118-衆-予算委員会第四分科会-2号 平成02年04月27日

 

平成二年四月二十七日(金曜日)

    午前九時二分開議

 

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本日の会議に付した案件

 平成二年度一般会計予算

 平成二年度特別会計予算

 平成二年度政府関係機関予算

 (厚生省所管)

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○和田(静)分科員 家なしのホームレス老人が非常にふえているようです。地価の高騰で地上げに遭ったり家を建てかえたりすることが都市部ではふえて、長年住んでいたところを追い出される。アパートを探そうとしても、老人は病気など事故が多いと思われて入居が難しい。

 先日の新聞に、これは大変悲劇的でありますが、布団をふろしきに包んだ六十九歳と七十歳の夫婦が大家に荷物をほうり出されて福祉事務所に救助を求めた、そういう記事が出ていました。こういう理不尽な話は憤りを感じますが、実は行政側も大した対応ができないわけですね。ある意味では警察の問題なのかとも私は思うのですが、「安い旅館を紹介して泊まってもらったあと、たまたま空きが出た保護施設に一時入所させた。」こういうふうに報道されました。この対応は余りにもお寒い、肌寒い感じがいたしますね。これで何が福祉なんだろう、これでどうして日本が豊かだと言えるのだろうか。

 そういう意味で私は、大臣、急いでホームレスの対応を強化する必要があるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。

 

○津島国務大臣 その問題にお答えする前に、先ほどの有料老人ホームについて私から一言所見を申し述べさせていただきたいと思いますが、今の規制あるいは法律の建前は私は十分でないと思っております。委員御指摘のようないろんな老後のついの住みかを求めてお入りになった方を保護するには十分でないと思っておりますが、そのためには、単なる経営調査をある時点でやるだけではだめでございまして、将来にわたってもやはりちゃんと担保されるような仕組み、これは民間にもあるわけでございますから、保険とかいろいろあるわけでございますから、そういうものを組み合わせて将来一般の方にきっちり判定していただけるような仕組みをつくることが先決ではなかろうか。そういう努力を早急にやらなければいけない。今私ども、内部で検討しておるところでございます。

 そこでその次に、ホームレスに不幸にしておなりになるというのは、殊にお年寄りの場合大都会中心に非常に深刻であろうと私は思います。就任をいたしましてから都内のいろいろなお年寄りの施設を見てまいりましたけれども、最初に出てまいりますのはやはり土地問題等と絡んだ住宅問題だな。そして、それにこたえるために今度は施設をつくろうとなると、なかなか公用地が見当たらないということでそっちも進まない。まさに住宅問題が最大の問題点であるという認識を持っているという意味で、委員の御指摘に全く同感なのでございます。

 これに対応していくためには、やはり養護老人ホームのようなものを、それからまたそこに至らないものでいろいろ、例えば東京の特別区でも御工夫になっておるところがございますね。かなり良好な住環境で部屋を提供して差し上げて、そこに食事の提供もある。それから同時に、そこはコミュニティー活動の中心になっている。そういうものを見ますと、既存の養護老人ホームであるとかそういうタイプに必ずしもこだわらなくてもいいから、そういう状況になった方がすぐにお入りになれるような施設整備を進めなければいかぬという印象を持っております。具体的にどうやったらいいかということについて、私はまだ完全には勉強は終わっておりません。

 

○和田(静)分科員 大臣の見ていらっしゃるところ、私は大変正しいと思いますし、大きく期待をいたしたいと思います。

 私の選挙区は、埼玉県の一区なのですけれども、蕨という市がありまして、この間も年配の御夫婦が、御主人は七十二歳で軽い心筋梗塞、奥さんは五十八歳ですが脳梗塞、夫婦とも病弱である。収入は年金十万円ぐらいと、御主人がわずかなアルバイトをされていました。昭和二十二年ごろから実は古い借家にお住まいだったのですが、昭和五十五年ごろから雨漏りがしてきて、直してくれ、直してくれと言ってもなかなかうまくいかなかった。それで、家賃を供託して裁判ということになりました。先ごろ和解ができたのですが、和解は平成四年九月までに退去して和解金百三十万円を受け取るということになっております。これでさえ、私の知人で、善良で有能な女性の弁護士が真剣に取り組んだからでき上がったことでありますが、退去した後の行く当てがないわけですね。一体この方はどこに相談に行ったらいいのだろうということを痛切に感じました。そして、どういう解決方法があるのだろう。いかがでしょう。

 

○岡光政府委員 まず、相談場所としては、やはり市の福祉事務所が優先されるのじゃないかと思います。それから、私ども行政的な手段といたしましては、一つはケアつきの公営住宅、それから軽費老人ホームの中で、今おっしゃいましたように相当病弱な方で、自分だけでは生活がし切れないというふうな人用にいわゆるケアハウスというのを整備しようと思っております。今お聞きしたようなケースですと、ケアハウスが一番ふさわしいのかなというふうに考えますが、何さまこれは始まったばかりでございまして、相当頑張って整備をしていかなければいけないと思っております。

 そういうふうに行政的な面で一応の手段はございますので、後は実績を積み重ねていって、大臣もお答え申し上げましたが、都市部にそういうものが必要でございますので、できるだけ都市に重点を置いた工夫をどんどん進めていきたいと考えております。

 

○和田(静)分科員 それで私は、予算委員会の一般質問で老人憲章、高齢者憲章を提案いたしまして、総務庁並びに政府が検討を約束されました。児童憲章のもとに児童福祉法があり、そして児童相談所制度があり、児童福祉司制度がある。ところが、老人福祉法というのはもちろんありますが、今も答弁がありましたように福祉事務所に行くぐらいのものだろうというのでは、これからの高齢化社会に対応できないのではないだろうか。よって私は、老人福祉法のもとに、児童福祉法同様に高齢者の相談所制度あるいは高齢者福祉司制度などというものが今日充実される必要があるのではないだろうか。そういう意味のことも実は含んで、あの予算委員会では高齢者憲章の提案を提唱したわけでありますが、いかがでしょう。

 

○津島国務大臣 委員が予算委員会で老人憲章の必要性について大変強く主張されたこと、感銘を受けております。今私どもがやっております高齢者のための十カ年戦略というのは、まさに老人福祉の重要性、しかもこれは国民運動的なレベルでやらなきゃならないということを内外に宣明しているというふうに受けとめておりますので、老人憲章のようなものが制定されるということは、それは基本的には望ましいなと思っております。

 ただ、委員御案内のとおり、児童憲章ができましたときには大変な下からの盛り上がりがございまして、言ってみれば国民運動という形がそこに結実していったというのが現実ではないかと思いますので、私ども、そういう盛り上がりが将来起こってまいりまして老人憲章にいけば、それは大変結構なことだと思っております。ただ厚生省の方から、私どもは仕事を一生懸命やる立場でありますから、憲章をつくってくれという立場ではないなというふうに思っております。

 

○岡光政府委員 まず窓口の問題でございますが、いわゆるシルバー一一〇番を開設しておりまして、短縮電話で#形の八〇八〇というので全国共通の番号を設定していただいております。ぜひともこういったところへ御相談をいただきたいのと、これからの問題でございますが、在宅介護支援センターを将来的には中学校区に一カ所つくりたいと思っておりまして、そういったところでもろもろの相談を身近に、気軽にやっていただけるような体制づくりをしたいと思っております。