143-参-労働・社会政策委員会-9号 平成10年10月08日

 

平成十年十月八日(木曜日)

   午前十時開会

 

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  本日の会議に付した案件

○労働問題及び社会政策に関する調査

 (雇用失業情勢の現状と対策に関する件)

 (雇用促進事業団の組織・業務の見直しに関す る件)

 (ホワイトカラーの能力開発に関する件)

 (介護労働力の確保に関する件)

 (労働債権の確保に関する件)

 (育児・介護休業制度の改善に関する件)

 (非正規労働者の増加に関する件)

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○今泉昭君 ぜひお願いをしておきたいのは、悪いいろいろな雇用条件が重なってまいりますので、財政運営も大変厳しい局面に向かうことは間違いないと思うんですが、給付水準の条件低下であるとか保険料率の値上げということは視界から少し遠ざけておいていただきたいというお願いをしておきたいと思うわけであります。

 それからもう一つは、これほど雇用が悪化してまいりますと、企業の立場からすると手元不如意で払えないということで、実は労働者の債権であるところの賃金の不払い、退職金の不払い、その他の不払いというものが大変起こるわけでございます。この労働債権をどのように確保するかということも労働行政の大変重要な仕事の一つだろうと思うわけでございまして、立てかえ払いをこれまでも何回か水準の引き上げをしていただいてきております。

 ところが、倒産の実態をいろいろ調べてみますと、自分で整理をして倒産してやめる、あるいは和議でやめるというやり方が一番多いわけでございます。そうしますと、債権の順位というものがいろいろございまして、商法とか民法とかいろいろの中で労働債権の位置づけがみんな違うわけでございます。特に一番多い一般的な倒産、和議なんというのは労働債権が一番下の方に置かれているわけでありまして、一番最後にしか労働債権が確保できていないという実態。

 こういうような雇用不安で倒産企業が多くて、その被害を受けている労働者が大変多いときに、こういう法体系というものをこのまま放置していいのかどうか。例えば会社更生法などになります、と労働債権は高い順位になるけれども、更生法なんというものは全体の倒産の中では数からいうと微々たるものなんです。

 そういう意味で、この労働債権確保のための法体系の再検討、そういうものを考えられる余地はないのか、つもりはないのか、お聞きしたいと思います。

 

○国務大臣(甘利明君) 今の先生御指摘の点は、私が大臣に就任してから何人かの先生からも御指摘をいただいてまいりました。

 結論から申し上げますと、どういう検討の余地があるか、これは労働省だけじゃなくてすべての省がかかわってきますから、労働省としての立場は、できるだけ労働債権は高い方がいいと私は個人的に思っております。各省とのすり合わせといいますか、個別法体系も違いますので、そこのところの整理がどこまでできるか。契約社会の中で、その契約の実効力を阻害することになってもいけないことはあるのでありますが、とにかく、どういう協議の場でこの問題が具体的に前進をしていくか、今事務方に投げかけているというところであります。その辺のところまでしかまだ答弁ができませんが。

 

○今泉昭君 残された時間が限られてまいりました。

 労働省には当面の雇用対策、緊急対策としていろいろと見解をお聞きしたいことがまだたくさんあったわけでございます。例えば、ワークシェアリングの新しい取り組みのあり方について検討する余地はないかとか、あるいは人手不足分野に対する、先ほどちょっと介護問題で田浦先生の方から話が出ましたけれども、介護問題だけではなくて人手不足分野というものが現にあるわけでございまして、そういう面についての緊急的な、人を政府、行政の力でもって対応していく方法はないかとか、幾つかお聞きしたいことがあったんですが、ちょっと時間がなくなってしまいましたのでまたの機会にさせていただきます。

 きょうはたまたま法務省の方も実は呼んでおりまして、そういう意味では大変失礼なんですが最後になりますけれども、法務省の方と、それからそれに関連して労働省からも御返答願いたいと思うんです。

 最近のテレビによりますと、ブラジルとかペルー等からの日系人の出稼ぎ労働者がこの不況のもとで大変な苦労をしている。その報道によりますと、大量の人たちが仕事はもちろん、首を切られる、住んでいた家も追い出される。ガードの下でホームレス生活をしているという報道がなされ、その報道が母国のテレビで流されて、例えばブラジルとかペルーで流されて、日本は日本人でなければこういう人たちに対する救いの手を出さないのか、ある意味では日本に対する評価ががた落ちをしている、あるいはそういう人たちからの非難が大変あるとかということも聞きます。

 そういう意味で、これも大変重要な一つの点じゃないかと思うんですが、一つは、労働省としてこういう問題をどのように考えておられるのかということをお聞きしたいんです。

 法務省の方にはデータ的にちょっとお聞きをしたいと思うんですが、出稼ぎ労働者として日本に来られている方々、特に日系人の方々が、聞くところによると二十万人とか二十五万人とかというふうに聞くわけでございますが、どのくらいいるのか。そして、今大体どういう地域から出稼ぎ労働者として来られている人たちが多いのか。そして、最近の動向がどうなっているのか、ちょっとお聞きしたいと思います。

 それをもって私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 

○政府委員(竹中繁雄君) 出稼ぎというカテゴリーでは統計ができていないものですから、一番そういうことをよく言われるブラジルとかペルーとかというようなところからどのぐらいの人がお見えになっているかということでございます。

 今現在外国人登録に載っております数字で申し上げますと、ブラジルに関しましては約二十三万人の方がおられます。その中で約半分が日本人の配偶者等というカテゴリー。したがいまして、日本人のそれこそ配偶者あるいはそのお子さんという格好で来ております、約十一万。それから、残りのほとんど、やはり十一万が定住者。これは日本人の血縁関係者という格好で来ておられる方ですが、そのカテゴリーで滞在されております。

 ペルーにつきましては、もっとはるかに少なく

全体の総数が四万人という数字でございます。

 

○政府委員(征矢紀臣君) 御指摘のように、今回、長期景気低迷によりまして雇用・失業情勢が悪化をしている、そういう中で日系ブラジル人等の方々の雇用にも相当悪影響を及ぼしているところでございます。

 私ども、日系人の方に対して専門的に職業紹介を行う公共職業安定機関として日系人雇用サービスセンター、こういうものを設置しておるわけでありますが、そこにおきましても新規求職件数、これは平成十年度第一・四半期で見ますと、対前年同期化で八〇%増と大幅にふえております。

 私どもといたしましては、こういう方々について日系人向けの求人の開拓に努力する、あるいはそういうものを踏まえてこれらの方々に職業紹介を一生懸命やっている、こういうことで努力はいたしておりますが、情勢が非常に厳しい状況にある、これはもう御指摘のとおりでございます。

 また、あわせましてブラジル国サンパウロ市にございます日伯雇用サービスセンター、これは日本とブラジル共同でそういうサービスセンターをつくっているわけでございますが、そういうところにおきまして、我が国に出稼ぎを希望する日系人の方々等に対しましてこの非常に厳しい雇用状況につきましても説明をするようなことも行っているところであります。