮工業高校へその人たちが移ってきただけで、六番の写真がこういうふうになっています。

 こういうことで、全くそういう意味では本当にイタチごっこでもあるわけですが、この問題はもう単に大阪府とか大阪市とかいう自治体の問題ではなくなっているのではないか、こういう思いを強くしているわけであります。

 ホームレスと言われる人たちの大半は、中高年、五十代から六十代、平均年齢五十五、六歳というふうに言われておりますが、いろいろな事情があってこういうふうになっているんだと思いますが、これはすなわち景気と反比例する形でこういうふうにふえてきている、こういうふうに実感をしております。

 したがって、根本的な解決策というのは、私は、景気、経済活動を活性化する以外に解決策はないと思いますが、しかし、もう自治体だけに任せるのではなくて、もうここは国が乗り出していく、そういう状況になっているんではないか。

 例えば労働省の方にもお骨折りいただき、厚生省にもお骨折りいただき、また、治安という面からもこれは大事な問題でありまして、本当に地元では困っているわけでありまして、正直言って、私が夜中に自宅に帰りますと、家の前に寝ていてもうどうにもならないというのが現実でありまして、文句も言えないし、どうしようもない。だから、地域住民の人は、そういう意味では非常に困っているわけであります。

 官房長官、ぜひ、人情味お厚い政治家として手腕を振るっていただきたいと思いますが、こういう多くの省庁、多数の垣根を取り払って解決しなければならないようなこういう社会問題に対して、これはぜひ、合同的な対策本部といいますかプロジェクトチームといいますか、そういうものをつくっていただいて、とりあえず、まず実態調査からやっていただいて、そこから一つの何らかの方向、いろいろな知恵が出てくると思いますので、そういうことをお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

 

○野中国務大臣 委員からただいまお話がございましたように、深刻な経済状態あるいは雇用状態の中で、特に今おっしゃいましたようにホームレスの方々がたくさんふえてまいりまして、平成九年の八月の累計でありますけれども、全国的に集計して六千三百九十八人と言われましたのが、平成十年では一万四千九百三人というように、大変なふえ方でございました。

 特に、お地元の大阪におきましては、平成九年度は千二百五十四人であったのが、十年は八千六百六十という大変な数字になっておるわけでございまして、福祉、就労、医療または住宅等多岐にわたる問題がございまして、おっしゃるように、関係省庁が横断的に取り組む必要があると考えておるところでございます。

 十一月の二日に小渕総理が大阪に参りまして、関係市長さんあるいは知事さん初め皆さんとお会いをし、地域の視察をいたしました際にも、磯村大阪市長さんから特にこの問題が指摘をされました。総理も、その場で、ホームレスを抱える大都市の自治体の皆さんと省庁横断的に取り組むことを考えたいということを申しまして、翌日、直ちに関係省庁にその指示をいたしまして、総理のもとでこの対策を考えることにいたしました。十二月の九日にそれぞれ、東京都、川崎、横浜、名古屋、大阪あるいは神奈川県、愛知県、大阪府、こういう府県あるいは都市にお集まりをいただき、また、おっしゃいましたように、労働、厚生、警察を初め、自治省等関係省庁にもお集まりをいただきまして、第一回の会合をいたしまして、それによりまして、大阪市を含めて実態調査をやってみるというお話をいただいたようで、ただいま実態調査をやっていただいておるところでございます。

 こうした中から、労働省とされまして、日雇い労働者の就労の場が不足をしておりますことから、こういう方々になられた背景を見ながら、日雇い労働者を多数雇い入れる事業主に対する奨励金制度を創設するとか、あるいは、厚生省としても、福祉事務所、保健所等において各種の相談あるいは援助を行いますとともに、生活保護制度による保護施設への入所等を行うなど、国といたしまして、現在の諸施策でも対応をしながらも、今後どのような支援策が適切かつ効果的か、関係自治体とも協力しながら積極的に進めてまいらなければならない重大な課題であると思っておるわけでございます。

 ただ、御承知のように、こういう人は住民登録もしていらっしゃいません。こういう人を市民権を与えながらどのようにしていくかというのは、行政的にはいろいろな隘路があるわけでございます。私もこの間、京都御所のところでこういう人がジョギングしておるのを見まして、どうしてジョギングしているんだと言ったら、いや、このごろは、O157がふえてから、あれから駅弁屋とホテルのところにおるとすぐぜいたくな食い物がみんな出てくるから、我々もなかなか食べ物が豊富になったなんと言う人を見ますと、働かないでこういうところにおる人も中にはあるのかな、こう思いながら、そういう背景をもまた調査をして、そして自立の道を考えていかなくてはならないと存じておるところでございます。

 

○田端委員 官房長官、御丁寧にいろいろなお話をいただきました。それはもう私もよくわかっております。わかった上で質問させていただいているわけで、要するに、もうそういう段階を通り越しているのです、今は。だから、対策本部をつくっていただいて、リーダーシップをとっていただきたいということをお願いしているわけで、ぜひその方向で御検討いただきたい。

 諸外国でもやはりいろいろなことがあるようですけれども、いろいろな知恵を出しているようであります。例えば、地下鉄の駅を夜は開放して、そこに泊まっていただくようにするとか、こういういろいろな知恵はあるかと思いますので、ぜひこの問題を前向きにお取り組みいただきたい。

 もう時間があれですので、野田自治大臣、済みません、国家公安委員長として、正直言って、ひったくりとか窃盗とかいろいろな事件が多発しております。警察も一生懸命やっていただいているのですが、社会不安というものと裏表になっていることも事実でありまして、また、あいりん地区は、ここは覚せい剤の密売の日本の一番の密集地です。そういった意味でも、非常に暗い影が漂っているわけでありまして、この問題に対して、国家公安委員長としての御決意といいますか御所見をお願いしたいと思います。

 

○野田(毅)国務大臣 御指摘のとおり、その周辺の地域の住民にとって、大変治安の上で不安を感じているということも十分承知をいたしております。そういう点で、治安の維持に万全を期していかなければなりません。それには、防犯体制をさらに一層強化をして生活の平穏が乱されないように、治安当局としてはさらに督励をしてまいりたいと考えております。

 

○田端委員 最後に関係大臣にお願いしておきたいと思いますが、労働大臣、きょう来ていただいて、どうも済みません、お答えしていただけなくて。

 ぜひ一度現地にお越しいただきたい。現場を見ていただくのが一番早いと思います。自治大臣、国家公安委員長としてもぜひ見ていただきたいし、労働大臣にも見ていただきたい。官房長官にもできたら見ていただきたい。堺屋長官も、大阪を離れてしばらく時間がたっておりますので、ぜひ一回また現地をしっかり見ていただければよくわかっていただけると思いますので、お願いしておきたいと思います。ありがとうございました。

 

○山本(孝)委員 どうぞよろしくお願いをいたします。

 今、年金改革をやっている中で、社会保険庁の職員の中で、せっかく国民が納めているものがどこかに消えてしまうということは、大変この年金制度改革に対しても不信を抱かせてしまいますので、ここはしっかりとした対応をお願いしたいと思います。

 会計検査院の院長さん、どうぞ、結構です。ありがとうございました。

 続いて、ホームレスの問題について、官房長官にもう一度お願いをさせていただきたいというふうに思います。

 先ほど田端委員が御質問をされまして、私も後ろで聞いておりまして、京都御所のところでジョギングしておられる方を見てというふうにおっしゃいました。一つの例としてはあるのかもしれませんが、そういう例をお引きになってお話しされますと、全体像がどこかへ行ってしまって、ホームレスの問題の深刻さが消えてしまいますので、そこはぜひ御注意をいただきたい、私が注意を申し上げるような立場ではないです、僣越でございますが、ぜひそれはお願いしたいということ。

 それから、特にあいりん地区の場合で申し上げますと、一概には言えないんですね。あそこにおられる方たちは、日雇いで働いておる方もおられる、あるいは、いわゆるくず拾いということで、大阪市内全域を歩き回っておるような方もおられる、あるいは労働能力の全くない方もおられるわけですね。

 あいりん地区の日雇い労働者の方々は主に建設業に従事しておられますけれども、東海、北陸方面から西日本全域にかけて、大阪がいわば供給源になっているわけですね。今、建設業界がどんどん機械化が進んできていますので、だんだんそういう仕事ができなくなってきておりまして、結局のところ仕事にうまくつけないという状況があります。ケースワークをするにしても、数が大変多いですから、ここはなかなか苦労をしておられるという部分があるわけですね。

 先ほど官房長官もお触れになりましたように、去年の秋、小渕総理が大阪に来られました折に、磯村大阪市長から特にお願いをさせていただきました。早速にも、おっしゃいましたように、労働省が事務局になられまして、労働、建設、厚生、自治の各省とともに、あいりん対策等連絡協議会が開催をされました。先ほどお触れになったとおりです。これが、しかし残念ながら、一回の開催で終わっております。今後、開催の予定もないというふうにお伺いをしております。

 昨年十二月には、これも先ほどお触れになりましたように、厚生省が今度は中心になって、関係の都市からのホームレス問題関係自治体ヒアリングを労働、建設、自治、警察の各省と一緒になっておやりになりましたけれども、これも、まずヒアリングをされたという段階で、残念ながら今とまっております。

 どこかに行ってもらえばいいという話でもない、お金を出せばいいという話でもない。さっき、お金を出しているとおっしゃいましたけれども、事業主に出しても本人のところには行きませんので、ここはなかなか思うようには事が進んでいないという状況があります。

 大阪市立大学の島先生がずっと、実態調査といっても、我々がこのままで行っても本当のことを言ってはくれませんので、一緒に住みながら一人一人のことを聞かないと実態調査には実はならないんですね。大変にそこを苦労して今調査をしておられます。

 そういうこともありますけれども、どこかの省が、例えば、厚生省が、あるいは労働省が、警察だから警察がという話で片がつく話ではないので、そういう意味合いでぜひ、先ほどもおっしゃいましたけれども、関係省庁またがっていますので、総理大臣のもとに対応を協議すると先ほど御答弁なさいましたので、そうであるならば、政府の中に体制をつくっていただいて、まずは所管をどこかにしっかりと決めていただきたい。例えば、内閣の内政審議室でやるならやる、あるいは厚生省がやれというならやるという形をきっちり決めた対応をぜひしていただきたいという思いで官房長官にお願いをし、御答弁をお願いいたしたいと思います。

 

○野中国務大臣 先ほど田端委員にもお答えをいたしましたように、今山本委員からそれぞれ御指摘を賜りました問題は貴重な御提言でございまして、私ども、先ほど御報告申し上げましたように、十二月にそれぞれ関係地方公共団体等にお集まりをいただき、省庁を網羅した会合をいただき、現在、横浜、大阪市を中心に調査を行っていただいております。なお、他の市においても調査を今行っていただいておるようでございますので、この結果を待ちまして、お話がございましたように、関係省庁を一体とした組織をつくりますとともに、関係地方公共団体とも一緒になりまして積極的な施策を講じられるように対応してまいりたいと存じております。

 

○山本(孝)委員 官房長官、くどいようで申しわけございませんが、その組織をつくっていただくという御答弁、ありがたく受けとめさせていただいて、事務局といいましょうか、中心は、官邸といいましょうか官房長官のところで御担当いただけるのか、あるいは何かお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。

 

○野中国務大臣 所掌につきまして、どこにいたしますかはそれぞれ内閣で相談をいたしたいと存じますけれども、現在私の考えるところでは、内政審議室を中心にして考えたいと存じております。