142-衆-予算委員会-34号 平成10年06月11日

 

平成十年六月十一日(木曜日)

    午前九時開議 

  

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 平成十年度一般会計補正予算(第1号)

 平成十年度特別会計補正予算(特第1号)

 平成十年度政府関係機関補正予算(機第1号)

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○渡辺(喜)委員 ぜひ今の大臣のお話のようにやっていただきたいと思います。

 とにかく日本は今お米が余っちゃって、四百万トンも在庫があるというのですからね。一方、インドネシアの方は、御指摘のように、三百五十万トン足りない。大体百五十万トンぐらいは手当てがついておるようなのですが、それでも二百万トン足りない、こういうことになっているわけです。ですから、これは大臣が今おっしゃったように、お米を、現物をお貸しをするというやり方は非常にグッドアイデアだと思いますよ。

 これは実はかつてやったことがあるのですね。韓国に対して、昭和四十四年と昭和四十五年、大体六十三万トンぐらい現物でお貸しをした。それから、パキスタンにも似たようなことはやったことがあるのです。いずれも現物で返してもらったり、あるいは延べ払いみたいな形で返してもらったり、すべてこれは完済されているわけですから、こういう仕方で日本のお米の在庫を人道援助に回してあげるということは、両国の利益にかなう話でありまして、ぜひ一刻も早くお願いをしたいと思います。

 そういった社会不安を静めるということは、政治の非常に大事な要諦なんですよ。先ほどのお話にもありましたように、日本でも失業率が四%を超えちゃった。社会不安、あるいは尾身長官がよく言われるコンフィデンスクライシスということがこのごろ非常に強くなってきておるんです。

 そういう中で、私が非常に今心配なのは、住宅ローンを抱えている人たちの中で、平成四年とか五年から始まったゆうゆうローンというやつですね、ゆうゆうローンかふうふうローンかよくわかりませんけれども、五年間は大体月々十万円ぐらいの返済だ、しかし六年目からは十七万円ぐらいの返済になりますよというようなローンの仕組みなんです。

 こういうローンを借りている人たちが、平成四年に借りた人たち、繰り上げ償還なんかもやった人たちがいるんですが、それでも十八万人ぐらいまだ残っているんですね。平成五年度に借りた方は三十七万人いるんですよ。平成六年、二十五万人いるんですね。平成七年、二十七万人、平成八年、十九万人。こういう人たちは、大体、特に平成四年、五年なんというのは、政府の景気対策にこたえてくれて、それで、地価が下がり始めていたわけですから、それでも借金してマイホームをつくってくれたという、例えてみれば、これは神様みたいな人たちなんですよ。

 ですから、そういう人たちが、ちょっと自分の予期せざる経済状況に入っちゃった、それで、上がる給料も上がらなくなっちゃった、それから上がるべきボーナスも上がらなくなっちゃった、しかしローン返済額はどんとふえてくるということになると、これはちょっと大変なことが起こりはしないか。

 もし万が一、職を失ってしまったということになったら、これは日本経済を支えてきたその中産階級がプロレタリアートになっちゃうかもしれない、それ以上にホームレスになっちゃうかもしれないという、これは笑い事じゃないですよ、本当に。ですから、これは大変なことなんであって、やはりこういう人たちに対する何らかの対策を私は打っていかなきゃいかぬというふうに思うんですよ。

 このゆとりローンというのは、去年あたりから十年返済を延長しますというようなことを始めておるんですが、この程度のやり方では、とてもじゃないが、これはうまくいかない。ですから、例えば、このリスケをやるとか、あるいはモラトリアムをやるとか、もう返済を五十年ぐらいにしてやるとか、それくらいのことをやらないとちょっと無理なんじゃないかなという気がするんでございます。

 それから、税制の問題もありまして、買いかえをする人には損失の繰り延べというものをことしから三年間認めているわけですよ。ですから、買いかえをせずに売り切りにした人についても、私は損失の繰り延べというのは認めてあげるべきだというふうに思います。それと同時に、繰り延べを認めてあげるのなら、その払った税金を繰り戻し還付してあげるという選択肢もあっていいと思うのですね。ですから、そういうことをやれば、この中産階級、日本経済を支えてきた人たちがホームレスにならずに済むということなんですよ。

 それから、思い切って今の破産手続、これをもっと使いやすい、破産者のレッテルを張られずに済むような制度がつくれないものか。住宅ローン版徳政令と言ってもいいかもしれませんが、要するに、破産者のレッテルを張られてしまうと、これはいろいろな法律上の資格制限を受けるわけでございます。ですから、破産宣告を受けたときには財産すべて売却して弁済に充てなければいけない、そういうことになるわけですから、これをもうちょっと緩やかにしてあげる。

 例えば、このレッテルを張られずに、資格制限を受けずに、ただ、将来の収入からある一定限度までは弁済をする、しかしそれ以上はチャラにしてあげますよというような制度ですよ。ですから、住んでいるマイホームは、これはそのまま処分しないでも結構だ。アメリカは破産手続の中にそういう制度があって、うちのおやじが、あっけらかんのかあだと言って怒られたことがあるのでございますが、余りあっけらかんのかあでも困るのですけれども、やはりこれは新規まき直しのチャンスを与えてあげるということが大事なことなんですよ。

 ですから、マイホームを取得した人たちがその夢破れてしまった、しかしもう一回新しいチャンスを切り開く道、その道については我々いろいろ用意してあるわけですよ。例えば、定期借家権という制度をつくろうとか、あるいは定期借地権、土地代なしで家が持てる、そういう制度をもっと使い勝手をよくしようということは今やっているわけでございますから、こうした個人債務者の更生手続の創設、こういったことについて、我々は真剣に考えておりますが、どうですか、法務大臣、お考えがあれば。

 

○下稲葉国務大臣 お答えいたします。

 議員御指摘のように、住宅ローンを抱えた債務者が、他に資産がなく、経済的に破綻した場合、破産手続を利用しているのが現状でございます。

 そこで、政府・与党といたしましても、金融再生トータルプラン推進協議会の中で議論いたしているわけでございますが、法務省といたしましても、その中でいわゆる倒産法制の全面的な改正作業を今行っているところでございます。

 倒産法制といいましてもたくさんございまして、破産法あるいは和議法あるいは会社更生法あるいは商法の会社整理手続及び特別清算手続等々ございます。今おっしゃるように、人格をなくして財産を没収して、いろいろな規制をせざるを得ない手続ではなくて、更生手続みたいな形で何とかできないだろうかというふうなことでございます。

 住宅ローンそれからカード破産というのも実はたくさんあるわけでございまして、こういうふうな場合に、経済的に破綻した個人の債務者につきまして、破産を回避して経済の再建を図るための新たな手続、例えて言いますと個人債務者更生手続というふうなものができるのじゃなかろうかというふうなことで、私どもといたしましては現在真剣に検討を進めているところでございます。