164-参-憲法調査会-1号 平成18年02月22日

 

平成十八年二月二十二日(水曜日)

   午後一時開会

  

  本日の会議に付した案件

○幹事補欠選任の件

○日本国憲法に関する調査

    ─────────────

 

○喜納昌吉君 昨年十一月の欧州視察に参加し、大変勉強になりました。

 フランスでは、自動車焼き打ち事件などが相次いで社会情勢が不穏でしたが、その現場を見る時間はありませんでした。一連の事件は欧州視察の臨場感を醸す材料になったと思います。

 スイスの下院では、政治制度委員会のヴァイエネス委員長に、スイスの制度は初期の米国の憲法の理想に近いと指摘したところ、委員長らはそれを認めました。日本国憲法も、米国からの押し付けだけではなく、米国の先住民族から発した知恵が人類の知恵となって世界に広がっていったことに私は改めて感銘を受けました。

 スイスでの別の会合で、国家と州との関係について質問しました。スイス内閣府の課長は、中国の中央集権制度とOSCE、欧州安全保障協力機構の全加盟国同意制度を挙げて、その中間にあるのがスイスだという説明をしました。非常に興味深かった感想だと思います。この課長は、私が州の既得権と多様性との関係を尋ねたところ、スイスで使用されている言語の多様性と言語による不平等という問題を絡ませて説明しました。

 そして、スイスのバーゼル都市評議会との会合では、マツォッティ議長にスイスがEU、欧州連合に加盟するのかどうか聞きました。議長は、加盟の可能性は遠のいていると答えながらも、スイスはEUと付かず離れずの関係を維持していくという趣旨の説明を付け加えました。

 EUの民間シンクタンクである欧州政策センター、EPCとの会合では、政治アナリストのデュラン氏に白人国家に対する中国など、あるいは中東など非白人側の不満の存在について尋ねまして、デュラン氏は、欧州統合は世界統合の最初のステップという言葉でかわしましたが、彼ら欧州人の抱く遠大な理想だけはよく分かりました。私たちアジア人も、世界に向けてのスケールの大きな理想を打ち出していくべきときだと改めて実感しました。

 欧州委員会対外総局のランダブル総局長との質疑応答では、EUの国家化について質問すると、EUはグローバル化の負の部分を解決する契機になるという答えがすぐに返ってきました。このほかの説明からも、EUの進展が重要なことがうかがわれ、今も冷戦構造を極東地域に残しながら、分裂・対立状況にある私たちアジアは早く何とかしなければならないという気にますますなりました。

 フランス憲法院では、裁判官のプザン委員に対し、平和強化の観点から日本の憲法改正は人類のために貢献できるものでなければならないと指摘しました。音楽家としてもアジアと欧州の対話に貢献したい旨を伝えました。

 フランス内務省では、投票前の広報活動についてホームレスへの対応や、情宣手段として音楽などのパフォーマンスの利用が可能かどうかを聞きました。

 以上、私がかかわった部分を中心にかいつまんでお話ししましたが、ほかにも数え切れないほどの興味深い話やエピソードがあります。

 一つの感想を付け加えれば、日本でも憲法改正に伴う国民投票だけじゃなく、靖国問題と新たな追悼施設建設問題、日米安保条約、米軍再編に伴う米軍と自衛隊の一体化、社会保険制度、天下りや談合など官僚の不正防止、天皇制などの重要問題については必要に応じて国民投票をするのが時代の要請ではないかという気がしています。もちろん、私たち国会議員が担っている代表制民主制度と国民投票との相互関係を十分に吟味した上でのことです。

 実り多い視察であり、参加できたことに感謝しております。どうもありがとう。