120-衆-法務委員会-3号 平成03年02月20日
平成三年二月二十日(水曜日)
午前十時開議
本日の会議に付した案件
裁判所の司法行政、法務行政、検察行政、国内治安及び人権擁護に関する件
────◇─────
○小森委員 それでは、私の方から午前中に引き続きまして質問を申し上げたいと思います。
まず、左藤法務大臣の所信表明をお伺いをいたしまして、従来の所信表明の型とは少し違いまして、大体やるべきことを隠さずに言われておることを、重点目標等も我々議員の立場からわかるような所信の表明をしていただきまして、従来とは少し、一味違ったものを感じ取らせていただいておりまして、その意味において敬意を表しておきたいと思います。
まず、法務大臣が表明をされております事柄について、先ほどもその言葉は出てまいったわけでありますが、法の秩序の維持ということで、我が国の法秩序の維持ということでは何といいましても憲法の精神が本当に守られておるかどうかということが最大の問題でございますので、本日は後ほど、そういった問題につきましても私の考えておることを申し上げて、さらに所信を突っ込んでお尋ねをしたい、こう思っておる次第であります。
まず冒頭に私のお尋ねしたいことは、その憲法問題に入ります前に、法務大臣の方からの考え方として出ております、最近の犯罪の状況について、非常に複雑となり、多様化し、悪質巧妙化し、広域化、国際化の傾向がある、こういう分析をされておるわけであります。それの分析に対しまして、いわばその原因ともいうべき「政治、経済、社会その他あらゆる分野における著しい変容と国民の意識の変化」ということを挙げられております。
そこで、私は、政治、経済、社会がそういう犯罪の悪質化につながるということになれば、これは政府としても非常に重大な責任を感じてもらわなければならぬわけでありまして、政治、経済、社会のいわば変化というものが国民の意識にどういう形で反映をしておるのか。
私がこの点をここであえて取り上げますのは、これから人権問題を論ずるに当たりましても非常に大事な問題であると思いますから、基本的な認識としてまずその点をお伺いしておきたいと思います。
○左藤国務大臣 犯罪の動向、これはその時代、時代の政治、経済、社会情勢、そうしたものの変化、そして国民の生活様式あるいは規範意識と申しますか、そういうものの変容を反映しているものだ、このように考えます。最近におきます犯罪情勢を見ますと、統計上は一応平穏に推移していると思われますけれども、例えば悪質な保険金目的の殺人、放火事件、それから不動産取引や株式売買に関連する大型の脱税事件、金融機関の役職員等による不正融資事件、過度な投機行為に起因する証券取引法違反、それから、にせブランド商品に係る知的所有権侵害事犯、そういったいろいろな経済事犯がある。それから、一般庶民を相手にした巧妙な悪徳商法というのですか、そういう事犯等が摘発されておりますほかに、薬物犯罪とか風紀犯罪も多種多様な事犯が依然として数多く発生しておるのでありまして、これらの事犯は、戦後におきます飛躍的な経済の発展と国民の生活水準の向上に伴って一部の国民の意識の中に醸成されつつあるように思われます、物質万能といいますか、金もうけ主義あるいは享楽を求める風潮、
こういったものの反映、そういうものが反映しているのじゃないか、このように思うのでありまして、御指摘の点はこのような趣旨で御理解いただきたい、このように考えております。
○小森委員 いろいろと分析をされまして、現象面を言えばまさにそのとおりだと思います。そういう分析ができるということになれば、このことに対する対策というものは、やはり第一義的には政府の今日の社会の運営とかあるいは経済政策とか、そういうものと深くかかわるわけでありますが、その点について、単にお題目を唱えるようにこういう言い方では物事はよくならないわけでありまして、どうしてこんなことになるのでしょうか。
つまり、単に経済が発展するという分析だけではだめなんでありまして、世界的な規模で言うと、先走った人は、体制というものが、今や自由主義経済体制の勝利ということが言われております。しかし私は、そこはそう簡単に言えるべきことではないのであって、例えばアメリカの大都市ニューヨークに行きましても、ホームレスの人が非常に多い。あの零下五度、六度というときに、ニューヨークの町のど真ん中で、宿のない人がそこに寝転んでおる、あすの朝までには凍死するのではないかというような、資本主義の高度に発達したアメリカにおいてそうであります。日本もアメリカに負けず劣らずの経済の発展を遂げて、今やある面では日本がそれをしのいでおる。そういう状況のときに、どうしてこういうふうなことになるのか。単に国民の一部に意識が反映すると言っただけではだめなんでありまして、どういう経済政策の、つまり手の打ちどころに政府としては間違いがあった、欠陥があったと認められるのか、その点をひとつお尋ねしたいと思います。
○左藤国務大臣 これは私は、非常に幅の広い問題でありまして、一つだけの原因でそういったことにはならないと思います。いろいろ社会政策的な問題についての政府の手の打ちようが遅いとか適当でなかったとかいうふうな問題もありましょうし、それからまた教育の問題もありましょうし、いろいろそういった幅の広いところに私は原因があるんではないか、こう思います。そういったことについて、これは内閣全体の問題として対処していかなければならないので、単に法務省の仕事のそういった法秩序の面だけを幾ら改善に努力しましても追いつかない、非常に幅の広い問題ではないかな、このように考えております。