129-衆-外務委員会-1号 平成06年03月04日
本国会召集日(平成六年一月三十一日)(月曜日
)(午前零時現在)における本委員は、次のとお
りである。
本日の会議に付した案件
理事の補欠選任
国政調査承認要求に関する件
児童の権利に関する条約の締結について承認を
求めるの件(第百二十八回国会条約第四号)
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○福田委員 児童の権利条約を批准・承認するに当たりまして、二、三お答えをいただきたいと思います。ただし、この条約は百二十六国会で我が党も相当時間を割いて議論をいたしておりますので、簡略にさせていただきます。
まず、本条約の締結国は百五十四カ国に上りました。国連の加盟国の約八割に当たっております。
条約の前文、本文五十四カ条を通して読みますと、世界じゅうの十八歳未満の児童に対しまして、日本国憲法に明記してある基本的な人権に関する諸規定を適用させよう、あるいは児童福祉法、学校教育法、また労働基準法に記載されているような趣旨や目的が世界各国にあまねく行き渡るようにしようというのがこの条約であると思っております。
ところが、世界じゅうには十八歳未満のいわゆる子供は十七億人いると言われております。この子供たちがひとしく平和で健康な生活を送っているかということになりますと、まことにそういうふうなことが言えないような現実がございます。幾つかの具体例をあえて申し上げたいと思います。
アフリカ大陸の十から十四歳児の四分の一は不法に働かされている。もちろん教育は受けておりません。
この地球上で一日三万五千人の子供が死亡しております。抗生物質とか経口補水療法という簡単な治療で防げるような肺炎とか下痢、はしかで毎年八百万人が死亡しております。これはユニセフの世界子供白書に載っておるものであります。
インドでは、貧しい親が生活のための借金の返済のために一千万人の子供が労働に従事しております。もちろん教育どころではありません。
ブラジルでは、九百万人の子供の路上生活者がいるわけでありまして、その子供たちは生きるために泥棒を初めとしてあらゆることをしております。一方、金持ちの人たちは、町の秩序維持のために元警官らを雇って、町の掃除をする、こういうふうに称してこの子供たちを抹殺するということをしておりました。その子供の数は一九九〇年から九二年の三年間に四千六百人になるということがブラジルの連邦警察の調べでわかっております。
サハラ砂漠以南のアフリカ諸国で、生まれた赤ちゃん千人当たり五歳までに死亡する人数、つまり五歳未満児死亡数は、国連続計では世界平均で百八十三人でありますが、本条約を既に批准しておりますニジェールという国は、これが最悪でございまして三百二十人、うまり千人のうち三分の一が五歳までに死亡しておる、こういうことであります。ちなみに日本は六人であり、米国は十一人であります。
別の国連続計によりますと、ソマリアでは、小学校に入学した子供が五年生に進学する割合はわずか二%ということでありました。これは百人の子供が小学校に入学して五年生になれる子供はたったの二人しかいないということであります。日本は一〇〇%、米国は九六%ということになっております。
こういうふうな資料は、大体ILOとかWHOで数字をまとめておるわけであります。
ですから、信悪性はかなり高いというふうに考えてよろしいかと思います。このほかにも人身売買、人身売買後の臓器摘出というふうな実に悲惨な報告が数多く寄せられております。
さて、このような世界の悲惨な子供たちの現実を踏まえて、子供たちの人権を守り、安心のできる状況をつくるために国際社会が協力し合うことが、この条約の最大目標であり、意義であると思っております。
他方、先進国であるといっても問題がないわけではありません。
例えば、ニューヨークの貧しい子供たちが路上で麻薬売買をしておる。それどころか、子供たち自身がクラッカーという向精神薬を運用する。クラッカーのために強盗まで働くということが雑誌に紹介されております。
また、日本でもつい先日、十四歳の、女子中学生ですね、女子学生が金欲しさに売春を行っているということが、これも新聞で報道されております。
以上、途上国、先進国と言わず、それぞれの状況の中でさまざまな問題を抱えておりまして、この条約で児童と呼んでいる子供たちというのは、こういうふうな現実の中にいるということを指摘しなければいかぬと思うのであります。
そこで、このたび日本がこの条約を批准するに当たりまして、一義的には我が国の児童の諸権利を守る、このために国を挙げて全力を尽くすということでなければなりませんけれども、同時に、これを機会に、先ほど来の貧困、そして政治社会制度の整わないことにより虐げられている悲惨な状況の子供たち、児童をこの地球上からいかに少なくするかということについて、我が国としてこの分野を国際貢献の一つとして位置づけるぐらいの気持ちを持って条約批准をするということでなければならないのではないかというふうに私は考えているのでありますけれども、大臣はいかようにお考えになっていらっしゃいますか。また、そのような趣旨に沿ったODAの実施とかいうふうなことも考えてもよいのではないかというふうに思っております。御答弁願います。